経営事項審査と入札の関係性とは?成功する公共工事受注のための完全ガイド

経審は公共工事入札の必須条件かつ成長戦略のカギ
経営事項審査(経審)は、公共工事入札に参加するための絶対条件であり、その点数によって参加可能な工事規模が決まる。高評価を得ることで大規模工事の元請受注が可能になり、経審点数がさらに上がる好循環を生む。
評価項目を理解し、戦略的に点数アップを図る
経審は「完成工事高」「財務内容」「経営状況」「技術力」「社会性等」の5項目で構成され、それぞれに対策が必要。元請工事実績の積み上げ、技術者の確保、財務改善、公的保険加入などを通じて、総合的に点数向上を目指す。
スケジュール管理と電子化対応が入札成功の鍵
経審の有効期限は1年7ヵ月で、入札参加資格の更新も自治体ごとに異なる。期限管理の徹底と電子申請の体制整備(gBizID取得、データのデジタル化等)が、安定した公共工事受注に不可欠である。
公共工事の入札に参加し、安定した受注を目指すためには「経営事項審査(経審)」が欠かせません。単なる手続きと考えている方も多いかもしれませんが、実は経審は入札成功の鍵を握る重要な要素なのです。経審の点数が高ければ、より大型の工事に参加できるようになり、元請として実績を積み重ねることで、さらに経審の点数が上がるという好循環を生み出すことができます。
本記事では、経営事項審査と入札の深い関係性から、経審の評価項目、申請手続きの流れ、有効期限の管理まで、公共工事を受注するために必要な知識を網羅的に解説します。適切な経審戦略を立てて入札を有利に進めるための実践的なノウハウも紹介しますので、公共工事の受注拡大を目指す建設会社の方はぜひ参考にしてください。

1. 経営事項審査(経審)とは?公共工事入札の成功を左右する審査制度

経営事項審査(経審)は、建設業法に基づいて定められた、公共工事を請け負う建設業者の能力を客観的に評価するための審査制度です。この審査は、公共工事を直接受注するために必須となるものであり、単に建設業許可を取得しただけでは入札に参加することはできません。なぜなら、公共工事は国債や税金を原資としているため、受注者を選定する際の客観的な基準が必要とされるからです。
経営事項審査の意義と目的
経営事項審査の最大の目的は、公共工事の発注者(国や地方自治体)が、適切な建設業者を選定するための客観的な指標を提供することにあります。公共の資金を使用する以上、発注者の主観だけで業者を選ぶことはできず、公平性と透明性を確保するために、統一された評価基準が必要なのです。
経営事項審査では、建設業者の経営規模、財務状況、技術力、社会性などが総合的に評価され、業種ごとに点数化されます。この点数は「総合評定値(P点)」と呼ばれ、多くの自治体では、この点数に基づいて入札参加資格の等級(ランク)が決定されます。つまり、経審の点数が高いほど、より大規模な公共工事に参加できる可能性が高まるのです。
公共工事を受注するために必須となる審査プロセス
経営事項審査は、大きく分けて「経営状況分析」と「経営規模等評価」の2段階で構成されています。まず、登録経営状況分析機関による「経営状況分析」を受け、その結果を添付して所管行政庁に「経営規模等評価」の申請を行います。
この審査を受けるためには、建設業許可を取得していることが前提条件となります。また、経審の結果は審査基準日(通常は決算日)から1年7ヵ月間有効ですが、継続して公共工事を受注するためには、毎年審査を受ける必要があります。
審査の申請から結果が出るまでには1~2ヵ月程度かかるため、入札参加を計画している場合は、余裕をもって準備を進めることが重要です。特に初めて経審を受ける場合は、必要書類の準備や内容の確認に時間がかかることを考慮しましょう。
「経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書」の重要性
経営事項審査の結果は、「経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書」として交付されます。この通知書には、27種類の建設業許可業種ごとに総合評定値(P点)が記載され、これが公共工事の入札参加資格申請の際に必須の添付書類となります。
重要なのは、この総合評定値通知書が公共工事の入札だけでなく、民間工事の受注にも大きな影響を与えるという点です。多くの民間企業も、請負業者の選定において経審の結果を参考にする傾向にあり、良好な評価を得ていることが発注者からの信頼獲得につながります。
技術力、財務状況、会社規模、法令遵守などについて公正中立な評価を受けることで、取引先や金融機関に対して会社の信用力を客観的に示すことができるのは、経審を受けることの大きなメリットといえるでしょう。
経審と入札の関係性を理解する重要性
単に「公共工事を受注するために必要な手続き」と考えるのではなく、経審が入札成功の鍵を握る重要な要素であることを理解する必要があります。経審の点数が低ければ、希望する工事案件に入札できない可能性もあるため、どのような工事を受注したいかという目標から逆算して、必要な経審点数を検討することが戦略的なアプローチといえます。
次のセクションでは、経営事項審査と入札の関係性についてより詳しく解説し、経審がどのように入札参加条件や受注可能な工事規模に影響するかを明らかにしていきます。
2. 経営事項審査と入札の深い関係性

経営事項審査(経審)と入札は密接に関連しており、この関係性を正しく理解することが公共工事受注の成否を左右します。単に「入札に参加するために受けなければならない手続き」と考えるだけでは、本当の意味で入札を成功させることはできません。ここでは、経審と入札の関係性について詳しく解説していきます。
入札参加資格の取得と経審の必要性
公共工事の入札に参加するためには、発注機関(国や地方自治体)の入札参加資格を取得する必要があります。そして、ほぼすべての発注機関では、工事の入札参加資格の申請条件として「経審を受審していること」を義務付けています。つまり、公共工事の入札に参加するためには、経審を受け、有効な総合評定値(P点)を持っていることが絶対条件なのです。
注意すべき点として、経審を受審してから結果が出るまでには1~2カ月程度の期間がかかります。また、入札参加資格申請にはこの経審結果が必要なため、初めて入札に参加する場合は、全体で半年以上の準備期間を見込む必要があります。希望する入札案件から逆算して、スケジュールを立てておくことが重要です。
受注できる工事の規模と経審の点数の関連性
