少額随意契約と地方自治法|令和7年改正の基準額について徹底解説

この記事のポイント

少額随意契約の基本:地方自治法第234条と施行令第167条の2に基づき、一定金額以下の契約は競争入札を省略して締結できる仕組み。工事・物品購入・業務委託など幅広い契約が対象

・令和7年4月1日の大改正:約50年ぶりに基準額が大幅引き上げ。例:都道府県・政令市は工事400万円、財産の買い入れ300万円、その他(委託等)200万円に拡大し、対象案件が増加

・実務で重要な運用と監査対応:透明性確保が課題。複数見積の徹底、随意契約理由書・選定理由の記録、分割発注の禁止、オープンカウンター活用、契約結果の公開などが適正運用の鍵

少額随意契約は地方自治法施行令に基づき、自治体が一定金額以下の契約を競争入札なしで締結できる制度です。令和7年4月1日に約50年ぶりの大幅な基準額引き上げが施行され、工事請負は400万円、財産の買い入れは300万円へと改正されました。この改正により、自治体の事務効率化と民間事業者の受注機会拡大が期待される一方、透明性確保と適正運用が重要な課題となっています。本記事では、地方自治法における少額随意契約の法的根拠から最新の基準額、実務での運用方法、監査対応まで、自治体職員と民間事業者の両方に役立つ情報を詳しく解説します。

目次

少額随意契約とは|地方自治法上の位置づけと基本的な仕組み

地方自治法施行令第167条の2に基づく制度の概要

少額随意契約は、地方自治法施行令第167条の2第1項第1号に規定される契約方式であり、予定価格が自治体規則で定める一定金額以下の場合に、競争入札の手続きを省略して契約できる制度です。地方自治法第234条では、自治体の契約は一般競争入札を原則としながらも、その第2項で政令の定めるところにより指名競争入札や随意契約によることができると定めています。この政令が地方自治法施行令であり、その中で少額な契約については事務の簡素化・効率化の観点から随意契約を認めているのが少額随意契約制度です。

この制度は昭和22年の地方自治法制定当初から存在しており、少額な物品購入や軽微な修繕工事など、競争入札の手続きに要する時間や労力が契約金額に見合わない場合に、迅速かつ効率的な契約締結を可能にすることを目的としています。自治体の日常的な業務運営において、文房具の購入や庁舎の小規模修繕、印刷物の作成など、頻繁に発生する少額案件を全て競争入札で処理すると、事務負担が過大になり業務効率が著しく低下します。そこで法令は、公正性を保ちつつも実務の円滑化を図るため、少額な契約に限って簡便な手続きを認めているのです。

なお、「少額随意契約」という呼称は法令上の正式名称ではなく、実務上の通称として広く使われています。法令上は単に「随意契約によることができる場合」の一つとして規定されているに過ぎませんが、金額基準による分類であることから、実務では「少額随契」「少額随意契約」と呼ばれ、他の随意契約類型と区別されています。

競争入札との違いと随意契約が認められる理由

地方自治体における契約は、地方自治法第234条第1項により一般競争入札を原則としています。これは、公金を使用する契約において公正性・透明性・競争性を確保し、最も有利な条件で契約を締結するためです。一般競争入札では、資格を持つ全ての事業者が参加でき、価格や技術力を競い合うことで、適正な価格形成と質の高いサービス提供が期待されます。しかし、この方式には入札公告の掲示期間、入札書類の作成・審査、開札・落札者決定など、多くの手続きと時間が必要となります。

一方、少額随意契約は、契約金額が少額である場合に限り、これらの競争入札手続きを省略できる制度です。随意契約が認められる理由は、契約金額に対して入札手続きに要するコストや時間が不釣り合いになるためです。例えば、5万円の文房具購入のために数週間の入札手続きを行うことは、費用対効果の観点から非効率的です。また、緊急性の高い修繕工事や、地域の小規模事業者との取引促進の必要性も、少額随意契約を認める理由となっています。

ただし、随意契約は競争性が制限されるため、適正な価格や品質が担保されにくいというデメリットもあります。そのため、地方自治法施行令第167条の2は、随意契約を認める場合を厳格に限定しており、少額随意契約はその中でも最も基本的で頻繁に利用される類型となっています。自治体は、効率性と公正性のバランスを取りながら、適切に制度を運用することが求められます。

少額随意契約の対象となる契約種別

少額随意契約は、工事請負、物品購入、業務委託、不動産の賃貸借など、幅広い契約種別に適用されます。地方自治法施行令別表第5では、契約の種類ごとに基準額が定められており、自治体の区分(都道府県・政令指定都市、市区町村)によっても金額が異なります。主な契約種別としては、工事または製造の請負、財産の買い入れ、物件の借り入れ、財産の売り払い、物件の貸し付け、そしてその他の契約(主に業務委託)の6つに分類されています。

具体的には、庁舎の軽微な修繕工事、事務用品や消耗品の購入、印刷物の作成、清掃業務の委託、公用車のリース契約、公有地の短期貸付けなど、日常的な行政運営に必要な様々な契約が少額随意契約の対象となります。令和7年4月の改正により、都道府県・政令市では工事請負が400万円以下、物品購入が300万円以下、業務委託が200万円以下となり、対象範囲が大幅に拡大しました。

ただし、全ての契約が少額随意契約の対象となるわけではありません。国際調達に関する協定の対象となる契約や、特別な法令で別途定めがある契約については、金額にかかわらず競争入札が必要な場合があります。また、単に金額が基準額以下であるだけでなく、契約の性質上、競争入札に適さない理由がある場合は、金額にかかわらず別の根拠による随意契約を選択することも可能です。自治体は、個々の契約の特性を踏まえ、最も適切な契約方式を判断する必要があります。

通常の随意契約(特命随意契約)との相違点

随意契約には、少額随意契約と通常の随意契約(特命随意契約)という2つの大きな類型があります。両者の最大の違いは適用理由にあり、少額随意契約は「契約金額が少額であること」を理由とするのに対し、通常の随意契約は「契約の性質や目的が競争を許さないこと」などを理由とします。地方自治法施行令第167条の2第1項は、第1号で少額随意契約を、第2号以降で通常の随意契約の各種事由を規定しており、法的には明確に区別されています。

通常の随意契約が認められる主な事由としては、契約の性質または目的が競争入札に適しない場合(第2号)、災害等の緊急の必要により競争入札に付することができない場合(第5号)、競争入札に付することが不利と認められる場合(第6号)などがあります。例えば、既存システムの改修を開発元企業に発注する場合、災害復旧工事を緊急に実施する場合、特許品や著作物を調達する場合などは、金額の多寡にかかわらず通常の随意契約の対象となります。

実務上の違いとしては、少額随意契約は基準額以下であれば原則として適用可能ですが、通常の随意契約は個別に理由を説明する必要があり、より慎重な判断と詳細な記録が求められます。また、少額随意契約では複数業者からの見積合わせを行うことが一般的ですが、通常の随意契約では特定の1社との契約となることも多くあります。監査においても、通常の随意契約はその理由の妥当性がより厳しく審査される傾向にあります。自治体職員は、それぞれの随意契約類型の特徴を正しく理解し、適切に使い分けることが重要です。

令和7年改正|約50年ぶりの基準額引き上げの全容

改正の背景|物価上昇と事務効率化の必要性

令和7年3月の地方自治法施行令改正による少額随意契約の基準額引き上げは、約50年ぶりの大規模な見直しとなりました。前回の改正は昭和49年(1974年)であり、その後半世紀にわたり基準額は据え置かれてきました。この間、日本経済は大きく変動し、企業物価指数は約1.6倍、消費者物価指数は約2.5倍に上昇しています。特に令和2年以降のコロナ禍後の物価急騰により、実質的な基準額の価値は大きく目減りしていました。

基準額が据え置かれた結果、従来は少額随意契約で処理できていた案件が競争入札の対象となり、自治体の事務負担が増大する事態が生じていました。例えば、昭和49年当時に50万円で購入できた物品が、令和6年には100万円以上必要となるケースも珍しくありません。このような状況下で、少額案件に対しても一般競争入札の手続きを要することは、費用対効果の観点から非効率的であり、自治体の人手不足も相まって深刻な課題となっていました。

また、国会においても少額随意契約の基準額引き上げを求める声が高まり、財務省が実施した各省庁へのアンケートでは、約75%の省庁が事務負担を「感じる」と回答し、ほぼ全ての省庁が基準額引き上げを改善策として挙げていました。このような状況を受け、政府は契約事務の簡素化と効率化を図りつつ、物価上昇の実態に即した基準額への見直しを決定しました。この改正は、自治体の業務効率化だけでなく、民間事業者にとっても受注機会の拡大につながると期待されています。

改正前後の基準額比較表|都道府県・市町村別

令和7年4月の改正により、少額随意契約の基準額は大幅に引き上げられました。改正後の基準額は、発注者の区分によって異なる金額が設定されています。従来は全国一律で「その他50万円、財産の買入れ80万円、工事130万円」という基準でしたが、これが廃止され、国・都道府県・政令市と、政令市を除く市区町村とで異なる基準額が適用されるようになりました。

