随意契約理由書とは?書き方・根拠法令・NG例をわかりやすく解説

この記事のポイント
  • 随意契約理由書は競争入札の例外を説明する書類であり、機種選定理由書と業者選定理由書の2種類がある
  • 国は会計法・予算決算及び会計令、地方自治体は地方自治法施行令が根拠法令となる
  • 機種選定理由書では「使用目的」「必要条件」「選定理由」の3項目を論理的に記載することが重要
  • 業者選定理由書では特許権・著作権・独占販売権など客観的な根拠を示し、証明書類を添付する
  • 会計検査で指摘されないためには、主観的な表現を避け、第三者が納得できる理由を記載する

随意契約理由書の書き方でお困りではありませんか。契約担当者として初めて作成を任されたとき、「何をどう書けばいいのか」「根拠法令は何か」と悩む方は少なくありません。随意契約は競争入札の例外であるため、なぜその契約方式を選んだのかを明確に説明する随意契約理由書が必要になります。本記事では、機種選定理由書と業者選定理由書の違いから、具体的な書き方、根拠法令、テンプレート、さらに会計検査で指摘されないためのポイントまで、実務で役立つ情報をわかりやすく解説します。

目次

随意契約理由書とは?基本と必要になるケース

随意契約理由書とは、競争入札によらずに特定の相手方と契約を締結する際に、その理由を明確に説明するための書類です。官公庁における契約方式は競争入札が原則とされており、随意契約はあくまで例外的な位置づけとなります。そのため、なぜ競争入札ではなく随意契約を選択したのかを、第三者が見ても納得できる形で文書化する必要があるのです。

随意契約理由書の定義と役割

随意契約理由書は、契約方式の例外を説明するための公式な書類です。官公庁では「特命随意契約理由書」「特命理由書」「選定理由書」など、組織によってさまざまな呼び方がありますが、いずれも同じ目的で作成されます。この書類がなければ、契約の正当性を証明することができず、会計検査や監査の際に問題となる可能性があります。

この書類の最も重要な役割は、契約の透明性と説明責任を果たすことにあります。具体的には、競争性がない理由、特定の機種や業者を選定した根拠、そして契約金額の妥当性などを記載します。これにより、契約担当者だけでなく、上司や会計検査院、さらには国民に対しても説明ができる状態を作ります。

法令で様式が定められているわけではないため、各組織が独自の書式を使用しています。しかし、記載すべき内容の本質は共通しており、「なぜこの契約方式なのか」「なぜこの相手方なのか」という問いに明確に答えることが求められます。形式よりも内容の説得力が重視される書類といえるでしょう。

理由書が必要になる契約パターン

随意契約理由書が必要になるのは、主に「競争性がない随意契約」を締結する場合です。競争性がない随意契約とは、契約の性質や目的から競争入札に適さない、または緊急性があり競争に付する時間がない場合に認められる契約方式を指します。この場合、なぜ競争ができないのかを書面で説明する必要があります。

具体的なパターンとしては、特許権や著作権を有する製品の購入、特殊な技術やノウハウを持つ業者への発注、既存システムとの互換性が必要な機器の調達などが挙げられます。また、緊急の災害対応や、国の行為を秘密にする必要がある場合なども、競争性がない随意契約の対象となります。

さらに、少額随意契約であっても特定の機種を指定する場合には、機種選定理由書が必要となることがあります。理由書が必要かどうかの判断基準は、「競争できる相手がいるかどうか」という点です。競争相手がいない、つまりライバルがいない状況で契約する場合に理由書が求められると覚えておきましょう。

機種選定理由書と業者選定理由書の違い

随意契約理由書には大きく分けて2つの種類があります。機種選定理由書と業者選定理由書です。機種選定理由書は、なぜ特定の製品や機種を選んだのかを説明する書類であり、主に市販品を購入する契約で作成します。購入目的、必要な性能条件、そして選定理由を記載することが一般的です。

一方、業者選定理由書は、なぜ特定の業者としか契約できないのかを説明する書類です。その業者が特許権や著作権を独占的に保有している場合や、特殊な技術を持つ唯一の業者である場合に作成します。機種選定と業者選定は別々の概念であることを理解しておくことが重要です。

重要なポイントは、機種を一つに絞っても販売店が複数あれば競争性があるという点です。この場合、機種選定理由書は必要ですが、業者選定理由書は不要となり、見積もり合わせによる競争が可能です。機種を絞り、さらに販売店も一社に限定される場合に初めて、両方の理由書が必要となります。