経審と入札の関係性で最も重要なポイントは、経審の点数によって受注できる工事の規模が決まるという点です。この仕組みには主に2つの理由があります。
等級(ランク)制度と経審点数の影響
多くの自治体では、入札参加資格を取得した業者に対して「等級」というランク分けを行っています。この等級は主に経審の点数に基づいて決定され、等級に応じて参加できる工事の規模(金額)が制限されます。等級は自治体によって「格付け」や「ランク分け」などと呼ばれることもあります。
例えば、東京都発注の土木工事の場合、経審の点数等により、A・B・C・Dの4つの等級に分けられており、3億円以上の工事は最上位のAランクの業者しか入札に参加できません。つまり、大規模な工事を受注したいと考えていても、経審の点数が低ければ、そもそも入札に参加する資格を得られないのです。
重要なのは、一度決まった等級は、次の経審結果が出るまでや、参加資格の更新時期までは変わらないという点です。最短でも1年間、長ければ2~3年間はその等級でしか入札に参加できないため、経審の点数を向上させる取り組みは計画的に行う必要があります。
案件ごとに設定される経審点数条件
自治体や工事の種類によっては、等級によるランク分けを行わないケースもあります。しかし、そのような場合でも経審の点数が重要でないわけではありません。特に規模の大きい工事においては、案件ごとの入札参加条件として経審の点数が設定されていることが多いからです。
例えば、「この工事案件は経審で800点以上の業者のみ参加可能」という条件が付いていれば、800点未満の業者は入札に参加できません。この条件設定は案件ごとに異なり、工事の難易度や規模に応じて変動します。
入札に参加を希望する発注機関が、どのような案件にどの程度の経審点数を条件としているかを事前に調査し、傾向を把握しておくことが入札戦略を立てる上で重要となります。
入札と経審の好循環:公共工事受注による点数向上
経審が入札に影響を与えるだけでなく、入札の結果もまた経審の点数に大きな影響を与えます。この相互関係を理解し、好循環を生み出すことが、公共工事を継続的に受注する鍵となります。
経審の評価項目のうち、「完成工事高」と「技術力評価」においては、元請工事の実績が下請工事より高く評価される仕組みになっています。つまり、公共工事を元請として受注すれば、元請完成工事高が増加し、経審の点数が大きく向上する可能性があるのです。
これにより以下のような好循環が生まれます:
- 公共工事を元請として受注する
- 元請としての実績が増え、経審の点数が上がる
- 経審の点数が上がることで、より大規模な工事に入札参加できるようになる
- さらに大きな公共工事を受注し、経審の点数がさらに上がる
この好循環を意識的に作り出すことで、公共工事をメインに取り組む建設業者は、着実に元請業者として成長していくことができます。つまり、経審は単なる手続きではなく、会社の成長戦略の重要な要素と位置づけるべきなのです。
次のセクションでは、経審の評価項目と点数アップのポイントについて詳しく解説し、どのようにして総合評定値を向上させるかについて具体的な方策を紹介します。
3. 経審の評価項目と点数アップのポイント

経営事項審査(経審)で高い評価を得るためには、評価項目の構成と配点の仕組みを理解し、計画的に点数アップを図ることが重要です。このセクションでは、総合評定値(P点)の構成要素とそれぞれの評価項目について詳しく解説し、経審の点数アップのための実践的な方策を紹介します。
総合評定値(P点)の構成要素
経審における総合評定値(P点)は、以下の5つの評点から構成されています。これらの評点がどのように算出されるかを理解することで、効果的な経審対策が可能になります。
評点 | 算出内容 | 上限点数 | 下限点数 |
---|---|---|---|
X1点 | 完成工事高 | 2,309点 | 397点 |
X2点 | 自己資本額と平均利益額 | 2,280点 | 454点 |
Y点 | 経営状況分析結果 | 1,595点 | 0点 |
Z点 | 技術職員数及び元請完工高 | 2,441点 | 456点 |
W点 | 公的保険・法令遵守等 | 1,966点 | ▲1,995点 |
総合評定値(P点)は、これら5つの評点の合計値によって算出されます。業種ごとに異なる評点が出るため、自社が取得している建設業許可業種すべてについて審査を受ける必要があります。特に注目すべきは、いずれの評点も上限と下限が設定されており、バランス良く点数を伸ばすことが重要である点です。
X1点(完成工事高)の計算方法と影響
X1点は、審査対象年度の完成工事高と、その前々年度及び前年度の完成工事高の平均値に基づいて算出されます。この際、元請工事と下請工事では評価方法が異なり、元請工事の方が高く評価される傾向にあります。
X1点を効果的に向上させるためには、工事経歴書の正確な記載が重要です。特に、元請工事と下請工事の区分を明確にし、軽微な工事以外の全体の7割程度を記載する必要があります。また、官公庁発注の公共工事は評価が高いため、公共工事の受注実績を積み重ねることがX1点向上の近道となります。
X2点(自己資本額と平均利益額)の重要性
X2点は、自己資本額と平均利益額という財務的要素から算出されます。自己資本額は、純資産合計(資本金、資本剰余金、利益剰余金など)から社外流出予定額を差し引いた金額です。平均利益額は、審査対象年度と前年度の利益額(税引前当期純利益)の平均値を指します。
X2点を向上させるためには、自己資本を充実させることが効果的です。具体的には以下の対策が考えられます:
- 利益の内部留保による純資産の増加
- 役員借入金の資本金への振替
- 増資による資本金の増加
- 税引前当期純利益の安定的な確保
X2点は財務体質の強化と直結しているため、経営の安定性を高める上でも重要な指標です。
Y点(経営状況分析結果)の評価基準
Y点は、登録経営状況分析機関による経営状況分析の結果から算出されます。具体的には、収益性、安全性、成長性、換金性、活動性、生産性、財務健全性といった財務指標に基づいて評価されます。
Y点を向上させるためには、以下のような財務改善策が効果的です:
- 収益性向上:売上高経常利益率の改善、原価管理の徹底
- 安全性向上:負債比率の改善、自己資本比率の向上
- 換金性向上:流動比率の改善、手元流動性の確保
- 生産性向上:一人当たり売上高の向上、外注費の適正管理
財務諸表は税抜処理で統一されるため、税務会計原則で作成された決算書は企業会計原則に基づいて修正する必要があります。また、財務指標の改善は一朝一夕にはできないため、中長期的な計画を立てて取り組むことが重要です。
