自治体DX推進計画とは?7つの重点項目と段階的な進め方

住民中心のサービス改革と業務効率化の両立
自治体DXは単なるデジタル化ではなく、住民の利便性向上と行政業務の効率化・高度化を両立させるための本質的な変革。マイナンバー活用やオンライン手続きなどで「誰一人取り残さない」社会の実現を目指す。
7つの重点取組と段階的アプローチ
フロントヤード改革、システム標準化、eLTAX活用、マイナンバー普及、セキュリティ強化、AI・RPA導入、テレワーク推進の7分野に取り組むとともに、段階的(気運醸成→方針策定→体制整備→施策実行)に推進することが成功の鍵となる。
課題克服と地域社会全体のデジタル化
アナログ文化、人材不足、財源制約、住民理解の不足といった課題を乗り越えるためには、トップのリーダーシップ、外部人材の活用、住民との対話などが不可欠。また、条例見直しや地域企業支援など、地域全体のデジタル化も併せて推進する必要がある。
政府が積極的に推進するデジタル化の波は、民間企業だけでなく地方自治体にも及んでいます。自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)は、単なるデジタル技術の導入ではなく、行政サービスの質を高め、住民の生活をより豊かにするための本質的な変革です。
2020年に総務省が策定した「自治体DX推進計画」は、自治体が重点的に取り組むべき事項と国による支援策を示した指針です。2025年12月には第5.0版へと更新され、フロントヤード改革やシステム標準化の加速など、より踏み込んだ内容に改訂されました。
本記事では、自治体DX推進計画の概要から7つの重点取組事項、推進の段階的なステップ、先進事例まで、第5.0版の最新情報をもとに解説します。自治体職員の方はもちろん、自治体のデジタル化支援に関わる事業者の方にも役立つ内容です。
この記事のポイント
住民中心のサービス改革と業務効率化の両立
自治体DXは単なるデジタル化ではなく、住民の利便性向上と行政業務の効率化・高度化を両立させるための本質的な変革。マイナンバー活用やオンライン手続きなどで「誰一人取り残さない」社会の実現を目指す。
7つの重点取組と段階的アプローチ
フロントヤード改革、システム標準化、eLTAX活用、マイナンバー普及、セキュリティ強化、AI・RPA導入、テレワーク推進の7分野に取り組むとともに、段階的(気運醸成→方針策定→体制整備→施策実行)に推進することが成功の鍵となる。
課題克服と地域社会全体のデジタル化
アナログ文化、人材不足、財源制約、住民理解の不足といった課題を乗り越えるためには、トップのリーダーシップ、外部人材の活用、住民との対話が不可欠。また、条例見直しや地域企業支援など、地域全体のデジタル化も併せて推進する必要がある。
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自治体DXとは

「自治体DX」とは、地方自治体がデジタル技術を活用して行政サービスの提供方法や業務プロセスを変革し、住民の利便性や満足度を向上させることを目指す取り組みです。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の本質
DXとは「Digital Transformation」の略称で、単にアナログな業務をデジタル化するだけではありません。デジタル技術を活用して業務やサービスを根本から変革し、新たな価値を創出することを指します。紙の申請書をPDF化するだけではなく、オンライン申請によって住民が24時間どこからでも手続きできるようにするなど、住民目線でのサービス改善を実現することが本質です。
自治体DXと一般的なDXの違い
民間企業におけるDXが主に企業価値や利益の向上を目的としているのに対し、自治体DXは「住民の利便性向上」「行政サービスの質の向上」「誰一人取り残さないデジタル社会の実現」という公共的価値の創出を目指しています。
また、自治体DXではマイナンバーカードの活用や行政手続きのオンライン化など、国の政策と歩調を合わせた取り組みが求められる点も民間企業のDXとは異なります。標準化や共通化を進めることで、全国どこでも同じレベルのサービスを提供することを目指しています。
自治体DXに求められる3つの視点
自治体DXを進めるにあたっては、以下の3つの視点が重要です。
- 住民中心の発想:住民のニーズや課題を起点にサービスを設計する
- バックオフィス改革:内部業務の効率化により職員の負担を軽減する
- データ活用:行政データを分析・活用して新たな価値を創出する
