設計業務委託契約約款とは?工事の約款との違いを解説

設計業務委託契約約款とは?工事の約款との違いを解説

公共工事の請負契約に標準的なひな形があるように、設計や調査の業務委託にもひな形があります。それが公共土木設計業務等標準委託契約約款です。設計、調査、計画に関する業務を建設コンサルタント等に委託する際の契約条件を定めたもので、多くの発注機関がこれに準拠した約款を用いています。工事の約款とは似ているようで、成果物の扱いや技術者の規定に違いがあります。本記事では、この約款の構成、工事の約款との違い、実務で押さえるべき条項を解説します。

この記事のポイント

  • 設計・調査・計画の業務委託に用いられる標準的な契約条件
  • 管理技術者・照査技術者の規定が置かれている
  • 成果物の引渡しと検査、著作権の扱いが定められる

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目次

なぜ標準の約款があるのか

契約の条件は、本来なら当事者が自由に決められます。それでも標準的なひな形が用意されているのには理由があります。

第一に、公平な条件を確保するためです。発注者が一方的に有利な条件を定めれば、受注者が不当な負担を負います。標準の約款があれば、著しく偏った条件を避けられます。

第二に、手続きを予測可能にするためです。発注機関ごとに条件がばらばらでは、受注者はそのつど読み込まなければなりません。共通の枠組みがあれば、実務の負担が減ります。

第三に、紛争を防ぐためです。あらかじめ定めがあれば、問題が起きたときの処理の仕方が明確になります。

工事については公共工事標準請負契約約款が同じ役割を果たしています。詳しくは公共工事標準請負契約約款とはをご覧ください。

工事の約款との違い

設計業務の約款と工事の約款には、共通する部分も多くあります。契約期間、委託料の支払い、契約の解除、紛争の解決——これらの骨格は似ています。

違いが出るのは、対象が物ではなく成果物であることに由来する部分です。

項目工事の約款設計業務の約款
技術者の規定現場代理人、主任技術者・監理技術者管理技術者、照査技術者
目的物構造物図面・報告書などの成果物
中間の確認段階確認、中間検査打合せ、照査
著作権通常は論点にならない成果物の利用に関する定めがある

とくに特徴的なのが、照査技術者に関する規定が置かれている点です。成果物の内容を技術的に確認する立場を、契約上明確に位置づけています。

また、著作権の定めがあることも、工事にはない特徴です。設計図書は著作物にあたり得るため、その扱いを定めておく必要があります。

技術者の役割については管理技術者とは、照査とはをご覧ください。

成果物の引渡しと検査

約款の中核となるのが、成果物の完成と引渡しに関する定めです。

受注者は、履行期間内に業務を完了し、成果物を発注者に引き渡します。発注者は検査を行い、合格すれば引渡しを受け、業務委託料を支払うという流れです。

ここで注意したいのが、検査に合格しなければ支払いが始まらないことです。成果物を提出しただけでは完了にならず、内容の確認を経る必要があります。

検査で指摘があれば、修正して再度確認を受けます。履行期間の末日ぎりぎりに提出すれば、修正の時間がありません。余裕をもった工程が必要です。

成果物は電子データで納品するのが基本になっています。形式が要領に合っていなければ受け取ってもらえないため、着手時の確認が欠かせません。詳しくは電子納品とはをご覧ください。

履行期間の変更

業務が予定どおり進まないことは、珍しくありません。約款には、履行期間の変更に関する定めが置かれています。

変更が認められるのは、受注者の責めに帰することができない事由による場合です。たとえば次のような場面が考えられます。

  • 発注者から提供される資料の提出が遅れた
  • 関係機関との協議が整わず、設計の前提が定まらない
  • 地元との調整が長引き、計画が固まらない
  • 発注者の指示により、検討する内容が増えた
  • 天災など不可抗力により業務を進められない