Z点(技術力評価)の計算と技術者の影響
Z点は、技術職員数と元請完工高から算出され、企業の技術力を評価する指標です。特に技術職員の保有資格によって配点が異なり、高いレベルの資格保有者ほど高く評価されます。
資格区分 | 配点 |
---|---|
1級資格+監理技術者講習受講 | 6点 |
1級資格のみ | 5点 |
登録基幹技能者等 | 3点 |
2級資格 | 2点 |
その他 | 1点 |
Z点を向上させるためには、以下のような取り組みが効果的です:
- 1級資格保有者の雇用と監理技術者講習の受講促進
- 社内技術者の資格取得支援制度の整備
- 元請完工高の増加(特に公共工事の受注拡大)
- 技術者の適切な配置と資格情報の正確な管理
技術者の採用・育成は時間がかかるため、計画的に取り組む必要があります。特に、1級資格保有者は評価が高いため、優先的に確保することが重要です。
W点(社会性等)の評価項目
W点は、公的保険(雇用保険、健康保険、厚生年金保険)への加入状況や、建設業退職金共済制度への加入、防災協定の締結、ISO認証の取得、建設業労働災害防止協会への加入など、社会性や法令遵守の状況によって評価されます。
W点で減点されないためには、法令遵守は当然のこと、以下のような取り組みが効果的です:
- 公的保険への完全加入と適正な納付
- 建設業退職金共済制度への加入
- 地域の防災協定への参加
- ISO9001(品質)やISO14001(環境)の認証取得
- 建設業労働災害防止協会への加入
W点は、マイナス評価になる可能性もある唯一の項目です。法令違反や社会的責任を果たしていない場合には大幅な減点となるため、コンプライアンスの徹底が必須となります。
経審の評点アップを目指すための実践的対策
経審の点数を効果的に向上させるためには、短期的・中長期的な視点からの取り組みが必要です。ここでは、実践的な対策について解説します。
短期的に取り組むべき項目
経審申請の直前に取り組むことで、比較的短期間で効果を出せる対策として以下のものがあります:
- 工事経歴書の適切な記載(元請・下請の区分明確化、適正な工事内容の記載)
- 技術者の資格情報の最新化と正確な申告
- 決算変更届の内容確認と必要に応じた訂正
- 公的保険の加入と納付状況の確認
- 建設業退職金共済制度への加入手続き
特に工事経歴書は、X1点とZ点に直接影響するため、注文者との契約内容に基づいて元請か下請かを正確に判断し、自社にとって有利な評価となるよう適切に記載することが重要です。
中長期的な視点での評点向上戦略
経審の点数を大幅に向上させるためには、中長期的な視点での戦略が不可欠です:
- 公共工事受注の拡大:元請として公共工事を受注することで、X1点とZ点の向上に大きく貢献します。
- 財務体質の強化:自己資本の充実、収益性の向上、負債の削減などを通じて、X2点とY点の向上を図ります。
- 技術者の育成・確保:計画的な採用と社内の資格取得支援により、Z点の向上を目指します。
- 社会的信頼の構築:ISO認証取得や地域貢献活動を通じて、W点の向上と企業イメージの向上を図ります。
特に重要なのは、これらの取り組みを個別に行うのではなく、統合的な経営戦略として位置づけることです。例えば、技術者の育成は単にZ点向上のためだけでなく、品質向上や生産性向上にもつながり、結果としてX1点やY点の向上にも貢献します。
経審の点数アップは、会社の成長戦略と直結しています。短期的な対策と中長期的な戦略をバランスよく組み合わせることで、持続的な点数向上と企業価値の向上を実現しましょう。
次のセクションでは、経審から入札参加資格申請までの具体的な流れと、申請タイミングについて詳しく解説します。
4. 経審から入札参加資格申請までの流れと申請タイミング

公共工事の入札に参加するためには、経営事項審査(経審)を受け、その結果を用いて入札参加資格申請を行う必要があります。この一連のプロセスを適切なタイミングで進めることが、希望する入札案件に参加するための鍵となります。このセクションでは、経審から入札参加資格申請までの流れと、申請の適切なタイミングについて詳しく解説します。
決算確定から経審申請までのプロセス
経営事項審査の申請プロセスは、大きく分けて以下の順序で進みます:
- 決算の確定
- 経営状況分析の申請
- 建設業許可の決算変更届の提出
- 経営規模等評価申請の提出
- 入札参加資格審査の申請
それぞれのステップについて、詳しく見ていきましょう。
経営状況分析申請の手続き
経営状況分析は、全国の登録経営状況分析機関が行います。現在、全国に10社ほどの分析機関があり、どの機関を選んでも審査結果に違いはありません。費用やサービス内容を比較して、自社に合った機関を選びましょう。
経営状況分析の申請に必要な主な書類は以下の通りです:
- 財務諸表(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書等)
- 税務申告書(法人税申告書の別表等)
- 法人事業概況説明書
- 建設業許可通知書の写し
- その他分析機関が指定する書類
申請から結果通知書の発行までは、通常2~3週間程度かかります。申請書類に不備がある場合は、さらに時間がかかることもあるため、慎重に準備する必要があります。
建設業許可の決算変更届の重要性
経審申請時には、直近3年分の決算変更届を見直し、必要に応じて訂正届を提出することが重要です。決算変更届は建設業許可の維持に必要な手続きであり、毎決算期から4ヶ月以内に提出する必要があります。
経審申請の際には、特に以下の点に注意が必要です:
工事経歴書の見直し
工事経歴書には、元請と下請に分けて工事実績を記載し、軽微な工事(建築一式工事の場合1,500万円未満、その他の工事の場合500万円未満)以外の全体の7割を記載する必要があります。元請と下請の区分は評点に大きく影響するため、契約内容に基づいて正確に判断することが重要です。
また、工事内容の記載も重要です。例えば、「空調工事」を「管工事業」として記載するか「機械器具設置工事業」として記載するかによって、評価対象となる業種が変わります。自社の強みを生かせる業種で評価されるよう、適切な記載を心がけましょう。
財務諸表の見直し
経審では財務諸表は税抜処理で統一されます。税務会計原則で作成された決算書は、企業会計原則に基づいて修正する必要があることがあります。特に、以下の点に注意しましょう:
- 消費税の処理方法(税込処理か税抜処理か)
