ECI方式とは?設計段階から施工者が関与する仕組み

ECI方式とは?設計段階から施工者が関与する仕組み

公共工事は、設計が固まってから施工者を選ぶのが長らく基本でした。しかし、設計の段階で施工の知見が入らなければ、現場に入ってから「この方法では施工できない」と分かることがあります。そこで生まれたのが、施工者を設計段階から関与させる発注方式です。その代表がECI方式(技術協力・施工タイプ)です。国土交通省の技術提案・交渉方式のひとつとして位置づけられ、運用ガイドラインが定められています。本記事では、ECI方式とは何か、契約の進み方、適用される工事、受注者としての要点を解説します。

この記事のポイント

  • ECI方式は、施工者が設計段階から技術協力を行う発注方式
  • 技術協力業務の契約と、施工の契約が段階的に結ばれる
  • 設計・施工の難易度が高い工事や、条件の確定が難しい工事で効果を発揮する

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目次

技術提案・交渉方式という枠組み

ECI方式を理解するには、まずその上位にある枠組みを知っておく必要があります。

国土交通省は「公共工事の入札契約方式の適用に関するガイドライン」において、多様な入札契約方式を整理しています。そのなかに技術提案・交渉方式があり、さらに3つのタイプに分かれます。

タイプ内容
設計・施工一括タイプ設計と施工を一括して同じ者が担う
技術協力・施工タイプ別途発注される設計に施工者が技術協力する(ECI方式)
設計交渉・施工タイプ設計から施工まで交渉により進める

この3つに共通するのは、価格だけで落札者を決めないという点です。技術提案を受け、その内容をもとに優先交渉権者を選び、価格等の交渉を経て契約に至ります。

通常の一般競争入札とは発想が異なります。仕様が固まっていない段階から民間の技術力を取り込むための仕組みだからです。入札方式の基本は入札公告とはをご覧ください。

ECI方式の進み方

ECI方式では、契約が二段階で結ばれます。ここが最大の特徴です。

  • 技術提案の公募——施工の方法や課題への対応について提案を求める
  • 優先交渉権者の選定——提案の内容を評価して選ぶ
  • 技術協力業務の契約——優先交渉権者と、設計への技術協力の契約を結ぶ
  • 設計への反映——別途契約されている設計業務に、提案内容を反映させる
  • 価格等の交渉——固まった設計をもとに、施工の価格を交渉する
  • 施工の契約——交渉が成立すれば、施工の契約を締結する

注目すべきは、技術協力の契約と施工の契約が別である点です。優先交渉権者に選ばれても、その時点で施工を受注したわけではありません。交渉が成立してはじめて、施工の契約に至ります。

また、設計そのものは別の者が行います。設計業務は設計業務として発注され、施工者はそこに技術協力する立場です。設計と施工を同じ者が担う設計・施工一括タイプとは、ここが違います。

優先交渉権者という位置づけについては優先交渉権者とはをご覧ください。

どんな工事で使われるのか

ECI方式は、どの工事にも使えるわけではありません。手続きが複雑で時間もかかるため、適用には理由が要ります。

効果を発揮するのは、設計や施工の難易度が高い工事、あるいは仕様や施工条件の確定が難しい工事です。

具体的には、次のような場面が想定されます。

  • 地質の条件が読みにくく、掘ってみないと分からない部分が大きい
  • 既設の構造物を使いながら施工する必要があり、手順の制約が多い
  • 市街地など周辺への影響が大きく、工法の選択が難しい
  • 特殊な技術を要し、施工できる者が限られる

こうした工事では、設計段階で施工者の知見が入ることの価値が大きくなります。机上の設計では見えない制約を、施工の立場から指摘できるからです。

逆に、標準的な工法で施工できる工事であれば、通常の入札で足ります。手間をかける必要がありません。

発注者にとっての意味

発注者がECI方式を選ぶ理由を整理しておきます。

第一に、手戻りを防げることです。設計が完成してから施工者を決める方式では、現場に入ってから設計の不具合が見つかることがあります。その時点で設計を直せば、工期も費用も膨らみます。設計段階で施工者が関与していれば、この種の問題を減らせます。

第二に、施工条件の不確実性に対応できることです。条件が固まらないまま総額を決めて発注すれば、後の設計変更が頻発します。交渉を経て価格を定める方式であれば、条件が見えた段階で金額を詰められます。

