技術対話とは?技術提案の改善を求める手続きを解説

技術提案を提出したら、あとは評価を待つだけ——必ずしもそうとは限りません。提案の内容について発注者とやり取りし、改善したうえで再提出する手続きが設けられている場合があります。これが技術対話です。惜しいところで要件を外していた提案が、対話を通じて採用できる水準になることがあります。参加者にとっては、一度の提出で決まらない分、挽回の機会でもあります。本記事では、技術対話とは何か、どのような場面で行われるか、臨む際の要点を解説します。
この記事のポイント
- 技術提案の内容について、発注者と参加者が対話を行う手続き
- 提案の改善を求めたり、改善の機会を与えたりするために用いられる
- 対話を経て提案を再提出し、改めて評価される
技術対話とは
技術対話とは、提出された技術提案について、発注者と参加者がやり取りを行う手続きです。国土交通省の技術提案・交渉方式の運用ガイドラインなどに位置づけられています。
目的は大きく二つあります。
ひとつは、提案の意図を確認することです。書面だけでは分かりにくい部分について、参加者の考えを聞きます。評価を誤らないための確認です。
もうひとつが、提案の改善です。内容の一部を改善すればより優れた提案になる場合、あるいは一部の不備が解消できる場合に、発注者が改善を求めたり、参加者に改善を提案する機会を与えたりします。
要求や施工条件を満たしていない項目が含まれていれば、対話で意思を確認したうえで改善を求め、技術提案の再提出を求めることができるとされています。
技術提案そのものの書き方は技術提案書の書き方をご覧ください。
なぜ対話が必要なのか
一度提出された提案をそのまま評価すれば済むはずなのに、なぜ対話の機会を設けるのでしょうか。
理由は、良い提案を取り逃がさないためです。
技術提案は、限られた情報のなかで作成されます。発注者が示した条件をどう読むかで、提案の方向は変わります。本質的には優れた発想なのに、条件の読み違いで要件を外している——という事態は起こり得ます。
そこで機械的に失格としてしまえば、発注者は良い技術を取り込む機会を失います。工事の品質を高めるという本来の目的からすれば、もったいない話です。
また、難易度の高い工事では、提案の内容が複雑になります。書面だけで正確に理解するのは難しく、口頭での説明を聞いたほうが的確に評価できる場合があります。
つまり、技術対話は評価の精度を高めるための仕組みだといえます。
手続きの流れ
技術対話を含む手続きは、おおむね次のように進みます。細部は案件によって異なります。
- 技術提案の提出——公告で示された様式に従って提出する
- 技術対話(ヒアリング)——提案の内容について発注者とやり取りする
- 改善された技術提案の再提出——対話を踏まえて修正し、再度提出する
- 審査・評価——改善後の提案を審査し、評価する
- 落札者または優先交渉権者の決定
注意したいのは、対話から再提出までの期間です。案件によっては短く設定されることがあり、その間に社内で検討し、資料を作り直す必要があります。
また、対話は参加者ごとに個別に行われるのが通常です。他社の提案内容を知る機会ではありません。あくまで自社の提案についてのやり取りです。
公正性を保つため、対話の内容は記録され、他社に漏らさない取扱いがされます。
対話で聞かれること
実際の対話では、どのようなやり取りが行われるのでしょうか。
第一に、提案の根拠です。なぜその工法を選んだのか、効果はどの程度見込めるのか、裏づけとなる実績やデータはあるか。提案書に書ききれなかった部分を問われます。
第二に、実現可能性です。本当にその体制で実施できるのか、必要な機材は確保できるのか、工程に無理はないか。絵に描いた餅でないことを確認されます。
第三に、条件との整合です。示された施工条件や要求性能を満たしているか。満たしていない部分があれば、そこが論点になります。
第四に、リスクへの対応です。提案した方法で想定される問題は何か、それにどう備えるか。難易度の高い工事ほど、この点が重視されます。
いずれも、提案を作った本人が答えられるかが問われます。営業担当だけで臨めば、技術的な問いに答えられません。
