河川法の許可とは?河川区域での工事に必要な手続き

橋を架ける、水門を設ける、川を横断して管を通す——河川に関わる工事には、河川法に基づく許可が必要です。河川は、洪水から地域を守る治水の施設であり、水を利用するための資源でもあります。誰かが勝手に構造物を設けたり、川底を掘ったりすれば、その機能が損なわれかねません。そのため、河川区域内での行為には河川管理者の許可が求められます。許可には占用(第24条)、工作物の新築等(第26条)、土地の掘削等(第27条)といった区分があります。本記事では、それぞれの内容と申請の実務を解説します。
この記事のポイント
- 河川区域内の行為には、河川管理者の許可が必要になる
- 占用は第24条、工作物の新築等は第26条、土地の掘削等は第27条
- 橋の設置なら24条+26条、掘削なら24条+27条というように同時申請が基本
河川区域とは
河川法の許可を考えるうえで、出発点となるのが河川区域の概念です。
河川区域とは、河川として管理される土地の範囲です。水が流れている部分だけでなく、堤防や河川敷を含む範囲が指定されています。普段は水がなく、グラウンドや駐車場として使われている場所でも、河川区域に含まれていることがあります。
もうひとつ押さえておきたいのが河川保全区域です。堤防の安全を守るため、河川区域に接する一定の範囲が指定されることがあります。ここでも、土地の掘削や工作物の設置に許可が必要になる場合があります。
したがって、工事を計画する際にはまず、対象地が河川区域や河川保全区域に含まれるかを確認する必要があります。河川管理者の窓口で調べられます。管理者は、河川の種別によって国、都道府県、市町村と分かれます。
許可が必要な行為
河川区域内の土地は、原則として自由に利用できますが、次のような行為には河川管理者の許可が必要です。
| 条文 | 対象となる行為 |
|---|---|
| 第24条 | 土地の占用——排他的・独占的に利用する場合 |
| 第26条 | 工作物の新築・改築・除却 |
| 第27条 | 土地の掘削、盛土、切土その他土地の形状を変更する行為 |
実務では、これらが同時に必要になるのが通常です。橋を設置するのであれば、その場所を占用し(第24条)、かつ橋という工作物を新築する(第26条第1項)ことになります。土地を掘削するなら、第24条と第27条第1項の同時申請です。
どの条文に当たるかは、行為の内容によって決まります。判断に迷う場合は、事前相談の段階で河川管理者に確認するのが確実です。
なお、許可にあたっては、原則として占用料が条例等に基づいて徴収されます。河川という公共の財産を使う対価という位置づけです。
審査で見られること
申請すれば必ず許可されるわけではありません。河川管理者は、河川の管理という観点から審査を行います。
最も重視されるのが治水上の安全です。工作物を設けることで水の流れが妨げられないか、洪水のときに流下を阻害しないか、堤防の安全性に影響しないか。これらが確認されます。
次に、河川の利用との調整です。他の占用者との関係、公共の利用への影響などが考慮されます。河川敷が地域の憩いの場として使われている場合、その利用を妨げないかも論点になります。
そして、環境への配慮です。河川は生き物の生息空間でもあります。工事による影響を抑える措置が求められることがあります。
審査の結果、許可には条件が付されるのが通常です。施工の時期、工法、原状回復の方法など、具体的な内容が示されます。
出水期という制約
河川での工事に特有の制約が、施工時期です。
河川には、水量が増えやすい時期があります。梅雨から台風の季節にかけては、急な増水の危険が高まります。この時期に河川内で作業をしていれば、人命に関わる事故につながりかねません。仮設の構造物が流されれば、下流に被害を及ぼすこともあります。
そのため、河川内の工事は、水量が少なく安定した時期に行うのが原則です。許可の条件として、施工できる期間が限定されることもあります。
この制約は、工程に大きく影響します。施工可能な期間が限られるため、その期間内に終わらせる計画が必要になります。逆にいえば、許可の取得が遅れて施工時期を逃せば、次の年まで待つことにもなりかねません。早めの手続きが決定的に重要です。