これらに加えて、「デジタルデバイド対策」も重要な柱です。DXの恩恵がすべての住民に行き渡るよう、高齢者や障がい者など、デジタル技術の活用が困難な方々への支援も自治体DXの核心的な課題です。
自治体DX推進計画の概要

自治体DX推進計画は、総務省が2020年12月に策定し、定期的に更新している計画書です。この計画は、自治体が重点的に取り組むべき事項と国による支援策を明確に示し、自治体のデジタル化を加速させることを目的としています。
推進計画の目的と変遷
自治体DX推進計画は、「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」に基づき、自治体が住民サービスの向上と業務効率化を実現するための具体的な行動指針として作成されました。策定以降、社会情勢や技術動向の変化に合わせて継続的に更新されており、2025年12月には最新版となる第5.0版が公表されました。
| 版 | 改定時期 | 主な変更点 |
|---|---|---|
| 初版 | 2020年12月 | 6つの重点取組事項を策定 |
| 第2.3版 | 2024年2月 | 「公金収納におけるeLTAXの活用」を追加し7項目に |
| 第3.0版 | 2024年4月 | 取組事項の詳細化・最新事例の追加 |
| 第4.0版 | 2025年3月 | フロントヤード改革の強化、デジタル人材育成目標の追記 |
| 第5.0版 | 2025年12月 | 標準化後の運用・共同調達支援、次期計画への移行準備 |
総務省が示す7つの重点取組事項
1. 自治体フロントヤード改革の推進
住民と行政との接点(フロントヤード)の改革です。「書かせない、待たせない、迷わせない、行かせない」をモットーに、住民サービスの利便性向上と業務効率化を図ります。定型業務から職員を解放し、企画立案や相談対応といった付加価値の高い業務に人材をシフトさせることが目的です。第5.0版では、オンライン来庁予約や近場の郵便局・コンビニでの手続き対応など、多様な住民ニーズへの対応が具体的に示されています。
2. 自治体の情報システムの標準化・共通化
基幹業務システム(住民基本台帳、固定資産税、介護保険など)を国が策定する標準仕様に準拠したシステムへ移行する取り組みです。当初は17業務が対象でしたが、現在は20業務に拡大されています。移行期限は原則2025年度末とされていましたが、SEリソース不足などにより移行が困難なシステムについては「特定移行支援システム」として個別に期限を設定する枠組みが整備されました。
【2026年1月時点の進捗】標準化対象34,592システムのうち、移行完了は13,283システム(38.4%)。一方、52.3%の団体が特定移行支援システムを1つ以上抱えており、多くの自治体で対応が継続中です。また、移行費用の支援として約7,000億円の「デジタル基盤改革支援基金」が設けられており、設置年限も5年延長の方向で検討が進められています。
3. 公金収納におけるeLTAXの活用
eLTAX(地方税ポータルシステム)を活用して、地方税や各種公金の収納業務を効率化する取り組みです。第2.3版(2024年2月)から新たに追加された項目で、納税者の利便性向上と自治体の事務負担軽減を目指しています。オンラインでの納付が24時間可能になり、自治体側でもリアルタイムでの収納状況確認が可能です。第5.0版ではeL-QRを活用した地方税以外の公金納付への拡大も推進されています。
4. マイナンバーカードの普及促進・利用推進
マイナンバーカードを活用したデジタル社会の基盤整備を目指します。カードの交付促進だけでなく、行政手続きのオンライン化やカードの多目的利用(健康保険証への統合など)を推進し、住民の利便性向上を図ります。マイナンバーカードは健康保険証としての利用が開始されており、行政手続きのオンライン申請の基盤として機能しています。
5. セキュリティ対策の徹底
デジタル化を進める上で不可欠なセキュリティ対策の強化です。「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」(2026年3月改訂)に基づき、自治体のセキュリティ体制を整備します。CISO(最高情報セキュリティ責任者)の任命、CSIRT(セキュリティインシデント対応チーム)の設置、ICT-BCP(有事の対応策)の整備などが求められています。2024年の地方自治法改正により、自治体はサイバーセキュリティ確保の方針を定める義務が明記されました。
6. 自治体のAI・RPAの利用推進
