SDGs実現に向けて企業ができることとは?10の取り組み事例も紹介

昨今、あらゆる業種・業界の企業がSDGsに積極的に取り組むことを期待されています。しかし、「具体的に何を目標に、どのように取り組めば良いかわからない」「他の企業はどのような取り組みを進めているの?」といった疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
本記事ではそうした方に向けて、企業がSDGsに取り組むことのメリットや取り組み事例、SDGsに取り組む際のポイント、注意点などを解説します。

目次

SDGsとは?

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)とは、2015年に国連サミットで採択された、2030年までに達成すべき国際目標のことです。地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind) 」ことを原則としており、先進国を含むすべての国が取り組むべき普遍的な目標として定められています。

SDGsが求められる背景

SDGsが求められている背景には、深刻化する地球規模の課題があります。気候変動による自然災害の増加、生物多様性の損失、貧困や飢餓、教育機会の格差、ジェンダー不平等など、人類の持続可能性を脅かす問題が山積しています。特に、先進国と発展途上国の経済格差は依然として大きく、また経済発展に伴う環境破壊も深刻化しています。

こうした課題に対し、SDGsでは17の目標と169のターゲットを設定しました。貧困撲滅や質の高い教育の提供といった社会課題から、気候変動対策や海洋資源の保全といった環境課題まで、幅広い分野をカバーしています。

SDGsに関する企業の実施状況

本章では、日本企業のSDGsへの取り組み状況について、具体的な数字を交えてご紹介します。

SDGsの認知度と定着状況

一般社団法人グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)と公益財団法人地球環境戦略研究所(IJES)が2022年2月に発表したアンケート調査結果※によると、SDGsの認知度と定着状況は以下のようになっています。

  • 経営陣に定着している: 95.5% (前年比+10.4ポイント)
  • 中間管理職に定着している: 82.1% (前年比+38.4ポイント)
  • 従業員にも定着している: 77.1% (前年比+39.0ポイント)

これらの数字から、SDGsの認知度が経営トップだけでなく、会社全体に急速に浸透していることがわかります。

※出典:一般社団法人グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)、公益財団法人地球環境戦略研究所(IJES)
「SDGs進捗レポート2022」

中小企業の取り組み状況

一方で、中小企業に焦点を当てると、状況は異なります。一般財団法人日本立地センターが2020年11月に実施した「中小企業のSDGs推進に関する実態調査」※によると、認知や取り組みの状況は以下のようになっています。

  • SDGsを認知している中小企業: 50.4%
  • なんらかの取り組みをしている中小企業: 8.2% (未取り組み: 91.8%)

中小企業においては、SDGsの認知度は半数を超えているものの、実際に取り組みを行っている企業はまだ少数にとどまっています。

※出典:一般財団法人日本立地センター
「中小企業のSDGs推進に関する実態調査」

企業がSDGsに取り組むことのメリット

SDGsに取り組むことで、企業はブランドイメージの向上や環境への貢献、社内環境の改善といったメリットを得ることができます。

ブランドイメージの向上

SDGsに取り組むことでブランドイメージが向上し、消費者からの支持獲得につながるほか、環境や社会に配慮する企業としての評価が高まり、競争優位性を確保できます。また、投資家からの評価が向上し資金調達が容易になることや、取引先や地域社会からの信頼醸成につながり、良好な関係を構築できるようになることもメリットです。

環境への貢献

CO2排出量の削減や省エネルギー化を通じて、地球温暖化対策に貢献できます。廃棄物の削減やリサイクル推進により資源の有効活用が進むことや、エネルギーコストや原材料費の削減により、経営の効率化が図れることもメリットです。さらに、環境配慮型製品の開発を通じて、環境技術のイノベーションを促進できる効果も期待できます。

社内環境の改善

SDGsという明確な目標設定により、従業員の働きがいや仕事に対する意識が向上したり、多様な人材の活用や働き方改革の推進により生産性が向上したりするなど、社内環境の改善もSDGsに取り組むメリットです。社会貢献に積極的な企業として認知されることで優秀な人材の採用・定着につながり、中長期的に競争力強化も期待できます。