- 完成工事高の計上基準(工事完成基準か工事進行基準か)
- 減価償却費の計算方法(税法基準か会計基準か)
これらの項目について、税理士や会計士と相談しながら適切に対応することで、より正確な評価を受けることができます。
経営規模等評価申請の準備と提出
経営状況分析結果通知書が届いたら、次は経営規模等評価申請を行います。この申請は、建設業許可を受けた国土交通大臣または都道府県知事に対して行います。
経営規模等評価申請に必要な主な書類は以下の通りです:
- 経営規模等評価申請書(様式第25号の11、12、13)
- 経営状況分析結果通知書
- 工事種類別完成工事高(様式第25号の14)
- 技術職員名簿(様式第25号の15)
- その他証明書類(社会保険加入状況、建退共加入証明書、ISO認証など)
申請からP点(総合評定値)が記載された結果通知書の発行までは、通常1~2ヶ月程度かかります。申請書類の記載内容に不備がある場合は、修正や追加資料の提出を求められることもあるため、チェックリストを作成するなど、漏れのないよう準備することが重要です。
入札参加資格審査申請の適切なタイミング
経営規模等評価結果通知書(経審結果)を取得したら、いよいよ入札参加資格審査申請を行います。このタイミングは非常に重要で、計画的な準備が必要です。
自治体ごとの申請時期の違い
入札参加資格申請の受付時期は、自治体や発注機関によって異なります。多くの自治体では、次のような傾向があります:
- 国(各省庁):2年に1度、奇数年度の12月~1月頃に受付
- 都道府県・政令指定都市:1~3年ごとに受付期間を設定
- 市区町村:年1回または2年に1回の受付期間を設定
特に重要なのは、多くの自治体が年度の始まり(4月1日)に合わせて入札参加資格を更新する点です。そのため、通常は申請の受付が6~2ヶ月程前(10月~2月頃)に行われることが多いのです。
希望する自治体の入札参加資格を取得するためには、その自治体のホームページで申請時期を事前に確認し、それに間に合うよう経審の申請を進める必要があります。
準備から申請完了までの期間の見積もり
決算確定から入札参加資格申請までには、全体で以下のような期間がかかります:
- 決算確定から経営状況分析結果通知書の取得まで:約1~2ヶ月
- 経営規模等評価申請から結果通知書の取得まで:約1~2ヶ月
- 入札参加資格申請の準備期間:約2週間~1ヶ月
つまり、決算確定から入札参加資格申請の完了までには、最低でも3~5ヶ月程度の期間が必要となります。初めて申請する場合や、書類の準備に不慣れな場合は、さらに余裕をもったスケジュール設定が望ましいでしょう。
例えば、3月決算の会社が4月から始まる年度の入札参加資格を取得したい場合、以下のようなスケジュールが考えられます:
- 3月末:決算確定
- 4月~5月:経営状況分析申請と建設業許可の決算変更届の提出
- 6月頃:経営状況分析結果通知書の取得
- 6月~7月:経営規模等評価申請の提出
- 8月~9月:経営規模等評価結果通知書(P点)の取得
- 10月~翌年1月:入札参加資格審査申請(自治体の受付期間に合わせて)
- 翌年4月:入札参加資格の取得
このように、入札参加資格の取得には長い期間を要するため、計画的に準備を進めることが非常に重要です。
タイミングを逃さないための管理方法
経審と入札参加資格申請のタイミングを適切に管理するために、以下のような方法が効果的です:
- 年間スケジュールの作成:決算月から逆算して、経審申請、入札参加資格申請のスケジュールを年間カレンダーに落とし込みます。
- 自治体情報の定期確認:希望する自治体のホームページを定期的に確認し、申請情報の更新を漏らさないようにします。
- リマインダー設定:重要な期限や申請開始日の2週間前などに通知が来るよう、社内のシステムやカレンダーにリマインダーを設定します。
- 担当者の明確化:経審と入札参加資格申請の担当者を明確にし、責任を持って期限管理ができる体制を整えます。
- チェックリストの活用:申請に必要な書類や手続きのチェックリストを作成し、漏れがないようにします。
特に初めて経審や入札参加資格申請を行う場合は、行政書士など専門家のサポートを受けることも検討すると良いでしょう。専門家は申請のノウハウを持っており、スムーズな手続きをサポートしてくれます。
経審から入札参加資格申請までの流れを正確に理解し、適切なタイミングで手続きを進めることで、希望する入札案件に確実に参加できる体制を整えましょう。
次のセクションでは、公共工事入札のための経審活用戦略について、より実践的な観点から解説します。
5. 公共工事入札のための経審活用戦略

経営事項審査(経審)は、単なる審査手続きではなく、公共工事受注拡大のための重要な戦略ツールとして活用できます。このセクションでは、経審を戦略的に活用して入札を有利に進めるための具体的な方法について解説します。
目標設定と逆算的な経審戦略の立て方
公共工事入札における経審活用の最も重要なポイントは、「ゴールから逆算する」という考え方です。どのような工事を受注したいのか、という目標を明確にし、そこから必要な経審点数を逆算して戦略を立てることが成功への近道となります。
受注したい工事から必要な点数を逆算する考え方
経審戦略を立てる際のステップは以下の通りです:
- 受注したい工事の明確化:地域、工事種類、規模などを具体的に設定します。例えば「○○市の土木一式工事で1億円規模の案件を受注したい」など。
- 必要な条件の調査:その工事を受注するために必要な入札参加資格の等級(ランク)や経審点数を調査します。
- 現状との差の分析:自社の現在の経審点数と必要な点数との差を分析し、どの評価項目を改善すべきかを特定します。
- 改善計画の策定:点数アップのための具体的な行動計画を立て、実行します。
- 進捗管理と修正:計画の進捗を定期的に確認し、必要に応じて修正を加えます。
例えば、ある建設会社がA市の土木工事(5,000万円規模)を受注したいと考えた場合、まずA市の入札参加条件を調査します。調査の結果、この規模の工事はBランク以上の業者しか参加できず、Bランクになるためには経審点数が750点以上必要だとわかりました。しかし、現在の自社の点数は680点です。
そこで、どの評価項目を改善すれば効率的に点数をアップできるかを分析します。例えば、技術職員を1名増やすことでZ点が20点上昇し、元請完成工事高を増やすことでX1点が30点上昇する可能性があることがわかれば、これらの項目に重点的に取り組む計画を立てます。
自社の現状分析と目標達成への道筋