契約の種類改正前
(全国一律)
改正後
(都道府県・政令市)
改正後
(市区町村)
工事・製造請負130万円400万円200万円
財産の買い入れ80万円300万円150万円
物件の借り入れ40万円150万円80万円
財産の売り払い30万円100万円50万円
物件の貸し付け30万円50万円30万円
その他(業務委託等)50万円200万円100万円

この表から分かるように、都道府県・政令市では工事が約3倍、物品購入が約3.8倍、業務委託が4倍に引き上げられています。市区町村でも工事が約1.5倍、物品購入が約1.9倍、業務委託が2倍となっており、大幅な拡大となりました。ただし、市区町村における物件の貸し付けのみ、従来と同じ30万円に据え置かれています。これは、小規模自治体における公有財産の管理において、より慎重な対応が求められるためと考えられます。

施行日と経過措置|令和7年4月1日からの変更点

地方自治法施行令の改正政令は、令和7年3月28日に公布され、令和7年4月1日から施行されました。施行日以降に契約手続きを開始する案件については、新しい基準額が適用されます。ただし、施行日前に既に契約手続きを開始している案件については、原則として旧基準額が適用されると解釈されています。具体的には、令和7年3月中に入札公告を行った案件は旧基準額、4月1日以降に見積依頼を行う案件は新基準額が適用されることになります。

また、地方自治法施行令の改正は国の基準を示すものであり、実際の運用は各自治体の契約規則によって定められます。そのため、多くの自治体では令和7年4月1日に合わせて契約規則を改正していますが、議会での条例改正が必要な場合や、内部手続きに時間を要する場合には、施行時期が若干遅れる自治体も存在します。事業者としては、取引先となる自治体の規則改正状況を個別に確認することが重要です。

財務省は、基準額引き上げに伴う通知「少額随意契約等の適切な運用の確保等について」を令和7年3月28日付けで発出し、各自治体に対して透明性・公平性・競争性の確保を求めています。具体的には、オープンカウンター方式の活用や、2社以上からの見積徴収の徹底など、簡素化と公正性のバランスを取る運用が求められています。

改正による実務への影響|対象案件の拡大範囲

基準額の引き上げにより、従来は一般競争入札の対象だった案件が、少額随意契約の対象となるケースが大幅に増加します。財務省の試算によると、令和5年度の実績ベースで、基準額引き上げ後に少額随意契約の対象となる案件は、件数ベースで約2.3倍、金額ベースで約1.8倍に増加すると見込まれています。これは、自治体の契約事務全体に大きな影響を与えることを意味します。

具体的には、都道府県・政令市では200万円から400万円の工事、150万円から300万円の物品購入、100万円から200万円の業務委託が新たに少額随意契約の対象となります。例えば、庁舎の空調設備の更新工事、公用車の一括購入、システム保守業務の委託など、中規模の案件が対象に含まれるようになります。市区町村でも同様に、100万円から200万円の工事、80万円から150万円の物品購入などが対象となり、道路の小規模補修工事、学校備品の購入、清掃業務の委託などが少額随意契約で処理できるようになります。

この変化により、自治体側では入札公告の作成・掲示、入札参加資格の審査、開札立会など、競争入札に伴う一連の事務作業が削減され、契約締結までの期間が大幅に短縮されます。一方で、少額随意契約の件数が増加することで、見積合わせの実施、契約相手の選定理由の記録、監査対応のための書類整備など、別の形での事務負担が発生する可能性もあります。また、民間事業者にとっては、入札参加資格がなくても受注できる案件が増える反面、競争性が高まり価格競争が激化する可能性もあります。自治体と事業者の双方が、新しい基準額に適応した体制を整備することが求められています。

少額随意契約の法的根拠|地方自治法と関連法令の体系

地方自治法第234条と施行令の関係性

少額随意契約の法的根拠は、地方自治法第234条と地方自治法施行令第167条の2の関係において理解する必要があります。地方自治法第234条第1項は「売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする」と定め、契約方法の基本原則を示しています。そして同条第2項で「前項の指名競争入札、随意契約又はせり売りは、政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができる」と規定し、随意契約の具体的要件を政令に委任しています。

この委任を受けて定められたのが地方自治法施行令第167条の2であり、同条第1項第1号で「売買、貸借、請負その他の契約でその予定価格が別表第5上欄に掲げる契約の種類に応じ同表下欄に定める額の範囲内において普通地方公共団体の規則で定める額を超えないものをするとき」と規定しています。つまり、法律(地方自治法)は随意契約の原則を定め、政令(施行令)は具体的な金額基準を示し、さらに各自治体の規則が実際の運用基準を定めるという三層構造になっています。

この構造により、国は全国的な基準を政令で示しつつ、各自治体が地域の実情に応じて独自の基準額を設定できる柔軟性を持たせています。ただし、自治体規則で定める額は、施行令別表第5で定める上限額を超えることはできません。例えば、都道府県が工事請負の基準額を500万円に設定することは、施行令の上限400万円を超えるため認められません。一方で、400万円以下の範囲であれば、300万円や350万円など、自治体の判断で設定することが可能です。

自治体の契約規則との連動|条例・規則で定める基準額

地方自治法施行令が定める基準額は、あくまでも上限額であり、実際の運用基準は各自治体が契約規則や財務規則で定めます。多くの自治体では、施行令の上限額をそのまま採用していますが、より慎重な運用を行うため、上限額より低い金額を設定している自治体も存在します。例えば、施行令で400万円とされている工事請負について、ある市では300万円を基準額としているケースがあります。これは、地域の契約実態や監査対応、透明性確保の観点から、各自治体が独自に判断した結果です。

自治体の契約規則を改正する際には、地方自治法第138条の4第2項により、議会の議決は不要とされています。規則は長の権限で制定・改正できるため、施行令改正後、比較的速やかに対応できます。実際に令和7年4月の改正では、多くの自治体が3月中に規則改正を行い、4月1日から新基準額を適用しています。ただし、自治体によっては内部手続きや議会への報告などに時間を要するため、施行時期が若干遅れるケースもあります。

また、自治体規則では基準額だけでなく、見積合わせの方法、契約書の省略基準、随意契約理由書の作成義務など、運用上の詳細なルールも定められています。同じ基準額であっても、見積徴収の要否や契約書作成の基準が異なる場合があるため、事業者は取引先自治体の規則を個別に確認することが重要です。自治体のウェブサイトでは、多くの場合、契約規則や財務規則が公開されており、最新の基準額や手続き方法を確認できます。

会計法との違い|国と地方自治体の制度差

少額随意契約の制度は、国と地方自治体で法的根拠が異なります。国の契約は会計法第29条の3第5項と予算決算及び会計令第99条に基づいており、地方自治体の契約は地方自治法第234条と地方自治法施行令第167条の2に基づいています。この違いは単なる法令名称の相違ではなく、制度設計や運用においても重要な差異を生んでいます。

令和7年の改正前まで、国の少額随意契約基準額は、工事・製造250万円、財産の買い入れ160万円などとなっており、地方自治体の基準額(工事130万円、買い入れ80万円)より高く設定されていました。令和7年の改正では、国の基準額も引き上げられ(工事400万円、買い入れ300万円)、同時に地方自治体の基準額も見直されました。ただし、国は全国一律の基準額を適用するのに対し、地方自治体は都道府県・政令市と市区町村で異なる基準額が設定される点が大きな違いです。

また、国の契約では予算決算及び会計令第99条の2で「なるべく2人以上の者から見積書を徴さなければならない」と規定されており、見積合わせが原則となっています。地方自治体でも同様の運用が一般的ですが、法令上は明確な義務規定がないため、自治体によって運用にばらつきが見られます。さらに、国の契約では会計検査院による検査が行われますが、地方自治体では各自治体の監査委員による監査となり、監査の厳格さや視点も異なる場合があります。

地方公営企業法における特例規定

地方公営企業(水道、交通、病院など)の契約については、地方公営企業法に基づく特例が存在します。地方公営企業法第33条第2項により、地方公営企業の契約は地方自治法第234条の規定が準用されますが、地方公営企業法施行令第21条の14で独自の基準額が定められています。令和7年の改正では、地方公営企業法施行令別表第1も改正され、一般会計と同様に基準額が引き上げられました。

地方公営企業における少額随意契約の基準額は、一般会計の基準額と同一に設定されています。都道府県等の地方公営企業では工事400万円、物品300万円、その他200万円、市町村の地方公営企業では工事200万円、物品150万円、その他100万円となります。これにより、同じ自治体内であっても、一般会計と公営企業会計で契約手続きが統一され、事務の混乱を避けることができます。

ただし、地方公営企業は企業会計原則に基づく独立採算制を採用しているため、契約においても経済性と効率性がより強く求められます。そのため、少額随意契約であっても、価格の妥当性や品質の確保について、一般会計以上に厳格な審査が行われる傾向があります。また、地方公営企業では業績評価や経営分析が行われるため、契約実績や調達コストが経営指標に直接影響します。公営企業との取引を希望する事業者は、一般会計との違いを理解し、より競争力のある提案を行うことが重要です。