施工時期の制約がある工事は、工期の設定そのものに関わります。工期変更が必要になる場面もあるでしょう。詳しくは工期変更・工期延長とはをご覧ください。
公共工事における実務
公共工事で河川法の許可が問題になる場面を整理します。
ひとつは、河川管理者以外が発注する工事です。市が発注する道路工事で河川を横断する、下水道の管を川の下に通す——こうした場合、発注者と河川管理者が異なります。協議と申請が必要になります。
もうひとつが、工事用の仮設物です。河川敷に資材を置く、仮設の道路を設ける、締切堤を築く——いずれも河川区域内の行為であり、許可の対象になります。
ここでも、誰が申請するのかを明確にしておくことが重要です。発注者側で協議が済んでいるのか、受注者が手続きするのか。設計図書や特記仕様書で確認し、記載がなければ着手時の打合せで確かめます。条件明示の考え方は条件明示とはをご覧ください。
関係機関との協議が整わずに着工できない場合、工事の一時中止の対象となることがあります。詳しくは工事の一時中止とはをご覧ください。
許可後の管理
許可を得て工事を行った後も、責任は続きます。
設けた工作物は、占用者が管理します。橋や水門が損傷すれば、その補修は占用者の責任です。洪水で流出して下流に被害を与えれば、責任を問われることもあります。
占用の期間にも期限があり、継続するには更新が必要です。長期にわたる占用ほど、期限の管理が疎かになりやすいため注意が要ります。
また、工事のための一時的な占用であれば、終了後に原状回復が求められます。仮設物を撤去し、掘削した箇所を元に戻す。許可の条件として方法が指定されていることが多いため、確認しておきましょう。
河川の種別と管理者
申請先を間違えないために、河川の種別と管理者の関係を押さえておきましょう。
河川は、その重要性に応じて種別が分かれています。国土の保全上または国民経済上とくに重要な水系に係る河川、公共の利害に重要な関係がある河川、それ以外の河川——という区分があり、それぞれ管理者が異なります。
同じ川であっても、区間によって管理者が変わることがあります。上流は都道府県、下流は国というように、区間ごとに分かれている場合です。工事の場所がどの区間に当たるのかを確認しなければ、申請先を誤ります。
また、法定の河川ではない小さな水路については、河川法ではなく自治体の条例等が適用されることもあります。見た目が小さな川だからといって手続き不要とは限りません。まずは自治体の窓口で確認するのが確実です。
申請の流れと準備する図書
申請の手続きは、おおむね次のように進みます。
- 事前相談——行為の内容を説明し、必要な許可の種類と図書を確認する
- 申請書の作成——位置図、平面図、断面図、構造図などを添えて作成する
- 提出・審査——治水上の安全、他の利用との調整などが確認される
- 許可——条件を付して許可される。占用料の納付が必要な場合がある
- 工事の実施・完了届——条件に従って施工し、完了を報告する
審査には日数を要します。治水への影響が大きい行為ほど、慎重な検討が行われます。事前相談の段階で目安を聞き、逆算して申請時期を決めることが実務では欠かせません。
添付図書は、行為の内容によって変わります。工作物を設けるのであれば構造計算の資料を求められることもあります。事前相談で必要な図書を確認しておけば、提出後の手戻りを防げます。設計図書の構成は設計図書とはをご覧ください。
水を使う場合の許可
河川法には、土地や工作物だけでなく、水そのものを使うことに関する許可もあります。流水の占用と呼ばれるものです。
農業用水として取水する、工業用に取り入れる、発電に使う——こうした行為には許可が必要です。河川の水は公共のものであり、誰かが独占的に使うには手続きが要るという考え方です。
建設工事との関わりでいえば、施工のために河川の水を使う場合が考えられます。また、工事に伴う濁水を河川に排出する場合には、水質への影響を抑える措置が求められます。
濁水対策は、河川法の手続きとは別に、環境保全の観点からも重要です。沈殿槽を設ける、仮設の締切で流入を防ぐといった措置を、施工計画の段階で検討しておく必要があります。施工計画書の考え方は施工計画書とはをご覧ください。
許認可を一覧で管理する
河川法の許可は、工事に必要な手続きのひとつにすぎません。実際の工事では、複数の許認可が同時に必要になります。