これらの場合、履行期間の延長や業務委託料の変更が協議されます。協議を申し出ることが出発点であり、黙って残業で吸収しても評価されません。

そのためには、遅れの原因を記録しておくことが前提です。打合せ簿に経緯が残っていれば、協議の根拠になります。

著作権と成果物の利用

設計業務に特有の論点が、著作権です。

設計図書や報告書は、作成者の思想や創作性が表れたものとして、著作物にあたり得ます。すると、誰がどこまで使えるのかという問題が生じます。

発注者としては、成果物を事業に使わなければなりません。工事の発注に用いる、他の業務の資料にする、公表する——こうした利用ができなければ、委託した意味がなくなります。

そこで約款では、成果物の利用に関する定めが置かれます。発注者が必要な範囲で利用できるようにしつつ、受注者の権利にも配慮する——という形で整理されます。

実務で問題になりやすいのが、受注者が自社の実績として公表できるかです。守秘義務との関係もあるため、公表を考えるなら事前に発注者の了解を得るのが安全です。詳しくは秘密保持義務とはをご覧ください。

成果物に不備があった場合

引渡しの後に、成果物の不備が見つかることがあります。設計の誤りが、工事の段階で判明するというケースです。

この場合、受注者は契約不適合責任を負うことになります。契約の内容に適合しない成果物であった以上、その修補や損害の賠償が問題になります。

設計の誤りは、工事での手戻りを生みます。すでに施工した部分をやり直すとなれば、損害は大きくなります。だからこそ、照査という仕組みが設けられているわけです。

責任を追及できる期間には定めがあり、引渡しの時点から起算されます。約款で期間を確認しておきましょう。

契約不適合責任の考え方は契約不適合責任とはをご覧ください。

契約書と仕様書の関係

業務の条件は、約款だけで定まるわけではありません。複数の文書が組み合わさって、全体の条件を構成します。

  • 契約書——業務の名称、履行期間、委託料など基本的な事項
  • 約款——権利義務の一般的な条件
  • 共通仕様書——業務の進め方に関する共通のルール
  • 特記仕様書——その業務に固有の条件

このうち、実務で最も頻繁に参照するのが特記仕様書です。業務の範囲、成果物の内容、技術者の要件——案件ごとの条件はここに書かれます。

記載が食い違う場合の優先順位も定められています。一般に、個別の定めが一般的な定めに優先します。特記仕様書と共通仕様書で内容が異なれば、特記仕様書が優先するという関係です。

応札の段階で、特記仕様書を読み込むことが欠かせません。工事における設計図書の構成は設計図書とはをご覧ください。

業務の内容が変わるとき

設計業務では、進めるうちに検討すべき内容が変わることがよくあります。

当初は1案の検討だったのが、比較案を求められた。地元との協議で計画が変わり、やり直しになった。他の業務の成果が出て、前提条件が変わった——いずれも珍しくありません。

こうした場合、約款に基づいて業務内容の変更が行われます。発注者が変更の内容を示し、必要に応じて履行期間や委託料が変更されます。

問題になりやすいのは、変更の手続きを経ずに作業が増えていく場合です。打合せのたびに少しずつ検討項目が増え、気づけば当初の倍の工数がかかっている——という事態です。

防ぐには、打合せの記録に決定事項を明記し、工数が増える内容であればその場で指摘することです。「持ち帰って検討します」で済ませ続けると、後から主張しにくくなります。

工事における同様の論点は条件明示とはをご覧ください。

委託料の支払い方

業務委託料は、どのように支払われるのでしょうか。

基本は、業務が完了してからです。成果物を引き渡し、検査に合格した後に請求し、支払いを受けます。

ただし、履行期間が長い業務では、完成まで入金がないと資金繰りが厳しくなります。そのため、約款には部分払や前金払に関する定めが置かれることがあります。

部分払は、業務の進捗に応じて一部を支払う仕組みです。どの段階でいくら支払うかは、契約で定められます。

これらを利用できるかどうかは案件によるため、契約の段階で確認しておきましょう。資金計画に影響します。

詳しくは部分払(出来高払)とは、前払金とはをご覧ください。

建築設計の約款

ここまで土木の設計業務を前提に述べてきましたが、建築の設計業務には別の約款があります。

公共建築の設計業務については、公共建築設計業務標準委託契約約款が用意されています。建築士法に基づく業務であり、建築士の資格や業務の区分など、土木とは異なる前提があります。