随意契約理由書の様式と書類名の種類

随意契約理由書の様式は法令で統一されておらず、各組織が独自に定めています。そのため、同じ内容の書類でも「特命随意契約理由書」「特命理由書」「業者選定理由書」「機種選定理由書」「選定理由書」など、呼び方はさまざまです。組織ごとに文化や慣習が異なるため、まずは自分の組織でどのような名称が使われているかを確認しましょう。

実務上は、過去に作成された書類や組織内のテンプレートを参考にして作成することが一般的です。様式が自由である分、作成者によって内容の質にばらつきが生じやすいという課題もあります。ベテラン職員が作成した理由書は説得力がある一方、初心者が作成すると要点が不明確になりがちです。

そのため、「誰が見ても納得できる理由」を意識して作成することが重要です。特に初めて作成する場合は、上司や先輩の過去の書類を確認し、組織内で求められる記載レベルを把握しておくことをお勧めします。良い見本を参考にすることで、効率的かつ質の高い理由書を作成できるようになります。

随意契約理由書の根拠法令を正しく理解する

随意契約理由書を作成するにあたって、根拠法令を正しく理解しておくことは非常に重要です。法令に基づかない随意契約は無効となる可能性があり、会計検査で指摘される原因にもなります。国と地方自治体では適用される法令が異なるため、自分が所属する組織に該当する法令を把握しておく必要があります。

国の場合:会計法と予算決算及び会計令

国の機関が随意契約を締結する場合、根拠となる法令は会計法と予算決算及び会計令(予決令)です。会計法第29条の3第4項では、「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」「緊急の必要により競争に付することができない場合」「競争に付することが不利と認められる場合」に随意契約によることができると定めています。この条文が競争性がない随意契約の基本的な根拠となります。

さらに具体的な手続きについては、予算決算及び会計令第102条の4で規定されています。同令第102条の4第3号では、契約の性質もしくは目的が競争を許さない場合、または緊急の必要により競争に付することができない場合に随意契約によることができると明記されています。随意契約理由書には、この条文を根拠として記載することになります。

また、予決令第99条では、予定価格が一定水準以下の場合や、運送・保管をさせる場合など、類型的に随意契約が認められるケースも定められています。理由書を作成する際は、自分が締結しようとする契約がどの条文に該当するのかを明確にしておくことが大切です。根拠法令を正確に記載することで、書類の信頼性が高まります。

地方自治体の場合:地方自治法施行令

地方自治体が随意契約を締結する場合は、地方自治法第234条第2項と地方自治法施行令第167条の2が根拠法令となります。地方自治法施行令第167条の2第1項では、随意契約によることができる場合が列挙されています。特に第2号の「その性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき」という規定が、競争性がない随意契約の根拠として頻繁に引用されます。

地方自治体の場合、予定価格が一定金額以下であれば少額随意契約として随意契約が可能です。この金額基準は都道府県と市町村で異なり、また契約の種類(工事、物品購入、役務など)によっても異なります。各自治体の財務規則や契約規則で具体的な金額が定められているため、確認が必要です。

そのほか、緊急の必要により競争入札に付することができない場合や、競争入札に付することが不利と認められる場合なども随意契約の対象となります。地方自治体の契約担当者は、地方自治法施行令だけでなく、自治体独自の条例や規則も併せて確認し、適切な根拠法令を理由書に記載するようにしましょう。

国と地方自治体の条文の違いと解釈

国と地方自治体の根拠法令を比較すると、表現に微妙な違いがあることがわかります。会計法では「競争を許さない」という強い否定の表現が使われているのに対し、地方自治法施行令では「競争入札に適しない」というやや緩やかな表現になっています。この違いは、地方自治体の方がより広い範囲で随意契約を適用できる可能性を示唆しています。

ただし、表現が緩やかだからといって安易に随意契約を選択してよいわけではありません。契約の透明性と公正性を確保することは、国も地方自治体も共通して求められる原則です。随意契約理由書を作成する際は、なぜ競争入札ではなく随意契約でなければならないのかを、誰が見ても納得できる形で説明する必要があります。

実務上は、根拠法令の条文番号を正確に記載することが重要です。例えば、国の場合は「会計法第29条の3第4項、予算決算及び会計令第102条の4第3号に基づく随意契約」といった形式で記載します。条文番号の誤りは書類全体の信頼性を損なうため、作成時には必ず法令を確認するようにしましょう。