AI(人工知能)やRPA(Robotic Process Automation:ロボットによる業務自動化)などのデジタル技術を活用して、定型業務の自動化や効率化を図る取り組みです。窓口での住民対応を支援するAIチャットボットの導入や、申請書処理を自動化するRPAの活用により、業務効率化と住民サービスの向上を目指します。第5.0版では生成AIの活用も新たな取組として位置づけられています。
7. テレワークの推進
ICTを活用して、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を実現する取り組みです。災害時・感染症流行時の業務継続性の確保だけでなく、働き方改革や優秀な人材確保の観点からも重要視されています。セキュリティを確保しつつ、どこからでも行政業務を遂行できる環境の整備が求められています。
自治体DX推進計画の実施体制
重点取組事項を効果的に推進するために、自治体には以下の体制整備が求められています。
- 首長によるリーダーシップと強いコミットメント
- CIO(最高情報責任者)の設置(多くの場合、副市区町村長などが兼任)
- 専門知識を持つCIO補佐官の任用(外部人材の活用も推奨。特別交付税による財政支援あり)
- 情報政策部門と業務改革部門の連携
- デジタル人材の確保・育成
第4.0版では「DX・情報関係業務を担当する職員が1人以下の団体(いわゆる『1人情シス』状態)を2025年度中に半減させる」という具体的な数値目標が明示されました。一方で、2024年4月時点でデジタル人材確保・育成に係る方針を策定済みの市区町村は416自治体にとどまっており、全市区町村での方針策定が令和9年度の目標として掲げられています。
自治体DXに取り組むメリット

自治体がDXに取り組むことで、自治体自身はもちろん、住民や地域社会全体に多くのメリットがもたらされます。行政業務の効率化から住民サービスの向上まで、具体的な効果を見ていきましょう。
役所内の業務効率化
AI・RPAを活用することで、手作業で行っていた定型的な業務を自動化できます。申請書の内容チェックや情報の転記作業、単純な問い合わせ対応などを自動化することで、業務時間の短縮と人的ミスの削減が実現します。愛知県豊橋市ではAI-OCR+RPAの導入により、対象業務の作業時間を約70%削減しています。
紙の書類をデジタル化することで、保管スペースの削減だけでなく、検索性の向上や情報共有の円滑化が図れます。テレワーク環境下でも必要な情報にアクセスできるようになり、業務継続性が高まります。福島県昭和村では電子決裁システムの導入により8ヶ月で全庁的な業務改革を実現し、決裁時間を約60%短縮しています。
住民サービスの利便性向上
行政手続きのオンライン化により、役所の開庁時間に関係なく、いつでもどこからでも各種申請や届出が可能になります。仕事や育児で平日に役所へ行くことが難しい住民にとって、時間的制約からの解放は大きなメリットです。
マイナンバーカードの活用や各種システムの連携により、複数の手続きを一度に完了できるワンストップサービスが実現します。引っ越し時の各種住所変更手続きを一括で行えるようになれば、住民の負担は大幅に軽減されます。AIやデータ分析技術を活用することで、住民一人ひとりのニーズに合ったサービスの提供も可能になります。

地域社会全体のDX促進
自治体がDXに積極的に取り組むことで、地域社会全体のデジタル化が進み、様々な波及効果が期待できます。地域産業のデジタル化支援、デジタル人材の育成・確保、住民参加型の地域コミュニティ活性化などが代表的な効果です。
財務効果と持続可能な行政運営
業務の効率化やシステムの標準化・共通化により、人件費や維持管理費の削減が期待できます。また、データに基づく政策立案(EBPM:Evidence-Based Policy Making)により、効果的な施策に予算を重点配分することが可能になります。
情報セキュリティの強化
DXを進める過程で、情報セキュリティポリシーの見直しや体制整備が行われ、より体系的なセキュリティ対策が実現します。紙の書類の紛失や誤送付といったリスクが軽減され、適切なアクセス制御により個人情報漏洩のリスクが大幅に低減します。クラウドサービスの活用とデータのバックアップ体制整備により、災害時でも業務を継続できる環境が構築されます。
自治体DXが進まない現状と課題

自治体DXの重要性は広く認識されているものの、実際の導入や推進においては様々な障壁が存在します。総務省の自治体DX推進計画でも、DXの導入・推進における障壁が指摘されており、多くの自治体がこれらの課題に直面しています。