第三に、民間の技術力を引き出せることです。発注者が想定していなかった工法が提案されることもあります。これはVE方式とも共通する発想です。詳しくはVE方式とはをご覧ください。

一方で、発注者側にも相応の体制が求められます。技術提案を評価し、交渉を進め、設計への反映を管理する——いずれも専門性と人員を要する作業です。

受注者としての要点

ECI方式の案件に参加する立場では、どのような点に注意すべきでしょうか。

第一に、技術提案に相応の投資が必要だということです。難易度の高い工事について、施工の方法を具体的に提案するには、技術者の時間がかかります。しかも、選ばれなければその投資は回収できません。

第二に、優先交渉権者になっても確定ではないことです。交渉が成立しなければ、施工の契約には至りません。技術協力業務の対価は得られますが、本体の施工を前提に計画していれば、見込みが外れることになります。

第三に、技術協力の期間が長いことです。設計に協力する期間は数か月から年単位に及ぶことがあります。その間、技術者を割り当て続ける必要があります。

これらを踏まえると、ECI方式は技術力と体力のある企業が取り組む方式だといえます。ただし、取り組めば設計段階から関与できるため、施工の進め方を自社の得意な形に寄せられるという利点があります。

価格の交渉という難しさ

ECI方式で最も難しいのが、価格等の交渉です。競争によって価格が決まる通常の入札とは、まったく性格が異なります。

交渉の相手は一者だけですから、競争原理は働きません。それでも公金を使う以上、価格の妥当性を説明できなければなりません。発注者は、見積りの内訳を精査し、積算と突き合わせて妥当性を確認します。

受注者の側からすれば、根拠のある見積りを示すことが求められます。どの作業にどれだけの人工がかかり、どの資材をいくらで調達するのか。説明できない項目があれば、認められません。

交渉が成立しなければ、発注者は次順位の者と交渉することになります。そうなれば、それまでの技術協力の成果をどう扱うかという問題も生じます。

この難しさがあるため、ガイドラインでは交渉の進め方や記録の残し方が定められています。透明性を確保するための仕組みです。積算の考え方は積算とはをご覧ください。

設計者・施工者・発注者の三者関係

ECI方式では、設計者・施工者・発注者の三者が同時に関わります。この関係の整理が、実務では重要になります。

設計者は発注者と契約し、設計を進めます。施工者は技術協力の契約を発注者と結び、設計に対して意見を述べます。つまり、設計者と施工者のあいだには直接の契約がありません。

ここで問題になるのが、意見が食い違ったときの調整です。施工者が「この構造では施工しにくい」と言い、設計者が「この形でなければ所要の性能が出ない」と言う。どちらも専門的な根拠を持っています。

調整するのは発注者の役割です。技術協力の成果を設計にどこまで反映させるかを判断し、関係者に示します。この判断ができる体制がなければ、方式は機能しません。

公共工事では、発注者・設計者・施工者が意見を交わす場として三者会議の仕組みも整えられてきました。詳しくは条件明示とはをご覧ください。

技術協力で何をするのか

技術協力業務の中身は、案件によって異なります。おおむね次のような作業が想定されます。

  • 施工計画の検討——どの手順で、どの機械を使って施工するか
  • 仮設計画の検討——足場、仮桟橋、締切などの計画
  • 工法の比較——複数の案について、施工性と費用を比較する
  • 施工上の制約の指摘——設計案のうち、施工が困難な箇所を示す
  • 工程の検討——季節や周辺の制約を踏まえた工程の組み立て
  • 概算費用の算出——各案のコストを示す

重要なのは、設計そのものを行うわけではないという点です。構造計算や図面の作成は設計者の仕事であり、施工者は施工の観点から意見を提供します。

この役割分担を曖昧にすると、責任の所在が不明になります。設計の瑕疵が後で見つかったとき、誰が責任を負うのか——契約の段階で整理しておくべき事柄です。

施工計画の考え方は施工計画書とはをご覧ください。

自治体での活用

ECI方式は国の直轄工事で先行してきましたが、自治体でも導入する例が出てきています。

橋梁の長寿命化や、老朽化した施設の改修など、既設構造物を扱う事業は条件の不確実性が高く、ECI方式が適する場面です。自治体によっては、独自のガイドラインを定めて運用しています。