機種選定理由書の書き方と具体例

機種選定理由書は、なぜ特定の製品や機種を選んだのかを説明するための書類です。市販品を購入する契約において、複数の製品がある中から一つの機種に絞る場合に作成します。機種選定理由書の記載項目は、使用目的、必要とする条件・性能等、選定理由の3つが基本となります。それぞれの書き方について具体例を交えながら解説します。

使用目的の書き方と記載例

使用目的は、なぜその物品を購入する必要があるのかを説明する項目です。組織のミッションや業務内容と関連づけながら、購入の必要性を明確に記載します。単に「業務で使用するため」といった曖昧な表現ではなく、具体的な業務内容と購入目的を結びつけて説明することがポイントです。

例えば、来館者案内システム用のパソコンを購入する場合、次のように記載します。「本資料館は、科学的資料を基に自然科学の歴史を一般公開しており、1日の来館者数は平均して平日で8千人、土日では2万人にも達する。来館者への案内を本物品によって自動的に行い、来館者へのサービス向上並びに業務の効率化を図るものである。」このように、組織の状況と購入目的を具体的な数字とともに示すことで説得力が増します。

研究用機器の場合は、研究目的と購入物品の使用方法を関連づけて記載します。「当研究室では、〇〇の解明を目的とした研究を行っている。この研究では〇〇を抽出・解析するために本機器が必須である。」といった形式です。使用目的が不明確だと、理由書全体の説得力が弱くなるため、最初の項目で読み手を納得させることが重要です。

必要とする条件・性能等の記載ポイント

必要とする条件・性能等の項目では、機種を選定する際のポイントとなる性能や条件を記載します。ここで重要なのは、カタログの性能をすべて羅列するのではなく、選定に必要な最小限の条件を3〜5つ程度に絞ることです。条件が多すぎると、本当に必要なものが何かわからなくなり、かえって説得力が低下します。

また、単に性能を列挙するだけでなく、「なぜその性能が必要なのか」という理由も併せて記載します。例えば、「既存システムとの互換性を有すること」という条件であれば、「令和元年度に設置した来館者案内システムとの連携が必要なため」といった理由を添えます。条件と理由をセットで記載することで、その条件が恣意的ではないことを示すことができます。

注意すべき点として、この項目でメーカー名や機種名を記載してはいけません。メーカー名を記載してしまうと、最初から特定メーカーを選定していたように見え、十分な検討を行っていないと判断されます。メーカー名や機種名は、最後の「選定理由」の項目で初めて記載します。専門用語もできるだけ避け、第三者が読んでも理解できる表現を心がけましょう。

選定理由の書き方と比較表の作成方法

選定理由の項目では、必要とする条件・性能等に基づいて複数の製品を比較検討し、最終的に選定した機種を明示します。比較検討のプロセスを示すために、別紙として比較表を作成することが一般的です。比較表では、左欄に必要条件を列挙し、横に3社程度の製品を並べて○×で判定します。

選定理由の記載例としては、「上記に掲げた必要とする条件、性能等について、別紙比較表により検討した結果、A社製の〇〇型のみが全ての条件を満たしており選定した。」といった形式になります。比較検討の結果として選定したことを明確に示すことが重要です。単に「A社製品が優れているため」といった主観的な表現は避けましょう。

比較表の作成にあたっては、公平な比較になるよう注意が必要です。比較対象の製品は、同等のグレードや価格帯のものを選びます。明らかに劣る製品ばかりを比較対象にすると、最初から結論ありきの選定だったと疑われる可能性があります。また、×の判定をした項目については、なぜ条件を満たさないのか簡単な理由を付記しておくと、より説得力のある比較表になります。

機種選定理由書のテンプレート

機種選定理由書のテンプレートは、組織によって異なりますが、基本的な構成は共通しています。まず書類の冒頭に「機種選定理由書」というタイトルと作成日、作成者を記載します。続いて、購入予定の物品名と契約の概要を簡潔に記載し、その後に使用目的、必要とする条件・性能等、選定理由の順で本文を記載します。

テンプレートを利用する際の注意点として、過去の書類をそのままコピーしないことが挙げられます。案件ごとに使用目的や必要条件は異なるため、必ず内容を精査して作成する必要があります。過去の書類を参考にするのは問題ありませんが、日付や金額、製品名などの固有情報を書き換え忘れるミスは厳禁です。

