監理技術者と主任技術者の違いとは?配置基準・専任要件を解説

建設工事の現場には、施工の技術上の管理を担う技術者を必ず配置しなければなりません。この技術者には主任技術者と監理技術者の2種類があり、工事の規模や下請への出し方によって、どちらを置くべきかが決まります。両者の違いを正しく理解していないと、配置ミスによって契約違反や指名停止といった思わぬ事態を招きかねません。本記事では、監理技術者と主任技術者の違いを、配置基準・専任要件・資格の観点から整理し、公共工事の受注者が押さえるべきポイントを解説します。
この記事のポイント
- すべての建設工事に主任技術者が必要で、元請が一定額以上を下請に出すと監理技術者が必要になる
- 監理技術者が必要になる下請総額の基準は4,500万円(建築一式7,000万円)以上(令和5年1月改正)
- 大規模な公共工事などでは技術者の現場専任が求められ、監理技術者には資格者証と講習が必要
主任技術者・監理技術者とは
主任技術者と監理技術者は、いずれも建設業法に基づいて工事現場に配置される、施工の技術上の管理者です。工事が設計図書のとおり、適正な品質と安全のもとで施工されるよう、施工計画の作成、工程管理、品質管理、技術上の指導監督などを担います。現場の「技術面の責任者」と考えると分かりやすいでしょう。
建設業法第26条は、建設業者に対し、請け負った建設工事を施工するときは、工事現場における技術上の管理をつかさどる者として、主任技術者または監理技術者を置かなければならないと定めています。どちらを置くかは工事の状況によりますが、いずれかの技術者を必ず配置しなければならない点は共通です。技術者の情報は、現場の施工体制を明らかにする施工体制台帳にも記載されます。体制の見える化は施工体制台帳とはをご覧ください。
技術者になるには、建設業法で定められた資格や実務経験の要件を満たす必要があります。国家資格(施工管理技士など)や、一定の学歴と実務経験の組み合わせなどが要件となり、業種ごとに定められています。技術者の要件は、建設業許可の要件とも関係します。許可の仕組みは建設業許可とはで解説しています。
配置基準の違い:どちらを置くか
主任技術者と監理技術者の最も基本的な違いは、どのような場合に配置するかという「配置基準」です。整理すると、次のようになります。
| 区分 | 配置が必要な場合 |
|---|---|
| 主任技術者 | すべての建設工事(請負金額の大小を問わず、原則として必ず配置) |
| 監理技術者 | 発注者から直接請け負った元請が、下請に出す代金の総額が4,500万円(建築一式工事は7,000万円)以上になる場合、主任技術者に代えて配置 |
まず、主任技術者は、すべての建設工事に配置するのが原則です。元請・下請を問わず、また工事の金額の大小を問わず、建設工事を施工する建設業者は、その現場に主任技術者を置かなければなりません。下請として工事を担う場合も、その担当工事について主任技術者が必要です。
次に、監理技術者は、発注者から直接工事を請け負った元請が、その工事の一部を下請に出す場合で、下請に出す代金の合計が一定額以上になるときに、主任技術者に代えて配置します。この基準額は、令和5年1月の建設業法施行令改正により引き上げられ、現在は4,500万円(建築一式工事は7,000万円)以上となっています。多くの下請を使う大規模な工事では、下請全体を統括する立場として、より高度な資格を持つ監理技術者が求められる、という考え方です。下請の重層構造については下請負人とはをご覧ください。
つまり、両者は「主任技術者が基本で、元請が一定額以上を下請に出すと監理技術者に切り替わる」という関係にあります。監理技術者は、多数の下請を含む大規模工事の施工全体を管理する、より重い責任を負う立場だといえます。
専任要件の違い
もう一つの重要な違いが、現場への「専任」が求められるかどうかです。専任とは、その技術者が一つの工事現場にのみ専属し、他の現場と兼務しない状態を指します。
公共性のある施設・工作物、または多数の者が利用する施設・工作物に関する重要な建設工事で、工事1件の請負代金が4,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上のものについては、主任技術者または監理技術者を、その現場に専任で配置しなければなりません(この専任基準も令和5年1月改正で引き上げられました)。公共工事の多くは、この専任が求められる工事に該当します。専任が必要な現場では、その技術者を他の現場と掛け持ちさせることはできません。