とはいえ、契約の骨格は共通します。成果物の引渡しと検査、履行期間の変更、著作権の扱い——考え方は近いものです。

自社が受託する業務がどちらに当たるのか、どの約款が適用されるのかを、契約の段階で確認してください。

公共建築の仕様の枠組みは公共建築工事標準仕様書とは、建築確認の手続きは計画通知とはをご覧ください。

再委託に関する定め

約款には、業務の再委託に関する定めも置かれています。

業務の全部を第三者に委託することは認められません。発注者はその会社の技術力を評価して契約したのですから、まるごと他社に任せるのでは前提が崩れます。

主要な部分についても、再委託は制限されます。一部を委託する場合には、あらかじめ発注者の承諾を得るのが通常です。誰に、どの範囲を委託するのかを届け出ます。

なお、再委託した部分についても、品質の責任は元の受注者が負います。委託先の成果を確認し、全体として整合の取れた成果物に仕上げる責任は変わりません。

詳しくは履行体制図とは、再々委託とはをご覧ください。

紛争が生じたとき

業務をめぐって、発注者と受注者の主張が食い違うことがあります。成果物の品質、業務の範囲、委託料の増減——いずれも争点になり得ます。

約款には、こうした場合の処理についての定めが置かれます。まずは協議による解決を図り、それでも整わない場合の手続きが示されます。

とはいえ、紛争に至る前に防ぐのが最善です。そのために有効なのが、やはり記録です。打合せで何が決まったか、どのような指示があったか、いつ資料を受け取ったか。これらが残っていれば、認識の食い違いは起きにくくなります。

工事における紛争処理の仕組みは建設工事紛争審査会とはをご覧ください。

約款を読むのは、争うためではありません。双方が何を負っているのかを理解し、滞りなく業務を進めるためです。契約の前に一度目を通しておく価値があります。

業務の一部を再委託できますか

全部の再委託は認められず、主要な部分も制限されます。一部を委託する場合は、あらかじめ発注者の承諾を得るのが通常です。委託した部分についても品質の責任は元の受注者が負います。

完成前に支払いを受けられますか

基本は検査合格後の支払いですが、履行期間の長い業務では部分払や前金払の定めが置かれることがあります。利用できるかは案件によるため、契約の段階で確認してください。

よくある質問

工事の約款と何が違いますか

骨格は似ていますが、対象が成果物であることから違いが生じます。技術者は管理技術者・照査技術者、目的物は図面や報告書、さらに著作権に関する定めが置かれる点が特徴です。

履行期間は延ばせますか

受注者の責めに帰することができない事由であれば、延長や委託料の変更が協議されます。資料の提出の遅れ、関係機関協議の未了などが該当し得ます。協議を申し出ることが出発点です。

成果物を実績として公表できますか

約款の著作権に関する定めや守秘義務との関係があります。公表を考えるなら、事前に発注者の了解を得るのが安全です。

まとめ

公共土木設計業務等標準委託契約約款とは、設計、調査、計画に関する業務を委託する際の標準的な契約条件を定めたものです。公平な条件の確保、手続きの予測可能性、紛争の防止という目的から設けられ、多くの発注機関がこれに準拠した約款を用いています。工事の約款と骨格は似ていますが、技術者として管理技術者・照査技術者が規定されること、目的物が成果物であること、著作権に関する定めが置かれることに違いがあります。成果物は履行期間内に完成させて引き渡し、検査に合格してはじめて業務委託料を請求できます。受注者の責めに帰することができない事由があれば、履行期間や委託料の変更が協議されます。引渡し後に不備が見つかれば契約不適合責任が問題になるため、照査による品質確保が重要です。関連して公共工事標準請負契約約款とは、照査とはもあわせてご覧ください。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、AIの特性上、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。本記事の内容に関するご質問、ご意見、または訂正すべき点がございましたら、お手数ですがお問い合わせいただけますと幸いです。

※本記事は公開時点の情報をもとに作成しています。約款の内容は改正されることがあり、発注機関により異なる場合があります。具体的な内容は国土交通省が公表する約款および各発注機関の契約書等の一次情報をご確認ください。

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