随意契約の理由とは?法令上の根拠と随意契約理由書の書き方

随意契約は「競争入札によらず特定の相手と直接契約する」手続きであり、なぜ競争入札によらないのか——その理由の正当性が常に問われます。会計検査院の指摘や住民監査請求の対象となるリスクを避けるためにも、随意契約理由書の正確な作成は発注機関にとって欠かせません。
本記事では、随意契約が認められる法令上の根拠(9つの事由)と、随意契約理由書の書き方・記載ポイントを解説します。
この記事のポイント
- 随意契約の法令根拠は地方自治法施行令167条の2第1項第1〜9号に限定列挙
- 理由書で最重要な記載事項:「なぜその号に該当するか」の具体的な事実の記述
- よくある落とし穴:「実績があるから」「担当者が良く知っているから」は法令上の理由にならない
随意契約の法令上の根拠とは
地方公共団体の契約は、地方自治法234条第1項により「一般競争入札によるのが原則」です。随意契約を締結できるのは、地方自治法施行令第167条の2第1項第1〜9号に掲げる事由に該当する場合のみです。
ここでいう「随意契約の理由」とは、これら9つの号のうちどれに当てはまるかを示す法令上の適用根拠を指します。理由書では、対象の号とその号に当てはまる具体的な事実を記述します。
9つの随意契約事由と実務上の意味
第1号:少額随意契約
「予定価格が政令で定める金額以下のとき」。最も多く使われる随意契約の根拠です。工事・物品・役務ごとに上限金額が設定されており、令和7年(2025年)の改正で引き上げられました(工事500万円以下、役務300万円以下等)。
この根拠を使う際の理由書では、「予定価格〇〇円は、施行令の金額基準(〇〇万円)以下であるため」のように金額を明示します。
第2号:競争入札に適さない性質の契約
「不動産の買入れ・借入れ、工芸品の製作など、その性質・目的が競争入札に適さないとき」。具体的には、特定の著作権者からの権利取得、特殊な技術や知識が必要な業務委託、患者の既往症に特化した医療機器の調達など。
理由書では「競争入札によることが当該契約の目的・性質に照らして不合理である理由」を具体的に記述します。「特殊な技術であるから」だけでなく、「〇〇社が有する△△特許を利用しなければ業務を遂行できず、代替手段が存在しないため」のように事実を示します。
第3号:社会福祉施設等からの調達
「障害者支援施設・社会福祉施設等から物品の買入れ・役務提供を受けるとき」。福祉的就労の促進が目的。授産施設の製品購入、洗濯・清掃業務の委託など。
第4号:認定事業者との契約
「農商工等連携促進法・中小企業等経営強化法等の認定を受けた事業者との新商品・新役務の契約」。スタートアップ・中小企業との実証実験的な調達で使われることがある。
第5号:緊急性
「緊急の必要により競争入札に付することができないとき」。災害対応・急病・感染症対策など、入札公告期間を設ける時間的余裕がない場合。
理由書では「緊急性の具体的な事実」(いつ・どんな状況が発生し・なぜ緊急対応が必要か)を記述します。緊急だったが後からわかった、というケースは認められません。
第6号:競争が不利と認められる場合
「競争入札に付することが不利と認められるとき」。秘密保持が必要な調達(防衛・セキュリティ関連)、市場の独占状態、競争により価格が騰貴する恐れがある場合など。
第7号:著しく有利な価格での購入機会
「時価に比して著しく有利な価格で契約できる見込みのあるとき」。倒産セール・特売・緊急処分品など。「有利な価格」を示す客観的な証拠(市場価格の調査・他社の見積もり等)が必要です。
第8号:不落随契
「入札者がなかったとき、または再度入札に付して落札者がないとき(不落随契)」。入札・再度入札を経ても落札者がいなかった場合。理由書では「○年○月○日実施の○○案件の入札において落札者がなく、再度入札にも付したが落札者がなかったため」のように入札の経緯を記述します。詳しくは不落随契とは?をご参照ください。
第9号:落札者不締結
「落札者が契約を締結しないとき」。落札後に落札者が辞退・連絡不能となった場合。次順位者との随意契約交渉の根拠となります。
随意契約理由書の書き方と記載ポイント
随意契約理由書は、会計検査院の調査・住民監査請求・情報公開請求での開示対象となります。以下のポイントを押さえて作成してください。
1. 号の明示
「地方自治法施行令第167条の2第1項第〇号に基づき」と号番号を明示します。「緊急だったため」など号番号なしの記述は不十分です。
2. 具体的な事実の記述
号の要件に当てはまる具体的な事実を記述します。
記載例(第2号・特殊技術)
「本業務は○○システムの保守・運用を内容とするものであり、当該システムは□□株式会社が独自に開発した専有技術(特許第○○○○号)を用いたものである。当該技術に精通した事業者は現在□□株式会社のみであり、他の事業者に委託することは技術的に不可能であるため、地方自治法施行令第167条の2第1項第2号に基づき随意契約とするものである。」
3. 「実績があるから」は理由にならない
「前回も同社に委託した実績があるから」「担当者がよく知っている会社だから」「安心できる業者だから」という理由は、法令上の随意契約事由に該当しません。
4. 複数号への当てはめを検討する
例えば第5号(緊急性)に基づく随意契約でも、業務の性質から第2号(競争に適さない)にも該当する場合は、複数の根拠を明記することで理由書の正当性が高まります。
5. 契約相手の選定理由も記載する
特命随契(1者随契)の場合、なぜその1社を選んだのかの理由も記述します。「相見積もりを取ることができない理由」または「相見積もりを取った上でこの会社を選んだ理由」を明示します。
随意契約理由書の文書形式については随意契約理由書とは?もご参照ください。
会計検査でよく指摘される問題パターン
会計検査院の指摘事例から、よくある随意契約の問題パターンを紹介します。
- 分割発注:本来一体の業務を複数に分けて少額随意契約の上限に収める行為
- 理由の形式的記載:「その性質上競争に適さない」だけで具体的事実の記述なし
- 緊急性の恣意的判断:担当者が「緊急だ」と主張するだけで客観的根拠がない
- 見積徴収数の不足:少額随意契約で2社以上の見積を取らずに締結
- 予定価格の操作:少額基準に収めるよう予定価格を不正に調整
よくある質問(FAQ)
Q1. 随意契約理由書はいつ作成しますか?
契約締結前に作成し、支出負担行為の決裁時に添付します。契約後に遡及して作成することは認められません。
Q2. 電子調達システムで随意契約を進める場合、理由書はどこに提出しますか?
システムの「随意契約理由」入力欄への記入が基本ですが、別途紙の理由書を添付することを求める機関もあります。発注機関の調達マニュアル・契約規則を確認してください。
Q3. 随意契約の理由を後から変更することはできますか?
原則としてできません。契約締結時の理由書が公文書として確定されます。事実誤認があった場合は速やかに上位担当者へ報告し、適切な対処(契約の見直し等)を検討します。
まとめ
随意契約の理由とは、地方自治法施行令第167条の2第1項第1〜9号のいずれかに当てはまる法令上の適用根拠です。随意契約理由書の作成では、号の明示と具体的な事実の記述が不可欠です。
- 随意契約は第1〜9号の限定事由にのみ認められ、「実績がある」「知っている業者だから」は法令上の理由にならない
- 理由書には「施行令〇〇条の〇第〇号に基づき」+「なぜその号に該当するか」の具体的事実を記述する
- 分割発注・形式的な理由記載・見積徴収数不足は会計検査指摘の主なパターンのため、手続きを適正に行う
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