少額随意契約と地方自治法|令和7年改正の基準額について徹底解説

- 随意契約理由書は、なぜ競争入札ではなく随意契約にするのかを説明する書類
- 実務では「機種選定理由書」と「業者選定理由書」を分けて考えると整理しやすい
- 国は会計法・予算決算及び会計令、地方自治体は地方自治法・地方自治法施行令が基本の根拠になる
- 会計検査や監査で見られるのは、主観ではなく客観的な根拠が書けているかどうか
- 書き方のコツは「使用目的」「必要条件」「選定理由」を順番に積み上げること
少額随意契約は地方自治法施行令に基づき、自治体が一定金額以下の契約を競争入札なしで締結できる制度です。令和7年4月1日に約50年ぶりの大幅な基準額引き上げが施行され、工事請負は都道府県・政令市で400万円、市区町村で200万円へと改正されました。この改正により、自治体の事務効率化と民間事業者の受注機会拡大が期待される一方、透明性確保と適正運用が重要な課題となっています。
本記事では、地方自治法における少額随意契約の法的根拠から最新の基準額、実務での運用方法、監査対応まで、実務に直結する情報を詳しく解説します。
この記事はこう活用してください: 自治体職員の方は「法的根拠」「基準額の詳細」「実務ガイド」「FAQセクション」から優先的にご確認ください。民間事業者の方は「メリット」「受注拡大戦略」「FAQセクション」が特に参考になります。
少額随意契約とは|地方自治法上の位置づけと基本的な仕組み

地方自治法施行令第167条の2に基づく制度の概要
少額随意契約は、地方自治法施行令第167条の2第1項第1号に規定される契約方式です。予定価格が自治体規則で定める一定金額以下の場合に、競争入札の手続きを省略して契約できる制度として、昭和22年の地方自治法制定当初から存在しています。
地方自治法第234条では、自治体の契約は一般競争入札を原則としながらも、第2項で「政令の定めるところにより指名競争入札や随意契約によることができる」と定めています。この政令が地方自治法施行令であり、少額な契約については事務の簡素化・効率化の観点から随意契約を認めているのが本制度です。
文房具の購入や庁舎の小規模修繕、印刷物の作成など、頻繁に発生する少額案件を全て競争入札で処理すると、事務負担が過大になり業務効率が著しく低下します。法令は、公正性を保ちつつ実務の円滑化を図るため、少額な契約に限って簡便な手続きを認めています。
なお、「少額随意契約」は法令上の正式名称ではなく実務上の通称です。法令上は「随意契約によることができる場合」の一類型として規定されていますが、金額基準による分類であることから、実務では「少額随契」と呼ばれ、他の随意契約類型と区別されています。
競争入札との違いと随意契約が認められる理由
地方自治体における契約は、地方自治法第234条第1項により一般競争入札を原則としています。一般競争入札と少額随意契約の主な違いは以下のとおりです。
| 比較項目 | 一般競争入札 | 少額随意契約 |
|---|---|---|
| 参加者 | 資格を持つ全事業者 | 自治体が選定した業者 |
| 手続き期間 | 公告から1〜2ヶ月程度 | 見積依頼から1〜2週間程度 |
| 必要書類 | 入札書類一式・入札保証金等 | 見積書のみ |
| 価格競争 | あり | 限定的(見積合わせ) |
| 透明性 | 高い(結果公表) | 低め(記録・公表が必要) |
| 向いている案件 | 高額・定型的な調達 | 少額・緊急・地域密着案件 |
随意契約が認められる根拠は、契約金額に対して入札手続きに要するコストや時間が不釣り合いになるためです。ただし随意契約は競争性が制限されるため、地方自治法施行令第167条の2は適用を認める場合を厳格に限定しており、少額随意契約はその中でも最も基本的で頻繁に利用される類型です。
少額随意契約の対象となる契約種別
少額随意契約は、工事請負・物品購入・業務委託・不動産の賃貸借など、幅広い契約種別に適用されます。地方自治法施行令別表第5では、以下の6種別ごとに基準額が定められています。
- 工事または製造の請負(庁舎修繕・道路補修工事など)
- 財産の買い入れ(事務用品・OA機器・公用車など)
- 物件の借り入れ(事務所賃借・リース・レンタルなど)
- 財産の売り払い(公有財産の売却など)
- 物件の貸し付け(公有地・庁舎スペースの貸出しなど)
- その他の契約(清掃・警備・システム保守などの業務委託)
ただし、国際調達協定の対象契約や特別法令で別途規定がある契約については、金額にかかわらず競争入札が必要な場合があります。 <!– internal link: 随意契約理由書 –>
通常の随意契約(特命随意契約)との相違点
随意契約には「少額随意契約」と「通常の随意契約(特命随意契約)」の2類型があります。最大の違いは適用理由です。
少額随意契約は「契約金額が少額であること」を理由とするのに対し、通常の随意契約は「契約の性質や目的が競争を許さないこと」などを理由とします。地方自治法施行令第167条の2第1項は、第1号で少額随意契約を、第2号以降で通常の随意契約の各種事由を規定しており、法的に明確に区別されています。
通常の随意契約が認められる主な事由としては以下があります。
- 契約の性質・目的が競争入札に適しない場合(第2号):既存システムの改修を開発元企業に発注、特許品・著作物の調達など
- 緊急の必要により競争入札に付することができない場合(第5号):災害復旧工事の即時発注など
- 競争入札に付することが不利と認められる場合(第6号):競争させることで単価が上がるケースなど
監査においても、通常の随意契約はその理由の妥当性がより厳しく審査される傾向があります。自治体職員は両類型の特徴を正しく理解し、適切に使い分けることが重要です。
令和7年改正|約50年ぶりの基準額引き上げの全容

