管理技術者とは?設計業務での役割と資格要件を解説

公共工事の設計や調査の業務を受注すると、必ず置かなければならない技術者がいます。それが管理技術者です。契約の履行に関して業務の管理と統括を行う立場で、土木設計業務等共通仕様書に定めがあります。業務の品質は、この管理技術者の力量に大きく左右されます。資格要件が定められているのも、そのためです。本記事では、管理技術者とは何か、照査技術者・担当技術者との違い、求められる資格、実務上の注意点を解説します。
この記事のポイント
- 管理技術者は、契約の履行に関し業務の管理および統括等を行う者
- 技術士やRCCMなど、業務内容に応じた資格の保有が求められる
- 原則として変更できず、やむを得ない場合は発注者の承諾が必要
管理技術者とは
管理技術者とは、契約の履行に関し、業務の管理および統括等を行う者です。契約書の規定に基づき、受注者が定めて発注者に通知します。
土木設計業務等共通仕様書では、用語の定義として明確に位置づけられています。設計、調査、測量といった業務を受託する際の、受注者側の責任者にあたる立場です。
工事でいえば現場代理人や監理技術者に相当すると考えると分かりやすいでしょう。発注者の窓口となり、業務全体に責任を持つ役割です。
ただし、設計業務には現場がありません。成果物としての図面や報告書をどう仕上げるかが問われます。したがって、管理技術者の仕事は内容の質を担保することに重心があります。
工事側の技術者については監理技術者と主任技術者の違いとはをご覧ください。
三者の役割分担
設計業務では、三つの技術者が定義されています。それぞれの役割を整理しておきましょう。
| 技術者 | 役割 |
|---|---|
| 管理技術者 | 契約の履行に関し、業務の管理および統括等を行う |
| 照査技術者 | 成果物の内容について技術上の照査を行う |
| 担当技術者 | 管理技術者のもとで業務を担当する |
この構成で特徴的なのが、照査技術者が別に置かれる点です。業務を進める者とは別に、成果物を技術的にチェックする立場を設けています。
設計の誤りは、後の工事で大きな手戻りを生みます。見落としを防ぐため、作る側と確かめる側を分けるという考え方です。
管理技術者は、照査技術者が行った照査結果の確認を行わなければならないとされています。照査に任せきりにするのではなく、その結果を踏まえて業務全体に責任を持つわけです。
照査の詳細は照査とはをご覧ください。
求められる資格
管理技術者には、資格の要件が定められています。誰でもなれるわけではありません。
共通仕様書では、業務内容に応じた資格を保有する技術者、またはこれと同等の能力と経験を有する技術者とされています。具体的には、次のようなものが挙げられます。
- 技術士——総合技術監理部門(業務に該当する選択科目)または業務に該当する部門
- 国土交通省登録技術者資格
- RCCM(シビルコンサルティングマネージャ)
- 土木学会認定土木技術者——特別上級、上級、1級
重要なのは、業務に該当する部門・科目であるという点です。技術士であれば何でもよいわけではなく、その業務の分野に対応していなければなりません。道路の設計であれば道路に関する部門、というように対応が求められます。
具体的に認められる資格は、案件ごとに特記仕様書で示されます。応札前に確認し、社内に該当する技術者がいるかを確かめる必要があります。
なお、発注機関によって認める資格の範囲が異なることがあります。自治体では独自の運用をしている場合もあるため、個別の確認が欠かせません。
原則として変更できない
実務でとくに注意すべきなのが、管理技術者は原則として変更できないという点です。
共通仕様書では、死亡、傷病、退職、出産、育児、介護等のやむを得ない理由による場合に限り、変更が認められるとされています。その場合も、同等以上の技術者とすることが求められ、受注者は発注者の承諾を得なければなりません。
なぜ厳しいのでしょうか。理由は、誰が担当するかが選定の理由になっているからです。プロポーザル方式で業務を受託した場合、提案した技術者の経歴や実績が評価されています。その人が代われば、選定の前提が崩れます。