基準額の詳細|契約種類ごとの上限金額と適用条件

工事・製造請負契約の基準額|200万円・400万円

工事または製造の請負契約における少額随意契約の基準額は、都道府県・政令市で400万円以下、市区町村で200万円以下となっています。これは令和7年の改正により、従来の一律130万円から大幅に引き上げられたものです。工事請負契約とは、庁舎や学校などの公共施設の建築・修繕、道路や橋梁の整備・補修、上下水道設備の工事などが該当します。製造請負契約とは、特注の機器や設備を製作する契約を指し、例えば公園の遊具製作、特殊車両の製造、記念碑の製作などが含まれます。

基準額の適用において重要なのは、予定価格が基準額以下であるかどうかです。予定価格は消費税込みの金額で判断され、例えば都道府県で予定価格が405万円(税込)の工事は、基準額400万円を超えるため少額随意契約の対象外となり、競争入札が必要です。また、複数の工事を一体として発注する場合は、合計金額で判断されます。意図的に工事を分割して基準額以下にすることは、分割発注として違法とみなされる可能性があるため注意が必要です。

工事請負契約では、建設業法に基づく建設業許可の確認も重要です。少額随意契約であっても、500万円以上(建築一式工事は1500万円以上)の工事を請け負う場合は、建設業許可が必要となります。したがって、都道府県・政令市で300万円から400万円の工事を発注する場合は、建設業許可を持たない事業者でも受注可能ですが、自治体側は施工能力や過去の実績を慎重に確認する必要があります。また、工事完成後の検査や瑕疵担保責任の期間設定など、少額であっても適切な品質管理体制を構築することが求められます。

財産の買い入れ契約の基準額|150万円・300万円

財産の買い入れ契約における少額随意契約の基準額は、都道府県・政令市で300万円以下、市区町村で150万円以下です。財産の買い入れとは、物品・備品の購入、消耗品の調達、土地や建物の取得など、有形・無形を問わず財産を購入する契約全般を指します。具体的には、事務用品、OA機器、公用車、図書、医療機器、学校備品、防災資機材など、自治体の日常業務に必要な様々な物品が対象となります。

物品購入契約は、少額随意契約の中でも最も件数が多い契約類型です。令和7年の基準額引き上げにより、従来は一般競争入札が必要だった100万円から300万円の物品購入が、見積合わせで対応できるようになりました。これにより、複数のパソコンやプリンターの一括購入、公用車の更新、大型コピー機の導入など、中規模の調達案件が簡便に処理できるようになっています。

物品購入契約における注意点として、単価契約と総価契約の区別があります。単価契約とは、単価のみを決定し、実際の購入数量は必要に応じて発注する方式で、年間を通じて継続的に購入するコピー用紙や文房具などに適用されます。この場合、予定総額が基準額以下であれば少額随意契約の対象となります。一方、総価契約は購入数量と総額を確定する方式で、備品購入などに用いられます。また、リース契約は「物件の借り入れ」に該当し、別の基準額(都道府県・政令市150万円、市区町村80万円)が適用される点にも注意が必要です。

物件の借り入れ・貸し付け契約の基準額

物件の借り入れ契約における少額随意契約の基準額は、都道府県・政令市で150万円以下、市区町村で80万円以下となっています。物件の借り入れとは、土地や建物の賃借、機器のリース、車両のレンタルなど、物件を一定期間使用する対価として賃借料を支払う契約です。基準額の判断は、賃貸借期間が1年以内の場合は予定賃借料の総額、1年を超える場合は予定賃借料の年額で行います。

例えば、月額10万円で事務所を借りる契約の場合、年額120万円となり、都道府県・政令市では基準額150万円以下のため少額随意契約の対象となります。一方、月額8万円で3年間の契約を結ぶ場合、総額は288万円ですが、年額96万円で判断するため、同じく少額随意契約が可能です。ただし、更新時には改めて契約手続きが必要となる点に注意が必要です。

物件の貸し付け契約(自治体が所有する財産を民間に貸し出す契約)の基準額は、都道府県・政令市で50万円以下、市区町村で30万円以下となっています。公有地の一時使用許可、庁舎内スペースの貸付け、公用車の貸出しなどが該当します。貸し付け契約は、自治体の財産管理の観点から、より慎重な取扱いが求められるため、借り入れ契約よりも低い基準額が設定されています。特に土地の貸付けについては、適正な賃料設定と契約期間の管理が重要であり、少額随意契約であっても不動産鑑定や近隣相場の調査を行うことが望ましいとされています。

その他の契約|業務委託等の基準額100万円・200万円

その他の契約における少額随意契約の基準額は、都道府県・政令市で200万円以下、市区町村で100万円以下です。その他の契約とは、工事請負、財産の売買、物件の賃貸借以外の契約全般を指し、主に業務委託契約がこれに該当します。具体的には、清掃業務、警備業務、施設管理業務、システム保守業務、調査研究業務、イベント運営業務、印刷業務、翻訳業務など、多様な業務が含まれます。

業務委託契約は、近年の自治体業務の民間委託拡大に伴い、件数・金額ともに増加傾向にあります。令和7年の基準額引き上げにより、従来は競争入札が必要だった中規模の委託業務も、見積合わせで発注できるようになりました。例えば、庁舎の日常清掃業務(年間150万円)、ホームページの保守管理業務(年間120万円)、イベントの設営業務(単発180万円)などが、少額随意契約の対象となります。

業務委託契約では、履行能力の確認が特に重要です。価格だけでなく、過去の実績、技術力、人員体制、資格保有状況などを総合的に評価する必要があります。また、個人情報を取り扱う業務や、セキュリティが求められる業務については、少額随意契約であってもプライバシーマーク取得やISO認証などの確認が必要です。さらに、委託業務では仕様書の作成が契約の成否を左右します。業務内容、成果物、履行期限、検査方法などを明確に規定し、後のトラブルを防ぐことが重要です。自治体職員は、少額随意契約であっても、適切な仕様書作成と履行管理を行うことが求められます。

少額随意契約のメリット|効率化と迅速性の実現

自治体側のメリット|事務負担軽減と契約期間の短縮

少額随意契約の最大のメリットは、事務手続きの簡素化による業務効率化です。一般競争入札では、入札公告の作成・掲示、入札参加資格の審査、質問回答の対応、入札書の受付・開札、落札者決定、契約締結と、多くの手続きと時間が必要となります。通常、公告から契約締結まで最低でも1ヶ月程度を要し、複雑な案件では2ヶ月以上かかることもあります。これに対し、少額随意契約では見積依頼から契約締結まで1週間から2週間程度で完了するため、契約期間を大幅に短縮できます。

事務負担の軽減も大きなメリットです。入札では入札書類一式の作成、入札参加資格審査、入札説明会の開催、入札保証金の管理など、多くの事務作業が発生します。少額随意契約では、これらの手続きが省略または簡略化され、見積書の徴収と比較、契約書の作成という最小限の事務で契約が完了します。自治体の人手不足が深刻化する中、事務負担の軽減は非常に重要な意義を持ちます。特に小規模自治体では、契約担当職員が少なく、一人で複数の業務を兼務していることも多いため、少額随意契約による効率化は業務運営の円滑化に直結します。

また、契約の迅速化により、行政サービスの質も向上します。例えば、災害時の応急修繕、学校施設の緊急補修、感染症対策物品の調達など、迅速な対応が求められる場面で、少額随意契約は有効に機能します。さらに、年度末の予算執行においても、入札手続きの時間を短縮できるため、適切な時期に必要な物品やサービスを調達でき、予算の効率的な執行が可能となります。ただし、迅速性を重視するあまり、適正な価格確認や品質チェックを怠ると、かえって不経済な結果を招く可能性があるため、バランスの取れた運用が求められます。

事業者側のメリット|参入障壁の低下と受注機会の拡大

民間事業者にとって、少額随意契約は公共調達への参入障壁が低いという大きなメリットがあります。一般競争入札では、入札参加資格の取得、入札保証金の準備、詳細な技術提案書の作成、入札説明会への参加など、多くの手間とコストが必要です。特に中小企業や個人事業主にとって、これらの準備は大きな負担となり、公共調達への参入を躊躇する要因となっています。少額随意契約では、見積書の提出のみで参加でき、入札保証金も不要なため、初めて公共調達に参加する事業者でも比較的容易に対応できます。

受注機会の拡大も重要なメリットです。令和7年の基準額引き上げにより、従来は一般競争入札の対象だった中規模案件が少額随意契約の対象となり、事業者にとって受注できる案件の幅が広がりました。都道府県・政令市では400万円以下の工事、300万円以下の物品購入、200万円以下の業務委託が対象となり、市区町村でも200万円、150万円、100万円の案件が対象となります。これらの金額帯は、中小企業の事業規模に適しており、安定的な受注につながる可能性があります。

また、地域の小規模事業者にとっては、地元優遇の恩恵を受けやすいというメリットもあります。多くの自治体では、少額随意契約において地元事業者を優先的に選定する方針を採用しています。これは地域経済の活性化と雇用創出を目的としたもので、大手企業との競争を避けながら受注できる機会となります。さらに、少額随意契約での実績を積むことで、自治体との信頼関係を構築し、将来的により大きな案件の受注につながる可能性もあります。継続的な取引関係を築くことで、安定した経営基盤を確立できる点も、事業者にとって大きな魅力です。