逆算的な経審戦略を立てるためには、まず自社の現状を正確に把握することが重要です。以下の項目について分析しましょう:
- 現在の経審点数と内訳:総合評定値(P点)だけでなく、X1、X2、Y、Z、Wの各評点の状況を確認します。
- 強みと弱み:どの評価項目が相対的に高く、どの項目が低いのかを分析します。
- 改善可能性:各評価項目について、どの程度の改善が可能かを検討します。
- 改善にかかるコストと時間:改善策を実行するために必要なコストと時間を見積もります。
この分析を基に、短期的(1年以内)、中期的(1~3年)、長期的(3年以上)な目標と行動計画を設定します。例えば:
- 短期的目標:工事経歴書の最適化、技術者の資格取得促進など
- 中期的目標:元請完成工事高の増加、財務体質の改善など
- 長期的目標:技術者の増員、ISO認証取得など
目標達成までの道筋を明確にすることで、ゴールに向かって着実に前進することができます。
格付け等級と工事規模を見据えた計画立案
公共工事入札では、多くの自治体が建設業者を等級(ランク)に分けて、参加できる工事の規模を制限しています。この制度を理解し、自社の目標に合った計画を立てることが重要です。
自治体別の格付け基準の調査方法
自治体ごとに格付け基準は異なるため、ターゲットとする自治体の基準を正確に把握することが必要です。調査方法としては:
- 自治体のホームページ確認:多くの自治体は入札・契約情報のページに格付け基準を公開しています。
- 入札担当課への問い合わせ:不明点があれば、直接担当課に問い合わせることも有効です。
- 過去の入札情報の分析:過去の入札結果を調査し、どの等級の業者がどの規模の工事を落札しているかを分析します。
- 同業他社からの情報収集:業界団体の会合などで情報交換を行うことも有益です。
調査の際には、以下の点に特に注意して情報を収集します:
- 各等級の経審点数の基準値
- 等級ごとの発注工事の金額範囲
- 格付けにおける経審点数以外の評価要素(地域貢献度、災害対応実績など)
- 格付けの更新時期と有効期間
格付け等級と案件規模の関係性
格付け等級によって参加できる工事の規模が決まるため、自社の目標に合った等級を目指すことが重要です。以下は一般的な等級と工事規模の関係の例です(自治体によって異なります):
等級(ランク) | 対象となる工事金額の目安 | 必要な経審点数の目安 |
---|---|---|
A | 1億円以上 | 900点以上 |
B | 5,000万円~1億円 | 750点~900点未満 |
C | 2,000万円~5,000万円 | 600点~750点未満 |
D | 2,000万円未満 | 600点未満 |
自社の現在の経審点数と目標とする工事規模を照らし合わせて、どの等級を目指すべきかを明確にします。例えば、現在Cランクで主に3,000万円規模の工事を受注している会社が、5,000万円以上の工事を受注したいと考えるなら、Bランクを目指す必要があります。
また、今後の事業拡大計画に合わせて、5年後、10年後にどの等級を目指すかという長期的な展望も持つことが重要です。
入札参加資格における経審の効果的な活用法
経審の結果を入札参加資格において効果的に活用するためには、単に点数を上げるだけでなく、戦略的なアプローチが必要です。
経審結果の戦略的な活用ポイント
経審結果を入札参加で有効活用するためのポイントは以下の通りです:
- 業種の選択と集中:すべての業種で高得点を取るのは難しいため、自社の強みを活かせる業種に集中して点数アップを図ります。例えば、土木一式工事と舗装工事の両方の許可を持っている場合、より得意な方に注力します。
- 地域特性の考慮:地域によって需要の高い工事種類が異なるため、ターゲットとする地域の発注傾向を考慮して、重点的に強化する業種を選びます。
- 総合力と専門性のバランス:「土木一式」などの総合的な業種と、「舗装」「塗装」などの専門的な業種のどちらに強みを持たせるか、市場環境と自社の強みを考慮して決定します。
- 特定自治体の評価方法への適応:自治体によっては、経審点数だけでなく独自の評価項目(地域貢献度や災害協定締結状況など)を設定している場合があります。ターゲットとする自治体の評価方法に合わせて対策を講じます。
例えば、ある自治体が防災協定の締結を高く評価する場合、経審点数の向上と併せて地元の防災協定に参加することで、評価を高めることができます。
競合他社との差別化要素としての経審
同じ等級内の競合他社と差別化を図る上でも、経審は重要な役割を果たします。差別化のためのポイントとしては:
- 特定項目での優位性確保:Z点(技術力)やW点(社会性)など、競合他社が弱い項目で優位性を確保します。
- 主観点での評価向上:多くの自治体では経審の客観点に加えて、工事成績や地域貢献度などの主観点も評価します。この主観点での評価を高めることで差別化を図ります。
- 特殊工事への対応力:特殊な技術や資格が必要な工事に対応できる体制を整えることで、競合が少ない分野での受注機会を増やします。
これらの差別化要素を意識的に強化することで、同じ等級内でも優位に立つことができます。
実践的な経審活用事例
以下に、経審を戦略的に活用して入札成功につなげた実践事例を紹介します。
事例1:技術者採用による点数アップ戦略
土木工事を主体とするA社は、Cランクから上位のBランクへの格上げを目指していました。経審分析の結果、Z点(技術力評価)が低いことが判明したため、1級土木施工管理技士の資格を持つ技術者を2名採用しました。これにより、Z点が50点向上し、翌年度からBランクに格上げされました。これにより受注可能な工事規模が広がり、売上が約30%増加しました。
事例2:財務改善による経審点数向上
建築工事を行うB社は、赤字決算が続き、経審のX2点(自己資本額)とY点(経営状況)が低い状況でした。そこで、不採算工事の受注を控え、利益率の高い専門工事に集中する経営方針に転換。併せて役員報酬の一部を自己資本に振り替えるなどの財務改善を実施しました。2年間の取り組みの結果、X2点が80点、Y点が120点向上し、上位等級への格上げに成功しました。
事例3:地域密着戦略との連携
地方の中小建設会社C社は、経審点数では大手に及ばないものの、地元自治体の防災協定への参加や地域貢献活動に積極的に取り組みました。その結果、自治体の主観点評価が高まり、総合評価方式の入札で高評価を得ることができました。経審点数だけでなく、地域に根ざした活動との相乗効果で公共工事の受注率が向上した好例です。