アナログ文化の根強さ
多くの自治体では、依然として紙の書類や押印による業務プロセスが主流です。長年の慣習により形成された「紙文化」「ハンコ文化」は職員にとって安心感があり、変更への抵抗が強いのが現状です。電子決裁システムが導入されていても紙の決裁を並行して行う「二重決裁」が行われているケースも少なくありません。
対策:トップのリーダーシップによる意識改革と段階的な移行が効果的です。まず内部の簡易な決裁から電子化を始め、成功体験を積み重ねていくアプローチや、紙とデジタルの併用期間を設けながら徐々に移行していく方法が現実的です。
DXに対する理解不足
「システム導入=DX」という誤った認識が残る自治体では、既存の業務プロセスを見直すことなくデジタルツールを導入するだけにとどまっています。また、住民サービスの向上という本来の目的を見失い、内部業務の効率化にのみ焦点を当ててしまうケースも見受けられます。
対策:DXの本質を理解するための研修や勉強会を実施し、先進事例の視察や外部専門家との交流を通じて知見を深めることが重要です。住民参加型のワークショップやモニター制度を導入し、住民の視点を取り入れたサービス設計を行うことも効果的です。
デジタル人材の不足
DXを推進するためにはITやデジタル技術に精通した人材が不可欠ですが、多くの自治体では専門人材の確保に苦労しています。民間企業との人材獲得競争や給与水準の問題に加え、一般職員のデジタルリテラシー不足も課題です。
対策:外部人材の活用(任期付職員、地域おこし協力隊など)や複数自治体での人材共有、民間企業との人材交流が有効です。CIO補佐官等の外部人材任用には特別交付税措置(措置率0.7)が適用されており、財政面での支援を活用できます。
行政と住民とのコミュニケーション不足
DX推進の意義や効果を住民に分かりやすく伝える広報が不十分なケースが多く、導入したデジタルサービスの問題点について住民からのフィードバックを収集する仕組みが整っていないことも、利用率低迷の一因です。
対策:オープンなデジタル施策の説明会開催、SNSを活用した情報発信、デジタルサービスの体験会などが有効です。住民参加型のデジタルサービス開発プロセスの導入や、アンケートでフィードバックを収集する仕組みの構築も重要です。
財源確保の難しさ
システム導入や設備更新、人材育成など、初期段階で相当な投資が必要です。特に小規模自治体では、限られた予算の中でDX投資の優先順位付けに苦慮しています。また、DXは一度システムを導入して終わりではなく、継続的なメンテナンスや更新のための持続的な財源確保が課題となっています。
対策:デジタル田園都市国家構想推進交付金などの国の補助金・交付金の積極活用、複数自治体による共同調達によるコスト削減が有効です。クラウドサービスやサブスクリプションモデルの活用による初期投資の抑制も含め、約7,000億円のデジタル基盤改革支援基金の活用も検討してください。
課題別の主な対策まとめ
| 課題 | 主な対策 | 国の支援策 |
|---|---|---|
| アナログ文化 | 段階的移行、成功体験の積み重ね | 先進事例集の提供 |
| 理解不足 | 研修・勉強会、外部専門家の招聘 | 地域情報化アドバイザー派遣 |
| 人材不足 | 外部人材任用、自治体間の人材共有 | 特別交付税措置(措置率0.7) |
| 住民理解 | 説明会・体験会、SNS広報 | デジタル活用支援推進事業 |
| 財源確保 | 補助金活用、共同調達 | デジタル基盤改革支援基金(約7,000億円) |
自治体DXとあわせて取り組むべき事項

自治体DX推進計画では、7つの重点取組事項に加えて、並行して取り組むべき3つの重要な事項が示されています。これらは自治体DXの効果を最大化し、真に住民目線に立ったデジタル社会を実現するために不可欠な要素です。
1. 地域社会のデジタル化
自治体DXの効果を最大化するためには、行政内部のデジタル化だけでなく、地域社会全体のデジタル化を進めることが重要です。デジタル田園都市国家構想では、デジタル技術の活用によって地方の社会課題を解決し、地方と都市の格差をなくすことを目指しています。
また、自治体が保有するデータをオープンデータとして公開し、民間企業や住民による活用を促進することも重要です。公共交通の運行情報や防災情報をオープンデータ化することで、民間による新たなサービス開発が促進されます。地域の中小企業・商店のデジタル化を補助金やセミナーで支援することも、地域経済の活性化につながります。