臨むうえでの準備
技術対話に臨む際の準備を整理します。
第一に、提案を担当する技術者が出席することです。実際にその工事を担う予定の技術者であれば、なお説得力があります。誰が出るかも、実質的には評価に影響します。
第二に、提案の弱点を自覚しておくことです。自社の提案のどこが突かれやすいかを事前に洗い出し、答えを用意しておきます。想定問答を作る作業が有効です。
第三に、改善の余地を持っておくことです。対話で改善を求められる可能性があるなら、どこまで踏み込めるかを社内で決めておきます。その場で「持ち帰って検討します」ばかりでは、対話になりません。
第四に、分からないことは分からないと言うことです。曖昧な説明でごまかせば、実現可能性を疑われます。確認して回答する旨を伝えるほうが誠実です。
対話で変えてよい範囲
対話を経て提案を改善できるとはいえ、何でも変えられるわけではありません。
まったく別の提案に差し替えるような変更は、想定されていません。それでは、最初の提出に意味がなくなります。公正性の観点からも問題が生じます。
認められるのは、提案の骨格を保ったまま、内容を向上させる範囲です。不足していた説明を補う、要件を満たしていなかった部分を是正する、より効果的な方法に修正する——こうした改善が想定されています。
どこまでが認められるかは、案件ごとの条件によります。対話の場で確認し、認識を揃えておくことが大切です。
なお、発注者から示された改善の求めに応じないという選択もあり得ます。採算や体制の面で受け入れられないのであれば、無理に応じる必要はありません。
どの方式で行われるか
技術対話は、すべての入札で行われるわけではありません。技術提案を求める方式のなかで、一定の場合に実施されます。
よく用いられるのが、技術提案・交渉方式です。設計施工一括タイプ、技術協力・施工タイプ、設計交渉・施工タイプのいずれも、提案の内容が複雑になるため、対話の意義が大きくなります。
総合評価落札方式でも、高度な技術提案を求める類型では対話が行われることがあります。施工計画の工夫を評価する簡易な類型では、ヒアリングのみで済む場合もあります。
プロポーザル方式による業務委託でも、同様の趣旨のやり取りが設けられることがあります。名称は「ヒアリング」であったり「プレゼンテーション」であったりしますが、提案の意図を確認するという目的は共通します。
案件ごとに手続きが示されるため、公告や入札説明書で確認してください。詳しくは入札公告とはをご覧ください。
公正性をどう保つか
発注者と参加者が個別にやり取りする以上、公正性の確保が重要な論点になります。
懸念されるのは、特定の参加者に有利な情報が与えられることです。対話の場で発注者が意図せず他社の提案内容をほのめかせば、競争の前提が崩れます。
そのため、対話には次のような配慮がなされます。
- 内容を記録する——何を聞き、何を答えたかを残す
- 他社の情報を出さない——他の提案に触れない
- 複数の職員で対応する——一対一のやり取りを避ける
- 条件に関わる変更は全員に周知する——特定の者だけが知る状態を作らない
参加者の側でも、不適切なやり取りを求めないことが前提です。他社の動向を探るような質問は、自らの信用を損ないます。
入札手続きの公正性については政府調達の苦情申立てとはもご覧ください。
参加者側の負担
技術対話には利点がある一方、参加者にとっては負担も生じます。
まず、時間です。提案を作り、対話に出席し、改善して再提出する——落札するまでの工程が長くなります。その間、技術者の時間が取られます。
次に、費用です。提案の作成には技術者の人件費がかかります。対話のための移動や準備も同様です。落札できなければ、これらはすべて回収できません。
そして、見通しの立てにくさです。手続きが長引けば、いつ契約に至るのかが読みにくくなります。技術者の配置計画にも影響します。
こうした負担があるため、技術提案を求める方式では、参加者を絞り込む段階的選抜が併用されることもあります。提案を作る者を限定することで、無駄な労力を減らす狙いです。詳しくは段階的選抜方式とはをご覧ください。