改正の背景|物価上昇と事務効率化の必要性
令和7年3月の地方自治法施行令改正による基準額引き上げは、約50年ぶりの大規模な見直しとなりました。前回の改正は昭和49年(1974年)であり、その後半世紀にわたり基準額は据え置かれてきました。
この間、物価は大きく上昇しています。財務省資料(2025年1月)によれば、昭和49年以降、企業物価指数は約2倍、消費者物価指数は約2.5倍に上昇しています。特に令和2年以降のコロナ禍後の物価急騰により、実質的な基準額の価値は大きく目減りしていました。
基準額が据え置かれた結果、従来は少額随意契約で処理できていた案件が競争入札の対象となり、自治体の事務負担が増大する事態が生じていました。昭和49年当時に50万円で購入できた物品が、令和6年には100万円以上必要となるケースも珍しくなく、少額案件にも競争入札手続きを要することは費用対効果の観点から非効率でした。
また、財務省が実施した各省庁へのアンケートでは、約75%の省庁が事務負担を「感じる」と回答し、ほぼ全ての省庁が基準額引き上げを改善策として挙げていました。こうした状況を受け、政府は契約事務の簡素化・効率化を図りつつ、物価上昇の実態に即した基準額への見直しを決定しました。
改正前後の基準額比較表|都道府県・市町村別
令和7年4月の改正により、少額随意契約の基準額は大幅に引き上げられました。改正の特徴は、従来の全国一律基準が廃止され、都道府県・政令市と、政令市を除く市区町村とで異なる基準額が設定された点です。
| 契約の種類 | 改正前(全国一律) | 改正後(都道府県・政令市) | 改正後(市区町村) |
|---|---|---|---|
| 工事・製造請負 | 130万円 | 400万円 | 200万円 |
| 財産の買い入れ | 80万円 | 300万円 | 150万円 |
| 物件の借り入れ | 40万円 | 150万円 | 80万円 |
| 財産の売り払い | 30万円 | 100万円 | 50万円 |
| 物件の貸し付け | 30万円 | 50万円 | 30万円 |
| その他(業務委託等) | 50万円 | 200万円 | 100万円 |
都道府県・政令市では工事が約3倍、物品購入が約3.8倍、業務委託が4倍に引き上げられています。市区町村でも工事が約1.5倍、物品購入が約1.9倍、業務委託が2倍と大幅な拡大となりました。なお、市区町村における物件の貸し付けのみ、従来と同じ30万円に据え置かれています。
施行日と経過措置|令和7年4月1日からの変更点
地方自治法施行令の改正政令(令和7年政令第94号)は令和7年3月28日に公布され、令和7年4月1日から施行されました。施行日以降に契約手続きを開始する案件には新基準額が適用されます。令和7年3月中に入札公告を行った案件は旧基準額、4月1日以降に見積依頼を行う案件は新基準額が適用されるのが原則です。
ただし、施行令の改正はあくまで国の上限基準を示すものであり、実際の運用は各自治体の契約規則によります。多くの自治体では4月1日に合わせて規則改正を行いましたが、自治体によっては対応が数ヶ月遅れるケースもあります(例:藤沢市は令和7年6月1日施行)。事業者は、取引先となる自治体の規則改正状況を個別に確認することが重要です。
また総務省は、基準額引き上げに伴う通知「少額随意契約等の適切な運用の確保等について」を令和7年3月28日付けで発出し、各自治体に対して透明性・公平性・競争性の確保を求めています。具体的には、オープンカウンター方式の活用や2社以上からの見積徴収の徹底など、簡素化と公正性のバランスを取る運用が求められています。
改正による実務への影響|対象案件の拡大範囲
基準額の引き上げにより、従来は一般競争入札の対象だった案件が少額随意契約の対象となるケースが大幅に増加します。財務省の試算(令和5年度実績ベース)によると、基準額引き上げ後に少額随意契約の対象となる案件は件数ベースで約2.3倍、金額ベースで約1.8倍に増加すると見込まれています。
具体的に新たに少額随意契約の対象となる主な案件は以下のとおりです。
都道府県・政令市の場合:
- 工事:200万円超〜400万円以下(庁舎空調設備更新、小規模施設改修など)
- 物品:150万円超〜300万円以下(公用車一括購入、大型コピー機導入など)
- 業務委託:100万円超〜200万円以下(ホームページ保守、イベント設営業務など)
市区町村の場合:
- 工事:130万円超〜200万円以下(道路小規模補修、学校施設修繕など)
- 物品:80万円超〜150万円以下(学校備品、防災資機材など)
- 業務委託:50万円超〜100万円以下(清掃業務委託、印刷業務など)
この変化により、自治体側では入札公告の作成・掲示や開札立会など、競争入札に伴う一連の事務作業が削減され、契約締結までの期間が大幅に短縮されます。一方で少額随意契約の件数増加により、見積合わせの実施・選定理由の記録・監査対応書類の整備といった別の事務負担も生じます。民間事業者にとっては、入札参加資格がなくても受注できる案件が増える反面、競争が激化する局面もあります。
少額随意契約の法的根拠|地方自治法と関連法令の体系

地方自治法第234条と施行令の関係性
少額随意契約の法的根拠は、地方自治法第234条と地方自治法施行令第167条の2の関係において理解する必要があります。地方自治法第234条第1項は契約方法の基本原則を定め、同条第2項で「随意契約は政令で定める場合に限り、これによることができる」と規定し、具体的要件を政令に委任しています。
この委任を受けて定められたのが地方自治法施行令第167条の2であり、同条第1項第1号で「売買、貸借、請負その他の契約でその予定価格が別表第5上欄に掲げる契約の種類に応じ同表下欄に定める額の範囲内において普通地方公共団体の規則で定める額を超えないものをするとき」と規定しています。
