見積期間とは?建設業法が定める日数と数え方を解説

「明日までに見積りを出してほしい」——建設業の現場では、こうした依頼が珍しくありませんでした。しかし、内容を検討する時間がないまま出した見積りは、後で辻褄が合わなくなります。無理な金額で契約させられれば、しわ寄せは施工の質や下請の取り分に及びます。そこで建設業法は、注文者が見積りを求める際に一定の期間を置かなければならないと定めています。これが見積期間です。金額に応じて1日・10日・15日という日数が決まっています。本記事では、見積期間の日数、数え方、短縮できる場合、そして違反したときの扱いを解説します。
この記事のポイント
- 建設業法第20条に基づき、工事の予定価格に応じた見積期間を設けなければならない
- 500万円未満は1日以上、500万〜5,000万円未満は10日以上、5,000万円以上は15日以上
- 起算は見積依頼の翌日からで、依頼当日は含まない
見積期間とは
見積期間とは、注文者が建設工事の見積りを求めるにあたって、相手方が内容を検討するために置かなければならない期間のことです。建設業法第20条に根拠があり、具体的な日数は建設業法施行令で定められています。
この規定が置かれている理由は、建設工事の見積りが簡単な作業ではないからです。図面を読み込み、数量を拾い、材料の価格を調べ、必要な人工を見積もる。下請に出す部分があれば、さらにその見積りも取らなければなりません。相応の時間がかかる作業です。
時間を与えられないまま見積りを求められれば、どうなるでしょうか。概算で出すしかなく、実際に施工してみたら足りない——ということが起こります。それでも契約してしまっていれば、差額は自社で被るか、下請にしわ寄せするしかありません。見積期間の規定は、こうした不合理な取引を防ぐためのものです。
なお、この規定は元請と下請の関係で特に重要になります。立場の強い元請が、短い期限で見積りを求めることを防ぐ狙いがあるためです。下請取引のルールは下請負人とはもご覧ください。
金額別の日数
見積期間は、工事の予定価格によって3段階に分かれています。
| 工事の予定価格 | 見積期間 |
|---|---|
| 500万円未満 | 1日以上 |
| 500万円以上 5,000万円未満 | 10日以上 |
| 5,000万円以上 | 15日以上 |
ここでいう「予定価格」は、注文者が想定している工事の金額です。実際に提出される見積額ではなく、依頼する側の見込みで判断します。
金額が上がるほど期間が長くなるのは、工事の規模が大きくなれば検討すべき事項も増えるからです。5,000万円を超えるような工事であれば、施工方法の検討、仮設の計画、下請への発注先の選定など、見積りの前提となる作業だけでも相当な量になります。
なお、これらは最低限の日数です。「10日以上」とあれば、10日で足りるという意味ではなく、10日を下回ってはならないという意味です。内容が複雑であれば、より長い期間を設けることが望まれます。
日数の数え方
意外と間違えやすいのが、日数の数え方です。
起算日は、見積依頼を行った日の翌日です。依頼した当日は日数に含みません。たとえば4月1日に見積りを依頼し、10日以上の期間が必要な場合、4月2日を1日目として数えます。
この日数は暦日で数えるのが原則です。土日や祝日も日数に含まれます。ただし、実質的に検討できる日が確保されているかという観点からは、連休をまたぐような設定は望ましくありません。形式的に日数を満たしていても、趣旨に反する運用になり得ます。
また、見積期間は「見積りに必要な情報を提示してから」の期間と考えるべきものです。依頼だけ先に出しておいて、図面や数量は後から渡す——という進め方では、実質的な検討期間が確保されません。見積条件の提示と合わせて考える必要があります。
期間を短縮できる場合
やむを得ない事情がある場合には、見積期間を短縮できる余地があります。ただし、条件があります。
短縮できるのは5日以内に限られます。また、短縮が認められるのは予定価格が500万円以上の区分についてであり、500万円未満(1日以上)の区分は短縮できません。もともと1日しかない期間を、さらに短くすることはできないという理屈です。
「やむを得ない事情」とは、災害復旧のように緊急性が高い場合などが想定されます。単に発注側の都合で急ぐというだけでは、正当な理由にはなりません。「急いでいるから」を口実に常態的に短縮するのは、制度の趣旨を損ないます。