したがって、応札の段階でその技術者を履行期間中ずっと配置できるかを見極める必要があります。他の業務との掛け持ちの状況、退職の予定、異動の可能性——社内の事情を踏まえた判断が要ります。
安易に「エースを出しておけば受注できる」と考えて配置すれば、後で身動きが取れなくなります。
管理技術者の実務
管理技術者は、日々どのような仕事をするのでしょうか。
第一に、発注者との協議です。業務の進め方、設計の方針、条件の確認——調査職員と打合せを重ねながら進めます。打合せの記録を残すことも重要な仕事です。
第二に、担当技術者の指揮です。業務を分担し、進捗を管理し、成果をまとめます。複数人で進める業務では、整合を取ることが課題になります。
第三に、関連する業務との調整です。共通仕様書では、調査職員が指示する関連のある設計業務等の受注者と十分に協議のうえ、相互に協力して業務を実施しなければならないとされています。測量、地質調査、他工区の設計——同じ事業のなかで走る業務との連携が求められます。
第四に、照査結果の確認です。照査技術者が指摘した事項が適切に反映されているかを確かめます。
業務の全体を見渡す立場であり、技術力に加えて調整力が問われる役割です。
評価につながる
管理技術者の働きは、業務の評価に直結します。
設計や調査の業務が完了すると、発注者が業務成績評定を行います。成果物の品質、履行の状況、打合せの対応——これらが点数化されます。
この評定は、次の業務の受注に影響します。プロポーザル方式や総合評価方式では、過去の業務成績が評価の対象になることが多いためです。
さらに、管理技術者個人の実績としても蓄積されます。どの業務で管理技術者を務め、どのような成績だったか。次の案件で提案する際の材料になります。
つまり、ひとつの業務を丁寧に務めることが、会社と個人の双方にとって次につながるわけです。詳しくは業務成績評定とはをご覧ください。
プロポーザルで評価される
設計や調査の業務は、価格だけで決まらないことが多くあります。企画力や技術力が問われる業務では、プロポーザル方式や総合評価方式が採られます。
このとき、管理技術者が誰かが評価の対象になります。評価される要素には、次のようなものがあります。
- 保有資格——技術士か、その部門は業務に合っているか
- 同種業務の実績——類似の業務を担当した経験があるか
- 業務成績——過去に担当した業務の評定点
- 表彰の実績——優良業務として表彰された経験
- 専任性——他の業務との兼務の状況
つまり、会社の実績だけでなく個人の実績が問われるのです。これは建設コンサルタント業界の特徴でもあります。
裏を返せば、技術者を育てることが受注力に直結します。若手に管理技術者を経験させ、実績を積ませる——中長期の人材育成が、そのまま経営戦略になります。
選定の仕組みは企画競争とはをご覧ください。
打合せ記録の重要性
管理技術者の実務のなかで、軽視されがちだが決定的に重要なのが打合せ記録です。
設計業務は、進めながら条件が固まっていく性格があります。当初の仕様書では決まっていなかった事項を、打合せで詰めていくことになります。
このとき、何が決まったのかを記録に残すかどうかで、後の展開が変わります。記録がなければ、「そんな指示はしていない」「いや、そう言われた」という水掛け論になります。
とくに、業務量が増える方向の指示は要注意です。当初の想定になかった検討を求められれば、その分の工数がかかります。記録があれば、設計変更の協議の根拠になります。
打合せ簿は、口頭のやり取りを書面に落とし、双方で確認するためのものです。形式的に作るのではなく、決定事項と宿題を明確に書く——これが管理技術者の基本動作です。
情報共有システムの活用については工事書類の簡素化とはもご覧ください。
成果物と検査
業務が完了すると、成果物を納品し、検査を受けます。この段階も管理技術者の責任範囲です。
成果物には、設計図面、数量計算書、設計計算書、報告書などが含まれます。仕様書で定められた内容が揃っているか、形式は要領に合っているかを確認します。