つまり、法律(地方自治法)が随意契約の原則を定め、政令(施行令)が具体的な金額基準を示し、各自治体の規則が実際の運用基準を定めるという三層構造になっています。この構造により、国が全国的な基準を政令で示しつつ、各自治体が地域の実情に応じて独自の基準額を設定できる柔軟性を持たせています。ただし、自治体規則で定める額は施行令別表第5の上限額を超えることはできません。
自治体の契約規則との連動|条例・規則で定める基準額
地方自治法施行令が定める基準額はあくまでも上限額です。実際の運用基準は各自治体が契約規則や財務規則で定めており、施行令の上限額をそのまま採用する自治体が多い一方、より慎重な運用のために上限額より低い金額を設定する自治体も存在します。
規則は地方自治法第138条の4第2項により長の権限で制定・改正できるため、施行令改正後に比較的速やかに対応が可能です。令和7年4月の改正では多くの自治体が3月中に規則改正を完了させましたが、施行時期が数ヶ月ずれた自治体も存在します。事業者は、自治体のウェブサイトで公開されている契約規則・財務規則を確認し、最新の基準額と手続き方法を把握することが重要です。
また、自治体規則では基準額だけでなく、見積合わせの方法・契約書の省略基準・随意契約理由書の作成義務など、運用上の詳細ルールも定められています。同じ基準額でも、見積徴収の要否や契約書作成の基準が自治体ごとに異なる点に注意が必要です。
会計法との違い|国と地方自治体の制度差
少額随意契約の制度は、国と地方自治体で法的根拠が異なります。国の契約は会計法第29条の3第5項と予算決算及び会計令第99条に基づき、地方自治体の契約は地方自治法第234条と地方自治法施行令第167条の2に基づいています。
令和7年の改正前まで、国の少額随意契約基準額は工事・製造250万円・財産の買い入れ160万円などと、地方自治体の基準額(工事130万円・買い入れ80万円)より高く設定されていました。令和7年の改正では国・地方ともに基準額が見直されましたが、国は全国一律の基準額を適用するのに対し、地方自治体は都道府県・政令市と市区町村で異なる基準額が設定される点が大きな違いです。
また、国の契約では予算決算及び会計令第99条の2で「なるべく2人以上の者から見積書を徴さなければならない」と明文規定されているのに対し、地方自治体では法令上の明確な義務規定がなく、自治体によって運用にばらつきが見られます。さらに、国は会計検査院、地方自治体は各自治体の監査委員が検査するため、監査の視点や厳格さも異なります。
地方公営企業法における特例規定
水道・交通・病院などの地方公営企業の契約については、地方公営企業法に基づく特例が存在します。地方公営企業法第33条第2項により地方自治法第234条の規定が準用されますが、地方公営企業法施行令第21条の14で独自の基準額が定められています。令和7年の改正では地方公営企業法施行令別表第1も同時に改正されており、一般会計と同様の基準額(都道府県等:工事400万円・物品300万円・その他200万円、市町村:工事200万円・物品150万円・その他100万円)が適用されます。
地方公営企業は企業会計原則に基づく独立採算制を採用しているため、契約においても経済性と効率性がより強く求められます。少額随意契約であっても価格の妥当性や品質の確保について一般会計以上に厳格な審査が行われる傾向があるため、公営企業との取引を希望する事業者はより競争力のある提案を行うことが重要です。
基準額の詳細|契約種類ごとの上限金額と適用条件

工事・製造請負契約の基準額|200万円・400万円
工事または製造の請負契約における基準額は、都道府県・政令市で400万円以下、市区町村で200万円以下です(令和7年4月1日施行)。工事請負契約には庁舎・学校などの建築・修繕、道路・橋梁の整備・補修、上下水道設備の工事などが含まれます。製造請負契約は公園遊具の製作・特殊車両の製造・記念碑の製作など、特注品を製作する契約を指します。
基準額の適用において重要なのは、予定価格が消費税込みで基準額以下であるかどうかです。例えば都道府県で予定価格が405万円(税込)の工事は基準額400万円を超えるため、少額随意契約の対象外となり競争入札が必要です。また複数の工事を一体として発注する場合は合計金額で判断します。意図的に工事を分割して基準額以下にする分割発注は違法となるため、注意が必要です。
工事請負契約では、建設業法に基づく建設業許可の確認も重要です。少額随意契約であっても、500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)の工事を請け負う場合は建設業許可が必要です。都道府県・政令市で300万円から400万円の工事を発注する場合は建設業許可を持たない事業者でも受注可能ですが、自治体側は施工能力や過去の実績を慎重に確認する必要があります。
財産の買い入れ契約の基準額|150万円・300万円
財産の買い入れ契約における基準額は、都道府県・政令市で300万円以下、市区町村で150万円以下です。財産の買い入れとは事務用品・OA機器・公用車・図書・医療機器・学校備品・防災資機材など、自治体の日常業務に必要な様々な物品の購入契約全般を指します。
令和7年の改正により、従来は競争入札が必要だった100万円から300万円の物品購入が見積合わせで対応できるようになりました。これにより、複数のパソコンやプリンターの一括購入・公用車の更新・大型コピー機の導入など、中規模の調達案件が簡便に処理できるようになっています。
実務上の注意点として、単価契約と総価契約の区別があります。年間を通じて継続的に購入するコピー用紙や文房具などに適用する単価契約では、予定総額が基準額以下であれば少額随意契約の対象となります。また、リース契約は「物件の借り入れ」に該当し、別の基準額(都道府県・政令市150万円、市区町村80万円)が適用される点に注意が必要です。
