施工体制確認型総合評価方式とは?安値対策の仕組み

極端に安い価格で入札されると、工事の品質が保てるのかという疑問が生じます。下請へのしわ寄せ、人員の削減、材料の質の低下——いずれも最終的には公共施設の品質に跳ね返ります。そこで導入されたのが施工体制確認型総合評価方式です。技術評価点に施工体制評価点を加え、その価格で本当に施工できる体制があるかを確認したうえで評価に反映させます。本記事では、この方式の仕組み、施工体制評価点の考え方、応札する側の要点を解説します。
この記事のポイント
- 技術評価点は、標準点・加算点・施工体制評価点の合計で構成される
- 品質確保の実効性と施工体制確保の確実性が評価される
- 確認のためにヒアリングや追加資料の提出が求められる
ダンピング対策という背景
この方式が生まれた背景には、ダンピング受注の問題があります。
公共工事の発注量が減った時期、受注を確保するために採算を度外視した安値で応札する例が相次ぎました。落札しても利益が出ないため、どこかで帳尻を合わせることになります。
そのしわ寄せは、下請への値引き要求、現場の人員削減、安全対策の省略、材料の質の低下という形で現れます。結果として、工事の品質が損なわれ、労働災害のリスクも高まります。
国土交通省は、ダンピング対策として複数の施策を打ち出してきました。工事費の調査、下請への支払いの調査、監督・検査の強化——施工体制確認型総合評価方式も、その一連の取組みのひとつです。
ダンピングの弊害については入札のダンピングとは、低価格入札の調査は低入札価格調査とはをご覧ください。
技術評価点の構成
この方式では、技術評価点が三つの要素で構成されます。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 標準点 | 必要な要件を満たす者に一律に与えられる基礎点 |
| 加算点 | 各参加者の技術力に応じて加算される点 |
| 施工体制評価点 | その価格で施工できる体制があるかの評価 |
通常の総合評価落札方式では、標準点と加算点で技術評価点が決まります。そこに施工体制評価点を上乗せするのが、この方式の特徴です。
施工体制評価点の評価項目は、品質確保の実効性と施工体制確保の確実性です。提出された価格で、求められる品質を確保できるのか。そのための体制が実際に組めるのか。この二点が問われます。
評価値の算定は、技術評価点と価格の関係で決まります。算定方法については加算方式・除算方式とはをご覧ください。
何を確認されるのか
施工体制の確認では、具体的に何が問われるのでしょうか。
中心になるのは、その価格でどう施工するのかという説明です。応札額が予定価格に対して低い場合、その差をどう埋めるのかが問われます。
確認される事項には、次のようなものが含まれます。
- 見積りの内訳——各工種の金額の根拠
- 下請への発注予定——どの会社に、いくらで発注するのか
- 配置する技術者と人員——体制が十分か
- 使用する機械・資材——調達の見通し
- 安全管理の計画——削られていないか
- 品質管理の計画——必要な試験や検査を行えるか
とくに重視されるのが下請への発注です。元請が安く受注した分を下請に押し付けていないか。適正な労務費が確保されているか。ここに無理があれば、体制は成り立ちません。
近年は、労務費のダンピングを防ぐための取組みも進められています。労務費に関する基準の仕組みは標準労務費とは、社会保険の原資については法定福利費とはをご覧ください。
ヒアリングと追加資料
施工体制の確認は、書面だけでは完結しません。ヒアリングや追加資料の提出が求められます。
ヒアリングでは、見積りの根拠や体制について説明を求められます。書面に書かれた数字が、どのような前提で算出されたのか。質問に即答できなければ、実態がないと見なされかねません。
追加資料としては、下請の見積書、資材の見積書、技術者の経歴などが求められることがあります。「安くできる」と主張するなら、その裏づけを示す必要があるわけです。
ここで大切なのが、応札前に根拠を固めておくことです。価格だけを決めて応札し、後から説明を組み立てるのでは、辻褄が合わなくなります。