2. デジタルデバイド対策
年齢、地理的条件、経済状況、障がいの有無などによって生じる「デジタルデバイド(情報格差)」の解消は喫緊の課題です。「誰一人取り残さない」デジタル社会の実現のためには、積極的な対策が不可欠です。
総務省の「デジタル活用支援推進事業」を通じて、地域の携帯ショップや公民館などでスマートフォンの基本操作やマイナンバーカードの申請方法などの講習会が実施されています。デジタル化を進める一方で、対面でのサービス提供も継続することが不可欠です。特に福祉や税務など複雑な相談が必要な場合には、デジタルと対面の両チャネルを維持し、住民が自分に合った方法を選択できる環境が求められます。
3. デジタル原則に基づく条例等の規制の点検・見直し
デジタル化を推進するためには、現行の条例に含まれる「アナログ規制」を見直し、デジタル技術の活用を阻害する要因を取り除くことが重要です。デジタル臨時行政調査会が定めた「構造改革のためのデジタル5原則」(デジタル完結・自動化原則、アジャイルガバナンス原則、官民連携原則、相互運用性確保原則、共通基盤利用原則)に基づき、代表的なアナログ規制を点検・見直すことが求められています。
見直しのプロセスは「現状把握→優先順位付け→代替手段の検討→条例等の改正→効果検証」の5段階で進めることが効果的です。
自治体DX推進の手順とステップ

自治体DXを効果的に推進するためには、体系的なアプローチが不可欠です。総務省が公表している「自治体DX全体手順書」では、自治体DXを進めるための段階的なステップが示されています。
自治体DX推進の4つのステップ
ステップ0:DXの認識共有・気運醸成
最初のステップは、組織全体でDXの意義や必要性について共通理解を形成し、DX推進への機運を高めることです。首長や幹部職員向けのDX勉強会・研修の実施、全職員を対象としたDX理解促進のための情報提供、庁内外に向けたDX推進への意気込みの表明(宣言など)、他自治体の先進事例の視察や情報収集などが主な取り組みです。
【先進事例】大阪府豊中市では、市長自ら「とよなかデジタル・ガバメント宣言」を発出し、庁内外に強い意気込みを表明。地域情報化アドバイザー派遣制度を活用したDXセミナーの開催とITベンダーとの包括連携により、「ICTよろず相談会」をビデオ会議で多数開催し、各部署のICT活用を推進しています。
ステップ1:全体方針の決定
DXの認識共有ができたら、次は自治体全体としてのDX推進方針を定めるステップです。現状と課題のSWOT分析、DXによって目指す将来像(ビジョン)の設定、重点施策の選定と優先順位付け、年度別の工程表の作成と公表などが主な取り組みです。住民目線での課題設定と「できることはすぐ実行」の姿勢が成功の鍵です。
【先進事例】宮城県仙台市では「デジタル化ファストチャレンジ」として、①窓口手続のデジタル化(押印廃止、キャッシュレス決済導入)、②デジタルでつながる市役所(オンライン子育て相談、モバイル端末活用)、③デジタル化での業務改善(WEB会議・AI・RPA活用)の3本柱で推進しています。
ステップ2:推進体制の整備
全体方針が決まったら、実行するための体制を整備します。DX推進担当部門の設置(CIO・CIO補佐官の任命)、部門横断的な推進体制の構築(DX推進会議等)、デジタル人材の確保・育成(外部人材の登用、研修の実施)が主な取り組みです。DX推進部門への十分な権限付与が成功の鍵です。
【先進事例】福島県磐梯町では、副町長直下に全庁横断的な「デジタル変革戦略室」を設置。CDO・CDO補佐官・地域プロジェクトマネージャーなどの外部人材を積極的に登用し、完全オンライン・ペーパーレス・リモートを前提とした組織づくりでDXを強力に推進しています。
ステップ3:DX施策の実行
推進体制が整ったら、具体的なDX施策を実行します。推進計画に基づき、優先順位の高い施策から順次実施します。PDCAサイクルによる進捗管理と継続的な改善、小さな成功体験の積み重ねと横展開、住民・職員からのフィードバックの収集と反映が重要です。
【先進事例】東京都港区では「窓口総合支援システム」の導入により区民の手続き負担を大幅に軽減。自宅でのオンライン確認から来庁時の一括申請書作成まで、区民と窓口職員の双方の効率を向上させています。
推進計画と工程表の作成
自治体DXを計画的に進めるためには、具体的な推進計画と工程表の作成が必要です。推進計画には、現状分析・ビジョン・重点取組事項・推進体制・工程表・評価指標・予算計画の7つの要素を盛り込むことが推奨されています。
都道府県による市区町村の支援