また、比較表は本文とは別に添付資料として作成することが多いですが、組織によっては本文中に表を組み込む場合もあります。いずれの場合も、必要条件と比較結果が明確に対応していることが重要です。テンプレートはあくまで形式の参考であり、内容の説得力は作成者の工夫にかかっていることを忘れないでください。

業者選定理由書の書き方と具体例

業者選定理由書は、なぜ特定の業者としか契約できないのかを説明する書類です。機種選定理由書で特定の製品を選定した後、その製品を供給できる業者が一社に限定される場合に作成します。業者選定理由書では、契約相手方が唯一の選択肢である理由を、客観的な根拠とともに示すことが求められます。

業者選定理由書の基本構成

業者選定理由書の基本構成は、機種選定理由書よりもシンプルです。主な記載項目は、契約の概要、選定する業者名、そして選定理由の3つです。機種選定理由書で製品を絞り込んでいる場合は、その結果を踏まえて業者選定理由書を作成するため、両者の整合性を意識することが重要です。

業者選定理由書の冒頭では、機種選定理由書との関連を明示します。「機種選定理由書により選定したA社製〇〇型について、以下の理由により契約の相手方をA社とする。」といった形式で、機種選定と業者選定のつながりを示します。これにより、なぜこの業者が唯一の選択肢なのかという流れが明確になります。

業者選定理由書は、機種選定理由書とは別の文書として作成するのが一般的です。これは、機種選定は物品を使用する部署が行い、業者選定は契約担当部署が行うという役割分担があるためです。ただし、組織によっては両者を一つの書類にまとめる場合もあるため、所属組織のルールを確認しておきましょう。

契約相手方が一社に限定される理由の書き方

業者選定理由書の核心は、なぜ契約相手方が一社に限定されるのかという理由の説明です。最も多いパターンは、特許権や著作権を根拠とするケースです。例えば、「A社製〇〇型のソフトウェアは、A社が独自に開発し、著作権並びに特許権を独占的に保有している。他の会社が本ソフトウェアを開発・使用することは不可能であり、唯一の契約の相手方である。」といった形式で記載します。

特許権や著作権以外にも、独占的な販売権や製造権を根拠とする場合があります。「本製品は、A社が日本国内における独占販売権を有しており、他の販売店から購入することはできない。」といった形式です。また、既存システムの保守契約など、技術的な理由で他社では対応できない場合も業者選定理由として認められます。

理由を記載する際は、主観的な表現を避け、客観的な事実に基づいて説明することが重要です。「A社の技術力が優れているため」といった表現は根拠が曖昧であり、会計検査で指摘される可能性があります。特許番号や販売代理店契約書など、具体的な根拠を示すことで説得力のある理由書になります。

添付書類と証明書の準備方法

業者選定理由書には、選定理由を裏付ける添付書類が必要です。特許権を根拠とする場合は、特許公報のコピーを添付します。著作権を根拠とする場合は、業者から著作権を独占的に保有していることを証明する書面を取得して添付します。これらの添付書類がなければ、理由書の信頼性が大きく損なわれます。

証明書の取得は、契約予定の業者に依頼します。「貴社が本製品の著作権を独占的に保有しており、他社への使用許諾を行っていないことを証明する書面を発行してください。」といった形で依頼すれば、業者側も対応に慣れていることが多いです。ただし、発行に時間がかかる場合もあるため、余裕をもって依頼することが大切です。

添付書類の種類は、選定理由によって異なります。独占販売権を根拠とする場合は販売代理店契約書のコピー、技術的な理由の場合は技術仕様書や互換性に関する説明書などが考えられます。どのような書類が必要かわからない場合は、契約担当部署や上司に相談し、過去の類似案件でどのような書類を添付していたかを確認するとよいでしょう。

業者選定理由書のテンプレート

業者選定理由書のテンプレートは、機種選定理由書に比べてシンプルな構成です。書類の冒頭に「業者選定理由書」というタイトル、作成日、作成者を記載し、続いて契約名称、契約予定金額、契約相手方の名称と所在地を記載します。その後、選定理由を記載し、最後に適用する根拠法令を明示します。