緊急時対応における有効性|災害復旧等での活用

少額随意契約は、緊急時の迅速な対応を可能にする重要な制度です。災害発生時には、道路の応急復旧、倒木の撤去、避難所の設営、災害対策物資の調達など、即座の対応が求められます。このような場合、競争入札の手続きを待つ余裕はなく、少額随意契約による迅速な契約締結が住民の安全確保に直結します。地方自治法施行令第167条の2第1項第5号では、緊急の必要により競争入札に付することができない場合の随意契約を認めていますが、金額が基準額以下であれば、さらに簡便に少額随意契約で対応できます。

災害時以外でも、施設の突発的な故障、水道管の破裂、感染症の流行に伴う緊急調達など、予測困難な事態への対応において少額随意契約は有効です。例えば、庁舎の空調設備が真夏に故障した場合、修繕費用が基準額以下であれば、見積合わせにより数日で修繕業者と契約し、迅速に復旧できます。これが競争入札となれば、公告期間だけで2週間以上を要し、その間職員や来庁者が不便を強いられることになります。

ただし、緊急性を理由とした少額随意契約の運用には注意が必要です。真の緊急性がないにもかかわらず、恣意的に「緊急」と判断して少額随意契約を乱用することは、制度の趣旨に反します。緊急性の判断基準を明確にし、事後的に検証可能な記録を残すことが重要です。また、災害時であっても、可能な限り複数業者から見積を徴収し、価格の妥当性を確認する努力が求められます。緊急時こそ、不当に高額な契約や特定業者への便宜供与が疑われやすいため、透明性と説明責任を意識した運用が必要です。

地域経済への貢献|地元中小企業の育成効果

少額随意契約は、地域経済の活性化と地元中小企業の育成に重要な役割を果たしています。多くの自治体では、少額随意契約において地元事業者を優先的に選定する方針を採用しており、「地元事業者育成条項」や「地域経済活性化条項」として契約規則や調達方針に明記しています。これにより、地域内での経済循環が促進され、雇用創出や税収増加などの効果が期待されます。

地元中小企業にとって、少額随意契約は公共調達への入口となります。大規模な公共工事や高額な物品調達では、大手企業や全国展開する事業者が有利となりますが、少額案件では地域に密着した小規模事業者でも十分に競争力を持ちます。地理的な近接性により迅速な対応が可能であり、地域の実情に精通していることも強みとなります。また、少額随意契約での実績を積むことで、自治体からの信頼を獲得し、将来的により大きな案件への参加資格を得ることも可能です。

地域経済への貢献効果は、直接的な受注だけにとどまりません。地元事業者が公共調達で得た収入は、地域内の仕入れ先への支払い、従業員の給与、地域金融機関への返済などを通じて地域内に再循環します。この経済的波及効果は、大手企業が受注した場合よりも大きいとされています。また、地元事業者の技術力向上や経営基盤強化にもつながり、地域産業全体の競争力向上に寄与します。自治体は、少額随意契約を単なる事務簡素化の手段としてだけでなく、地域経済政策の一環として位置づけ、戦略的に活用することが求められています。

少額随意契約のデメリットと注意点|透明性確保の課題

透明性・公平性の確保が困難になるリスク

少額随意契約の最大のデメリットは、透明性と公平性の確保が困難になる点です。一般競争入札では、入札公告が公開され、入札結果も公表されるため、誰でも契約の過程と結果を確認できます。また、入札参加資格を持つ全ての事業者に公平な参加機会が保障されています。これに対し、少額随意契約では、見積依頼先の選定が担当者の裁量に委ねられる部分が大きく、外部からは契約過程が見えにくいという問題があります。

透明性が低いことで、「なぜこの業者が選ばれたのか」という疑念が生じやすくなります。たとえ適正な手続きを経て契約していても、説明が不十分であれば、住民や議会、監査委員から不信感を持たれる可能性があります。特に、同じ業者と繰り返し契約している場合や、価格が市場相場より高い場合、恣意的な業者選定や癒着が疑われるリスクがあります。この問題に対応するため、多くの自治体では契約結果の公表、随意契約理由書の作成、見積合わせ記録の保存などを義務づけていますが、それでも入札に比べれば情報公開の程度は限定的です。

公平性の観点からは、見積依頼を受けられなかった事業者が、受注機会を失うという問題があります。担当者が知っている特定の業者にのみ見積依頼が行われ、新規参入を希望する事業者や、技術力は高いが認知度の低い事業者が排除される可能性があります。この課題を解決する手段として、オープンカウンター方式(公募型見積合わせ)の導入が進んでいます。これは、インターネットで見積募集を公告し、資格を持つ全ての事業者が見積を提出できる方式であり、透明性と公平性を高める効果があります。令和7年の基準額引き上げに伴い、財務省もオープンカウンター方式の積極的な活用を推奨しています。

特定業者への偏りと癒着防止の重要性

少額随意契約では、特定業者への発注が偏るリスクがあります。担当者にとって、過去に取引実績のある業者は信頼でき、手続きもスムーズに進むため、繰り返し同じ業者に発注しやすくなります。これは業務効率の観点からは合理的ですが、長期化すると競争原理が働かず、価格の高止まりや品質低下を招く可能性があります。また、事業者側も「次回も発注される」という期待から、改善努力を怠る恐れがあります。

さらに深刻なのは、業者との癒着や不正の温床となるリスクです。特定業者との関係が密接になることで、不当な利益供与、リベートの授受、情報の事前漏洩などの不正行為が発生する可能性があります。これらは刑法上の贈収賄罪や公契約関係競売入札妨害罪に該当する重大な犯罪であり、職員個人だけでなく、自治体全体の信用を失墜させます。過去には、少額随意契約を装った不正事件が複数発生しており、監査や住民監査請求の対象となるケースも少なくありません。

この問題を防ぐためには、発注先のローテーション管理が有効です。過去の発注実績を記録し、特定業者への偏りがないか定期的に確認します。また、見積依頼先の選定基準を明確にし、複数の職員で確認する体制を構築することも重要です。さらに、契約金額や契約回数の上限を設定し、一定額または一定回数を超える場合は競争入札に移行するなどのルールを設けることも考えられます。財務省の通知でも、少額随意契約の透明性確保のため、契約情報の公表や内部監査の実施を求めており、自治体は制度の適正運用に努める必要があります。

分割発注の禁止|違法とみなされる事例と判断基準

少額随意契約において最も注意すべき違法行為が、分割発注です。分割発注とは、本来一つの契約として発注すべき案件を、意図的に複数の契約に分割し、それぞれを基準額以下にすることで少額随意契約の対象とする行為を指します。これは競争入札を回避する目的で行われるため、地方自治法の趣旨に反し、違法とみなされます。会計検査や監査において厳しく指摘される事項であり、場合によっては職員の懲戒処分や損害賠償請求の対象となることもあります。

分割発注の典型例としては、年間契約を月ごとに分割する、建物の修繕工事を場所ごとに分割する、システム開発を工程ごとに分割するなどが挙げられます。例えば、本来400万円の庁舎改修工事を、1階部分200万円、2階部分200万円と分けて発注することは、明らかな分割発注です。また、同じ物品を複数回に分けて購入し、それぞれを少額随意契約とすることも、合理的理由がなければ分割発注とみなされます。

ただし、全ての分割が違法というわけではありません。適法な分割と違法な分割を区別する基準は、「契約の一体性」の有無です。契約に一体性があるか否かは、発注時期、工事場所、業務内容、予算措置などを総合的に判断します。例えば、4月に東館の修繕を発注し、11月に西館の修繕を発注する場合、時期も場所も異なるため、それぞれ別の契約として認められる可能性が高いです。一方、4月に東館と西館の修繕を同時に発注する場合は、一体の工事として扱うべきです。分割発注とみなされないためには、各契約が独立していることを示す記録(仕様書、予算書、発注時期の違いなど)を残し、合理的な理由を説明できるようにしておくことが重要です。

会計監査での指摘事項|説明責任と記録保存の必要性

少額随意契約は手続きが簡便である分、会計監査での説明責任が重要となります。監査委員や会計検査院は、少額随意契約であっても、契約の適法性、価格の妥当性、業者選定の公平性などを厳しくチェックします。監査で指摘を受けやすい事項としては、随意契約理由の不備、見積合わせ記録の不存在、価格の妥当性を示す資料の欠如、同一業者への偏った発注、分割発注の疑い、契約書の不備などがあります。

特に問題となるのは、記録が不十分な場合です。「なぜこの業者を選んだのか」「なぜこの価格が妥当と判断したのか」を説明できる記録がないと、監査で指摘を受けます。口頭での説明や担当者の記憶に頼った運用は認められず、文書による証拠が必要です。必要な記録としては、随意契約理由書(なぜ少額随意契約を選択したか)、見積合わせ調書(複数業者からの見積と選定理由)、業者選定理由書(なぜこの業者に見積依頼したか)、市場価格調査資料(価格が適正であることの根拠)などが挙げられます。

