統括安全衛生責任者とは?建設現場の安全衛生管理体制を解説

統括安全衛生責任者とは?建設現場の安全衛生管理体制を解説

建設現場には、元請だけでなく、複数の下請の労働者が同じ場所で働いています。鉄筋工が組んだ足元で型枠工が作業し、その頭上をクレーンが吊り荷を運ぶ——こうした混在作業は、建設業特有の危険を生みます。会社ごとに安全管理をしていても、会社をまたいだ危険は防げません。そこで労働安全衛生法は、現場全体の安全衛生を統括する仕組みを定めています。その中心が統括安全衛生責任者です。本記事では、統括安全衛生責任者とは何か、関連する役職との関係、選任の考え方を解説します。

この記事のポイント

  • 統括安全衛生責任者は、混在作業による労働災害を防ぐため現場全体を統括する
  • 特定元方事業者が選任し、元方安全衛生管理者がその技術的事項を管理する
  • 下請(関係請負人)側は、安全衛生責任者を選任して連絡調整にあたる

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目次

なぜ現場全体の統括が必要なのか

建設現場の危険は、単独の作業からだけ生じるわけではありません。多くの事故は、異なる会社の作業が重なるところで起きます。

たとえば、上階で解体作業をしている真下で、別の会社が資材の搬入を行っていたとします。それぞれの会社は、自社の作業については安全に配慮しているかもしれません。しかし、上からの落下物という危険は、両者の作業が重なることで初めて生じます。どちらか一方の会社だけでは、この危険を管理できません。

製造業の工場であれば、一つの会社が場所と作業を管理しているのが通常です。ところが建設現場では、元請の下に一次下請、二次下請と連なり、日によって入る会社も変わります。誰かが全体を見なければ、隙間が生まれるのです。

労働安全衛生法が、現場全体を統括する仕組みを設けているのは、この構造に対応するためです。下請の重層構造については下請負人とはもご覧ください。

統括安全衛生責任者とは

統括安全衛生責任者は、混在作業によって生じる労働災害を防止するため、現場全体の安全衛生を統括管理する立場です。特定元方事業者——建設現場でいえば元請にあたる事業者が選任します。

その職務は、現場全体を対象とします。具体的には、協議組織の設置と運営、作業間の連絡および調整、作業場所の巡視、関係請負人が行う安全衛生教育への指導・援助などが挙げられます。会社をまたいだ調整が中心になる点が特徴です。

ここで押さえておきたいのは、統括安全衛生責任者には特別な資格が求められていないという点です。その代わり、当該場所においてその事業の実施を統括管理する者をもって充てることとされています。つまり、現場を実際に取り仕切っている責任者が担うという考え方です。権限のない人が名前だけ置かれても、調整はできないからです。

選任が必要となるかどうかは、現場の労働者数によって判断されます。元請・下請を合わせた労働者の数が一定規模に達する現場が対象となり、その規模は工事の種類によって異なります。

3つの役職の関係

建設現場の安全衛生管理体制は、統括安全衛生責任者だけで成り立つものではありません。関連する役職との関係を整理しておきましょう。

役職選任する者役割
統括安全衛生責任者特定元方事業者(元請)現場全体の安全衛生を統括管理する
元方安全衛生管理者特定元方事業者(元請)統括安全衛生責任者を補佐し、技術的事項を管理する
安全衛生責任者関係請負人(下請)統括安全衛生責任者との連絡・調整にあたる

元方安全衛生管理者は、統括安全衛生責任者を選任した事業者が、あわせて選任するものです。統括安全衛生責任者の指揮を受けて、その職務のうち技術的事項を管理します。統括安全衛生責任者と異なり、こちらには学歴や実務経験といった資格要件が定められています。

安全衛生責任者は、下請側が選任します。統括安全衛生責任者が選任された現場で、自ら作業を行う関係請負人が対象です。元請側の統括と、下請側の現場をつなぐ役割を担います。職長・安全衛生責任者教育を受けた者が就くのが一般的です。

この三者がそろってはじめて、体制として機能します。元請が統括しようとしても、下請側に受け皿がなければ連絡は届きません。逆に、下請が報告しようとしても、元請に調整する仕組みがなければ対応されません。

