入札のくじ引きとは?同価の場合の落札者決定と電子くじの仕組み

入札に参加していると、複数の事業者が同じ金額で入札し、最も安い価格が並んでしまうことがあります。このとき、落札者はどう決まるのでしょうか。答えは、意外に思われるかもしれませんが「くじ引き」です。競争入札では、落札となるべき同価の入札をした者が二人以上いる場合、くじによって落札者を決めることが法令で定められています。近年は、これを電子的に行う電子くじも広く使われています。本記事では、入札のくじ引きがどんな場面で行われるのか、なぜ再入札ではなくくじなのか、そして電子くじの仕組みまでを、実務目線で解説します。
この記事のポイント
- 落札となるべき同価の入札が二者以上あるとき、くじで落札者を決めるのが原則
- 再入札ではなくくじにするのは、恣意的な判断を排除し過度な競争を防ぐため
- 電子入札では、くじ番号を使った電子くじで自動的に落札者が決まる
入札のくじ引きとは
入札のくじ引きとは、競争入札で落札者となるべき同じ価格の入札をした者が複数いる場合に、くじによって落札者を決める手続きです。競争入札は、原則として最も有利な価格を提示した者が落札します。ところが、複数の事業者がまったく同じ最低価格で入札することがあり、その場合は価格だけでは順位をつけられません。そこで、公平に落札者を決める方法として、くじが用いられます。
これは思いつきの慣行ではなく、法令に根拠があります。地方自治体の入札については、地方自治法施行令に、落札となるべき同価の入札をした者が二人以上あるときは、直ちにその入札者にくじを引かせて落札者を定めなければならない、という趣旨の規定があります。国の契約でも同様の考え方が採られています。つまり、同価の場合にくじで決めることは、発注者が任意に選んだやり方ではなく、制度として定められた正式な手続きなのです。落札の基本的な仕組みは応札とはもあわせてご覧ください。
どんな場面でくじになるのか
くじ引きになるのは、落札の対象となる価格が並んだ場合です。一般競争入札や指名競争入札で、最低価格を提示した者が複数いて、その金額が同じであれば、くじで決めます。最低制限価格が設けられている案件では、その価格以上で最も安い有効な入札が並んだ場合にくじとなります。総合評価方式のように価格以外の要素も点数化する方式では、総合的な評価点が同じになった場合にくじが行われることがあります。
同価が生じるのは、決して珍しいことではありません。特に、発注者が公表する設計金額や、積算のルールがある程度分かる案件では、各社が同じような計算をした結果、金額が一致することがあります。予定価格や最低制限価格に近い水準に応札が集中し、複数社が同額で並ぶ、という光景は実務でしばしば見られます。くじ引きは、こうした価格競争の帰結として、避けられない場面で登場する仕組みだといえます。予定価格や最低制限価格の考え方は予定価格とはもご覧ください。
なぜ再入札ではなくくじなのか
同価だったなら、もう一度入札し直せばよいのではないか、と考える人もいるでしょう。しかし、同価の場合に再入札を行わず、くじで決めるのには理由があります。第一に、契約担当者の恣意的な判断を排除するためです。同価になったときに、発注者が特定の事業者を選べるようにすると、公正さが損なわれます。くじという偶然性に委ねることで、誰にとっても公平で、発注者の意向が入り込まない決め方が実現します。
第二に、過度な競争を防ぐためです。同価のたびに再入札を繰り返せば、事業者は少しでも安い金額を出そうと値を下げ続け、際限のない安値競争に陥りかねません。それは、適正な価格での契約や、公共サービスの質の確保という観点から望ましくありません。くじで一度で決めることは、行き過ぎた価格競争に歯止めをかける意味も持っています。こうした理由から、同価の場合はくじで決めることが、合理的な仕組みとして定着しています。
この背景を理解すると、くじで負けたときの受け止め方も変わります。くじは運の要素そのものであり、負けたからといって提案や価格が劣っていたわけではありません。同価まで持ち込んだ時点で、価格競争としては互角だったということです。くじの結果に一喜一憂するより、そもそも同価の勝負に持ち込める競争力を保つことに目を向けるほうが、建設的だといえます。
電子くじの仕組み
かつては、同価になった場合、入札会場でその場にいる事業者が実際にくじを引いていました。しかし、電子入札が普及した現在は、多くの発注者が電子くじを採用しています。電子くじは、会場に集まることなく、システム上で自動的に落札者を決める仕組みです。物理的なくじを引く必要がなく、遠隔地の事業者も同じ条件で参加できるため、電子入札との相性がよく、広く使われています。
電子くじの一般的な仕組みはこうです。事業者は入札書(見積書)を提出する際に、あわせて任意の「くじ番号」を入力します。同価の入札が複数生じた場合、システムはこれらのくじ番号を使って、一定の計算により落札者を決めます。たとえば、同価となった事業者のくじ番号の合計を、同価の事業者数で割った余りを求め、その余りに対応する順番の事業者を落札者とする、といった方法が用いられます。計算のルールはあらかじめ公表されており、誰が操作しても同じ結果になるため、公正性が保たれます。
この仕組みのポイントは、くじ番号そのものが結果を直接決めるわけではないことです。自分のくじ番号だけでなく、他の同価事業者のくじ番号も計算に入るため、事前に有利な番号を狙って入力することはできません。つまり、電子くじは番号入力という行為を通じて、偶然性を担保しています。事業者にとっては、入札書の提出時にくじ番号の入力を忘れないことが実務上の注意点になります。番号が未入力だと、同価になったときに不利益を被る可能性があるため、システムの案内に従って確実に入力しておく必要があります。
くじに関する実務上の注意