ただし、監理技術者については、専任を緩和する仕組みが設けられています。監理技術者を補佐する者(監理技術者補佐)を、その現場に専任で配置した場合には、監理技術者は2つの現場までを兼任できるようになりました(特例監理技術者)。技術者不足に対応し、経験豊富な監理技術者を有効に活用するための制度です。担い手不足への対応として、こうした配置の柔軟化が進められています。人材確保の背景は、労務単価の引き上げとも関わります。公共工事設計労務単価とはもあわせてご覧ください。
監理技術者に固有の要件:資格者証と講習
監理技術者には、主任技術者にはない固有の要件があります。専任が求められる工事に監理技術者を配置する場合、その監理技術者は、監理技術者資格者証を保有し、かつ監理技術者講習を受講している必要があります。資格者証は、その者が監理技術者となる資格を有することを証明するもので、発注者から求められたときには提示します。講習は、最新の法令や施工管理の知識を習得するためのもので、定期的な受講が必要です。
これらは、大規模工事の施工全体を統括する監理技術者に、高い専門性と最新の知識を求める趣旨によるものです。監理技術者を配置する予定の工事では、対象となる技術者が資格者証と有効な講習修了の要件を満たしているかを、事前に確認しておく必要があります。要件を満たさない配置は、契約違反や、工事の適正な施工の観点から問題となります。
なお、現場には、これらの技術者とは別に、契約上の窓口となる現場代理人が置かれるのが通常です。現場代理人は技術者と兼任されることも多いですが、役割の根拠が異なります。両者の関係は現場代理人とはで解説しています。
受注者が実務で押さえておきたいこと
公共工事の受注者が、技術者配置で失敗しないためのポイントを整理します。第一に、工事の下請計画から、主任技術者と監理技術者のどちらが必要かを早期に判断することです。下請に出す総額が基準額(4,500万円、建築一式7,000万円)以上になりそうなら、監理技術者の配置と、その資格者証・講習の要件を早めに確認します。入札に参加する段階から、配置できる技術者の当てをつけておくと安心です。
第二に、専任要件の確認です。公共工事の多くは専任が必要な工事に該当します。専任技術者を他の現場と兼務させることは原則できないため、複数の工事を同時に受注する場合は、それぞれに専任技術者を確保できるかが受注可能量の制約になります。監理技術者補佐を活用した兼任の可否も含め、人員計画を現実的に立てることが大切です。
第三に、技術者の育成・確保を経営課題として捉えることです。有資格の技術者をどれだけ抱えているかは、受注できる工事の規模や量を直接左右し、経営事項審査の評価にも関わります。技術者は、公共工事を継続的に受注していくうえでの、まさに経営資源です。計画的な育成と確保が、事業の成長を支えます。技術者の評価と経審の関係は経営事項審査と入札の関係性もご覧ください。
よくある質問
主任技術者と監理技術者はどちらを置けばよいですか
基本はすべての工事に主任技術者を置きます。ただし、発注者から直接請け負った元請が、下請に出す代金の総額が4,500万円(建築一式工事は7,000万円)以上になる場合は、主任技術者に代えて監理技術者を配置します。自社が下請の立場なら、担当工事について主任技術者を置きます。
技術者は他の現場と兼務できますか
専任が求められる工事(公共性のある重要な工事で請負代金4,000万円、建築一式8,000万円以上など)では、原則として兼務できません。ただし、監理技術者は、監理技術者補佐を現場に専任配置すれば2現場まで兼任できる特例があります。
監理技術者資格者証は主任技術者にも必要ですか
主任技術者には資格者証・講習の要件はありません。監理技術者資格者証と監理技術者講習は、専任が求められる工事に監理技術者を配置する場合に必要となる、監理技術者固有の要件です。
まとめ
主任技術者と監理技術者は、いずれも建設業法に基づく工事現場の技術上の管理者ですが、配置基準が異なります。すべての工事に主任技術者が必要で、元請が下請に出す代金の総額が4,500万円(建築一式7,000万円)以上になると、監理技術者を配置します(令和5年1月改正の基準)。公共性のある重要な工事で請負代金4,000万円(建築一式8,000万円)以上のものは技術者の現場専任が求められ、監理技術者には資格者証と講習が必要です。監理技術者補佐の専任配置による兼任の特例もあります。受注者は、下請計画から必要な技術者を早期に見極め、専任要件を踏まえた人員計画を立てることが、確実な受注と適正な施工の鍵になります。関連して現場代理人とは、施工体制台帳とはもあわせてご覧ください。
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※本記事は公開時点の情報をもとに作成しています。配置基準・専任要件の金額基準は法令改正により変わることがあります。具体的な内容は国土交通省・各発注機関の公表資料やe-Gov法令検索等の一次情報をご確認ください。