物件の借り入れ・貸し付け契約の基準額
物件の借り入れ契約における基準額は、都道府県・政令市で150万円以下、市区町村で80万円以下です。物件の借り入れとは土地・建物の賃借・機器のリース・車両のレンタルなど、物件を一定期間使用する対価として賃借料を支払う契約です。基準額の判断は、賃貸借期間が1年以内の場合は予定賃借料の総額、1年を超える場合は予定賃借料の年額で行います。
例えば、月額10万円で事務所を借りる契約の場合、年額120万円となり、都道府県・政令市では基準額150万円以下のため少額随意契約の対象となります。一方、月額8万円で3年間の契約を結ぶ場合、年額96万円で判断するため、同じく少額随意契約が可能です(ただし更新時は改めて契約手続きが必要)。
物件の貸し付け契約(自治体が所有する財産を民間に貸し出す契約)の基準額は都道府県・政令市で50万円以下、市区町村で30万円以下です。自治体の財産管理の観点から借り入れ契約よりも低い基準額が設定されています。土地の貸付けについては、適正な賃料設定と契約期間の管理が重要であり、少額随意契約であっても不動産鑑定や近隣相場の調査を行うことが望ましいとされています。
その他の契約|業務委託等の基準額100万円・200万円
その他の契約における基準額は、都道府県・政令市で200万円以下、市区町村で100万円以下です。その他の契約とは工事請負・財産の売買・物件の賃貸借以外の契約全般を指し、主に業務委託契約がこれに該当します。清掃・警備・施設管理・システム保守・調査研究・イベント運営・印刷・翻訳など、多様な業務が含まれます。
令和7年の改正により、都道府県・政令市では年間150万円の庁舎清掃業務・年間120万円のホームページ保守管理業務・単発180万円のイベント設営業務などが少額随意契約の対象となりました。
業務委託契約では価格だけでなく、過去の実績・技術力・人員体制・資格保有状況などを総合的に評価する必要があります。個人情報を取り扱う業務やセキュリティが求められる業務については、少額随意契約であってもプライバシーマーク取得やISO認証の確認が必要です。また業務内容・成果物・履行期限・検査方法などを明確に規定した仕様書の作成が、後のトラブルを防ぐ鍵となります。
少額随意契約のメリット|効率化と迅速性の実現

自治体側のメリット|事務負担軽減と契約期間の短縮
少額随意契約の最大のメリットは、事務手続きの簡素化による業務効率化です。一般競争入札では入札公告の作成・掲示・入札参加資格の審査・入札書の受付・開札・落札者決定と多くの手続きが必要で、公告から契約締結まで最低でも1ヶ月、複雑な案件では2ヶ月以上を要します。少額随意契約では見積依頼から契約締結まで1〜2週間程度で完了するため、契約期間を大幅に短縮できます。
事務負担の軽減も大きなメリットです。入札では入札書類一式の作成・入札説明会の開催・入札保証金の管理など多くの事務作業が発生しますが、少額随意契約では見積書の徴収・比較と契約書の作成という最小限の事務で契約が完了します。人手不足が深刻化する中、特に小規模自治体では契約担当職員の業務運営の円滑化に直結します。
さらに契約の迅速化により、行政サービスの質も向上します。災害時の応急修繕・学校施設の緊急補修・感染症対策物品の調達など、迅速な対応が求められる場面で少額随意契約は特に有効です。ただし、迅速性を重視するあまり適正な価格確認や品質チェックを怠ると不経済な結果を招く可能性があるため、バランスの取れた運用が求められます。
事業者側のメリット|参入障壁の低下と受注機会の拡大
民間事業者にとって、少額随意契約は公共調達への参入障壁が低いという大きなメリットがあります。一般競争入札では入札参加資格の取得・入札保証金の準備・詳細な技術提案書の作成・入札説明会への参加など多くの手間とコストが必要ですが、少額随意契約では見積書の提出のみで参加でき、入札保証金も不要です。
令和7年の基準額引き上げにより、従来は競争入札の対象だった中規模案件も少額随意契約の対象となり、受注できる案件の幅が大きく広がりました。これらの金額帯は中小企業の事業規模に適しており、安定した受注につながる可能性があります。また、多くの自治体が少額随意契約において地元事業者を優先的に選定する方針を採用しており、地域密着型の事業者にとっては大手企業との競争を避けながら受注できる機会となります。
緊急時対応における有効性|災害復旧等での活用
少額随意契約は、緊急時の迅速な対応を可能にする重要な制度です。災害発生時には道路の応急復旧・倒木の撤去・避難所の設営・災害対策物資の調達など、即座の対応が求められます。このような場合、競争入札の手続きを待つ余裕はなく、少額随意契約による迅速な契約締結が住民の安全確保に直結します。
また施設の突発的な故障・水道管の破裂・感染症流行に伴う緊急調達など、予測困難な事態への対応においても有効です。例えば、庁舎の空調設備が真夏に故障した場合、修繕費用が基準額以下であれば、見積合わせにより数日で修繕業者と契約し迅速に復旧できます。同じ案件が競争入札となれば公告期間だけで2週間以上を要します。
ただし、緊急性を理由とした少額随意契約の運用には注意が必要です。真の緊急性がないにもかかわらず恣意的に「緊急」と判断して乱用することは制度の趣旨に反します。緊急性の判断基準を明確にし、事後的に検証可能な記録を残すことが重要です。
地域経済への貢献|地元中小企業の育成効果
少額随意契約は、地域経済の活性化と地元中小企業の育成に重要な役割を果たしています。多くの自治体では少額随意契約において地元事業者を優先的に選定する方針を採用しており、「地元事業者育成条項」として契約規則や調達方針に明記しています。これにより地域内での経済循環が促進され、雇用創出や税収増加などの効果が期待されます。