適正な運用のための実務ガイド|自治体担当者向け

見積合わせの実施方法|複数業者からの見積徴収

少額随意契約において適正な価格を確保するためには、複数業者からの見積徴収が基本となります。地方自治法施行令には明文規定はありませんが、多くの自治体の契約規則では「2者以上から見積書を徴するよう努める」などと定めており、実務では原則として2社以上、できれば3社以上からの見積を徴収することが推奨されています。複数見積を取ることで、価格競争が生まれ、市場の適正価格を把握できます。

見積合わせの具体的な手順は、まず見積依頼先の業者を選定し、仕様書とともに見積依頼書を送付します。仕様書には、品名、数量、規格、納期、納品場所、支払条件などを明確に記載し、各社が同じ条件で見積できるようにします。見積書の提出期限は、案件の複雑さに応じて1週間から2週間程度を設定し、提出後は見積金額と内容を比較検討します。最も低い金額を提示した業者と契約することが原則ですが、価格だけでなく、納期、品質、アフターサービスなども考慮し、総合的に最も有利な業者を選定します。

ただし、見積徴収が困難な場合もあります。特殊な物品で取扱業者が1社しかない場合、緊急性が高く複数見積を取る時間がない場合、過去に同種契約の実績があり価格が妥当と判断できる場合などは、1社見積も認められることがあります。しかし、この場合でも随意契約理由書に詳細な説明を記載し、価格の妥当性を示す資料(カタログ価格、過去の契約実績、市場価格調査など)を添付する必要があります。安易な1社見積は監査で指摘される原因となるため、可能な限り複数見積の徴収に努めることが重要です。

随意契約理由書の作成ポイント|監査対応に耐える記録

随意契約理由書は、なぜ随意契約を選択したかを説明する重要な文書です。地方自治法施行令第167条の2のどの号に該当するかを明記し、具体的な理由を記載します。少額随意契約の場合は第1項第1号に該当し、「予定価格が○○万円であり、契約規則第○条に定める基準額○○万円以下であるため」という記載が基本となります。ただし、それだけでは不十分であり、契約の概要、緊急性の有無、業者選定の経緯なども記載することが望ましいです。

効果的な随意契約理由書のポイントは、第三者が読んでも理解できる具体性です。「予算額が少額であるため」という抽象的な記載ではなく、「庁舎1階トイレの給水管修繕工事であり、予定価格が185万円(税込)で、当市の契約規則第○条に定める工事請負の基準額200万円以下に該当するため、少額随意契約により実施する」という具体的な記載が必要です。また、業者選定の理由も「過去に同種工事の実績があり、技術力と信頼性が確認されているため」など、具体的に記載します。

随意契約理由書は、契約締結前に作成し、決裁を受けることが原則です。事後的に作成すると、形式的な書類と見なされ、監査で指摘を受ける可能性があります。また、理由書には作成日、作成者、決裁者を明記し、関係書類(見積書、仕様書、業者選定資料など)と一緒に保管します。これらの書類は、監査や情報公開請求の際に必要となるため、保存期間(通常5年以上)を遵守し、適切に管理することが重要です。自治体によっては、随意契約理由書の標準様式を定めている場合もあるため、内部ルールを確認して作成しましょう。

契約相手方の選定基準|公正性を担保する仕組み

少額随意契約における契約相手方の選定は、公正性と透明性を確保することが最重要課題です。地方自治法第234条第3項は「契約の締結に当たっては、地方自治の本旨に基づいて、その種類及び性質に応じ、公正な取引の機会を保障するように努めなければならない」と定めており、少額随意契約であってもこの原則は適用されます。恣意的な業者選定や、情実による発注は許されません。

公正な選定のためには、明確な選定基準の設定が必要です。多くの自治体では、入札参加資格者名簿に登録された業者の中から選定することを原則としています。登録業者は、財務状況、納税状況、技術力などが審査済みであり、一定の信頼性が担保されています。また、地元事業者優先、過去の実績、専門性、緊急対応能力などの基準を設け、これに基づいて選定します。ただし、これらの基準を恣意的に適用し、特定業者に有利になるような運用は避けなければなりません。

選定過程の記録も重要です。「なぜこの3社に見積を依頼したのか」「なぜこの業者と契約したのか」を説明できる記録を残します。例えば、「A社:市内業者で過去5年間に同種工事の実績3件あり、B社:市内業者で専門技術保有、C社:隣接市の業者だが緊急対応可能」というように、各社の特徴と選定理由を記録します。また、選定に複数の職員が関与する体制を構築し、チェック機能を働かせることも有効です。担当者一人の判断ではなく、係長や課長の確認を経ることで、恣意性を排除できます。さらに、定期的に発注実績を分析し、特定業者への偏りがないかを確認することも、公正性担保の重要な取組みです。

価格の妥当性確認|市場価格との比較方法

少額随意契約では競争性が制限されるため、価格の妥当性確認が特に重要となります。見積価格が適正かどうかを判断するため、市場価格との比較、過去の契約実績との比較、カタログ価格との比較など、複数の方法で検証します。特に1社見積の場合や、見積額が予想より高額な場合は、慎重な確認が必要です。価格が不当に高いと判断される場合は、再見積を求めるか、別の業者を選定することも検討します。

市場価格の調査方法としては、インターネットでの価格検索、複数の業者への価格照会、業界団体が公表する標準価格表の参照、公共工事の積算基準や物価資料の活用などがあります。また、過去に同種の契約を行っている場合は、その実績価格と比較します。ただし、物価変動を考慮する必要があり、数年前の価格をそのまま基準とすることは適切ではありません。消費者物価指数や企業物価指数などを参考に、現在の適正価格を推定します。

価格妥当性の記録も重要です。「カタログ価格○○円に対し、見積額は△△円で妥当」「過去3年間の同種契約の平均単価は□□円であり、今回見積額◇◇円は適正範囲内」など、判断根拠を明確に記録します。これにより、監査での説明が容易になります。また、予定価格を事前に設定し、見積額がこれを超える場合は再検討するという手続きも有効です。予定価格は公表しないことが原則ですが、内部的には必ず設定し、価格統制の基準とします。適正な価格管理により、公金の効率的な使用と、不当な高額契約の防止が可能となります。

オープンカウンター方式との関係|透明性向上の取り組み

オープンカウンター方式の仕組みと特徴

オープンカウンター方式は、少額随意契約の透明性を高めるための手法として注目されています。従来の見積合わせでは、自治体が任意に選んだ特定の業者にのみ見積依頼を行うため、他の事業者に受注機会が与えられないという不公平さがありました。オープンカウンター方式では、自治体のウェブサイトや調達ポータルで案件情報を公開し、資格要件を満たす全ての事業者が自由に見積を提出できるようにします。これにより、競争性が高まり、より多くの事業者に公平な参加機会が提供されます。

オープンカウンター方式の具体的な流れは、まず自治体が案件情報(品名、数量、仕様、納期、見積提出期限など)をウェブサイトに掲載します。これを見た事業者は、仕様書をダウンロードし、見積書を作成して電子メールや専用システムで提出します。提出期限後、自治体は全ての見積を比較検討し、最も有利な条件を提示した事業者と契約します。選定結果も公表されるため、透明性が確保されます。参加事業者数に制限はなく、新規事業者でも参入しやすい仕組みです。

オープンカウンター方式のメリットは、透明性・公平性の向上に加え、より多くの事業者が参加することで価格競争が促進され、自治体にとって有利な条件で契約できる可能性が高まる点です。また、新たな取引先を発掘する機会にもなります。一方、デメリットとしては、案件情報の作成・公開、多数の見積書の審査など、事務負担が増加する点が挙げられます。そのため、全ての少額随意契約にオープンカウンター方式を適用するのではなく、一定金額以上の案件や、参加を希望する事業者が多いと見込まれる案件などに限定して活用する自治体が多いです。

少額随意契約との使い分け基準

オープンカウンター方式と従来型の見積合わせは、案件の性質や金額に応じて使い分けることが効果的です。オープンカウンター方式は、多くの事業者が対応可能な汎用的な物品購入や標準的な業務委託に適しています。例えば、事務用品の一括購入、パソコンやプリンターの調達、清掃業務委託、印刷業務などは、仕様が標準化されており、多数の事業者が参入できるため、オープンカウンター方式の効果が高いです。

一方、従来型の見積合わせは、専門性が高い案件や、対応可能な事業者が限定される案件に適しています。例えば、特殊な機器の修繕、特定のシステムの保守、高度な技術を要する業務委託などは、対応できる事業者が限られるため、あらかじめ適格な業者を選定して見積を依頼する方が効率的です。また、緊急性が高く、公告期間を確保できない案件も、従来型の見積合わせが適しています。

使い分けの基準としては、金額、専門性、緊急性、競争性などを考慮します。多くの自治体では、一定金額以上(例:50万円以上または100万円以上)の案件はオープンカウンター方式を原則とし、それ以下は従来型とするなど、金額基準を設けています。また、物品購入は原則オープンカウンター、専門性の高い業務委託は従来型とするなど、契約種別による使い分けも行われています。重要なのは、恣意的な使い分けを避け、明確な基準に基づいて判断することです。内部ルールを整備し、職員間で統一的な運用を図ることが求められます。