SDGsの取り組み事例10選

以下では、国内でSDGsに取り組む代表的な10の企業の事例をご紹介します。

サントリーホールディングス

サントリーホールディングスは、「水と生きる」企業として水資源の保全に注力しており、「天然水の森」事業では、工場で使用する水を育む森林を整備しています。2003年から始まったこの取り組みは現在、全国16都府県で約1.2万ヘクタールに拡大。また、ペットボトルの軽量化やリサイクル素材の活用を進め、2030年までにグローバルで使用する全PETボトルでリサイクル素材100%使用を目指しています。

トヨタ自動車

環境技術の開発を通じた脱炭素社会の実現に向けて、2050年までにライフサイクルCO2排出ゼロを目指す「環境チャレンジ2050」を推進。電気自動車や燃料電池車の開発に加え、工場での再生可能エネルギー導入も積極的に実施しています。また、「ウーブン・シティ」プロジェクトでは、最新技術を活用した持続可能な未来都市の実証実験に取り組んでいます。

ユニリーバ・ジャパン

2025年までにプラスチック使用量を半減させる目標を掲げ、詰め替え用製品の拡充や容器のリサイクル素材使用を推進し、2030年までに150万ヘクタールの土地、森林、海洋の保護と再生を支援するとしています。さらに、ジェンダー平等の推進として、管理職の女性比率50%を目標に掲げ、働き方改革を実施しています。

イオン

2040年までにCO2排出量実質ゼロを目指し、店舗への太陽光発電システムの導入や省エネ設備の導入を推進。また、フードロス削減のため、商品の見切り販売や食品リサイクルループの構築に取り組んでいます。さらに次世代型スマートストアの開発を通じて、環境負荷低減と顧客利便性の両立を図っています。

コマツ

建設現場のスマート化を通じて、施工効率の向上と環境負荷低減を実現。ICT建機の開発・普及により、工事期間の短縮と燃料消費量の削減を達成しています。また、「こまつの杜」活動を通じて地域の子どもの健全な育成と自然環境の保全に取り組み、2050年までにカーボンニュートラル達成を目指しているほか、従業員の働き方改革も積極的に推進しています。

パナソニック

「GREEN IMPACT」を掲げ、グループ全工場において2030年までにCO2排出量実質ゼロを目指しています。太陽光発電システムや蓄電池など、クリーンエネルギー関連製品の開発・普及に注力し、工場のCO2ゼロ化や製品使用時の省エネ性能向上にも取り組んでいます。さらに、リサイクル材の活用や製品の長寿命化を通じて、循環型社会の実現に貢献しています。

資生堂

資生堂では、プラスチック製容器について2025年までに100%サステナブルなものへと切り替える目標を掲げ、リサイクル可能・リユース可能な設計やリサイクル素材の利用などを推進。また、持続可能な原料調達や人権に配慮した調達の実現に向けて取り組んでいます。さらに、女性活躍推進として、管理職の女性比率向上や働きやすい職場環境の整備を積極的に実施しています。

キリンホールディングス

農産物原料の持続可能な調達を推進し、契約農家との長期的な関係構築を通じて、安定供給と品質向上を実現。また、容器包装の環境負荷低減として、リサイクルPET素材の使用拡大や軽量化を進めています。水資源保全活動「水源の森」では、全国各地で水源涵養林の保全活動を実施しています。

ソニーグループ

「Road to Zero」環境計画のもと、2040年までにカーボンニュートラル達成を目指しており、製品の省エネ化や再生可能エネルギーの導入を積極的に推進しています。また、テクノロジーを活用した教育支援プログラム「STEAM教育」を展開しているほか、ダイバーシティ&インクルージョンの推進にも注力しています。

味の素

食と健康の課題解決を通じて持続可能な社会の実現を目指し、アミノ酸の生産過程で発生する副生物の有効活用や、発酵技術を活用した環境負荷低減に取り組んでいます。また、「スマート調理」の提案により、家庭での食品ロス削減を推進。2030年までにCO2排出量を50%削減する目標を掲げています。