地元中小企業が公共調達で得た収入は、地域内の仕入れ先への支払い・従業員の給与・地域金融機関への返済などを通じて地域内に再循環します。この経済的波及効果は大手企業が受注した場合よりも大きいとされています。自治体は、少額随意契約を単なる事務簡素化の手段としてだけでなく、地域経済政策の一環として戦略的に活用することが求められています。
少額随意契約のデメリットと注意点|透明性確保の課題

透明性・公平性の確保が困難になるリスク
少額随意契約の最大のデメリットは、透明性と公平性の確保が困難になる点です。一般競争入札では入札公告が公開され入札結果も公表されるため、契約の過程と結果を誰でも確認できます。これに対し少額随意契約では、見積依頼先の選定が担当者の裁量に委ねられる部分が大きく、外部からは契約過程が見えにくいという問題があります。
たとえ適正な手続きを経て契約していても、説明が不十分であれば住民・議会・監査委員から不信感を持たれる可能性があります。この問題に対応するため、多くの自治体では契約結果の公表・随意契約理由書の作成・見積合わせ記録の保存などを義務づけています。また令和7年の基準額引き上げに伴い、総務省もオープンカウンター方式の積極的な活用を推奨しています。
特定業者への偏りと癒着防止の重要性
少額随意契約では、特定業者への発注が偏るリスクがあります。過去に取引実績のある業者は担当者にとって信頼でき手続きもスムーズなため、繰り返し同じ業者に発注しやすくなります。長期化すると競争原理が働かず、価格の高止まりや品質低下を招く可能性があります。
さらに深刻なのは、業者との癒着や不正の温床となるリスクです。特定業者との関係が密接になることで、不当な利益供与・リベートの授受・情報の事前漏洩などの不正行為が発生する可能性があります。これらは刑法上の贈収賄罪や公契約関係競売入札妨害罪に該当する重大な犯罪です。
この問題を防ぐためには、発注先のローテーション管理が有効です。過去の発注実績を記録し特定業者への偏りがないか定期的に確認するとともに、見積依頼先の選定に複数の職員が関与する体制を構築することが重要です。
分割発注の禁止|違法とみなされる事例と判断基準
少額随意契約において最も注意すべき違法行為が分割発注です。本来一つの契約として発注すべき案件を、意図的に複数の契約に分割してそれぞれを基準額以下にする行為であり、競争入札を回避する目的で行われるため地方自治法の趣旨に反します。会計検査や監査において厳しく指摘される事項であり、場合によっては職員の懲戒処分や損害賠償請求の対象となります。
分割発注の典型例は以下のとおりです。
- 本来一体の庁舎改修工事(400万円)を1階部分(200万円)と2階部分(200万円)に分けて発注する
- 年間契約を月ごとに分割し、それぞれを基準額以下に抑える
- システム開発を工程ごとに分割し各フェーズを随意契約とする
ただし、全ての分割が違法なわけではありません。適法な分割と違法な分割を区別する基準は「契約の一体性」の有無であり、発注時期・工事場所・業務内容・予算措置などを総合的に判断します。分割発注とみなされないためには、各契約が独立していることを示す記録を残し、合理的な理由を説明できるようにしておくことが重要です。
会計監査での指摘事項|説明責任と記録保存の必要性
少額随意契約は手続きが簡便である分、会計監査での説明責任が重要となります。監査委員は少額随意契約であっても、契約の適法性・価格の妥当性・業者選定の公平性などを厳しくチェックします。
監査で特に指摘を受けやすい事項は以下のとおりです。
- 随意契約理由の記載不備・事後作成
- 見積合わせ記録の不存在
- 価格の妥当性を示す資料の欠如
- 同一業者への偏った発注
- 分割発注の疑い
- 契約書の不備
口頭での説明や担当者の記憶に頼った運用は認められません。以下の文書を事前に整備し、保存期間(通常5年以上)を遵守して適切に管理することが必要です。
- 随意契約理由書(なぜ少額随意契約を選択したか)
- 見積合わせ調書(複数業者の見積と選定理由)
- 業者選定理由書(なぜその業者に見積依頼したか)
- 市場価格調査資料(価格が適正であることの根拠)
適正な運用のための実務ガイド|自治体担当者向け

見積合わせの実施方法|複数業者からの見積徴収
少額随意契約における見積合わせの基本手順は以下のとおりです。
Step 1:見積依頼先の選定 入札参加資格者名簿に登録された業者の中から、業種・実績・地域性などを考慮して選定します。多くの自治体の契約規則では「2者以上から見積書を徴するよう努める」と定めており、実務では原則として2社以上、できれば3社以上から徴収することが推奨されています。
Step 2:仕様書・見積依頼書の作成と送付 仕様書には品名・数量・規格・納期・納品場所・支払条件を明確に記載し、各社が同じ条件で見積できるようにします。見積書の提出期限は案件の複雑さに応じて1〜2週間程度を設定します。
Step 3:見積書の比較検討と業者選定 提出後、見積金額と内容を比較検討します。最も低い金額を提示した業者と契約することが原則ですが、価格だけでなく納期・品質・アフターサービスも考慮し、総合的に最も有利な業者を選定します。選定理由は必ず記録に残します。
Step 4:記録の整備と保存 見積合わせ調書・業者選定理由・比較表などを作成し、契約書類とともに保存します。
複数見積の徴収が困難な場合(特殊な物品で取扱業者が1社のみ、緊急性が高い場合など)は1社見積も認められますが、随意契約理由書に詳細な説明と価格妥当性を示す資料の添付が必須です。
随意契約理由書の作成ポイント|監査対応に耐える記録
随意契約理由書は、なぜ随意契約を選択したかを説明する重要な文書です。少額随意契約の場合は地方自治法施行令第167条の2第1項第1号に該当することを明記します。
効果的な随意契約理由書のポイントは、第三者が読んでも理解できる具体性です。
