環境配慮契約法とは?グリーン購入法との違いを解説

国や自治体が物品を買い、サービスを調達するとき、価格の安さだけで決めてよいのでしょうか。そこで環境への負荷も考慮しようとするのが、環境配慮契約法です。グリーン契約法とも呼ばれます。似た名前の法律にグリーン購入法がありますが、両者は役割が異なります。ごく単純にいえば、グリーン購入法は「何を買うか」を、環境配慮契約法は「どう買うか」を定めるものです。本記事では、環境配慮契約法とは何か、グリーン購入法との違い、対象となる契約類型、事業者への影響を解説します。
この記事のポイント
- 環境配慮契約法は、契約類型ごとに推奨する入札・契約方式等を定める法律
- グリーン購入法は製品・サービスの環境性能を規定するもので、役割が異なる
- 基本方針は閣議決定され、必要に応じて改定される
環境配慮契約法とは
環境配慮契約法は、正式には「国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律」といいます。長い名称ですが、内容はこの名前によく表れています。国などが契約を結ぶ際に、温室効果ガス等の排出削減に配慮しようというものです。
この法律の特徴は、契約の方式そのものに踏み込んでいる点にあります。契約類型ごとに、総合評価落札方式やプロポーザル方式など、推奨する入札・契約方式等を規定しています。単に「環境に配慮しましょう」という理念にとどまらず、どういう選び方をすればよいかまで示しているわけです。
なぜ契約方式が問題になるのでしょうか。価格の安さだけで決める方式では、環境性能の高さは評価されません。初期費用が高くても、運用時の消費エネルギーが少なく、長い目で見れば有利——というものが選ばれにくくなります。契約方式を変えなければ、環境配慮は進まないのです。
基本方針は閣議決定され、必要に応じて改定されます。対象となる契約類型や、その具体的な取扱いは、この基本方針で定められます。
グリーン購入法との違い
もう一つの環境系の調達法として、グリーン購入法があります。正式には「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」です。両者の違いを整理しておきましょう。
| 項目 | グリーン購入法 | 環境配慮契約法 |
|---|---|---|
| 定めるもの | 製品・サービスの環境性能 | 契約類型ごとの入札・契約方式等 |
| 趣旨 | 一定水準の環境性能を満たすものを調達する | 価格に加えて環境性能を総合的に評価する |
| ひとことで | 何を買うか | どう買うか |
グリーン購入法は、調達するものが一定水準の環境性能を満たしていることを求めます。基準に適合した製品を選ぶ——いわば合否の考え方です。
これに対して環境配慮契約法は、価格に加えて環境性能を総合的に評価することを趣旨とします。基準を満たしているかどうかではなく、より優れたものを選ぶという考え方です。総合評価落札方式の発想と重なります。評価値の算定については加算方式・除算方式とはをご覧ください。
両者は排他的なものではなく、役割を分担しています。基準を満たすものの中から、さらに優れたものを選ぶ——という組み合わせになるわけです。
対象となる契約類型
環境配慮契約法では、契約の類型ごとに取扱いが定められています。基本方針で対象とされてきた主な類型には、次のようなものがあります。
- 電気の供給を受ける契約——電力調達において、環境への配慮を評価する
- 自動車の購入等に係る契約——燃費や排出ガスの性能を考慮する
- 船舶の調達に係る契約——環境性能を評価の対象とする
- 省エネルギー改修事業に係る契約——改修による削減効果を評価する
- 建築物に関する契約——設計等において環境配慮を求める
- 産業廃棄物の処理に係る契約——処理の方法等を考慮する
対象類型や具体的な取扱いは、基本方針の改定によって見直されます。最新の内容は、環境省が公表する基本方針や解説資料で確認してください。
建設に関わる事業者にとって関係が深いのは、建築物に関する契約や、省エネルギー改修事業に係る契約です。設計や改修の業務を受託する場合、環境性能に関する提案が評価される可能性があります。産業廃棄物の処理も、工事に伴う排出との関係で無縁ではありません。廃棄物の扱いは建設汚泥とはもご覧ください。