河川を横断する道路工事であれば、河川法の許可に加えて、道路占用許可、道路使用許可が必要です。掘削の規模によっては土壌汚染対策法の届出も要ります。杭打ちを行うなら騒音・振動の届出、埋蔵文化財包蔵地なら文化財保護法の届出——というように、次々と手続きが重なります。
これらを個別に思い出しながら進めるのは現実的ではありません。着手時に必要な許認可を一覧にすることが、最も確実な方法です。申請先、所要日数、期限を整理し、逆算して動きます。
それぞれの手続きについては、道路占用許可とは、土壌汚染対策法とは、埋蔵文化財とはもあわせてご覧ください。
河川工事という特殊性
河川に関わる工事は、他の工事とは異なる難しさを抱えています。
第一に、自然が相手だということです。天候によって水位は変わり、予測を超える増水も起こります。工程を組んでも、そのとおりに進むとは限りません。常に退避の判断ができる体制が求められます。
第二に、失敗の影響が下流に及ぶことです。仮設が流出すれば、下流の橋に引っかかって水をせき止め、思わぬ場所で氾濫を招きかねません。現場だけの問題では済まないという意識が要ります。
第三に、治水という目的そのものです。河川工事の多くは、洪水から地域を守るために行われます。工事中に大雨が来れば、守るべき対象を工事が危険にさらすという逆説的な状況も起こり得ます。
だからこそ、許可の手続きは形式ではありません。河川管理者が治水上の安全を確認するという過程には、実質的な意味があります。災害時の対応については災害協定とはもご覧ください。
地域との関わり
河川は、地域の暮らしと密接に結びついた空間です。工事にあたっては、この点への配慮も欠かせません。
河川敷が運動場や散策路として使われていれば、工事の期間中は利用できなくなります。漁業が営まれている川であれば、濁水や騒音が影響します。農業用水を取水している場合、工事の時期が農繁期と重なれば調整が必要です。
こうした利害関係者との調整は、許可の手続きと並行して進める必要があります。河川管理者の許可が下りても、地域の理解が得られなければ、実際には着工できません。
公共工事では、こうした調整は本来、発注者側で進められているべきものです。受注者としては、どこまで調整が済んでいるのかを着手時に確認し、未了であれば工程への影響を早めに協議しておくことが大切です。
よくある質問
どの条文の許可が必要ですか
行為の内容によります。土地を占用するなら第24条、工作物を新築・改築・除却するなら第26条、土地を掘削するなら第27条です。実務では橋なら24条+26条、掘削なら24条+27条というように同時申請が基本です。
河川区域かどうかはどう調べますか
河川管理者の窓口で確認できます。管理者は河川の種別により国、都道府県、市町村と分かれます。普段水がない河川敷でも区域に含まれることがあるため、見た目で判断しないでください。
占用料はかかりますか
原則として条例等に基づき徴収されます。金額は占用する面積・期間・用途によって異なります。減免の扱いがある場合もあるため、窓口で確認してください。
まとめ
河川法の許可とは、河川区域内で一定の行為を行うために必要な、河川管理者の許可です。土地を排他的・独占的に利用する占用は第24条、工作物の新築・改築・除却は第26条、土地の掘削等は第27条に基づき、実務では橋の設置なら24条+26条、掘削なら24条+27条というように同時申請となるのが基本です。審査では治水上の安全、河川の利用との調整、環境への配慮が確認され、許可には条件が付されます。河川工事に特有の制約として、出水期を避けた施工時期の限定があり、許可の取得が遅れれば施工時期そのものを逃しかねません。公共工事では、河川管理者以外が発注する工事や、工事用仮設物の設置で問題となるため、誰が申請するのかを設計図書等で早めに確認しておくことが重要です。関連して工事の一時中止とは、道路占用許可とはもあわせてご覧ください。
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※本記事は公開時点の情報をもとに作成しています。申請様式・審査期間・占用料は河川管理者により異なります。具体的な内容は河川法および当該河川の管理者の一次情報をご確認ください。