悪い記載例:「予算額が少額であるため」
良い記載例:「庁舎1階トイレの給水管修繕工事であり、予定価格が185万円(税込)で、当市の契約規則第○条に定める工事請負の基準額200万円以下に該当するため、少額随意契約により実施する。業者選定については、市内業者で過去3年間に同種工事の実績が3件あり、技術力と信頼性が確認されているA社に見積を依頼した」
その他の記載上の注意事項は以下のとおりです。
- 契約締結前に作成し、決裁を受けること(事後作成は監査で指摘の原因となる)
- 作成日・作成者・決裁者を明記する
- 見積書・仕様書・業者選定資料と一緒に保管する
- 自治体が標準様式を定めている場合は、その様式に従う
契約相手方の選定基準|公正性を担保する仕組み
少額随意契約における契約相手方の選定は、公正性と透明性の確保が最重要課題です。地方自治法第234条第3項は「契約の締結に当たっては、公正な取引の機会を保障するように努めなければならない」と定めており、少額随意契約でもこの原則が適用されます。
公正な選定のための具体的な仕組みは以下のとおりです。
- 入札参加資格者名簿に登録された業者の中から選定することを原則とする
- 地元事業者優先・過去の実績・専門性・緊急対応能力などの選定基準を明文化する
- 「なぜこの業者に見積を依頼したのか」を説明できる記録(各社の特徴・選定理由)を残す
- 選定に複数の職員が関与する体制を構築し、チェック機能を働かせる
- 定期的に発注実績を分析し、特定業者への偏りがないかを確認する
価格の妥当性確認|市場価格との比較方法
少額随意契約では競争性が制限されるため、価格の妥当性確認が特に重要です。主な確認方法は以下のとおりです。
- インターネットでの価格検索・複数業者への価格照会
- 業界団体が公表する標準価格表の参照
- 公共工事の積算基準や物価資料の活用
- 過去に同種の契約を行っている場合、その実績価格との比較(ただし物価変動を考慮すること)
価格妥当性の根拠は必ず記録に残します。「カタログ価格○○円に対し見積額は△△円で妥当」「過去3年間の同種契約の平均単価は□□円であり今回見積額◇◇円は適正範囲内」など、判断根拠を明確にすることで監査での説明が容易になります。
また、予定価格は内部的に必ず事前設定し、見積額がこれを超える場合は再検討する手続きも有効です(予定価格は原則非公表)。
オープンカウンター方式との関係|透明性向上の取り組み

オープンカウンター方式の仕組みと特徴
オープンカウンター方式は、少額随意契約の透明性を高めるための手法として注目されています。従来の見積合わせでは、自治体が任意に選んだ特定の業者にのみ見積依頼を行うため、他の事業者に受注機会が与えられないという問題がありました。オープンカウンター方式では、自治体のウェブサイトや調達ポータルで案件情報を公開し、資格要件を満たす全ての事業者が自由に見積を提出できる仕組みです。
具体的な流れは以下のとおりです。
- 自治体が案件情報(品名・数量・仕様・納期・見積提出期限など)をウェブサイトに掲載
- 事業者が仕様書をダウンロードし、見積書を電子メールや専用システムで提出
- 提出期限後、自治体が全見積を比較検討し、最も有利な条件の事業者と契約
- 選定結果を公表(透明性の確保)
透明性・公平性の向上に加え、参加事業者の増加により価格競争が促進され、自治体にとって有利な条件で契約できる可能性が高まる点がメリットです。一方、案件情報の作成・公開や多数の見積書の審査など、事務負担が増加するデメリットもあります。
少額随意契約との使い分け基準
オープンカウンター方式と従来型の見積合わせは、案件の性質や金額に応じて使い分けることが効果的です。
オープンカウンター方式が適している案件:
- 多くの事業者が対応可能な汎用的な物品購入(事務用品の一括購入、パソコン・プリンターの調達など)
- 標準化された業務委託(清掃業務委託、印刷業務など)
- 契約金額が比較的高額な案件(例:100万円以上)
- 住民の関心が高い案件(学校給食関連、防災関連など)
従来型の見積合わせが適している案件:
- 専門性が高く対応可能な事業者が限定される案件(特殊機器の修繕、特定システムの保守など)
- 緊急性が高く公告期間を確保できない案件
- 少額で定型的な案件(例:30万円以下の消耗品購入)
多くの自治体では一定金額以上の案件はオープンカウンター方式を原則とするなど、金額基準を設けています。重要なのは、恣意的な使い分けを避け、明確な基準に基づいて判断することです。
透明性と効率性のバランス|方式選択の判断ポイント
オープンカウンター方式の導入は、透明性と効率性のバランスを考慮して判断する必要があります。全ての少額随意契約にこの方式を適用すると事務負担が大幅に増加し、少額随意契約本来の目的である事務簡素化が損なわれます。
方式選択の判断ポイントは、契約金額・案件の複雑さ・対応可能な事業者数・緊急性・住民の関心度を総合的に評価することです。また年度当初に年間の調達計画を策定し、どの案件をオープンカウンター方式とするかを事前に決定しておくことで計画的な調達が可能となり、年度末の駆け込み発注を防げます。
方式選択の理由を記録として残すことも重要です。「なぜこの案件はオープンカウンターとしたのか」「なぜこの案件は従来型としたのか」を説明できるようにしておくことで、監査や住民からの問い合わせにも適切に対応できます。
自治体における導入事例|公募型見積合わせの実践
全国の自治体では、オープンカウンター方式の導入が進んでいます。東京都は早くからこの方式を採用しており、「東京都電子調達システム」でオープンカウンター案件を公開しています。登録事業者は自由に見積を提出でき、年間数千件の案件がこの方式で処理されています。