裾切り方式と総合評価落札方式
環境配慮の評価を契約に組み込む方法として、しばしば対比されるのが「裾切り」と「総合評価」です。考え方の違いを押さえておきましょう。
裾切り方式は、一定の環境性能に達しない者を、入札への参加段階で除外する考え方です。基準を満たした者だけが参加し、その中では価格で競うことになります。基準の設定がはっきりしており、運用しやすいという利点があります。
総合評価落札方式は、環境性能を点数化し、価格と合わせて評価する考え方です。基準を超える努力が、そのまま評価に反映されます。より高い性能をめざす動機が働きやすい仕組みです。
どちらの方式が採られるかは、契約類型や案件によって異なります。参加する側としては、公告や入札説明書で方式を確認することが出発点になります。総合評価であれば、どの項目にどれだけ配点されるかを把握し、自社が加点を取れる部分を見極める必要があります。
事業者にとっての意味
公共調達に参加する事業者にとって、環境配慮契約法はどのような意味を持つのでしょうか。
第一に、環境性能が受注の要素になるということです。価格だけで決まらない以上、自社の取組みが評価につながる余地があります。省エネ性能の高い提案ができる、環境負荷の少ない工法を持っている——こうした強みが活きる場面が増えます。
第二に、取組みを説明できる形にしておく必要があるということです。実際に環境へ配慮していても、それを評価の場で示せなければ点数になりません。どの程度の削減効果があるのか、根拠のある数字で説明できるよう、日頃から整理しておくことが求められます。
第三に、民間取引にも波及するということです。公共調達で環境性能が問われる流れは、民間の発注者にも影響します。取引先から環境への取組みを尋ねられる機会は、今後も増えていくと見込まれます。
公共工事との関わり
環境配慮契約法は、物品やサービスの調達を中心に組み立てられていますが、公共工事の世界とも無関係ではありません。
公共工事の分野では、以前から環境負荷の低減が課題とされてきました。建設副産物のリサイクル、建設発生土の適正な処理、排出ガス対策型の建設機械の使用——これらはいずれも、環境への配慮を工事の実務に落とし込んだものです。リサイクルの枠組みは建設リサイクル法とはをご覧ください。
総合評価落札方式の評価項目に、環境への配慮が含まれることもあります。騒音や振動への対策、周辺環境への影響を抑える工夫といった提案が、加点の対象となる場合です。公告で評価項目を確認し、自社の取組みを結びつけられるかを検討する価値があります。
新しい技術の活用も、この文脈で意味を持ちます。環境負荷を減らす技術が新技術情報提供システムに登録されていれば、提案の裏づけとして使えます。詳しくはNETISとはをご覧ください。
なぜ公共調達で環境配慮が求められるのか
環境への配慮は民間の自主的な取組みに任せればよい、という考え方もあり得ます。それでも公共調達で制度化されているのには、理由があります。
ひとつは、調達の規模です。国や自治体が使う電力、購入する自動車、建設する建築物——その総量は膨大です。公的部門の調達が変われば、それだけで相当量の排出削減につながります。
もうひとつは、市場への影響です。公共調達で環境性能が評価されるようになれば、供給する側もその性能を高めようとします。買い手が基準を示すことで、市場全体の水準が引き上げられるという効果が期待されます。
そして、率先垂範という考え方です。民間に環境配慮を求める立場である以上、まず自らの調達で実践する。この姿勢がなければ、政策としての説得力を欠きます。
公共調達が単なる買い物ではなく、政策の手段としての性格を持つ——この点は、中小企業の受注機会確保を図る官公需法などにも共通する発想です。詳しくは官公需法とはをご覧ください。
価格と環境性能をどう両立させるか
環境配慮を進めるうえで避けて通れないのが、費用との関係です。環境性能の高いものは、初期費用が高くなることが少なくありません。
ここで重要になるのが、どの範囲で費用を見るかという視点です。導入時の価格だけを比べれば、性能の高いものは不利になります。しかし、運用時のエネルギー消費や、維持管理にかかる費用まで含めて考えれば、評価は変わります。