自社の積算に基づいて価格を決め、その積算をそのまま説明に使える状態にしておく——これが最も確実な備えです。積算の基本は積算とはをご覧ください。
安ければ有利とは限らない
この方式がもたらす最も重要な変化は、価格を下げることの意味が変わる点にあります。
通常の総合評価落札方式では、価格を下げれば評価値が上がります。技術評価点が同じなら、安いほうが有利です。
しかし施工体制確認型では、価格を下げすぎると施工体制評価点が得られなくなります。価格が下がる効果を、評価点の減少が打ち消す構造です。
つまり、単純に安値を入れれば勝てるという戦略が成り立ちません。適正な価格で、確実な体制を示すほうが有利になり得ます。
これは、技術力のある企業にとっては歓迎すべき仕組みです。安値競争に巻き込まれず、技術と体制で評価される環境に近づくからです。
受注後も確認は続く
施工体制の確認は、入札の段階で終わりではありません。受注した後も、示した体制が実際に組まれているかが確認されます。
施工体制台帳や施工体系図の提出を通じて、下請の構成が把握されます。入札時に説明した体制と大きく違っていれば、問題になります。
また、低い価格で落札した工事では、監督・検査が強化される運用がとられることがあります。段階確認の頻度を増やす、品質管理の記録を詳しく確認するといった対応です。
下請への支払いが適正に行われているかの調査が行われることもあります。元請が安く受注した分を下請に転嫁していないかの確認です。
低入札価格調査との関係
安値対策としては、低入札価格調査という制度も別にあります。両者はどう違うのでしょうか。
低入札価格調査は、調査基準価格を下回る入札があった場合に、契約の内容に適合した履行がなされるかを調査する制度です。調査の結果、履行できないと認められれば、その者を落札者としないことができます。
つまり、低入札価格調査は合否の判断です。落札者とするかしないかを決めます。
これに対して施工体制評価点は、点数として評価に反映されます。失格とまではいかなくても、体制に不安があれば点数が下がり、評価値が低くなります。
両者は併用されるのが通常です。価格が低ければ施工体制評価点が得られにくくなり、さらに調査基準価格を下回れば低入札価格調査の対象にもなります。
二重の仕組みによって、安値受注を抑制する設計になっています。
説明できる積算をつくる
この方式で問われるのは、結局のところ自社の積算が説明できるかという一点に集約されます。
「安くできる」と主張するには、理由が要ります。考えられる理由には、次のようなものがあります。
- 自社で保有する機材を使える——リース費用がかからない
- 近隣に自社の拠点がある——移動や宿泊の費用を抑えられる
- 特殊な工法を持っている——施工日数を短縮できる
- 資材を有利な条件で調達できる——取引実績による
- 同じ地域で他の工事を行っている——仮設や人員を共用できる
これらは、いずれも合理的な根拠です。単に利益を削っただけ、あるいは下請を買い叩いただけというのとは性格が違います。
自社の強みがどこにあるかを把握し、それを積算に反映させる。そして、その理由を説明できるようにしておく——これが、この方式で評価されるための基本です。
内訳書の作成については工事費内訳書とはをご覧ください。
下請との関係
施工体制の確認で焦点となるのが、下請への発注条件です。
元請が安く受注した場合、その影響は下請に及びやすくなります。見積りより低い金額での発注を求められれば、下請は人件費や材料費を切り詰めるしかありません。
そこで確認されるのが、適正な金額で発注する計画になっているかです。下請の見積書の提出を求められるのも、この確認のためです。
建設業法には、著しく低い請負代金での契約を禁じる規定や、見積りに必要な期間を置くことを求める規定があります。これらに反する発注は、法令違反でもあります。
元請としては、応札の段階で下請の見積りを取り、実現可能な金額で積算しておくことが求められます。受注してから値引きを求めるやり方は、もはや通用しません。
品質確保という目的に戻る
この方式の根底にあるのは、公共工事の品質を確保するという目的です。