これらの事例からわかるように、目標を明確にし、自社の状況を正確に分析した上で戦略的に経審を活用することが、入札成功の鍵となります。単に経審点数を上げるだけでなく、ターゲットとする市場や競合状況を考慮した総合的な戦略が重要です。
次のセクションでは、経審と入札参加資格の有効期限管理について解説します。適切な期限管理は、継続的な公共工事受注のために不可欠な要素です。
6. 経審と入札参加資格の有効期限管理

公共工事を継続して受注するためには、経営事項審査(経審)と入札参加資格の有効期限を適切に管理することが不可欠です。期限切れによって入札に参加できなくなると、受注機会を逃すだけでなく、事業計画に大きな影響を与える可能性があります。このセクションでは、経審と入札参加資格の有効期限の仕組みと、効果的な管理方法について解説します。
経審の有効期限(1年7ヵ月)の仕組み
経営事項審査の結果は永続的に有効なわけではなく、一定の期間のみ有効です。この有効期限を正確に理解し、計画的に更新手続きを行うことが重要です。
審査基準日からの期限計算方法
経審の有効期限は、「審査基準日」から「1年7ヵ月」と法令で定められています。この「審査基準日」とは、通常、経審を受ける建設業者の決算日のことを指します。例えば、3月31日決算の会社が経審を受けた場合、審査基準日は3月31日となり、その経審結果の有効期限は翌年の10月31日(1年7ヵ月後)までとなります。
なぜ単純に「1年」ではなく「1年7ヵ月」なのかというと、この期間は以下のように考慮されています:
- 決算確定から経審申請までの準備期間:約3ヵ月
- 経審の審査期間:約1ヵ月
- 次回の決算日までの期間:1年
- 次回の決算確定から経審結果が出るまでの猶予期間:約3ヵ月
つまり、「1年7ヵ月」という期間は、次の決算に基づく経審結果が出るまでの猶予を含めた期間として設定されているのです。
毎年の更新が必要な理由と対応方法
経審の有効期限は1年7ヵ月ですが、公共工事を継続して請け負うためには、毎年の決算後に経審を受ける必要があります。これには以下のような理由があります:
- 最新の経営状況の反映:発注者は請負業者の最新の経営状況を確認したいと考えるため、できるだけ新しい経審結果の提出を求めることが多いです。
- 入札参加資格の要件:多くの自治体では、入札参加資格の申請・更新時に「X年X月X日以降の審査基準日の経審結果」の提出を求めることがあります。
- 総合評定値の向上:会社の成長に伴って経審の点数が向上する場合、最新の結果を反映させることで、より良い条件での入札参加が可能になります。
経審を毎年更新するための対応方法としては、以下のようなスケジュール管理が重要です:
- 決算確定後の速やかな申請:決算確定後、通常4ヵ月以内に建設業許可の決算変更届を提出する必要がありますが、これと並行して経審の申請準備を進めます。
- 経営状況分析申請の早期実施:決算書類が整い次第、できるだけ早く経営状況分析の申請を行います。
- 経営規模等評価申請の迅速な提出:経営状況分析結果が出たら、速やかに経営規模等評価申請を行います。
- 前年度の経審有効期限の確認:新しい経審結果が出るまでに前年度の経審が期限切れとならないよう、タイミングを管理します。
これらのプロセスを毎年確実に実行することで、経審の有効期限切れによる入札参加機会の損失を防ぐことができます。
入札参加資格の有効期限と更新
入札参加資格も経審と同様に有効期限があり、適切な管理が必要です。ただし、経審と異なり、自治体ごとに有効期限や更新方法が異なるため、より細やかな管理が求められます。
自治体ごとの有効期限の違い
入札参加資格の有効期限は自治体によって異なり、主に以下のようなパターンがあります:
- 1年間有効:毎年度更新が必要(4月1日~翌年3月31日)
- 2年間有効:2年に1度の更新(多くの市区町村で採用)
- 3年間有効:3年に1度の更新(一部の都道府県で採用)
例えば、国土交通省など中央省庁の場合、多くは2年に1度、奇数年度に受付を行い、2年間有効の参加資格を付与します。都道府県や政令指定都市も同様に2〜3年の有効期間を設けていることが多いですが、市区町村レベルでは毎年更新のケースもあります。
また、同じ自治体内でも、工事、測量・建設コンサルタント、物品・役務などの分野によって更新時期や有効期間が異なることもあります。
更新情報の入手方法と確認のポイント
入札参加資格の更新情報を入手するためには、以下の方法が効果的です:
- 自治体のホームページの定期確認:多くの自治体は、入札参加資格の更新時期が近づくと、ホームページ上で告知します。通常、有効期限満了の3〜4ヵ月前に情報が公開されることが多いです。
- 入札情報サービスの活用:「官公需情報ポータルサイト」や各自治体の「入札情報サービス」などで、更新情報を確認できる場合があります。
- 自治体からのメール通知の登録:一部の自治体では、登録業者に対してメールで更新情報を通知するサービスを提供しています。可能であれば、このようなサービスに登録しておくと便利です。
- 建設業協会などの団体からの情報入手:所属している建設業協会などの団体が、更新情報を会員に通知することもあります。
更新情報を確認する際のポイントとしては、以下の項目に特に注意が必要です:
- 申請受付期間:この期間を逃すと次回の更新まで申請できない場合があります。
- 必要書類の変更:前回からの変更点がないか確認します。
- 電子申請への移行:紙ベースから電子申請に変わった場合、準備が必要です。
- 経審の基準日要件:「X年X月X日以降の審査基準日の経審結果」など、特定の要件がある場合があります。
- 追加の評価項目:地域貢献や災害協定などの新たな評価項目が追加されていないか確認します。
これらの情報を漏れなく把握することで、スムーズな更新手続きが可能になります。
継続的な公共工事受注のための期限管理体制
経審と入札参加資格の期限を適切に管理するためには、組織的な体制づくりが重要です。ここでは、効果的な期限管理のための方法を紹介します。
有効期限管理のためのスケジュール作成
期限管理のための具体的なスケジュール作成方法としては、以下のアプローチが効果的です:
- 年間カレンダーの作成:1年間の主要な期限と申請時期を視覚化した年間カレンダーを作成します。
- マスタースケジュール表の整備:すべての入札参加自治体について、以下の情報を一覧表にまとめます。
- 自治体名
- 入札参加資格の有効期限
- 更新申請の予想時期
- 必要な経審の審査基準日要件
- 前回の申請で提出した書類リスト
- 担当者の連絡先