根拠法令の記載例としては、「よって、A社と会計法第29条の3第4項、予算決算及び会計令第102条の4第3号に基づく随意契約を締結するものである。」といった形式が一般的です。根拠法令を明示することで、この随意契約が法的に正当であることを示します。地方自治体の場合は、地方自治法施行令の該当条文を記載します。

テンプレートを利用する際も、内容を案件ごとに精査することが重要です。特に、契約相手方の名称や所在地、契約金額などの固有情報は、誤記があると契約そのものに影響する可能性があります。作成後は必ず複数人でチェックし、誤りがないことを確認してから決裁に回すようにしましょう。

役務契約・製造契約における随意契約理由書

ここまで物品購入契約を例に解説してきましたが、随意契約は役務契約や製造契約でも締結されることがあります。これらの契約では、物品購入契約とは異なる視点で理由書を作成する必要があります。役務契約や製造契約特有のポイントを押さえて、適切な随意契約理由書を作成しましょう。

物品購入契約との違いと注意点

物品購入契約では、機種選定と業者選定という2段階のプロセスがありました。しかし、役務契約や製造契約では、この区分が必ずしも当てはまりません。役務契約は特定の作業やサービスを提供してもらう契約であり、製造契約は特定の物品を製造してもらう契約です。既製品を購入するわけではないため、機種選定という概念自体が存在しないケースが多いのです。

そのため、役務契約や製造契約の随意契約理由書は、機種選定と業者選定を分けずに一つの書類として作成することが一般的です。理由書の中で、なぜこの契約内容には競争性がないのか、なぜこの業者でなければならないのかを一体的に説明します。物品購入契約の理由書をそのまま流用することはできないため、契約の性質に応じた書き方が求められます。

また、役務契約や製造契約では、業務の専門性や技術力が選定理由になることが多いです。「当該業務を遂行するためには〇〇の専門知識が必要であり、その知識を有する業者はA社のみである」といった形式で、業者の能力と契約内容の関連性を説明します。この場合、業者の実績や資格などを客観的に示す資料を添付することで、説得力が増します。

役務契約における理由書の書き方

役務契約の随意契約理由書では、まず契約の目的と内容を明確に記載します。どのような役務を依頼するのか、その役務がなぜ必要なのかを説明した上で、競争性がない理由を記載します。役務契約で競争性がないと認められる典型的なケースは、特殊な技術やノウハウが必要な場合、継続性が求められる場合、秘密保持が必要な場合などです。

例えば、既存システムの保守契約を特定の業者と随意契約で締結する場合、次のような理由が考えられます。「本システムはA社が独自に開発したものであり、システムの構造や仕様に関する技術情報はA社のみが保有している。他社では保守作業を行うことが技術的に不可能であるため、A社を契約の相手方とする。」このように、技術的な理由で他社では対応できないことを明確に示します。

継続性を理由とする場合は、なぜ継続性が重要なのかも説明する必要があります。「本業務は複数年にわたる調査研究の一環であり、調査方法や分析手法の一貫性を確保するため、同一の業者による継続的な実施が不可欠である。」といった形式です。ただし、単に「これまでもA社に依頼していたから」という理由だけでは不十分であり、継続性が業務の質に直結することを論理的に説明することが求められます。

製造契約における理由書の書き方

製造契約の随意契約理由書では、なぜ特定の業者に製造を依頼する必要があるのかを説明します。製造契約で競争性がないと認められるケースは、特殊な製造技術や設備が必要な場合、特許権に関わる製品の場合、既存設備との互換性が求められる場合などです。物品購入契約と似ていますが、製品を「買う」のではなく「作ってもらう」という点が異なります。

例えば、研究用の特殊な実験装置を製造してもらう契約の場合、次のような理由が考えられます。「本装置は、当研究室の研究目的に合わせた特注品であり、設計図に基づいて製造できる技術を有するのはA社のみである。A社は同種の装置を過去に製造した実績があり、必要な精度を確保できる唯一の業者である。」このように、製造能力と実績を根拠として示します。

製造契約の理由書では、他社では製造できない理由を具体的に説明することが重要です。「高度な技術が必要」といった抽象的な表現ではなく、「〇〇の精度を実現するためには△△の設備が必要であり、この設備を保有しているのはA社のみである」といった具体的な説明が求められます。必要に応じて、技術仕様書や業者の保有設備一覧などを添付資料として準備しましょう。