透明性と効率性のバランス|方式選択の判断ポイント

オープンカウンター方式の導入は、透明性と効率性のバランスを考慮して判断する必要があります。透明性の観点からは、できるだけ多くの案件でオープンカウンター方式を採用することが望ましいです。しかし、全ての少額随意契約にこの方式を適用すると、事務負担が大幅に増加し、少額随意契約の本来の目的である事務簡素化が損なわれます。したがって、透明性が特に求められる案件と、効率性を優先すべき案件を見極めることが重要です。

透明性を優先すべき案件としては、契約金額が比較的高額な案件(例:100万円以上)、住民の関心が高い案件(学校給食関連、防災関連など)、過去に疑義が生じた案件、新規の取引先を開拓したい案件などが挙げられます。これらについてはオープンカウンター方式を採用し、広く事業者を募ることで、透明性と競争性を確保します。一方、少額で定型的な案件(例:30万円以下の消耗品購入)、緊急性が高い案件、専門業者が限定される案件などは、従来型の見積合わせで効率的に処理することが適切です。

方式選択の判断ポイントとしては、契約金額、案件の複雑さ、対応可能な事業者数、緊急性、過去の経緯、住民の関心度などを総合的に評価します。また、年度当初に年間の調達計画を策定し、どの案件をオープンカウンター方式とするか事前に決定しておくことも有効です。これにより、計画的な調達が可能となり、年度末の駆け込み発注を避けることができます。重要なのは、方式選択の理由を明確にし、記録として残すことです。「なぜこの案件はオープンカウンターとしたのか」「なぜこの案件は従来型としたのか」を説明できるようにしておくことで、監査や住民からの問い合わせにも適切に対応できます。

自治体における導入事例|公募型見積合わせの実践

全国の自治体では、オープンカウンター方式の導入が進んでいます。東京都は早くからこの方式を採用しており、物品購入や業務委託の多くでオープンカウンター方式を実施しています。都のウェブサイト「東京都電子調達システム」では、オープンカウンター案件が一覧で公開され、登録事業者は自由に見積を提出できます。年間数千件の案件がこの方式で処理され、透明性の高い調達が実現されています。

大阪市でも、物品購入や業務委託について、一定金額以上の案件はオープンカウンター方式を原則としています。「なにわ電子調達システム」を通じて案件情報が公開され、電子入札システムと同様の操作で見積提出が可能です。これにより、事業者にとっても参加しやすい環境が整備されています。また、横浜市では「公募型見積合わせ」という名称でオープンカウンター方式を実施しており、物品購入では50万円以上、業務委託では100万円以上の案件を対象としています。

中小規模の自治体でも導入が進んでいます。例えば、福井県あわら市では、30万円以上の物品購入についてオープンカウンター方式を採用し、市のウェブサイトで案件を公開しています。また、長野県軽井沢町でも、物品購入や業務委託の一部でこの方式を導入し、透明性向上に努めています。これらの事例から、自治体の規模にかかわらず、オープンカウンター方式の導入は可能であり、透明性と公平性の向上に効果があることが分かります。導入を検討する自治体は、先進事例を参考にしながら、自治体の実情に合わせた制度設計を行うことが重要です。

全国自治体の対応状況|基準額引き上げの実施事例

先進自治体の取り組み|福井県・東京都港区の事例

令和7年の基準額引き上げに対し、各自治体は迅速に対応しています。福井県は、全国に先駆けて独自の基準額引き上げを実施しました。国の施行令改正を待たず、令和7年2月の県議会で契約規則改正案を提出し、4月1日からの施行を決定しました。福井県の基準額は、工事請負400万円、物品購入300万円、業務委託200万円と、国の基準と同額に設定されました。特筆すべきは、県独自の判断として、一部の工事について国の基準を上回る設定を行った点です。これは物価高騰が特に顕著な地域事情を反映したものであり、地方自治の裁量を活かした取組みといえます。

東京都港区も、令和7年5月1日から基準額を引き上げました。港区の特徴は、基準額引き上げと同時に「小規模事業者登録制度」を拡充した点です。この制度は、入札参加資格を持たない小規模事業者でも、簡易な登録により少額随意契約に参加できるようにするものです。基準額引き上げにより対象案件が拡大したことを受け、より多くの小規模事業者に受注機会を提供し、地域経済の活性化を図っています。また、契約締結までの期間短縮効果を検証し、従来3~4週間かかっていた契約が約1週間で完了するようになったと報告しています。

これらの先進事例から、基準額引き上げの効果を最大化するためには、単に金額を引き上げるだけでなく、関連制度の整備や運用改善を同時に進めることが重要であることが分かります。小規模事業者への配慮、透明性確保の仕組み、事務効率化の検証など、総合的な取組みが求められています。他の自治体も、これらの先進事例を参考にしながら、地域の実情に応じた制度設計を行うことが期待されます。

規則改正のプロセス|議会議決不要の手続き

少額随意契約の基準額を変更するには、自治体の契約規則を改正する必要があります。地方自治法第138条の4第2項により、規則は普通地方公共団体の長が制定するものとされており、議会の議決は不要です。これにより、条例改正に比べて迅速な対応が可能となります。実際に令和7年の改正では、多くの自治体が施行令公布(3月28日)から施行日(4月1日)までの短期間に規則改正を完了させました。

規則改正の一般的なプロセスは、まず担当部署(財政課や契約課など)が改正案を作成します。改正内容は、施行令別表第5で定められた基準額をそのまま採用するか、自治体の実情に応じてより低い金額を設定するかを検討します。次に、庁内の関係部署(総務部、会計課、各事業部門など)と協議し、改正案を確定します。その後、首長の決裁を経て規則を公布し、施行します。一部の自治体では、規則改正について議会への報告や説明を行いますが、これは情報提供の意味であり、議決を求めるものではありません。

規則改正に当たっては、単に金額を変更するだけでなく、運用ルールの見直しも重要です。例えば、基準額引き上げに伴いオープンカウンター方式の対象範囲を拡大する、見積徴収の基準を明確化する、随意契約理由書の様式を改定するなど、関連する規定も併せて整備します。また、職員向けの説明会や研修を実施し、新しい基準額と運用方法を周知徹底することも必要です。規則改正は形式的な手続きだけでなく、実質的な運用改善の機会として捉えることが重要です。

ガイドライン策定の動き|愛知県蒲郡市の事例

基準額引き上げに伴い、運用ガイドラインを策定する自治体も増えています。愛知県蒲郡市は、令和7年4月に「随意契約ガイドライン」を公表し、少額随意契約の適正な運用方法を詳細に解説しています。このガイドラインでは、少額随意契約の法的根拠、基準額、適用事例、注意点などが分かりやすく説明されており、職員だけでなく、事業者や市民にも参考となる内容となっています。

蒲郡市のガイドラインの特徴は、具体的な事例を多数掲載している点です。「このような場合は少額随意契約が可能」「この場合は競争入札が必要」という判断基準が明確に示されており、職員が迷わずに適切な契約方式を選択できるよう配慮されています。また、分割発注の禁止、見積合わせの実施方法、随意契約理由書の作成方法など、実務で重要なポイントが詳しく解説されています。さらに、よくある質問(FAQ)のセクションも設けられており、実務上の疑問に答える内容となっています。

ガイドライン策定のメリットは、職員間での運用の統一化と、透明性の向上です。明文化されたルールがあることで、担当者による恣意的な運用を防ぎ、公平性を確保できます。また、ガイドラインを公開することで、事業者や住民に対しても自治体の契約手続きを分かりやすく説明でき、信頼性向上にもつながります。他の自治体も、蒲郡市の事例を参考にしながら、それぞれの実情に応じたガイドラインを策定することが望ましいです。ガイドラインは一度作成して終わりではなく、運用状況や法令改正を踏まえて定期的に見直し、改善していくことが重要です。

透明性確保の工夫|契約結果の公開方法

少額随意契約の透明性を確保するため、契約結果の公開を積極的に行う自治体が増えています。福岡県北九州市は、ウェブサイトで業務委託随意契約の契約結果を詳細に公開しています。公開内容は、件名、契約相手、契約金額、契約締結日、契約内容の詳細、根拠法令、予定価格などであり、部署ごとに一覧表で確認できます。これにより、住民や事業者は自治体の契約状況を把握でき、不適切な契約がないかをチェックすることが可能となります。

契約結果の公開方法は、自治体によって異なります。多くの自治体では、一定金額以上の随意契約について、月次または四半期ごとに契約結果を公表しています。公開項目は、契約件名、契約相手方、契約金額、契約日、随意契約理由などが一般的です。一部の自治体では、見積合わせに参加した全ての業者名と見積金額も公開しており、高い透明性を実現しています。また、電子調達システムを導入している自治体では、システム上で契約結果が自動的に公開される仕組みを構築しています。

契約結果の公開には、透明性向上だけでなく、不正防止や職員の意識向上という効果もあります。公開されることを前提とすることで、職員は適正な手続きと公平な業者選定を心がけるようになります。また、事業者にとっても、自治体の契約動向を把握でき、営業活動の参考となります。