- アラート設定:各期限の1〜3ヵ月前にアラートが出るよう、スケジュール管理ソフトや社内カレンダーに設定します。
- 進捗管理表の活用:各申請の準備状況を記録する進捗管理表を作成し、定期的に更新します。
このようなツールを用意することで、担当者が変わっても期限管理のノウハウが引き継がれ、組織的な対応が可能になります。
漏れのない更新手続きのためのチェックリスト
期限切れを防ぐためのチェックリストとして、以下の項目を活用することをお勧めします:
経審更新のチェックリスト
- 決算確定から3ヵ月以内に建設業許可の決算変更届を提出したか
- 経営状況分析に必要な書類を準備しているか
- 財務諸表
- 法人税申告書
- 法人事業概況説明書
- その他必要書類
- 経営状況分析申請を行ったか
- 経営状況分析結果通知書を受け取ったか
- 経営規模等評価申請に必要な書類を準備しているか
- 工事経歴書(正確に元請/下請の区分がされているか)
- 技術職員名簿(資格情報が最新か)
- 社会保険加入状況の証明書
- 建退共加入証明書
- ISO認証などの証明書
- 経営規模等評価申請を行ったか
- 経営規模等評価結果通知書(総合評定値)を受け取ったか
- 前回の経審結果の有効期限はいつまでか
入札参加資格更新のチェックリスト
- 参加している全自治体の入札参加資格有効期限を一覧化しているか
- 各自治体の更新情報をチェックする仕組みがあるか
- 更新申請のスケジュールを立てているか
- 更新に必要な経審結果が間に合うか(審査基準日の要件を満たしているか)
- 電子申請のための準備はできているか(ID・パスワードの確認など)
- 更新申請に必要な書類は揃っているか
- 経営規模等評価結果通知書
- 納税証明書
- 商業登記簿謄本
- 委任状(支店等に権限を委任する場合)
- その他自治体指定の書類
- 更新申請を行ったか
- 更新完了の通知を受け取ったか
これらのチェックリストを定期的に確認することで、更新漏れのリスクを大幅に減らすことができます。
期限管理の失敗事例と対策
最後に、経審や入札参加資格の期限管理で起こりがちな失敗事例とその対策について紹介します。これらの事例から学ぶことで、同様の問題を回避できるでしょう。
事例1:経審更新の遅延による入札機会の喪失
失敗事例:A社は3月決算で、前年度の経審の有効期限は10月末でした。新年度の経審申請を後回しにしているうちに、有効期限直前に更新手続きを始めましたが、書類不備などで審査が遅延。その結果、11月に予定されていた大型公共工事の入札に参加できませんでした。
対策:決算確定後、速やかに経審申請の準備を始め、遅くとも有効期限の3ヵ月前までには新しい経審結果を取得できるようにスケジュールを管理します。特に書類準備は余裕をもって行い、不備による遅延リスクを減らします。
事例2:自治体の更新情報見落としによる資格喪失
失敗事例:B社は複数の自治体で入札参加資格を持っていましたが、担当者の交代時に引継ぎが不十分で、C市の更新情報を見落としました。更新申請期間が終了した後に気づきましたが、臨時受付はなく、次回の定期受付(1年後)まで入札に参加できなくなりました。
対策:全参加自治体の有効期限と更新時期を一覧表にまとめ、組織として管理します。担当者が変わっても情報が引き継がれるよう、共有フォルダなどにデータを保存し、複数の担当者でチェックする体制を整えます。
事例3:経審の審査基準日要件の見落とし
失敗事例:C社は、D県の入札参加資格更新に際し、「申請日から1年7ヵ月以内の審査基準日の経審結果」が必要という要件を見落としていました。提出した経審結果が古すぎるとして差し戻され、急いで新しい経審を申請しましたが、間に合わず、申請できませんでした。
対策:各自治体の入札参加資格申請時の経審要件を明確に把握し、一覧表に記載します。特に「X年X月X日以降の審査基準日」などの時期要件に注意し、必要に応じて経審の申請時期を調整します。
事例4:電子申請への対応遅れ
失敗事例:D社はE市の入札参加資格更新の際、従来の紙ベース申請から電子申請に変更されたことに気づかず、紙の申請書類を準備していました。更新申請期間直前に気づきましたが、電子証明書の準備が間に合わず、申請期間内に手続きを完了できませんでした。
対策:自治体の申請方法の変更にも注意を払い、電子申請に必要なID・パスワードや電子証明書などを事前に準備しておきます。また、定期的に自治体のホームページを確認し、制度変更に関する情報をチェックします。
経審と入札参加資格の有効期限管理は、一見煩雑で手間のかかる業務に思えますが、適切な管理体制を整えることで、公共工事を継続的に受注するための基盤となります。期限切れによる入札機会の喪失は、企業の成長に大きな影響を与える可能性があるため、戦略的かつ組織的な管理を心がけましょう。
次のセクションでは、入札参加資格申請の電子化の現状と今後の動向について解説します。電子化の流れを理解し、効率的な申請方法を身につけることも、公共工事受注の重要な要素となります。
- 年間カレンダーの作成:1年間の主要な期限と申請時期を視覚化した年間カレンダーを作成します。
- マスタースケジュール表の整備:すべての入札参加自治体について、以下の情報を一覧表にまとめます。
- 自治体名
- 入札参加資格の有効期限
- 更新申請の予想時期
- 必要な経審の審査基準日要件
- 前回の申請で提出した書類リスト
- 担当者の連絡先
- アラート設定:各期限の1〜3ヵ月前にアラートが出るよう、スケジュール管理ソフトや社内カレンダーに設定します。
- 進捗管理表の活用:各申請の準備状況を記録する進捗管理表を作成し、定期的に更新します。
このようなツールを用意することで、担当者が変わっても期限管理のノウハウが引き継がれ、組織的な対応が可能になります。
漏れのない更新手続きのためのチェックリスト
期限切れを防ぐためのチェックリストとして、以下の項目を活用することをお勧めします:
経審更新のチェックリスト
- 決算確定から3ヵ月以内に建設業許可の決算変更届を提出したか
- 経営状況分析に必要な書類を準備しているか
- 財務諸表
- 法人税申告書
- 法人事業概況説明書
- その他必要書類
- 中央省庁:統一資格審査申請・調達情報検索サイト(統一資格)
- 都市圏の自治体:東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県など
- 政令指定都市:横浜市、川崎市、さいたま市、大阪市など
- 共同受付システム導入地域:北海道、東北地区、関東地区、東海・北陸地区など地域ごとに共同受付システムを導入している自治体