見積条件の提示も義務
建設業法第20条は、期間だけでなく見積条件の提示についても定めています。注文者は、工事の内容について具体的な内容を提示しなければならないとされています。
提示すべき事項には、工事内容、工事着手・完成の時期、請負代金の支払方法、天災など不可抗力による損害の負担、資材の提供や機械の貸与がある場合はその内容といったものが含まれます。
条件が示されなければ、見積りようがありません。曖昧な条件のまま見積らせておいて、後から「その工事も含まれているはずだ」と主張されるのでは、受注側はたまりません。条件を明確にしたうえで、十分な期間を置く——この二つがそろってはじめて、適正な見積りが可能になります。
公共工事の入札でも、同じ発想が働いています。施工条件を明示したうえで参加者に検討させるという考え方です。詳しくは条件明示とはをご覧ください。
違反するとどうなるか
見積期間の規定に違反した場合、建設業法に基づく監督処分の対象となり得ます。
具体的には、建設業法第28条による指示処分、さらに悪質な場合には営業停止処分に至ることがあります。営業停止は最長1年とされており、その間は建設業の営業ができません。加えて、処分の内容が公表されることもあります。
公共工事に参加する事業者にとっては、影響はさらに広がります。建設業法違反は指名停止の事由となり得ますし、経営事項審査を通じて受注力にも響きます。指名停止の仕組みは指名停止とはをご覧ください。
とはいえ、処分を避けるためだけの話ではありません。適正な見積りは、工事を無理なく完成させるための前提です。十分な検討を経た見積りであれば、施工中の齟齬も減ります。結局は、双方にとって合理的な進め方だといえます。
なぜ見積りに時間がかかるのか
見積期間の意味を理解するには、見積作業の中身を知っておくと役立ちます。何にそれだけの時間がかかるのでしょうか。
- 図面の読み込み——何をどこまで施工するのか、範囲を正確に把握する
- 数量の拾い出し——各工種の数量を図面から算出する
- 単価の検討——材料価格を調べ、必要な人工を見積もる
- 下請への照会——専門工事を外注する場合、その見積りを取る
- 現地の確認——搬入経路、作業スペース、近隣の状況を見る
- 諸経費の算定——仮設、現場管理、一般管理の費用を積む
このうち、時間が読めないのが下請への照会です。自社で完結する工事ばかりではなく、専門工事業者に見積りを依頼する必要があります。その業者もまた検討の時間を要しますから、連鎖的に日数が積み上がります。
元請が10日の期間を与えられたとして、そこから下請に照会すれば、下請に残る時間はさらに短くなります。この構造があるため、重層的な取引ほど期間の確保が重要になるのです。諸経費の構成は諸経費とはをご覧ください。
公共工事における見積りの扱い
建設業法の見積期間は、元請・下請間の取引を主な対象としていますが、公共工事の世界でも見積りは重要な役割を果たします。
ひとつは、入札に向けた積算です。公告から入札までの期間に、参加者は設計図書を読み込んで自社の積算を行います。この期間が短ければ、十分な検討ができません。公告期間に関する定めも、同じ発想に立つものです。詳しくは入札公告とはをご覧ください。
もうひとつが、発注者が依頼する参考見積です。標準的な歩掛がない工種について、発注者が事業者に見積りを求め、予定価格の参考にすることがあります。この場合も、検討の時間が確保されなければ、精度の低い見積りが基礎になってしまいます。参考見積の仕組みは参考見積とはをご覧ください。
さらに、設計変更の協議でも見積りが使われます。当初にない工種が生じた場合、受注者の見積りをもとに金額を定めることがあります。いずれの場面でも、拙速な見積りは後の紛争の種になります。
受注側が取れる対応
法律で期間が定められていても、実際には短い期限で依頼されることがあります。受注側としてどう対応すればよいでしょうか。
第一に、期間の延長を求めることです。法令上の期間に満たない依頼であれば、その旨を伝えて延長を求めるのは正当な要求です。言い出しにくいと感じるかもしれませんが、根拠のある話ですから、事実として伝えれば足ります。
第二に、条件を明確にしてもらうことです。図面や数量が不十分なまま見積りを求められた場合、何を前提に算出したのかを明記しておきます。「この条件で算出した」と書いておけば、後から範囲を巡って争いになったときの拠り所になります。