大阪市でも物品購入や業務委託について、一定金額以上の案件はオープンカウンター方式を原則としています。「なにわ電子調達システム」を通じて電子入札システムと同様の操作で見積提出が可能となっており、事業者にとっても参加しやすい環境が整備されています。横浜市では「公募型見積合わせ」という名称で実施しており、物品購入は50万円以上、業務委託は100万円以上の案件を対象としています。
中小規模の自治体でも導入が進んでおり、規模を問わず透明性と公平性の向上に効果があることが確認されています。導入を検討する自治体は、先進事例を参考にしながら自治体の実情に合わせた制度設計を行うことが重要です。随意契約理由書で最も重要なのは、「例外を選ぶ理由」を第三者が追える形で残すことです。機種選定理由書と業者選定理由書の役割を分け、使用目的、必要条件、選定理由を順番に積み上げるだけでも、理由書の質は大きく変わります。
民間事業者のための受注拡大戦略|活用のポイント

競争入札参加資格の登録|事前準備の重要性
少額随意契約に参加するためには、多くの自治体で競争入札参加資格の登録が前提となります。この資格は財務状況・納税状況・事業実績などが審査されるものであり、通常2〜3年ごとの更新が必要です。多くの自治体では年度初め(4月)や年度途中(10月)に定期受付を行っていますが、新規事業者向けに随時受付を行っている自治体も増えています。
登録に必要な主な書類は以下のとおりです。
- 申請書・登記簿謄本・納税証明書・財務諸表・実績調書
- 業種によっては建設業許可証・古物商許可証・産業廃棄物処理業許可証など
近年は電子申請システムを導入する自治体が増えており、書類のスキャンデータをアップロードするだけで手続きが完了します。登録のメリットは少額随意契約の見積依頼を受けられるだけでなく、一般競争入札や指名競争入札への参加資格も得られる点です。本社所在地の市だけでなく営業エリア内の近隣市町村や都道府県にも複数登録することで、受注機会をさらに拡大できます。
小規模事業者登録制度の活用|地元優遇制度
多くの自治体では少額随意契約に特化した小規模事業者登録制度を設けており、通常の競争入札参加資格よりも要件が緩和されています。例えば、東京都足立区の「小規模工事契約希望者登録」では、区内事業者で従業員20人以下の建設業者が対象となり、50万円以下の小規模工事について優先的に発注を受けることができます。登録要件も納税証明書と事業実績書程度で申請可能です。
この制度のメリットは、通常の入札参加資格では求められる財務基準や実績要件が緩和される点です。創業間もない事業者や公共工事の実績がない事業者でも登録でき、少額案件から実績を積むことができます。令和7年の基準額引き上げにより、小規模事業者登録制度の対象案件も拡大しており、受注機会が増加しています。
自社の営業エリア内の自治体でどのような小規模事業者支援制度があるかを調査することが活用の第一歩です。自治体のウェブサイトの契約情報ページや商工会議所・商工会を通じて情報を収集することを推奨します。
見積書作成の実務ポイント|選ばれるための工夫
少額随意契約で選ばれるためには、正確で分かりやすい見積書の作成が不可欠です。見積書に必ず記載すべき項目は以下のとおりです。
- 日付・宛名(自治体名と担当課名)・見積番号・件名
- 納期・納品場所・支払条件・有効期限
- 明細(品名・数量・単価・金額)
- 消費税額・合計金額(税込)
- 振込先・担当者連絡先
見積書作成のポイントは仕様書の内容を完全に満たすことです。自治体から示された仕様書の全必須要件を満たさない見積は失格となります。価格の設定においては、内訳を明確にすることで価格の妥当性を示すことができます(例:「商品代金○○円・配送費△△円・設置費□□円」)。アフターサービスや保証内容・納期の柔軟性なども見積書に記載し、価格以外の付加価値をアピールすることも有効です。
自治体との信頼関係構築|継続受注につなげる方法
少額随意契約で継続的に受注するためには、自治体との信頼関係構築が最も重要です。信頼を得るための基本は、納期厳守・仕様どおりの納品・適正な価格・丁寧な対応の徹底です。
具体的な信頼構築のポイントは以下のとおりです。
- 納品後のフォローアップ:「問題なく使用できているか」「追加で必要なものはないか」などのアフターフォロー
- 迅速な対応:見積依頼への速やかな回答と不明点への丁寧な説明
- 誠実なトラブル対処:問題発生時に早期に報告し、解決策を提示する
- 提案型の営業:「このような製品もあります」「こちらの方がコストパフォーマンスが良いです」という提案で、単なる受注業者ではなく頼れるパートナーとしての位置づけを得る
なお、過度な営業活動や接待は公務員倫理規程に抵触する可能性があるため、節度を持った関係を保つことが必要です。
自治体との信頼関係構築|継続受注につなげる方法
よくある質問(FAQ)|実務で迷いやすいポイント

Q. 基準額ギリギリの契約はどう扱うべきか?
A. 基準額ギリギリの案件には慎重な判断が必要です。例えば、都道府県で予定価格が395万円(税込)の工事は基準額400万円以下のため少額随意契約が可能です。ただし、わずかな見積増額や仕様変更により400万円を超える可能性がある場合は、当初から競争入札として手続きを進める方が安全です。契約締結後に金額が増加し基準額を超えることが判明すると、契約手続きのやり直しが必要となり大きな混乱を招きます。
また、基準額ギリギリの案件を意図的に少額随意契約とすることは、競争入札回避の意図があると見なされるリスクがあります。監査では「本当にこの金額で適正か」「意図的に基準額以下に抑えていないか」という視点でチェックされます。
実務的には、基準額の90%以上の案件については競争入札も視野に入れて検討することが望ましいです。基準額はあくまで上限であり、基準額以下でも競争入札を行うことは自治体の裁量として認められています。
