長期継続契約とは?複数年契約の仕組みと債務負担行為との違い

自治体との契約は、原則としてその年度ごとに結ばれます。しかし、コピー機のリースや、庁舎の清掃、システムの保守のように、複数年にわたって続けたほうが合理的な契約もあります。こうした契約を、年度をまたいで結べるようにする仕組みが長期継続契約です。自治体と継続的に取引する事業者にとっては、複数年の安定した契約につながる重要な制度です。本記事では、長期継続契約とは何か、その仕組みと対象、そして混同されやすい債務負担行為との違いを、実務目線で解説します。
この記事のポイント
- 長期継続契約は、複数年度にわたる契約を、各年度の予算の範囲内で結べる仕組み
- 地方自治法に基づき、対象となる契約の種類が定められている
- 債務負担行為とは異なり、個別の議決を経ずに複数年契約を結べる
長期継続契約とは
長期継続契約とは、自治体が、複数年度にわたる契約を締結できる仕組みです。地方自治法に根拠があり、各年度における予算の範囲内で給付を受けることを条件として、年度をまたいだ契約を結ぶことが認められています。通常、自治体の契約は、予算が単年度ごとに定められることから、その年度内で完結するのが原則です。しかし、それでは不都合が生じる契約について、例外的に複数年の契約を可能にしたのが、この制度です。
なぜ複数年の契約が必要なのでしょうか。たとえば、コピー機を借りる契約を、毎年度結び直すとします。年度末ごとに契約が切れ、新年度に改めて契約する形では、事務が煩雑になるうえ、事業者にとっても安定しません。リース契約のように、数年にわたって続けることが前提のものは、最初から複数年の契約として結ぶほうが、双方にとって合理的です。長期継続契約は、こうした継続的な性質を持つ契約を、実態に合った形で結べるようにする仕組みだといえます。業務委託の契約形態は業務委託とはもあわせてご覧ください。
ここで重要なのが、「各年度における予算の範囲内で給付を受けることを条件として」という点です。長期継続契約は、複数年の契約を結べるものの、実際に支払いが行われるのは、各年度に予算が確保されている範囲内に限られます。仮に、ある年度に予算が確保できなかった場合には、契約を解除できるといった定めが置かれるのが一般的です。複数年の契約でありながら、単年度予算主義との整合を保つ工夫がなされているのです。
対象となる契約
長期継続契約を結べる契約の種類は、地方自治法で定められています。代表的なものとして、電気・ガス・水の供給を受ける契約、電気通信役務の提供を受ける契約、不動産を借りる契約、そして政令で定める契約が挙げられます。電気やガス、水道、電話といった、継続的に供給・提供を受けるものや、建物を借りる契約は、その性質上、複数年にわたることが自然であり、長期継続契約の対象とされています。
「政令で定める契約」の範囲は、法令の改正によって広げられてきました。かつては対象が限られていましたが、実務上のニーズを踏まえ、物品を借り入れる契約や、役務の提供を受ける契約などにも拡大されています。たとえば、商慣行として数年にわたって物品を借り受けることが一般的になっているリース契約や、庁舎の清掃・警備・設備の保守といった役務の継続的な委託が、対象に含まれるようになっています。これにより、自治体は、より幅広い継続的な契約を、長期継続契約として結べるようになりました。
ただし、どの契約を長期継続契約の対象とするかは、各自治体が条例で定めることになっています。地方自治法や政令が枠組みを示し、その範囲内で、各自治体が自らの条例で具体的な対象を定める、という構造です。そのため、実際にどんな契約が長期継続契約として結ばれるかは、自治体によって異なります。事業者としては、取引する自治体が、どんな契約を長期継続契約の対象としているかを、必要に応じて確認しておくとよいでしょう。清掃や保守などの継続的な委託は公共施設包括管理業務委託とはもあわせて参考になります。
債務負担行為との違い
複数年にわたる契約を結ぶ方法には、長期継続契約のほかに、債務負担行為という仕組みもあります。両者は混同されやすいのですが、その性格には違いがあります。債務負担行為は、将来の年度にわたる支出の義務を、あらかじめ予算で定めておく仕組みです。複数年の事業を行う際に、後年度の負担を予算で明確にし、議会の議決を得ておくことで、年度をまたいだ契約を可能にします。
これに対して長期継続契約は、債務負担行為を設定することなく、複数年の契約を結べる点に特徴があります。歳出予算に必要な額を計上すれば、個別に債務負担行為としての議決を得る必要がありません。つまり、長期継続契約のほうが、手続きが簡素です。継続的な性質を持つ、比較的定型的な契約について、いちいち債務負担行為の議決を経なくても複数年契約を結べるようにすることで、事務の効率化が図られています。
もう一つの違いは、支出の義務の性格です。債務負担行為によって契約を締結した場合、その支出は、後年度に確実に負担すべき義務として位置づけられます。一方、長期継続契約による支出は、必ずしもそうした確定的な義務となるわけではありません。各年度の予算の範囲内という条件のもと、予算が確保されなければ契約を解除できる余地があるなど、より柔軟な性格を持っています。両者は、複数年契約を可能にするという目的は共通しつつ、手続きの重さと義務の性格が異なる、別の制度として使い分けられています。予定価格や予算の考え方は当初予算とはもあわせてご覧ください。
事業者にとってのメリット
長期継続契約は、自治体と継続的に取引する事業者にとって、いくつかのメリットがあります。最も大きいのは、複数年にわたる安定した契約を得られることです。単年度ごとに契約が切れ、毎年入札や契約手続きをやり直す必要がないため、事業の見通しが立てやすくなります。数年間の受注が見込めれば、それに合わせて人員や設備の計画を立てられ、経営が安定します。継続的に自治体の業務を担う事業者にとって、この安定性は大きな価値があります。