第三に、記録を残すことです。いつ依頼を受け、いつ提出したか。どんな条件が示されたか。メールなど形の残る手段でやり取りしておけば、問題が生じたときに事実を示せます。
なお、建設業法に関する相談は、各地方整備局などに設けられた駆け込み寺のような窓口でも受け付けられています。取引上の問題を一人で抱え込む必要はありません。
発注側が意識しておきたいこと
元請として下請に見積りを依頼する立場であれば、次の点を意識しておくと、法令への適合と実務の円滑さを両立できます。
まず、依頼のタイミングを前倒しすることです。自社が受注してから慌てて照会するのではなく、入札段階で概算の照会をしておき、受注後に正式な依頼をする。こうした段取りができれば、期間の確保は難しくありません。
次に、条件を整理してから出すことです。図面や数量が固まっていない状態で依頼しても、結局は出し直しになります。手戻りを避けるほうが、結果的に早く進みます。
そして、社内で周知しておくことです。担当者が規定を知らなければ、悪気なく短い期限で依頼してしまいます。金額別の日数と数え方を、見積依頼の手順に組み込んでおくのが確実です。
見積りの精度が施工を左右する
見積期間の話は、手続き上のルールにとどまりません。見積りの精度は、工事そのものの成否に直結します。
実際より低い金額で契約してしまえば、施工の段階で必ず無理が生じます。工程を詰める、人員を減らす、材料の等級を落とす——どれも品質と安全を損なう方向です。最終的には、発注者が求めた成果が得られないという結果に行き着きます。
公共工事で低入札価格調査や最低制限価格の制度が設けられているのも、同じ問題意識によるものです。安く請けることが、必ずしも良い結果をもたらさないという認識が、制度の背景にあります。詳しくは入札のダンピングとはをご覧ください。
見積りに十分な時間をかけることは、単に自社を守るためだけではありません。工事を予定どおり、必要な品質で完成させるための出発点です。時間を惜しんで生じる損失のほうが、はるかに大きいのです。
よくある質問
見積期間は土日を含めて数えますか
暦日で数えるのが原則であり、土日祝も日数に含まれます。ただし実質的な検討期間を確保するという趣旨からは、連休をまたぐ設定は望ましくありません。形式を満たせばよいというものではありません。
急ぎの工事でも期間を置く必要がありますか
やむを得ない事情があれば5日以内に限り短縮できますが、500万円未満の区分(1日以上)は短縮できません。また、単に発注側が急ぎたいというだけでは正当な理由になりません。
口頭で依頼した場合も対象ですか
対象です。依頼の方法にかかわらず、見積りを求める以上は期間を置く必要があります。ただし後の紛争を避けるため、依頼日や提示した条件は書面やメールで記録に残しておくことをおすすめします。
まとめ
見積期間とは、建設業法第20条に基づき、注文者が見積りを求める際に置かなければならない検討期間です。工事の予定価格に応じて、500万円未満は1日以上、500万円以上5,000万円未満は10日以上、5,000万円以上は15日以上と定められています。起算は見積依頼の翌日からで、依頼当日は含みません。やむを得ない事情があれば5日以内に限り短縮できますが、500万円未満の区分は短縮できません。あわせて、工事内容や支払方法などの見積条件を具体的に提示することも求められます。違反すれば指示処分や営業停止処分の対象となり、公共工事では指名停止にもつながり得ます。適正な見積りは、工事を無理なく完成させるための前提であり、双方にとって合理的な進め方です。関連して下請負人とは、下請代金の支払期日とはもあわせてご覧ください。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、AIの特性上、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。本記事の内容に関するご質問、ご意見、または訂正すべき点がございましたら、お手数ですがお問い合わせいただけますと幸いです。
※本記事は公開時点の情報をもとに作成しています。見積期間の日数・短縮の取扱いは建設業法および同施行令の定めによります。具体的な内容は国土交通省の一次情報をご確認ください。