公共工事の品質確保に関する法律は、価格のみによる競争を改め、価格と品質が総合的に優れた調達を行うことを基本理念としています。総合評価落札方式が広がったのも、この理念によります。
しかし、技術提案で高い評価を得ても、価格を極端に下げて落札してしまえば、提案を実行する余力がありません。評価と実態が乖離します。
施工体制確認型は、この乖離を埋めるための仕組みです。提案したことを本当に実行できるのかを、価格の裏づけとともに確認します。
受注する側から見れば、適正な価格で仕事を取れる環境に近づくということでもあります。無理な安値を避け、技術と体制で評価を得る——その方向に制度は動いています。
関連する法制度は担い手三法とは、発注者の責務は運用指針とはをご覧ください。
自治体での運用
この方式は国の直轄工事で導入が進みましたが、自治体でも採用する例があります。
ただし、運用には差があります。試行として限られた案件で実施する団体、独自の評価項目を設ける団体、導入していない団体——状況はさまざまです。
自治体によっては、低入札価格調査や最低制限価格の制度で対応しているところもあります。どの仕組みで安値を抑制するかは、団体ごとの判断です。
複数の発注機関から受注する企業としては、案件ごとに方式を確認する必要があります。公告や入札説明書に評価の仕組みが示されるため、応札の準備段階で読み込んでおきましょう。
公告の読み方は入札公告とはをご覧ください。
応札判断への影響
この方式が採用されている案件では、応札の考え方そのものを見直す必要があります。
従来は、積算した原価に対してどこまで利益を削れるかという発想で価格を決める場面がありました。この方式では、その発想が通用しません。
考えるべきは、説明できる範囲でどこまで下げられるかです。合理的な根拠のある削減であれば、体制の評価は下がりません。根拠のない削減は、点数を失います。
そのうえで、加算点を取るための技術提案に力を注ぐ——これが本来の戦い方です。価格で差をつけるより、技術で差をつけるほうが、この方式では効率がよくなります。
日頃の工事成績や、保有する技術の蓄積が効いてきます。短期的な価格戦略ではなく、中長期の技術力の積み上げが受注につながる構造です。
よくある質問
施工体制評価点とは何ですか
技術評価点を構成する要素のひとつで、品質確保の実効性と施工体制確保の確実性を評価するものです。標準点・加算点に加えて算定され、その価格で実際に施工できる体制があるかが問われます。
安く入れると不利になりますか
下げすぎると施工体制評価点が得られず、価格が下がる効果を打ち消すことがあります。単純な安値戦略は成り立たず、適正な価格で確実な体制を示すほうが有利になり得ます。
どんな資料を求められますか
見積りの内訳、下請の見積書、資材の見積書、配置する技術者の経歴などです。ヒアリングで根拠の説明も求められるため、自社の積算をそのまま説明に使える状態にしておくことが備えになります。
まとめ
施工体制確認型総合評価方式とは、技術評価点に施工体制評価点を加え、その価格で実際に施工できる体制があるかを確認したうえで評価に反映させる方式です。技術評価点は、標準点・加算点・施工体制評価点の合計で構成されます。評価項目は品質確保の実効性と施工体制確保の確実性であり、確認のためにヒアリングや追加資料の提出が求められます。背景にあるのはダンピング対策で、安値受注が下請へのしわ寄せや品質低下を招くという問題意識から導入されました。この方式では、価格を下げすぎると施工体制評価点が得られず、値下げの効果が打ち消されるため、単純な安値戦略は成り立ちません。受注後も、施工体制台帳や監督・検査を通じて体制が確認されます。応札前に積算の根拠を固めておくことが、最も確実な備えです。関連して入札のダンピングとは、低入札価格調査とはもあわせてご覧ください。
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※本記事は公開時点の情報をもとに作成しています。評価項目や運用は発注機関・案件により異なります。具体的な内容は国土交通省の総合評価落札方式の運用ガイドラインおよび入札説明書等の一次情報をご確認ください。