近年は電子納品が基本です。データの形式、フォルダの構成、ファイル名の付け方——要領に沿っていなければ受け取ってもらえません。納品の直前に慌てないよう、着手時に要領を確認しておきます。
検査では、成果物の内容が契約どおりかが確認されます。指摘があれば修正し、再度確認を受けます。合格してはじめて、業務委託料を請求できます。
電子納品については電子納品とは、検査後の手続きは検査合格通知書とはをご覧ください。
配置をめぐる経営課題
管理技術者の要件は、建設コンサルタントの経営に直結する課題でもあります。
要件を満たす技術者の数が、同時に受注できる業務の数を決めてしまうからです。技術士が3人しかいなければ、その部門の業務は同時に3件までしか受けられない——という制約が生じます。
しかも、資格の取得には時間がかかります。技術士は実務経験を要し、合格率も高くありません。必要になってから育てるのでは間に合いません。
そのため、計画的な資格取得の支援が経営上の課題になります。受験のための時間を確保する、費用を負担する、合格者を処遇で報いる——こうした取組みが、受注力の基盤になります。
また、技術者の確保という点では、業界全体の担い手不足も影を落としています。若手が入ってこなければ、将来の管理技術者が育ちません。働き方の改善が求められる理由のひとつです。詳しくは建設業の時間外労働の上限規制とはをご覧ください。
再委託との関係
設計業務でも、一部を他社に委託することがあります。このとき、管理技術者の役割が問われます。
業務の主要な部分を再委託することは、原則として認められません。発注者はその会社の技術力を評価して契約したのですから、まるごと別の会社にやらせるのでは前提が崩れます。
一部の再委託についても、あらかじめ発注者の承諾を得るのが通常です。誰に、どの範囲を委託するのかを届け出ます。
再委託した部分についても、品質の責任は元の受注者が負います。管理技術者は、委託先の成果を確認し、全体として整合の取れた成果物に仕上げなければなりません。
業務の一部を他社に委託できますか
主要な部分の再委託は原則として認められません。一部についても、あらかじめ発注者の承諾を得るのが通常です。再委託した部分の品質責任は元の受注者が負うため、管理技術者が成果を確認し、全体の整合を取る必要があります。
よくある質問
どんな資格が必要ですか
技術士(業務に該当する部門・科目)、国土交通省登録技術者資格、RCCM、土木学会認定土木技術者などが挙げられます。業務の分野に対応した資格であることが求められ、具体的な範囲は特記仕様書で示されます。
途中で交代できますか
原則としてできません。死亡、傷病、退職、出産、育児、介護等のやむを得ない理由がある場合に限り、同等以上の技術者とすることを条件に、発注者の承諾を得て変更できます。
照査技術者を兼ねられますか
業務を進める者とは別に成果物をチェックするという趣旨からは、別の者を置くのが望ましいといえます。兼務の可否や照査技術者の配置が必要な業務の範囲は、仕様書の定めによります。
まとめ
管理技術者とは、契約の履行に関し業務の管理および統括等を行う者で、土木設計業務等共通仕様書に定義されています。成果物を技術的にチェックする照査技術者、その下で業務を担当する担当技術者とあわせて、三者の役割分担が定められています。資格要件としては、技術士(業務に該当する部門・科目)、国土交通省登録技術者資格、RCCM、土木学会認定土木技術者などが挙げられ、業務の分野に対応していることが求められます。原則として変更できず、やむを得ない理由による場合も同等以上の技術者とし、発注者の承諾を得る必要があります。実務では、発注者との協議、担当技術者の指揮、関連業務との調整、照査結果の確認が中心となり、その働きは業務成績評定を通じて次の受注にもつながります。関連して照査とは、建設コンサルタント登録制度とはもあわせてご覧ください。
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※本記事は公開時点の情報をもとに作成しています。資格要件や配置の取扱いは発注機関・案件により異なります。具体的な内容は土木設計業務等共通仕様書および特記仕様書等の一次情報をご確認ください。