元請が果たすべき措置

特定元方事業者には、労働災害を防止するための措置が求められます。統括安全衛生責任者の職務と重なりますが、主なものを挙げます。

  • 協議組織の設置・運営——関係請負人が参加する場を設け、定期的に開催する
  • 作業間の連絡調整——作業の時期や場所が重ならないよう調整する
  • 作業場所の巡視——毎作業日に少なくとも一回、現場を巡視する
  • 教育への指導・援助——関係請負人が行う安全衛生教育を支援する

このうち、実務で最も重みを持つのが作業間の連絡調整です。混在作業による事故を防ぐ本体といってよい部分で、日々の作業予定を把握し、危険が重なる組み合わせを事前に避けることが求められます。

協議組織は、一般に「安全衛生協議会」などの名称で運営されます。形式的に開くだけでは意味がなく、各社が翌週の作業予定を持ち寄り、干渉を洗い出す場として機能させることが大切です。

なお、現場に入る会社を把握できていなければ、これらの措置は成り立ちません。施工体制を正確に把握しておくことが前提になります。詳しくは施工体制台帳とはをご覧ください。

公共工事における安全管理

公共工事では、安全衛生管理体制が契約上の要請とも結びついています。

まず、施工計画書に安全管理に関する事項を記載することが求められます。どのような体制で、どのような対策を講じるのか。これを着手前に整理し、発注者に示すことになります。施工計画書の記載事項は施工計画書とはをご覧ください。

次に、工事成績評定において安全管理の状況が評価されます。日常の取組みが、そのまま評点に反映される仕組みです。逆に、事故が発生すれば評価は下がり、場合によっては指名停止の措置につながることもあります。評定の仕組みは工事成績評定とは、指名停止は指名停止とはをご覧ください。

そして何より、労働災害は人の命に関わります。制度上の不利益を避けるためというより、現場で働く人を守るために体制があるという点を、見失わないようにしたいところです。

体制を形骸化させないために

安全衛生管理体制は、制度として整えることと、実際に機能させることが別だという難しさを抱えています。

よくあるのが、協議組織が報告会になってしまうケースです。各社が順に進捗を述べて終わり、干渉の洗い出しが行われない。これでは、調整という本来の目的が果たされません。「来週どこで何をするか」を具体的に出し合い、重なる部分を特定する場にする必要があります。

もうひとつが、下請が言い出しにくいという問題です。危険を感じても、工程への影響を考えて黙ってしまう。これでは情報が上がってきません。元請側が、指摘を歓迎する姿勢を示すことが、体制を生かす鍵になります。

そして、巡視を形だけにしないことです。決められた回数を回るだけでなく、危険が生じやすい場所と時間帯を見極めて巡ることで、実効性が高まります。

現場代理人・監理技術者との違い

建設現場には、法令や契約に基づくさまざまな役職が置かれます。混同しやすいものとの違いを整理しておきましょう。

現場代理人は、請負契約に基づく役職です。契約の履行に関して、受注者の代理として現場を運営します。根拠は契約約款にあり、労働安全衛生法とは系統が異なります。

監理技術者・主任技術者は、建設業法に基づく役職です。工事の施工の技術上の管理をつかさどる立場で、配置の基準や専任の要件が法律で定められています。

これらに対して統括安全衛生責任者は、労働安全衛生法に基づく役職であり、目的は労働災害の防止です。根拠法も、守るべき対象も異なります。

実際には、同じ人が複数の役職を兼ねることも少なくありません。ただし、兼務が可能かどうかは、それぞれの法令の要件によります。役職の意味を取り違えると、体制の説明そのものが誤りになります。詳しくは現場代理人とは監理技術者と主任技術者の違いとはをご覧ください。

担い手確保との関わり

安全衛生管理体制は、労働災害の防止という直接の目的に加えて、建設業の担い手確保とも深く関わっています。

建設業は、危険な仕事というイメージを持たれがちです。実際、他の産業に比べて労働災害の発生が多い分野であり続けてきました。このイメージが、若い世代が建設業を選ばない理由の一つになっています。

安全な現場をつくることは、働く人を守ると同時に、業界の持続性を支えます。事故が起きない現場であってはじめて、「ここで働き続けたい」と思ってもらえます。処遇の改善や週休2日の確保といった取組みと、根は同じです。