ただし、自治体で導入するには課題もあります。技術提案を評価し、交渉を進める体制を整えなければなりません。職員数の限られる市町村では、容易ではないのが実情です。

そうした場合には、外部の専門家の支援を受ける方法もあります。発注者の立場でマネジメントを担う仕組みについてはCM方式とはをご覧ください。

受注を目指す事業者としては、国の案件だけでなく、自治体の動向にも目を向けておくとよいでしょう。公告で「技術提案・交渉方式」「技術協力」といった語が使われていれば、この類型に当たります。

なお、同じ技術提案・交渉方式のうち、設計と施工を一括して担うタイプについては設計施工一括発注方式とはをご覧ください。

提案で評価される観点

優先交渉権者の選定では、何が見られるのでしょうか。

評価の軸になるのは、その工事の課題にどう答えるかです。地質の不確実性、周辺への影響、既設構造物との取り合い——案件ごとに提示される課題に対して、具体的な解決策を示せるかが問われます。

あわせて、実施体制も重要です。誰がこの工事を担当するのか、その技術者はどのような経験を持つのか。難易度の高い工事であるほど、人の力に依存する部分が大きくなります。

また、過去の実績も評価されます。類似の条件で施工した経験があれば、提案の裏づけになります。工事成績の評定が良好であることも、技術力の証左として扱われます。

一般的な提案を並べるのではなく、その案件に即した内容にすること——これはどの技術提案にも共通する基本です。評価の仕組みは工事成績評定とは、技術提案書の書き方をご覧ください。

普及に向けた課題

ECI方式は有効な仕組みですが、適用件数はまだ多くありません。普及を妨げている要因を整理しておきます。

ひとつが、手続きに要する期間です。提案の公募、評価、技術協力、交渉——通常の入札に比べて、契約までに長い時間がかかります。急ぐ事業には向きません。

もうひとつが、双方の負担です。発注者は評価と交渉の体制を要し、参加者は提案と技術協力に技術者を割く必要があります。ガイドラインの改定では、施工者の負担軽減が論点のひとつとされてきました。

それでも、難易度の高い事業では代えがたい効果があります。設計と施工が分断されたまま進めて手戻りが生じれば、結果としてはるかに大きな損失になるからです。

事業の性格に応じて方式を選ぶ——入札契約方式の多様化が目指しているのは、この当たり前の姿です。

よくある質問

ECI方式では設計も担当するのですか

いいえ。設計は別途発注され、施工者はその設計に技術協力する立場です。設計と施工を同じ者が担うのは、設計・施工一括タイプのほうです。

優先交渉権者になれば受注できますか

確定ではありません。技術協力業務の契約を結び、設計への反映と価格等の交渉を経て、交渉が成立してはじめて施工の契約に至ります。交渉が整わない可能性もあります。

どんな工事で採用されますか

設計や施工の難易度が高い工事、仕様や施工条件の確定が難しい工事で効果を発揮します。標準的な工法で施工できる工事では、通常の入札で足ります。

まとめ

ECI方式(技術協力・施工タイプ)とは、施工者が設計段階から技術協力を行う発注方式で、国土交通省の技術提案・交渉方式のひとつです。技術提案によって優先交渉権者を選び、技術協力業務の契約を締結したうえで、別途実施されている設計に提案内容を反映させ、価格等の交渉が成立した場合に施工の契約を結びます。設計や施工の難易度が高い工事、仕様や施工条件の確定が難しい工事で効果を発揮します。発注者にとっては手戻りの防止と不確実性への対応という利点があり、受注者にとっては設計段階から関与できる一方、提案への投資や長期の技術者配置という負担があります。価格の交渉では、根拠のある見積りを示せるかが要点になります。関連してVE方式とは、二段階入札とはもあわせてご覧ください。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、AIの特性上、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。本記事の内容に関するご質問、ご意見、または訂正すべき点がございましたら、お手数ですがお問い合わせいただけますと幸いです。

※本記事は公開時点の情報をもとに作成しています。運用の詳細は発注機関のガイドラインにより異なります。具体的な内容は国土交通省の技術提案・交渉方式の運用ガイドライン等の一次情報をご確認ください。

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