機種選定と業者選定を一体化する場合

役務契約や製造契約では、機種選定と業者選定を一体化した随意契約理由書を作成することがあります。この場合、一つの書類の中で、契約内容の必要性、競争性がない理由、特定業者を選定する理由を順序立てて説明します。論理的な流れを意識して、読み手が納得できる構成にすることが大切です。

一体化した理由書の構成例としては、まず契約の目的と概要を記載し、次になぜ競争入札に適さないのかを説明します。その後、特定業者を選定する具体的な理由を記載し、最後に根拠法令を明示するという流れです。物品購入契約の理由書よりも記載量が多くなる傾向がありますが、論理的に整理されていれば問題ありません。

一体化した理由書を作成する際の注意点として、記載内容が冗長にならないよう心がけることが挙げられます。必要な情報を過不足なく記載し、同じ内容を繰り返し説明することは避けましょう。また、添付資料との重複も避け、本文では要点を説明し、詳細は添付資料で補足するという役割分担を意識するとよいでしょう。

会計検査で指摘されるNG例と失敗パターン

随意契約理由書を作成する上で最も避けたいのは、会計検査や監査で指摘を受けることです。指摘を受けると、契約の正当性が疑われるだけでなく、担当者の評価にも影響します。ここでは、実際に指摘されやすいNG例と失敗パターンを紹介し、どのように対策すべきかを解説します。

よくある指摘事項5選

会計検査で指摘されやすい事項の1つ目は、選定理由が抽象的で具体性に欠けることです。「本製品が最も優れているため」「A社の技術力が高いため」といった主観的な表現は、根拠が不明確として指摘の対象になります。選定理由は、特許権や著作権、独占販売権など、客観的に検証可能な根拠に基づいて記載する必要があります。

2つ目は、比較検討が不十分であることです。機種選定理由書で他社製品との比較表を作成していない、または比較対象が明らかに劣る製品ばかりというケースは、十分な検討を行っていないと判断されます。3つ目は、必要条件が過剰であることです。実際には必要のない条件を記載して、結果的に特定の製品しか該当しないように仕向けることは、恣意的な選定として指摘されます。

4つ目は、添付資料が不足していることです。特許権を根拠としながら特許公報を添付していない、独占販売を主張しながら証明書がないといったケースは、理由書の信頼性を大きく損ないます。5つ目は、根拠法令の誤りです。該当しない条文を引用していたり、条文番号が間違っていたりすると、書類全体の信頼性が疑われることになります。

失敗しやすい理由書の特徴

失敗しやすい理由書には、いくつかの共通した特徴があります。まず、過去の書類をそのまま流用しているケースです。案件ごとに状況は異なるにもかかわらず、過去の書類をコピーして日付と金額だけを変更すると、内容と実態が乖離した不自然な理由書になってしまいます。流用ではなく参考にとどめるという意識が大切です。

次に、専門用語を多用しすぎているケースも失敗しやすいパターンです。理由書は契約担当者だけでなく、会計検査官や監査担当者など、専門外の人が読むことも想定されます。専門家しか理解できない内容では、十分な説明責任を果たしているとは言えません。誰が読んでも理解できる平易な表現を心がけましょう。

また、記載内容の論理的なつながりが弱い理由書も指摘を受けやすいです。使用目的と必要条件の関連性が不明確だったり、必要条件と選定理由の対応が曖昧だったりすると、「なぜこの結論に至ったのか」が読み手に伝わりません。理由書は、使用目的→必要条件→選定理由という論理的な流れで、一貫したストーリーを構築することが重要です。

指摘を避けるための事前対策

会計検査での指摘を避けるためには、理由書作成の段階から対策を講じることが重要です。まず、複数人によるチェック体制を整えましょう。作成者本人だけでなく、上司や同僚にも内容を確認してもらうことで、客観的な視点から問題点を発見できます。第三者の目を通すことで、説明不足や論理の飛躍に気づくことができます。

次に、過去に指摘を受けた事例を学ぶことも有効です。会計検査院は毎年「決算検査報告」を公表しており、過去の指摘事例を確認することができます。自組織で過去に指摘を受けた事例があれば、それを教訓として同じ過ちを繰り返さないようにしましょう。他組織の事例も参考になります。

また、理由書の作成に着手する前に、必要な根拠資料を揃えておくことも重要です。特許公報、著作権証明書、販売代理店契約書など、選定理由を裏付ける資料を先に確保してから理由書を作成すれば、根拠のない主張をしてしまうリスクを減らせます。資料が揃わない場合は、そもそも随意契約が適切かどうかを再検討する必要があるかもしれません。