公共工事の制度も、この方向を後押ししています。適正な工期の確保、週休2日の推進、技能者の処遇改善——いずれも、働く環境を整えるための仕組みです。週休2日の取扱いは週休2日対象工事とは、技能者の処遇は建設キャリアアップシステム(CCUS)とはをご覧ください。

小規模な現場での考え方

統括安全衛生責任者の選任は、現場の労働者数が一定規模に達する場合に求められます。では、それに満たない小規模な現場では、何もしなくてよいのでしょうか。

そうではありません。選任の義務がない規模であっても、混在作業の危険がなくなるわけではないからです。むしろ小規模な現場では、専任の管理者を置けないぶん、目が行き届きにくい面もあります。

規模にかかわらず、元請には現場の安全を確保する責任があります。作業の重なりを把握し、各社と情報を共有する——やるべきことの本質は変わりません。法定の体制が求められない場合でも、実質的な調整の場を持っておくことが望ましいといえます。

また、工事の規模が小さくても、危険性の高い作業が含まれることはあります。高所作業、掘削、重機の使用——これらは現場の大小にかかわらず危険です。規模ではなく作業の内容から危険を見積もる視点が必要になります。

記録として残しておきたいこと

安全衛生管理は、日々の実践であると同時に、記録の積み重ねでもあります。何を残しておくべきかを整理します。

  • 協議組織の議事録——いつ、誰が参加し、何を調整したか
  • 巡視の記録——実施日時と、指摘した事項・改善の状況
  • 安全衛生教育の実施記録——誰にどんな教育を行ったか
  • 作業間連絡調整の記録——危険が重なる作業をどう調整したか

これらの記録は、二つの意味を持ちます。ひとつは、実際に措置を講じたことを示す証拠としての意味です。万一の際に、体制が機能していたことを説明できます。

もうひとつは、次に活かすための資料としての意味です。指摘した事項が繰り返されていないか、同じような危険が別の場面でも生じていないか。記録を振り返ることで、対策の精度が上がります。

工事の記録全般と同じく、後からまとめて作るのでは意味がありません。その場で残す習慣が、結果として最も負担の少ない方法になります。

よくある質問

統括安全衛生責任者に資格は必要ですか

特別な資格は求められていません。その代わり、その場所において事業の実施を統括管理する者をもって充てることとされています。現場を実際に取り仕切る責任者が担うという考え方です。

元方安全衛生管理者との違いは何ですか

元方安全衛生管理者は、統括安全衛生責任者を補佐し、その職務のうち技術的事項を管理する立場です。統括安全衛生責任者と違い、学歴や実務経験といった資格要件が定められています。

下請側は何を選任しますか

統括安全衛生責任者が選任された現場で自ら作業を行う関係請負人は、安全衛生責任者を選任します。統括安全衛生責任者との連絡・調整にあたる役割で、職長・安全衛生責任者教育を受けた者が就くのが一般的です。

まとめ

統括安全衛生責任者とは、複数の事業者が同じ場所で作業する建設現場において、混在作業による労働災害を防ぐため、現場全体の安全衛生を統括管理する立場です。特定元方事業者(元請)が選任し、特別な資格は求められない一方、その場所で事業の実施を統括管理する者をもって充てることとされています。あわせて元方安全衛生管理者が選任され、技術的事項を管理します。下請側は安全衛生責任者を選任し、連絡・調整にあたります。元請には、協議組織の設置・運営、作業間の連絡調整、毎作業日の巡視、教育への指導・援助といった措置が求められます。公共工事では、施工計画書への記載や工事成績評定を通じて、安全管理の取組みが評価にもつながります。体制を形だけにせず、干渉を洗い出す場として機能させることが要点です。関連して施工体制台帳とは施工計画書とはもあわせてご覧ください。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、AIの特性上、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。本記事の内容に関するご質問、ご意見、または訂正すべき点がございましたら、お手数ですがお問い合わせいただけますと幸いです。

※本記事は公開時点の情報をもとに作成しています。選任要件や規模の基準は労働安全衛生法令の定めによります。具体的な内容は法令および厚生労働省の一次情報をご確認ください。

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