特に小規模な市区町村では、単独でDXを推進するのが難しいケースがあります。都道府県による情報・ノウハウの共有、デジタル人材の派遣や共同確保、共同調達や広域連携の調整、財政支援などを効果的に活用することが重要です。第4.0版では「2025年度中に全ての都道府県で市町村と連携した推進体制の構築」を目標として明示しており、都道府県と市町村の連携強化が一層求められています。
自治体DXの先進事例紹介

全国の自治体では、DX実現に向けた様々な取り組みが進められています。重点取組事項ごとに参考になる先進事例を紹介します。自治体の規模や特性に合わせて参考にすることで、効果的なDX推進が可能になります。
1. フロントヤード改革の事例
東京都港区:窓口総合支援システムの導入
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 自治体規模 | 特別区(人口約26万人) |
| 取組内容 | 区民が来庁前に必要手続きを確認し、来庁時に複数の申請書を一括作成できる「窓口総合支援システム」を導入 |
| 主な効果 | 窓口待ち時間の短縮、複数手続きの一括処理、窓口職員の業務効率向上 |
東京都新宿区:マルチクラウド活用による行政サービス向上
複数のクラウドサービスを用途に応じて使い分けるマルチクラウドの考え方を取り入れ、ガバメントクラウドとLGWAN接続系の統合によりシームレスな情報連携を実現。データの二重入力や情報連携の手間が大幅に削減されました。
2. 情報システム標準化・共通化の事例
栃木県:県と市町村の共同利用型システムの構築
県内25市町の半数以上が参加し、共同調達によりシステムコストを約40%削減。小規模自治体にとっても専門人材やノウハウの共有という点で大きなメリットとなっており、標準化対応の負担軽減に成功しています。
兵庫県神戸市:ガバメントクラウドへの先行移行
基幹系業務のシステムについて、期限を待たずにガバメントクラウドへの移行を先行実施。得られた知見を他業務のシステム移行にも活かし、他自治体とも積極的に共有することで全国的な標準化の動きを加速させています。
3. AI・RPA活用の事例
愛知県豊橋市:AI・RPAを活用した業務効率化
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 自治体規模 | 中核市(人口約37万人) |
| 取組内容 | AI-OCR+RPAによる申請書処理の自動化、AIチャットボットの導入、AI議事録作成支援システムの活用 |
| 主な効果 | 申請書処理作業時間を約70%削減、24時間365日の問い合わせ対応を実現 |
福島県会津若松市:データ連携基盤を活用した統合GIS
住民基本台帳と地理情報システム(GIS)を連携させた「統合GIS」を構築。要支援者の位置情報をリアルタイムで把握した避難支援の効率化、バス路線再編の検討など、従来は別々に管理されていた情報を統合的に活用しています。
4. テレワーク推進の事例
福島県昭和村:ローコード開発による全庁的電子決裁の実現
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 自治体規模 | 小規模自治体(人口約1,200人) |
| 取組内容 | ローコード開発ツールを活用し、わずか8ヶ月で全庁的な電子決裁システムを内製 |
| 主な効果 | 決裁時間を約60%短縮、場所を問わない業務遂行環境を整備 |
神奈川県横浜市:デジタル職の新設によるテレワーク環境整備
新卒・中途採用で「デジタル職」を新設し、情報処理技術者試験等の合格を受験資格として設定。専門人材の確保によりテレワーク環境の整備が円滑に進み、デジタルツールを活用した業務効率化も加速しています。
5. セキュリティ対策の事例
長野県:県と市町村が共同したセキュリティ対策
県と県内77市町村が共同で「自治体情報セキュリティクラウド」を構築。24時間365日の監視体制と県によるCSIRTの設置により、専門人材が不足する小規模自治体でも高度なセキュリティ対策が可能になっています。
6. 公金収納におけるeLTAX活用の事例
大阪府:eLTAXを活用した公金収納の効率化
地方税以外の各種公金についてもeLTAXを活用した電子納付を先進的に実施。24時間365日の納付環境整備と収納情報の自動連携により、窓口対応・入金確認業務を大幅に削減し、人的リソースを他業務に振り向けることを実現しています。
7. 地域社会のデジタル化の事例
熊本県小国町:無償アプリを活用した被災状況報告システム