- ユーザーID・パスワードの管理:多くの電子申請システムでは、ユーザー登録が必要です。ID・パスワードの管理を徹底し、申請時に慌てないようにしましょう。
- 電子証明書の準備:一部のシステムでは、電子署名のための電子証明書(ICカード等)が必要になります。取得には時間がかかるため、余裕をもって準備しましょう。
- データのバックアップ:入力データの消失を防ぐため、定期的にバックアップを取りながら作業を進めることをお勧めします。
- 提出前の最終確認:一度提出すると修正が難しい場合があるため、提出前に内容を十分確認しましょう。
- 令和5年度(2023年度):建設業許可・経審の電子申請システム(JCIP)の本格運用開始と普及
- 令和5〜6年度(2023〜2024年度):各自治体における入札参加資格申請の電子化推進
- 令和7年度(2025年度):原則として全ての入札・契約手続きの電子化完了
- 令和7年度以降(2025年度以降):各システム間の連携強化、ワンスオンリー化(一度提出した情報を複数の手続きで活用)の実現
- 24時間365日申請可能:役所の窓口営業時間に縛られず、いつでも申請できます。
- 申請書類の簡素化:既に提出済みのデータを活用することで、入力作業の負担を軽減できます。
- 書類提出の効率化:電子データのアップロードにより、紙の書類作成や郵送の手間が省けます。
- 申請状況の確認:申請後の進捗状況をオンラインで確認できます。
- 通知書のダウンロード:許可通知書や経審結果通知書を電子データで受け取れます。
- 必要なアカウントの取得
- gBizIDプライムアカウント(JCIP利用時に必須)
- 各自治体の電子申請システム用アカウント
- 電子入札システム用アカウント
- 電子証明書の準備
- 公的個人認証サービスのICカード(マイナンバーカード)
- 商業登記電子証明書(法人代表者用)
- 電子入札コアシステム対応の電子証明書
- ICカードリーダーなどの機器
- ICカードに対応したカードリーダー
- 安定したインターネット環境
- 推奨環境に対応したPC・ブラウザ
- 電子データの準備
- 電子申請に必要な書類のPDFデータ
- 財務諸表や工事経歴書などのエクセルデータ
- 各種証明書類のスキャンデータ
- システム要件の確認:利用するシステムの推奨環境(OS、ブラウザのバージョンなど)を事前に確認し、必要に応じて環境を整えます。
- 操作マニュアルの入手:各システムの操作マニュアルを入手し、事前に操作方法を理解しておきます。
- 試行環境の活用:可能であれば、本番環境での申請前に試行環境(テスト環境)で操作を確認します。
- 申請データの準備:必要なデータを事前に整理し、システムで要求される形式に変換しておきます。
- 電子データの保存体制:申請に使用したデータや申請履歴を適切に保存・管理する体制を整えます。
- 担当者の教育:電子申請を担当する社員に対して、必要な知識とスキルを習得させるための教育を行います。
- 余裕をもったスケジュール設定:初回は操作に慣れていないため、従来よりも時間がかかることを想定しておきます。
- サポート窓口の確認:困ったときのために、各システムのサポート窓口の連絡先を確認しておきます。
- バックアップ計画:システムトラブル時の対応策として、従来の書面申請の準備も並行して進めておくことも検討します。
- 申請作業の効率化:紙の申請書類作成や押印、コピー、製本などの作業が不要になり、大幅な時間短縮が可能になります。
- 移動時間の削減:役所への移動や窓口での待ち時間が削減され、業務効率が向上します。
- 書類保管スペースの削減:紙の書類が減ることで、保管スペースを削減できます。
- 過去データの再利用:一度入力したデータを次回申請時に再利用できる場合があり、入力作業を効率化できます。
- 申請状況の透明化:オンラインで申請状況を確認できるため、進捗状況が把握しやすくなります。
- 24時間申請可能:営業時間外でも申請できるため、繁忙期でも柔軟に対応できます。
- 経審点数の推移分析:過去の経審データを電子化して管理することで、総合評定値(P点)やX1、X2、Y、Z、W各点数の推移を分析し、自社の強み・弱みを客観的に把握できます。
- 工事実績データの活用:電子化された工事経歴データを分析し、より利益率の高い工事種類や発注者を特定することで、営業戦略の立案に役立てられます。
- 競合他社との比較:公表されている競合他社の経審データと自社データを比較分析することで、競争力強化のための課題を明確化できます。
- 経営シミュレーション:電子データを活用して、財務改善や技術者採用などの施策が経審点数にどの程度影響するかをシミュレーションすることができます。
- 等級制度:多くの自治体では、経審点数に基づいてA・B・C・Dなどの等級を設定し、等級ごとに参加できる工事の金額範囲を定めています。
- 個別案件の参加条件:特に大型工事では、「経審○○点以上」などの参加条件が設定されることが多く、条件を満たさない業者は入札に参加できません。
- 短期計画:工事経歴書の最適化、技術者の資格取得支援など
- 中期計画:元請完成工事高の増加、財務体質の改善など
- 長期計画:技術者の増員、ISO認証取得など
- X1点(完成工事高):元請工事の受注拡大、適切な工事経歴書の作成
- X2点(自己資本額と平均利益額):利益の内部留保、自己資本の充実
- Y点(経営状況分析):財務体質の改善、収益性・安全性の向上
- Z点(技術力評価):資格保有技術者の採用・育成、元請完工高の増加
- W点(社会性等):公的保険の完全加入、ISO認証取得、法令遵守の徹底
- 申請書類の正確な作成(特に工事経歴書の元請/下請区分など)
- 有効期限のスケジュール管理(経審と入札参加資格の両方)
- 電子申請に必要な環境整備(アカウント取得、電子証明書準備など)
- 現在のC等級で受注実績を積み、元請完工高を増やす
- 経審点数が向上してB等級になったら、より規模の大きい案件に挑戦
- B等級での実績を積み、さらに点数を向上させてA等級を目指す
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、AIの特性上、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。本記事の内容に関するご質問、ご意見、または訂正すべき点がございましたら、お手数ですがお問い合わせいただけますと幸いです。