随意契約理由書のチェックリスト

理由書を作成したら、提出前に以下のポイントをチェックしましょう。まず、選定理由が客観的な根拠に基づいているかを確認します。特許権、著作権、独占販売権など、第三者が検証できる根拠を示しているかどうかがポイントです。主観的な表現や曖昧な説明になっていないか、厳しい目で見直しましょう。

次に、論理的な一貫性があるかを確認します。使用目的と必要条件が関連しているか、必要条件と選定結果が対応しているか、全体として矛盾がないかをチェックします。また、根拠法令が正確に記載されているか、添付資料が揃っているかも重要な確認ポイントです。

さらに、誤字脱字や数値の誤りがないかも確認が必要です。特に、契約金額、契約相手方の名称、住所などの固有情報は、誤りがあると契約の有効性にも影響しかねません。作成後は時間をおいて読み返すか、別の担当者に確認を依頼することをお勧めします。チェックリストを活用して、漏れのない理由書を作成しましょう。

随意契約理由書作成の実務フローと注意点

随意契約理由書の内容を理解したら、次は実務上の作成フローを把握しましょう。理由書の作成は単独の作業ではなく、関係部署との連携や決裁プロセスを経て完成します。スムーズに手続きを進めるために、全体の流れと各段階での注意点を解説します。

作成から決裁までの流れ

随意契約理由書の作成は、契約の必要性が発生した段階から始まります。まず、物品を使用する担当部署が機種選定理由書を作成し、その後、契約担当部署が業者選定理由書を作成するという流れが一般的です。役務契約や製造契約の場合は、担当部署と契約担当部署が協力して一体型の理由書を作成することもあります。

理由書が完成したら、組織内の決裁プロセスに入ります。通常は、係長、課長、部長といった順で決裁を受け、契約金額が大きい場合はさらに上位の決裁権者の承認が必要になることもあります。決裁の過程で修正を求められることもあるため、余裕をもったスケジュールで作成を進めることが大切です。

決裁が完了したら、随意契約の手続きに進みます。契約相手方に見積書の提出を依頼し、見積金額が予定価格の範囲内であることを確認した上で契約を締結します。理由書は契約関係書類の一部として保管され、会計検査や監査の際に提示を求められることがあります。保管期間は組織によって異なりますが、5年から10年程度が一般的です。

関係部署との連携ポイント

随意契約理由書の作成には、複数の部署が関わることが多いです。物品を使用する担当部署は、使用目的や必要条件について最も詳しい情報を持っています。一方、契約担当部署は、法令や手続きに関する専門知識を持っています。両者が情報を共有し、協力して理由書を作成することが、質の高い書類につながります。

連携する際のポイントは、早い段階からコミュニケーションを取ることです。担当部署が機種選定を終えてから契約担当部署に相談するのではなく、機種選定の段階から契約担当部署にも情報を共有しておくと、手続き上の問題を事前に回避できます。「この選定理由で随意契約が認められるか」「どのような添付資料が必要か」といった点を早めに確認しておきましょう。

また、契約相手方となる業者との連携も重要です。随意契約理由書の添付資料として、特許証明書や著作権証明書、独占販売権の証明書などを業者から取得する必要があります。業者によっては発行に時間がかかる場合もあるため、早めに依頼しておくことをお勧めします。業者との良好な関係は、スムーズな契約手続きにつながります。

見積もり合わせとの関係

随意契約と見積もり合わせは、混同されやすい概念です。見積もり合わせとは、複数の業者から見積書を取得し、最も有利な条件を提示した業者と契約する方法です。少額随意契約では、見積もり合わせを行うことが一般的です。この場合、業者選定理由書は不要ですが、機種を指定する場合は機種選定理由書が必要になることがあります。

一方、競争性がない随意契約では、契約相手方が一社に限定されるため、見積もり合わせを行うことができません。この場合は、業者選定理由書を作成して、なぜ競争ができないのかを説明します。見積書は一社からのみ取得し、その金額が予定価格の範囲内であれば契約を締結します。

実務上の判断ポイントは、「競争できる相手がいるかどうか」です。機種を一つに絞っても、複数の販売店がある場合は見積もり合わせが可能です。販売店も一社に限定される場合に初めて、競争性がない随意契約として業者選定理由書が必要になります。この判断を誤ると、本来は競争すべき契約を随意契約にしてしまう恐れがあるため、慎重に確認しましょう。