省エネルギー改修事業がその典型です。改修に費用はかかりますが、その後の光熱費が下がります。削減できる額が改修費を上回るなら、事業として成立します。契約の枠組みも、この考え方を前提に組み立てられます。
この発想は、工事の技術提案にも通じます。建設時の費用が下がっても、その後の維持管理費が増えるのでは、全体としての価値は下がっている。同じ構造の議論です。技術提案の考え方はVE方式とはをご覧ください。
自治体での取扱い
環境配慮契約法は「国等」を対象とする法律ですが、自治体での取組みも進められています。
自治体には、地域の実情に応じた対応が求められます。国と同じ枠組みをそのまま当てはめるのが難しい場合もあり、取組みの進み方には差があります。独自の要綱や方針を定めている団体もあれば、これからという団体もあります。
したがって、自治体案件に参加する事業者としては、案件ごとに確認するほかありません。公告や入札説明書に、環境性能に関する要件や評価項目が示されているかを見ます。示されていれば、それが評価の基準です。
また、自治体によっては公契約条例など、独自の観点を契約に組み込んでいる場合もあります。地域ごとの制度を把握しておくことが、参入戦略の一部になります。詳しくは公契約条例とはをご覧ください。
提案で環境配慮を示すときの要点
環境性能が評価される案件で、提案をどう組み立てるか。実務的な要点を整理します。
- 数字で示す——「環境に配慮します」ではなく、どれだけ削減できるかを示す
- 算定の根拠を添える——どういう前提でその数字になるのかを説明する
- 実績で裏づける——過去の工事や業務での実施例があれば示す
- 評価項目に沿って書く——公告で示された項目に対応させる
最も多い失敗が、一つ目です。環境への配慮は、抽象的な言葉で書きやすい分野でもあります。しかし、評価する側は点数をつけなければなりません。比較できる形になっていない提案は、評価のしようがないのです。
四つ目も見落とされがちです。自社が力を入れている取組みを書きたくなりますが、評価項目に含まれていなければ点数にはなりません。何が問われているかを読み取り、それに答える。提案書の基本は、この分野でも変わりません。
よくある質問
グリーン購入法とどちらが適用されますか
両者は役割が異なり、排他的なものではありません。グリーン購入法が製品・サービスの環境性能を定め、環境配慮契約法が契約類型ごとの入札・契約方式等を定めます。組み合わせて機能します。
対象となる契約類型はどこで確認できますか
基本方針で定められ、閣議決定を経て改定されます。対象類型や具体的な取扱いは見直されることがあるため、環境省が公表する基本方針や解説資料で最新の内容を確認してください。
中小企業には不利になりませんか
規模の大小より、取組みを説明できるかどうかが分かれ目になります。削減効果を根拠のある数字で示せるよう整理しておけば、企業規模にかかわらず評価につなげられる余地があります。
まとめ
環境配慮契約法(正式名称「国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律」)は、国などが契約を結ぶ際に、温室効果ガス等の排出削減に配慮することを求める法律です。契約類型ごとに、総合評価落札方式やプロポーザル方式など推奨する入札・契約方式等を規定する点が特徴で、「どう買うか」を定めるものだといえます。これに対してグリーン購入法は製品・サービスの環境性能を規定する「何を買うか」の法律であり、両者は役割を分担しています。基本方針は閣議決定され、必要に応じて改定されます。事業者にとっては、環境性能が受注の要素になる一方、取組みを根拠のある数字で説明できるようにしておくことが求められます。関連して建設リサイクル法とは、加算方式・除算方式とはもあわせてご覧ください。
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※本記事は公開時点の情報をもとに作成しています。対象となる契約類型・基本方針の内容は改定されることがあります。具体的な内容は環境省が公表する基本方針・解説資料等の一次情報をご確認ください。