民間事業者のための受注拡大戦略|活用のポイント

競争入札参加資格の登録|事前準備の重要性

少額随意契約に参加するためには、多くの自治体で競争入札参加資格の登録が前提となります。この資格は、自治体と契約する際の基本的な要件であり、財務状況、納税状況、事業実績などが審査されます。登録は通常2年または3年ごとに更新が必要で、定期的な受付期間が設定されています。多くの自治体では、年度初め(4月)や年度途中(10月)に定期受付を行っており、この期間内に申請することが原則です。ただし、新規事業者や転入事業者のために随時受付を行っている自治体もあります。

登録に必要な書類は、申請書、登記簿謄本、納税証明書、財務諸表、実績調書、資格証明書などです。業種によっては建設業許可証、古物商許可証、産業廃棄物処理業許可証など、特定の許認可が必要な場合もあります。申請は窓口持参または郵送が一般的でしたが、近年は電子申請システムを導入する自治体が増えており、オンラインでの申請が可能になっています。電子申請では、書類のスキャンデータをアップロードするだけで手続きが完了し、利便性が大幅に向上しています。

登録のメリットは、少額随意契約の見積依頼を受けられることに加え、一般競争入札や指名競争入札への参加資格も得られる点です。つまり、一度登録すれば、自治体の全ての契約案件に参加する可能性が開けます。また、複数の自治体に登録することで、受注機会をさらに拡大できます。例えば、本社所在地の市だけでなく、営業エリア内の近隣市町村や都道府県にも登録することで、より多くの案件にアクセスできます。登録は事業者にとって初期投資のような位置づけであり、公共調達市場への参入を本気で考えるなら、必ず取り組むべき手続きです。

小規模事業者登録制度の活用|地元優遇制度

多くの自治体では、小規模事業者登録制度を設けており、これは少額随意契約に特化した簡易登録制度です。通常の競争入札参加資格よりも要件が緩和されており、小規模な事業者でも登録しやすくなっています。例えば、東京都足立区の「小規模工事契約希望者登録」では、区内事業者で従業員20人以下の建設業者が対象となり、50万円以下の小規模工事について優先的に発注を受けることができます。登録要件も簡素化されており、納税証明書と事業実績書程度で申請可能です。

この制度のメリットは、通常の入札参加資格では求められる財務基準や実績要件が緩和される点です。創業間もない事業者や、公共工事の実績がない事業者でも登録でき、少額案件から実績を積んでいくことが可能です。また、地元事業者に限定している自治体が多いため、大手企業との競争を避けながら受注できる点も魅力です。令和7年の基準額引き上げにより、小規模事業者登録制度の対象案件も拡大しており、受注機会が増加しています。

活用のポイントは、自社の営業エリア内の自治体で、どのような小規模事業者支援制度があるかを調査することです。自治体のウェブサイトの契約情報ページや、商工会議所・商工会を通じて情報を収集します。また、登録後は定期的に自治体の調達情報をチェックし、見積依頼があれば迅速に対応することが重要です。小規模事業者登録制度は、地域密着型の事業者にとって、公共調達への入口となる貴重な機会であり、積極的に活用すべき制度です。

見積書作成の実務ポイント|選ばれるための工夫

少額随意契約で選ばれるためには、正確で分かりやすい見積書の作成が不可欠です。自治体は税金を使って契約するため、見積書の記載内容が不明確だったり、仕様書の要件を満たしていなかったりすると、選定から外される可能性があります。見積書に必ず記載すべき項目は、日付、宛名(自治体名と担当課名)、見積番号、件名、納期、納品場所、支払条件、有効期限、明細(品名、数量、単価、金額)、消費税額、合計金額、振込先、担当者連絡先などです。

見積書作成のポイントは、仕様書の内容を完全に満たすことです。自治体から示された仕様書には、必須要件と希望要件が記載されており、全ての必須要件を満たさない見積は失格となります。例えば、「A4サイズ、100枚、3日以内納品」という仕様に対し、「A4サイズ、100枚、5日後納品」という見積を提出すると、納期要件を満たさないため選定されません。また、仕様書で指定された製品やメーカーがある場合は、それを正確に記載します。代替品を提案する場合は、事前に自治体に確認し、承諾を得る必要があります。

価格の設定も重要です。安すぎる価格は品質や履行能力に疑問を持たれ、高すぎる価格は当然選ばれません。市場価格を十分に調査し、適正な利益を確保しつつ競争力のある価格を設定します。また、内訳を明確にすることで、価格の妥当性を示すことができます。例えば、「商品代金○○円、配送費△△円、設置費□□円」のように分けて記載します。さらに、アフターサービスや保証内容、納期の柔軟性なども見積書に記載し、価格以外の付加価値をアピールすることも有効です。丁寧で正確な見積書は、事業者の信頼性を示すものであり、継続的な取引につながります。

自治体との信頼関係構築|継続受注につなげる方法

少額随意契約で継続的に受注するためには、自治体との信頼関係構築が最も重要です。一度の契約で終わらせず、長期的な取引関係を築くことが、安定した経営につながります。信頼を得るための基本は、約束を必ず守ることです。納期厳守、仕様どおりの納品、適正な価格、丁寧な対応という基本を徹底することで、「この業者なら安心して任せられる」という評価を得られます。

具体的な信頼構築のポイントとして、まず納品後のフォローアップが挙げられます。納品して終わりではなく、「問題なく使用できているか」「追加で必要なものはないか」など、アフターフォローを行うことで、顧客満足度が向上します。また、自治体の担当者とのコミュニケーションも重要です。見積依頼があった際の迅速な対応、不明点への丁寧な説明、トラブル発生時の誠実な対処などを通じて、信頼関係を深めていきます。ただし、過度な営業活動や接待は、公務員倫理規程に抵触する可能性があるため、節度を持った関係を保つことが必要です。

また、継続受注のためには品質の維持・向上が不可欠です。一度良い評価を得ても、次の契約で品質が低下すれば信頼を失います。常に高品質なサービスや製品を提供し続けることが重要です。さらに、自治体のニーズを先読みし、提案型の営業を行うことも効果的です。例えば、「このような製品もあります」「こちらの方がコストパフォーマンスが良いです」という提案をすることで、単なる受注業者ではなく、頼れるパートナーとしての位置づけを得られます。長期的な視点で自治体との関係を築くことが、安定した受注と事業成長の鍵となります。

よくある質問(FAQ)|実務で迷いやすいポイント

基準額ギリギリの契約はどう扱うべきか

予定価格が基準額ギリギリの場合、慎重な判断が必要です。例えば、都道府県で予定価格が395万円(税込)の工事は、基準額400万円以下のため少額随意契約が可能です。しかし、わずかな見積増額や仕様変更により400万円を超える可能性がある場合は、当初から競争入札として手続きを進める方が安全です。契約締結後に金額が増加し、基準額を超えることが判明すると、契約手続きのやり直しが必要となり、大きな混乱を招きます。

また、基準額ギリギリの案件を意図的に少額随意契約とすることは、競争入札回避の意図があると見なされるリスクがあります。監査では、基準額に近い金額の随意契約について、「本当にこの金額で適正か」「意図的に基準額以下に抑えていないか」という視点でチェックされます。したがって、予定価格の積算根拠を明確にし、市場価格調査や過去の実績などの客観的データに基づいて予定価格を設定することが重要です。恣意的に金額を調整したと疑われないよう、透明性のある手続きを心がけましょう。

実務的には、基準額の90%以上の案件については、競争入札も視野に入れて検討することが望ましいです。例えば、都道府県で360万円以上の工事であれば、少額随意契約も可能ですが、競争入札とすることでより有利な条件が得られる可能性もあります。また、透明性や公平性の観点からも、競争入札の方が説明しやすい場合があります。基準額はあくまで上限であり、基準額以下でも競争入札を行うことは自治体の裁量として認められています。個々の案件の性質を踏まえ、最適な契約方式を選択することが重要です。

年度をまたぐ契約の基準額判断

年度をまたぐ契約(債務負担行為による契約や複数年度契約)における基準額の判断は、契約総額で行うのが原則です。例えば、令和7年4月から令和8年3月までの1年間の清掃業務委託で、月額10万円、年額120万円の契約を結ぶ場合、市区町村では基準額100万円を超えるため、少額随意契約の対象外となり、競争入札が必要です。単月では10万円と少額ですが、契約期間全体の総額で判断されます。

さらに複雑なのは、複数年度にまたがる契約です。例えば、令和7年度から令和9年度までの3年間のシステム保守契約で、年額80万円、総額240万円の場合、市区町村の基準額100万円を大きく超えるため、競争入札が必要です。ただし、自治体によっては年額で判断する運用をしている場合もあるため、契約規則や財務規則を確認する必要があります。一般的には総額で判断することが多いですが、賃貸借契約など継続的な契約については年額で判断する場合もあり、自治体ごとの運用ルールに従います。