企業がSDGsに取り組む際のポイント

企業がSDGsに取り組む際のポイントとしては以下の5つが挙げられます。

経営戦略への統合

まずは、SDGsを単なる社会貢献活動ではなく、本業と結びつけた経営戦略として位置づけることが重要です。中長期的な経営計画にSDGsの要素を組み込んだうえで、具体的な数値目標を設定し、進捗を定期的に評価します。

重点課題の特定

自社の事業特性や強みを活かせる目標を選択し、ステークホルダーとの対話を通じて優先すべき課題を明確化します。地域社会のニーズや課題と自社の取り組みのマッチングを図ることも大切です。

全社的な推進体制の構築

経営トップがしっかりとコミットメントし、明確なメッセージを発信することが不可欠です。同時に、専門部署の設置や責任者の明確化、部門横断的なプロジェクトチームの編成など、全社的な推進体制を整えます。従業員の理解促進と参加意識の醸成する必要もあります。

具体的な行動計画の策定

SDGsの取り組みの成果を目に見えるものとするために、短期、中期、長期の目標設定や、実現可能で測定可能な指標(KPI)を設定することが重要です。必要な投資や資源配分の計画を立て、定期的なモニタリングと評価の仕組み構築も行うことも求められます。

ステークホルダーとの協働

取引先を含めたサプライチェーン全体での取り組み体制を構築することで、より大きな成果を得ることができます。他企業や団体とのパートナーシップの構築や、地域社会との対話と協力関係の強化が重要です。その際には、情報公開や透明性の確保を意識する必要があります。

以上のポイントを押さえたアプローチにより、持続可能な企業価値の創造と社会課題の解決の両立が可能となります。

企業がSDGsに取り組む際に注意すべきこと

企業がSDGsに取り組む際には、その施策が持続可能な社会の実現に貢献するものでなければなりません。

昨今では、実質的な取り組みが進んでいないにもかかわらず、表面的にSDGsに取り組んでいるように見せかける「SDGsウォッシュ」という手法が問題視されています。よくみられる事例としては、環境負荷の高い事業を続けながら、表面的な環境活動をマーケティングや広報活動によって強調することや、SDGsのロゴやアイコンを安易に使用し、取り組みを装うことなどがあります。

SDGsウォッシュを避けるためには、具体的な数値目標を設定し進捗を可視化することや、透明性の高い情報開示を徹底すること、さらに第三者評価の活用により取り組みの客観的な検証を行うことが重要です。

まとめ:SDGsの実現と企業の未来

SDGsの実現に向けて、企業は従来の利益追求型のビジネスモデルから、社会的価値と経済的価値を両立させる持続可能な経営への転換が求められています。

そのためには、まずは経営戦略の中核にSDGsを位置づけ、本業を通じた社会課題の解決に取り組む必要があります。環境負荷の低減や人権への配慮といった課題を、新たなビジネス機会として捉え、イノベーションを創出することが重要です。

また、企業単独での取り組みには限界があるため、サプライチェーン全体での協力や、他企業、政府、地域社会との連携が不可欠です。特に、グローバルな課題解決には、業界の枠を超えたパートナーシップの構築が重要となります。

さらに、取り組みの実効性を高めるため、具体的な目標設定と進捗管理、そして透明性の高い情報開示が求められます。SDGsウォッシュを避け、真摯な取り組みを通じて、持続可能な社会の実現に貢献することが、これからの企業には求められています。

SDGsの取り組みを実りあるものとするためには、インパクトレポートを活用することも効果的です。インパクトレポートとは、企業や組織の活動が社会や環境に与える影響(インパクト)を、定量的・定性的に測定・評価し、報告する文書のことです。企業活動とSDGsの各目標との関連性を明確に示すことが可能であり、ESG投資やインパクト投資の判断材料としても活用可能です。

デボノでは、AIとビッグデータの専門知識、そしてマーケティング・PRのノウハウを活用した「インパクトレポート」サービスを提供しています。インパクトレポートを活用することで、戦略的かつブランディングの視点を取り入れながら、企業の持続可能な活動を効果的に伝えることができます。

サービスの詳細につきましては下記のページをご覧ください。

「インパクトレポート」サービス提供開始のお知らせに関するプレスリリース公開のお知らせ

目次