入札に参加する事業者が、くじに関して押さえておくべき実務上の注意はいくつかあります。まず、電子くじの案件では、入札書の提出時にくじ番号の入力が求められることが多いため、システムの入力欄を見落とさないことです。締切間際に慌てて手続きすると、入力漏れが起こりがちです。時間に余裕をもって、案内に沿って正確に入力しましょう。
次に、くじで決まる可能性を前提に、価格戦略を考えることです。予定価格や最低制限価格に張り付く水準では同価が生じやすく、くじ勝負になりがちです。運任せの勝負を避けたいなら、価格以外の要素で差がつく総合評価方式やプロポーザル方式の案件を狙う、という選択もあります。逆に、純粋な価格競争の案件では、同価によるくじは避けられない要素として受け入れ、一件ごとの結果に左右されすぎないことも大切です。総合評価方式の考え方は総合評価落札方式とはもあわせてご覧ください。
また、くじの結果や、くじが行われた事実は、入札結果として公表されることがあります。自社が関わった案件でくじが行われたかどうかは、入札結果の公表資料で確認できます。同価が頻発する分野では、それだけ価格が読まれやすく、競争が激しいということでもあります。結果を分析することで、その分野の価格の傾向や、競合の動きを読む手がかりも得られます。
同価が生じやすい入札の特徴
くじ勝負を減らしたいなら、そもそもどんな入札で同価が生じやすいかを理解しておくと役立ちます。同価が起きやすいのは、積算の根拠が明確で、各社が同じ計算にたどり着きやすい案件です。発注者が設計金額や積算の考え方を公表していると、それをもとに各社が計算し、結果として近い、あるいは同じ金額に収束します。最低制限価格が設けられている案件では、多くの事業者がその価格ぎりぎりを狙うため、最低制限価格の周辺に応札が密集し、同価が発生しやすくなります。
逆に、業務の中身に幅があり、各社の見積りの前提が異なる案件では、金額が一致しにくく、同価は起きにくい傾向があります。つまり、標準化された定型的な業務ほどくじになりやすく、事業者の裁量や工夫が価格に反映される業務ほどくじになりにくい、という関係があります。自社が参加する案件が、どちらの性質に近いかを見ておくと、くじ勝負になる可能性をあらかじめ見積もれます。くじが避けられない分野なら、それを前提に参加案件のポートフォリオを組む、という考え方もできます。
なお、最低制限価格そのものを事前に正確に知ることはできません。発注者は、応札の直前に最低制限価格を確定させたり、算定式に変動要素を入れたりして、価格が読まれすぎないよう工夫していることがあります。それでも同価が生じるのは、各社の積算能力が拮抗している証でもあります。最低制限価格の仕組みは、当サイトの入札用語の解説もあわせて参考にしてください。
くじを前提とした心構え
価格競争の入札に参加する以上、くじによる決着は避けられない要素として受け入れる心構えも必要です。同価まで持ち込めたということは、価格面では他社と互角に戦えたということであり、それ自体が自社の積算力の証明です。くじで負けたとしても、その競争力は次の案件で必ず生きてきます。一件ごとの勝敗に一喜一憂して価格を無理に下げると、たとえ落札できても採算が合わず、かえって経営を圧迫しかねません。
大切なのは、くじで決まる範囲は運に委ね、自社がコントロールできる部分に力を注ぐことです。適正な積算を徹底し、無理のない価格で応札を続ければ、くじの勝ち負けは長い目で見れば平準化されていきます。むしろ、くじ勝負を嫌って価格以外で差がつく案件へ軸足を移すか、価格競争の案件でも一定の勝率を受け入れて数で勝負するか、自社の戦略を定めておくことが重要です。くじは、価格競争という土俵の性質を象徴する仕組みであり、その土俵で戦うかどうかを見極める材料でもあります。
よくある質問
同価になったら必ずくじですか
落札となるべき同価の入札が二者以上あるときは、くじで落札者を決めるのが原則です。再度入札をやり直すのではなく、直ちにくじを行うことが法令で定められています。価格以外の評価がある方式では、総合的な評価点が同じになった場合にくじとなることがあります。
くじ番号は有利・不利がありますか
電子くじでは、自分の番号だけでなく他の同価事業者の番号も計算に入るため、特定の番号が有利になることはありません。番号は偶然性を生むための仕組みで、どの番号を入れても公平です。ただし入力を忘れると不利益を被る可能性があるため、確実に入力してください。
くじで負けたら次に生かせることはありますか
くじは運によるもので、負けても価格や提案が劣っていたわけではありません。同価に持ち込めた事実は、価格競争力があった証拠です。同価が頻発する分野なら、価格以外で差がつく方式を狙うなど、くじ勝負を避ける戦略を考える材料になります。
まとめ
入札のくじ引きは、落札となるべき同価の入札が二者以上あるときに、くじで落札者を決める法令上の手続きです。再入札ではなくくじにするのは、恣意的な判断を排除し、過度な価格競争を防ぐためです。電子入札では、くじ番号を使った電子くじで自動的に落札者が決まり、公正性が担保されています。参加する事業者は、くじ番号の入力漏れに注意し、同価が生じやすい価格競争ではくじ勝負を前提に戦略を立てることが大切です。くじの結果に一喜一憂するより、同価に持ち込める競争力や、価格以外で差がつく案件の選び方に目を向けることが、長い目で見た受注につながります。関連して応札とは、総合評価落札方式とはもあわせてご覧ください。
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※本記事は公開時点の情報をもとに作成しています。くじの方法や電子くじの仕組みは発注機関により異なる場合があります。具体的な内容は各発注機関の入札説明書やe-Gov法令検索等の一次情報をご確認ください。