参加するかどうかは、こうした負担と受注の見込みを天秤にかけた経営判断になります。
対話を活かす姿勢
技術対話を、単なる審査の一過程と捉えるか、価値ある機会と捉えるかで、得られるものが変わります。
対話の場では、発注者が何を重視しているかが見えてきます。どの点を詳しく聞かれるか、どこに懸念を示すか——これは発注者の関心の表れです。
この情報は、その案件だけでなく、次の案件にも活きます。同じ発注機関であれば、重視される観点は共通していることが多いためです。
また、落札できなかった場合でも、どこが足りなかったかの手がかりが得られます。対話で指摘された点は、自社の弱点である可能性があります。
社内で振り返りを行い、記録に残しておくとよいでしょう。提案の質は、こうした積み重ねで上がっていきます。工事成績の蓄積と同じく、短期で変えられるものではありません。詳しくは工事成績評定とはをご覧ください。
発注者側の体制
技術対話を機能させるには、発注者の側にも相応の体制が必要です。
提案の内容を理解し、適切な問いを立て、改善の方向を示す——いずれも技術的な判断を伴います。工事の内容に通じた職員がいなければ、形だけのやり取りに終わります。
また、対話の結果をどう評価に反映するかの基準も必要です。改善された提案をどう採点するのか。恣意が入らないよう、あらかじめ整理しておかなければなりません。
学識経験者等の意見を聴く仕組みが設けられることもあります。発注者だけで判断せず、第三者の目を入れることで客観性を高める工夫です。
体制が整わない団体では、外部の支援を受ける方法もあります。詳しくはCM方式とはをご覧ください。
参加者としては、相手の体制によって対話の深さが変わることを理解しておくとよいでしょう。専門的な議論ができる相手であれば、提案の価値を伝えやすくなります。
改善の求めに応じなくてもよいですか
応じないという選択もあり得ます。採算や体制の面で受け入れられないのであれば、無理に応じる必要はありません。ただし要件を満たしていない部分を放置すれば、評価上は不利になります。
対話はどの方式で行われますか
技術提案・交渉方式でよく用いられるほか、高度な技術提案を求める総合評価落札方式でも実施されることがあります。プロポーザル方式でも同様の趣旨のヒアリングが設けられる場合があります。
よくある質問
対話で他社の提案は分かりますか
分かりません。対話は参加者ごとに個別に行われ、内容は記録されたうえで他社に漏らさない取扱いがされます。あくまで自社の提案についてのやり取りです。
提案を全面的に書き直せますか
想定されていません。認められるのは、提案の骨格を保ったまま内容を向上させる範囲です。説明の補足、要件を満たしていない部分の是正、より効果的な方法への修正などが対象になります。
誰が出席すべきですか
提案を担当した技術者、できれば実際にその工事を担う予定の技術者が出席すべきです。技術的な問いに答えられなければ、実現可能性を疑われます。
まとめ
技術対話とは、提出された技術提案について発注者と参加者がやり取りを行う手続きです。提案の意図を確認するとともに、内容の一部を改善すればより優れた提案になる場合や、一部の不備が解消できる場合に、改善を求めたり改善の機会を与えたりするために用いられます。要求や施工条件を満たしていない項目があれば、対話で意思を確認したうえで改善を求め、技術提案の再提出を求めることができるとされています。参加者にとっては、一度の提出で決まらない分、挽回の機会でもあります。臨む際には、提案を担当した技術者が出席すること、弱点を自覚して想定問答を用意すること、改善の余地を社内で決めておくことが要点です。提案の骨格を保ったまま内容を向上させる範囲が対象であり、全面的な書き直しは想定されていません。関連してECI方式とは、加算方式・除算方式とはもあわせてご覧ください。
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※本記事は公開時点の情報をもとに作成しています。手続きの詳細は発注機関のガイドラインや案件により異なります。具体的な内容は国土交通省の運用ガイドライン・入札説明書等の一次情報をご確認ください。