感染症対策用の無償検温レポートアプリを応用し、低コストで被災状況報告アプリを独自開発。スマートフォンで撮影した写真と位置情報をリアルタイムに集約し、被災状況報告書の作成業務を大幅に効率化。平時からの防災訓練にも活用されています。
北海道旭川市:シニア向けICT活用講座
年齢・経験に応じたレベル別の講座設計で、高校生・大学生がサポーターとして参加する世代間交流型の学習環境を構築。マイナポータルの使い方など行政手続きのオンライン化に合わせた実践的内容により、参加高齢者のICTリテラシー向上を実現しています。
先進事例から学ぶ成功の共通点
多数の先進事例を分析すると、成功している自治体には以下の共通点があります。先進事例をそのまま模倣するのではなく、「なぜ成功したのか」という本質を理解し、自らの状況に合わせて応用することが重要です。
- トップのリーダーシップと明確なビジョン
- 住民目線のサービス設計
- 小さな成功を積み重ねる段階的アプローチ
- 既存リソースの創意工夫による有効活用
- 部署間・自治体間の連携体制
- 専門人材の確保と活用
- 定量的な効果測定と継続的な改善
自治体DX推進で確認すべき総務省の公式資料7選

自治体DXを効果的に推進するためには、国が提供する参考資料を活用することが有効です。これらの資料は、DX推進の具体的な手順や先進事例、注意点などを詳細に解説しており、計画立案時の重要な指針となります。
| # | 資料名 | 概要 | 最新版 |
|---|---|---|---|
| 1 | 自治体DX推進計画 | 7つの重点取組事項と国の支援策を示す基本計画 | 第5.0版(2025年12月) |
| 2 | 自治体DX・情報化推進概要 | 全国の自治体のDX推進状況調査結果 | 毎年更新 |
| 3 | 自治体DX全体手順書 | DXを推進するための段階的手順を解説 | 第3.0版 |
| 4 | 行政手続のオンライン化手順書 | オンライン化の取組方針と作業手順 | 第3.0版 |
| 5 | 自治体DXダッシュボード | 全国の自治体DX推進状況を地図で可視化 | デジタル庁が公開 |
| 6 | デジタル人材確保の手引き | デジタル人材の確保・育成の指針 | 随時更新 |
| 7 | 情報セキュリティポリシーに関するガイドライン | セキュリティ対策の具体的な指針 | 2026年3月改訂版 |
これらの資料は総務省ウェブサイト「自治体DX」のページからダウンロード可能です。自団体の規模や課題に近い事例を重点的に参照し、複数の資料を横断的に読み解くことで総合的な理解が深まります。定期的に更新される資料もあるため、最新版の確認を欠かさないようにしてください。
まとめ

本記事では、自治体DX推進計画(第5.0版)の概要から7つの重点取組事項、推進の4ステップ、課題と対策、先進事例まで解説しました。自治体DXは、単なる業務効率化の手段ではありません。人口減少・高齢化が進む中で質の高い行政サービスを維持するための不可欠な変革です。
自治体DX推進のポイント整理
- DXの本質を理解する:システム導入自体が目的ではなく、住民サービスの向上と行政の変革が目的
- トップのリーダーシップと全庁的な推進体制:首長や幹部のコミットメントと部門を超えた協力体制
- デジタル人材の確保・育成:外部人材の登用(特別交付税措置を活用)と内部人材の計画的な育成
- 段階的アプローチ:ステップ0からステップ3へ、小さな成功を積み重ねながら着実に前進
- デジタルデバイド対策の徹底:誰もがデジタル化の恩恵を受けられるための継続的な支援
システム標準化の現状と今後
2025年度末を原則期限とした基幹業務システムの標準準拠への移行は、2026年1月時点で完了率38.4%にとどまっています。移行が困難なシステムは「特定移行支援システム」として国が積極的に支援する枠組みが整備されており、約7,000億円のデジタル基盤改革支援基金も5年延長の方向で検討が進んでいます。標準化を「対応すべき課題」としてではなく、行政サービスと組織文化を変革する機会として積極的に捉えることが重要です。
今後は、生成AIの活用高度化、デジタル人材の本格的な育成・確保、官民連携の深化など、より高度なDXへと進化していくことが予想されます。自治体DX推進計画の最新版を常に確認しながら、各自治体の特性に合わせた独自のDX推進計画を策定・実行することが、デジタル社会実現への確実な一歩となります。

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