Q. 年度をまたぐ契約の基準額はどう判断するか?
A. 年度をまたぐ契約(債務負担行為による契約や複数年度契約)における基準額の判断は、契約総額で行うのが原則です。例えば、令和7年4月から令和8年3月までの清掃業務委託で月額10万円・年額120万円の契約を結ぶ場合、市区町村では基準額100万円を超えるため少額随意契約の対象外となり競争入札が必要です。
複数年度にまたがる契約(例:3年間のシステム保守・年額80万円・総額240万円)については、市区町村の基準額100万円を大きく超えるため競争入札が必要です。ただし賃貸借契約など継続的な契約は年額で判断する場合もあり、自治体ごとの運用ルールに従うことが重要です。基準額の判断で迷う場合は会計課・契約担当課に確認することを推奨します。
Q. 基準額の判断は消費税込みか、税抜きか?
A. 消費税込みの金額で判断するのが原則です。地方自治法施行令における「予定価格」とは、消費税および地方消費税を含んだ金額を指します。
例えば、都道府県で物品購入の予定価格が税抜280万円・税込308万円(消費税10%)の場合、基準額300万円を超えるため少額随意契約の対象外となり競争入札が必要です。「税抜で基準額以下だから大丈夫」と判断してしまい、税込では基準額を超えているという事例が散見されますが、これは明らかな手続きミスであり監査で指摘される原因となります。
予定価格を設定する段階で、必ず消費税込みの金額を計算し基準額と比較してください。また、契約書・見積書においても「消費税別途」か「消費税込み」かを明確に記載し、金額の認識違いを防ぐことが重要です。
Q. 複数見積が必要な場合と不要な場合はどう判断するか?
A. 多くの自治体の契約規則では「2者以上から見積書を徴するよう努める」と定めており、原則として複数見積を求めています。ただし、以下の場合は1社見積も認められます。
- 契約の性質上、相手方が特定される場合(著作権者からの著作物購入、特許品の調達、既存システムの開発元への保守委託など)
- 緊急の必要により複数見積を取る時間的余裕がない場合
- 過去の実績から価格が妥当と判断できる場合
- 取扱業者が1社しかない場合
これらの場合でも、随意契約理由書に詳細な理由を記載し価格の妥当性を示す資料の添付が必要です。また複数見積を取る場合でも、関連会社や系列会社ではなく独立した業者から徴収することで、実質的な競争が働くようにすることが重要です。
まとめ|制度改正を踏まえた今後の展望

基準額引き上げがもたらす実務の変化
令和7年4月の基準額引き上げは、自治体の契約実務に大きな変革をもたらしています。従来は競争入札が必要だった中規模案件が少額随意契約の対象となり、入札公告の作成・入札書類の審査・開札手続きなど競争入札に伴う事務作業が削減され、職員の業務負担が軽減されています。特に人手不足に悩む小規模自治体では、この効果が顕著に現れています。
一方で少額随意契約の件数増加により、見積合わせの回数増加・契約書作成の件数増加・随意契約理由書の作成負担増加といった新たな課題も生じています。監査での説明責任も増大しており、記録の整備と保管が従来以上に求められています。
民間事業者にとっても大きな変化が起きています。入札参加が必要だった案件が見積提出のみで参加できるようになり、特に中小企業・地元事業者にとっては参入障壁が大きく下がりました。ただし競争相手も増えるため、価格競争力や提案力の強化が求められています。
透明性と効率性の両立に向けた課題
基準額引き上げにより、透明性と効率性のバランスがより重要な課題となっています。少額随意契約の拡大は効率性を高めますが、透明性の低下を招くリスクもあります。多くの自治体ではオープンカウンター方式の導入・契約結果の積極的な公表・内部監査の強化・随意契約ガイドラインの策定・職員研修の実施など、透明性確保の取り組みを進めています。
一方で、過度な透明性確保策はかえって事務負担を増大させる可能性もあるため、実効性と効率性を両立させる制度設計が求められます。透明性と効率性の両立は制度の問題だけでなく、運用する職員の姿勢にも大きく依存しています。金額が少額であっても、随意契約理由書の作成・複数見積の徴収・価格の妥当性確認という基本手続きを省略しない意識が重要です。
自治体と事業者双方に求められる対応
基準額引き上げを契機として、自治体と事業者の双方が新しい環境に適応することが求められています。
自治体側に求められる対応:
- 契約規則の改正・運用ガイドラインの策定
- 職員研修の実施・チェック体制の構築
- オープンカウンター方式の導入検討・契約結果の公表
- 内部監査体制の強化と改正効果の定量的な検証(PDCA)
事業者側に求められる対応:
- 競争入札参加資格の登録・小規模事業者登録制度の活用
- 自治体の調達情報の継続的なチェック
- 見積書作成能力の向上・価格競争力の強化
- 品質管理体制の構築と自治体との信頼関係の維持
自治体と事業者は、地域の公共サービス向上という共通目標に向けて協力するパートナーです。双方が制度の趣旨を理解し適切に対応することで、効率的で公正な公共調達が実現され、最終的には住民の利益につながります。
今後の制度見直しの可能性と動向
令和7年の基準額引き上げは約50年ぶりの大規模な改正でしたが、今後も定期的な見直しが必要です。物価は常に変動しており、前回のように50年間据え置くことなく、定期的に基準額を見直す仕組みの構築が求められます。財務省の資料でも「今後は物価指数の動向等を総合勘案しつつ、適切に見直しの必要性を検討・判断する」とされており、定期的な改定が予告されています。
また、電子契約や電子決済の普及により契約手続きの在り方も変化しています。電子調達システムの高度化・AIによる見積審査・デジタル技術を活用した透明性確保など、少額随意契約のプロセスがさらに効率化・透明化される可能性があります。自治体はこれらの技術動向を注視し、積極的に導入を検討することが望ましいです。
少額随意契約の適正運用や、公共調達に関するご相談は株式会社デボノまでお問い合わせください。PFI・PPP事業を中心に、自治体と民間事業者双方の公共調達実務を支援しています。

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