決裁後の保管と管理

随意契約理由書は、契約関係書類の一部として適切に保管する必要があります。保管期間は組織の文書管理規程によって定められており、一般的には5年から10年程度です。会計検査や監査は契約締結後に行われることも多いため、いつでも提示できる状態で保管しておくことが重要です。

保管する書類には、理由書本体だけでなく、添付資料や比較表、見積書なども含まれます。これらの書類は一式としてファイリングし、案件ごとに整理しておくと、後から確認する際にスムーズです。電子化が進んでいる組織では、紙の書類とともに電子ファイルも保存しておくとよいでしょう。

また、過去の理由書は、新たな理由書を作成する際の参考資料としても活用できます。ただし、先述のとおり、そのままコピーして流用することは避けるべきです。過去の書類は「形式や構成の参考」として活用し、内容は案件ごとに新たに作成することを心がけましょう。良い理由書のストックを組織内で共有することで、全体のレベルアップにつながります。

まとめ:随意契約理由書を正しく作成するために

ここまで、随意契約理由書の基本から具体的な書き方、会計検査対策、実務フローまで解説してきました。随意契約理由書は、契約方式の例外を説明する重要な書類であり、作成にあたっては正確な知識と丁寧な対応が求められます。最後に、重要ポイントを整理し、実務に役立つアドバイスをお伝えします。

随意契約理由書作成の重要ポイント

随意契約理由書を作成する上で最も重要なのは、誰が見ても納得できる理由を記載することです。契約担当者や上司だけでなく、会計検査官や監査担当者、さらには国民に対しても説明できる内容でなければなりません。主観的な表現を避け、特許権、著作権、独占販売権など、客観的に検証可能な根拠に基づいて選定理由を記載しましょう。

また、機種選定理由書と業者選定理由書の役割の違いを正しく理解することも重要です。機種選定理由書は「なぜこの製品を選んだのか」を説明し、業者選定理由書は「なぜこの業者としか契約できないのか」を説明します。両者を混同せず、それぞれの目的に沿った内容を記載することで、論理的で説得力のある理由書になります。

根拠法令を正確に記載することも忘れてはなりません。国の場合は会計法と予算決算及び会計令、地方自治体の場合は地方自治法施行令が根拠となります。条文番号の誤りは書類全体の信頼性を損なうため、作成時には必ず法令を確認し、正確な条文を引用するようにしましょう。

実務で活用するためのアドバイス

実務で随意契約理由書を効率的に作成するためには、いくつかのコツがあります。まず、作成に着手する前に必要な根拠資料を揃えておくことです。特許公報、著作権証明書、比較検討用のカタログなどを先に収集してから理由書を書き始めれば、根拠のない主張をしてしまうリスクを減らせます。

次に、早めに関係者と相談することをお勧めします。機種選定の段階から契約担当部署に相談しておけば、手続き上の問題を事前に回避できます。また、上司や先輩の過去の書類を参考にすることで、組織内で求められる記載レベルを把握できます。ただし、過去の書類をそのままコピーするのではなく、内容は案件ごとに新たに作成することが大切です。

最後に、時間に余裕をもって作成することが重要です。決裁の過程で修正を求められることもありますし、添付資料の取得に時間がかかる場合もあります。契約締結予定日から逆算して、余裕のあるスケジュールで作成を進めましょう。焦って作成した理由書は、誤りや説明不足が生じやすいものです。

よくある質問(FAQ)

Q:随意契約理由書の様式は決まっていますか?A:法令で統一された様式はありません。各組織が独自の様式を定めているため、所属組織のテンプレートや過去の書類を参考にして作成してください。重要なのは形式よりも内容の説得力です。

Q:少額随意契約でも理由書は必要ですか?A:少額随意契約であっても、特定の機種を指定する場合は機種選定理由書が必要になることがあります。一方、見積もり合わせを行う場合は、業者を特定していないため業者選定理由書は不要です。理由書が必要かどうかは、「競争できる相手がいるかどうか」で判断します。

Q:理由書の保管期間はどのくらいですか?A:組織の文書管理規程によって異なりますが、一般的には5年から10年程度です。会計検査や監査は契約締結後に行われることもあるため、いつでも提示できる状態で保管しておきましょう。添付資料や見積書など、関連書類も一式で保管することをお勧めします。

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