実務上の注意点として、年度更新を前提とした契約の扱いがあります。例えば、1年間の契約を毎年更新する形式の場合、各年度ごとに個別の契約と見なすか、複数年度の継続契約と見なすかで判断が分かれます。自動更新条項があり、実質的に複数年度契約となっている場合は、更新後の総額も含めて判断すべきとされています。一方、年度ごとに契約を締結し直す形式であれば、各年度の金額で判断されます。基準額の判断で迷う場合は、会計課や契約担当課に確認し、適切な手続きを取ることが重要です。

消費税込み・税抜きの判断基準

少額随意契約の基準額判断は、消費税込みの金額で行うのが原則です。地方自治法施行令における「予定価格」とは、消費税および地方消費税を含んだ金額を指します。例えば、都道府県で物品購入の予定価格が税抜280万円、税込308万円(消費税10%)の場合、基準額300万円を超えるため、少額随意契約の対象外となり、競争入札が必要です。逆に、税抜270万円、税込297万円であれば、基準額300万円以下のため、少額随意契約が可能です。

この原則を理解していないと、誤った契約手続きを行うリスクがあります。実務では、「税抜で基準額以下だから大丈夫」と判断してしまい、税込では基準額を超えているという事例が散見されます。これは明らかな手続きミスであり、監査で指摘される原因となります。したがって、予定価格を設定する段階で、必ず消費税込みの金額を計算し、基準額と比較する必要があります。

また、消費税率の変更にも注意が必要です。現在は10%ですが、今後税率が変更される可能性もあります。税率変更後は、同じ商品でも税込金額が変わるため、基準額との関係も変わります。契約書や見積書においても、消費税の記載方法に注意が必要です。「消費税別途」「消費税込み」を明確にし、金額の認識違いを防ぎます。自治体の予算は消費税込みで計上されているため、見積や契約においても消費税込みの金額を基準とすることが、事務処理の混乱を防ぐポイントです。

複数の見積もりが必要な場合と不要な場合の違い

少額随意契約において、複数見積の要否は、自治体の契約規則や案件の性質によって異なります。多くの自治体では、「2者以上から見積を徴するよう努める」という規定を設けており、原則として複数見積を求めています。これは価格の妥当性を確保し、競争性を保つためです。都道府県や大規模自治体では、一定金額以上(例:50万円以上)の案件について、複数見積を義務化している場合もあります。

一方、複数見積が不要または困難な場合もあります。具体的には、契約の性質上、相手方が特定される場合(著作権者からの著作物購入、特許品の調達、既存システムの開発元への保守委託など)、緊急の必要により複数見積を取る時間的余裕がない場合、過去の実績から価格が妥当と判断できる場合、取扱業者が1社しかない場合などです。これらの場合は1社見積も認められますが、随意契約理由書に詳細な理由を記載し、価格の妥当性を示す資料を添付する必要があります。

実務上のポイントは、複数見積の要否を事前に判断し、記録に残すことです。「複数見積を取るべきか」「1社見積でも許容されるか」を検討し、その判断根拠を文書化します。また、複数見積を取る場合でも、形式的に見積を集めるのではなく、実質的な競争が働くよう、異なる業者に依頼することが重要です。関連会社や系列会社から見積を取っても、真の競争とは言えません。透明性と公正性を確保するため、独立した複数の業者から見積を徴収し、適正な価格での契約を実現することが求められます。

まとめ|制度改正を踏まえた今後の展望

基準額引き上げがもたらす実務の変化

令和7年4月の基準額引き上げは、自治体の契約実務に大きな変革をもたらしています。従来は一般競争入札が必要だった中規模案件が少額随意契約の対象となり、契約件数全体に占める少額随意契約の割合が大幅に増加しています。これにより、入札公告の作成、入札書類の審査、開札手続きなど、競争入札に伴う事務作業が削減され、職員の業務負担が軽減されています。特に人手不足に悩む小規模自治体では、この効果が顕著に現れています。

一方で、少額随意契約の件数増加により、新たな課題も生じています。見積合わせの回数増加、契約書作成の件数増加、随意契約理由書の作成負担増加などです。また、契約金額が大きくなることで、価格の妥当性確認や業者選定の適正性がより重要となり、担当者の責任も大きくなっています。さらに、監査での説明責任も増大しており、記録の整備と保管が従来以上に求められています。

民間事業者にとっても、大きな変化が起きています。従来は入札参加が必要だった案件が、見積提出のみで参加できるようになり、受注機会が拡大しています。特に中小企業や地元事業者にとって、公共調達市場への参入障壁が下がったことは大きなメリットです。ただし、競争相手も増えるため、価格競争力や提案力の強化が必要となっています。基準額引き上げは、自治体と事業者の双方に影響を与えており、それぞれが新しい環境に適応することが求められています。

透明性と効率性の両立に向けた課題

基準額引き上げにより、透明性と効率性のバランスがより重要な課題となっています。少額随意契約の拡大は効率性を高めますが、透明性の低下を招くリスクもあります。この課題に対応するため、多くの自治体ではオープンカウンター方式の導入、契約結果の積極的な公表、内部監査の強化など、透明性確保の取組みを進めています。また、随意契約ガイドラインの策定、職員研修の実施、チェック体制の構築なども行われています。

透明性確保のための具体的な施策としては、一定金額以上の案件についてオープンカウンター方式を義務化する、契約結果を四半期ごとにウェブサイトで公表する、見積合わせの記録を詳細に残す、特定業者への偏りを定期的にチェックするなどがあります。これらの取組みにより、効率性を維持しながら透明性も確保するバランスの取れた運用が可能となります。ただし、過度な透明性確保策は、かえって事務負担を増大させる可能性もあるため、実効性と効率性を両立させる制度設計が求められます。

また、職員の意識改革も重要です。少額随意契約は簡便な手続きですが、公金を使用する契約である以上、適正性と公平性は常に意識しなければなりません。金額が少額であっても、随意契約理由書の作成、複数見積の徴収、価格の妥当性確認など、基本的な手続きを省略してはなりません。職員研修を通じて、少額随意契約の適正な運用方法を周知徹底し、全職員が同じ認識で業務にあたることが重要です。透明性と効率性の両立は、制度の問題だけでなく、運用する職員の姿勢にも大きく依存しています。

自治体と事業者双方に求められる対応

基準額引き上げを契機として、自治体と事業者の双方が新しい環境に適応することが求められています。自治体側には、契約規則の改正、運用ガイドラインの策定、職員研修の実施、オープンカウンター方式の導入検討、契約結果の公表、内部監査体制の強化などが求められます。また、基準額引き上げの効果を検証し、さらなる改善につなげることも重要です。契約期間の短縮効果、事務負担の軽減効果、コスト削減効果などを定量的に測定し、PDCAサイクルを回していくことが望ましいです。

事業者側には、競争入札参加資格の登録、小規模事業者登録制度の活用、自治体の調達情報の継続的なチェック、見積書作成能力の向上、価格競争力の強化、品質管理体制の構築などが求められます。また、自治体との信頼関係を構築し、継続的な取引につなげる努力も重要です。基準額引き上げは受注機会の拡大をもたらしますが、競争も激化するため、単に安い価格を提示するだけでなく、品質、納期、アフターサービスなどの付加価値で差別化を図ることが必要です。

自治体と事業者は、対立する関係ではなく、地域の公共サービス向上という共通目標に向けて協力するパートナーです。自治体は、公正で透明性の高い調達を行いながら、地域事業者の育成にも配慮する必要があります。事業者は、適正な価格と高品質なサービスを提供し、自治体の信頼に応えることが求められます。双方が制度の趣旨を理解し、適切に対応することで、効率的で公正な公共調達が実現され、最終的には住民の利益につながります。基準額引き上げは、自治体と事業者の関係を見直し、より良い協力関係を構築する機会でもあります。

今後の制度見直しの可能性と動向

令和7年の基準額引き上げは、約50年ぶりの大規模な改正でしたが、今後も定期的な見直しが必要です。物価は常に変動しており、今回設定された基準額も、10年後、20年後には実態に合わなくなる可能性があります。前回のように50年間据え置くことなく、定期的に基準額を見直す仕組みの構築が求められます。例えば、5年ごとに物価指数を参照して基準額を見直す、一定の物価上昇率に達した場合に自動的に改定するなど、柔軟な制度設計が考えられます。

また、電子契約や電子決済の普及により、契約手続きの在り方も変化しています。電子調達システムの高度化、AIによる見積審査、ブロックチェーン技術を活用した透明性確保など、新技術の導入により、少額随意契約のプロセスがさらに効率化・透明化される可能性があります。今後は、デジタル技術を活用した契約手続きの革新も進むと予想されます。自治体は、これらの技術動向を注視し、積極的に導入を検討することが望ましいです。

さらに、地方分権の観点から、基準額設定の権限をより自治体に委ねる方向性も考えられます。現在は国が施行令で上限を定め、自治体がその範囲内で設定する仕組みですが、将来的には自治体の裁量をさらに拡大し、地域の実情に応じた柔軟な基準額設定を認めることも検討されるかもしれません。いずれにしても、少額随意契約制度は、自治体の契約実務を支える重要な制度であり、今後も時代の変化に応じて進化していくことが期待されます。自治体職員と事業者は、制度の動向を常に把握し、変化に柔軟に対応していくことが求められます。

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