また、複数年の契約であれば、業務にじっくり取り組むことができます。単年度の契約では、慣れてきた頃に契約が終わってしまうこともありますが、複数年にわたれば、業務への習熟が進み、質の向上や効率化を図れます。自治体側にとっても、同じ事業者が継続して業務を担うことで、引き継ぎの手間が省け、安定したサービスが受けられるという利点があります。長期継続契約は、事業者と自治体の双方にとって、継続的な関係を築くための土台になります。
一方で、複数年の契約には、留意すべき点もあります。各年度の予算の範囲内という条件があるため、予算の状況によっては、契約が途中で見直される可能性がゼロではありません。また、長期の契約であるからこそ、契約期間中に物価や人件費が変動した場合の扱いなど、あらかじめ想定しておくべき事項もあります。契約を結ぶ際には、こうした条件を確認し、長期にわたる契約であることを踏まえた計画を立てることが大切です。契約変更が必要になる場合の手続きは変更契約書とはもあわせてご覧ください。
実務で押さえておきたいこと
長期継続契約に関わる事業者が、実務で押さえておきたい点はいくつかあります。まず、契約書に定められた条件を、丁寧に確認することです。長期継続契約には、各年度の予算が確保されなかった場合の取扱いや、契約期間、更新の有無など、複数年にわたる契約ならではの条項が含まれます。契約を結ぶ前に、これらの条件を理解し、自社にとってのリスクや前提を把握しておくことが欠かせません。
次に、複数年の契約を前提とした事業計画を立てることです。長期継続契約は、安定した受注をもたらす一方で、その期間中、確実に業務を遂行する責任を伴います。契約期間にわたって、必要な人員や設備を維持し、質の高いサービスを提供し続けられる体制を整えておく必要があります。契約が長期であることを、単に有利な条件と捉えるだけでなく、それに見合った責任を果たす準備をしておくことが、信頼される事業者であるための条件です。
そして、契約の満了を見据えた準備も大切です。複数年の契約もいずれは終わりを迎え、その後は改めて契約を結び直すことになります。契約期間中に、確かな実績を積み、自治体との信頼関係を築いておけば、次の契約でも有利に働きます。長期継続契約は、その期間だけの取引で終わるものではなく、自治体との継続的な関係の一部として捉えることが、長く安定して事業を続けるための視点になります。目先の一契約にとどまらず、その先を見据えて誠実に業務を遂行する姿勢が、自治体ビジネスで信頼を積み重ねる基礎になります。
制度が設けられた背景
長期継続契約の対象が、法令の改正を通じて広げられてきた背景には、行政の効率化への要請があります。自治体の契約は、単年度予算主義のもとで、原則として年度ごとに結ばれます。しかし、継続的な性質を持つ契約まで、すべて単年度で結び直すのは、事務負担が大きく、実態にもそぐいません。そこで、継続することが合理的な契約については、複数年で結べるようにして、事務の効率化と、契約の安定を図ろうとしたのが、対象拡大の趣旨です。
特に、リースや、清掃・警備・保守といった役務の継続的な委託が対象に加わったことは、実務に大きな意味を持ちました。これらは、複数年にわたって同じ事業者が担うことが自然な契約であり、毎年入札をやり直すよりも、複数年契約としたほうが、自治体・事業者の双方にとって効率的です。長期継続契約の対象拡大は、こうした現場のニーズに応え、より実態に合った契約の運用を可能にするものでした。行政のデジタル化や効率化が進む中で、契約制度もまた、実務に即した形へと整えられてきたといえます。
よくある質問
長期継続契約はどんな契約で使われますか
電気・ガス・水の供給、電気通信役務、不動産の賃借のほか、政令で定める契約として、リース契約や、清掃・警備・設備保守といった役務の継続的な委託などが対象になります。実際の対象は各自治体が条例で定めるため、取引する自治体の運用を確認するとよいでしょう。
債務負担行為と何が違うのですか
債務負担行為は、後年度の支出の義務を予算で定め議決を得る仕組みです。長期継続契約は、債務負担行為を設定せず、歳出予算に計上すれば個別の議決なしに複数年契約を結べます。手続きが簡素で、支出の義務の性格もより柔軟な点が異なります。
契約期間中に解除されることはありますか
長期継続契約は各年度の予算の範囲内で給付を受けることが条件のため、予算が確保されなかった場合に契約を解除できる旨が定められるのが一般的です。可能性は高くありませんが、契約書の条件を確認し、そうした定めを理解しておくことが大切です。
まとめ
長期継続契約は、自治体が複数年度にわたる契約を、各年度の予算の範囲内で結べる仕組みです。地方自治法に基づき、電気・ガス・水の供給や電気通信役務、不動産の賃借のほか、政令で定めるリースや役務の継続的な委託などが対象で、実際の範囲は各自治体が条例で定めます。債務負担行為とは異なり、個別の議決を経ずに複数年契約を結べる点や、支出の義務がより柔軟な点が特徴です。事業者にとっては、複数年の安定した契約が得られる大きなメリットがある一方、各年度予算の範囲内という条件や、長期にわたる業務遂行の責任を踏まえた対応が求められます。契約条件を確認し、その先の関係も見据えて誠実に業務を遂行することが、自治体ビジネスで信頼を築く鍵です。関連して業務委託とは、当初予算とはもあわせてご覧ください。
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※本記事は公開時点の情報をもとに作成しています。対象や運用は自治体の条例や時期により異なります。具体的な内容は各自治体の条例・公表資料やe-Gov法令検索等の一次情報をご確認ください。