遠隔臨場とは?段階確認や材料確認を遠隔で行う仕組み

公共工事では、監督職員が現場に足を運んで確認する場面が数多くあります。段階確認、材料確認、立会——いずれも、施工が適正に行われていることを確かめるために欠かせない手続きです。しかし、現場が遠ければ移動に半日かかることもあり、受発注者双方にとって大きな負担でした。遠隔臨場は、この確認を映像と音声を通じて遠隔地から行う仕組みです。国土交通省が実施要領を定め、自治体にも広がっています。本記事では、遠隔臨場とは何か、対象となる確認、必要な機材と準備、実務上の注意点を解説します。
この記事のポイント
- 遠隔臨場は、段階確認・材料確認・立会を映像と音声で遠隔から行う仕組み
- ウェアラブルカメラ等の映像を、Web会議システム等を介して確認する
- 適用する工種・確認項目は、受発注者の協議によって選定する
遠隔臨場とは
遠隔臨場とは、工事で必要となる「段階確認」「材料確認」「立会」を、遠隔地から行うことをいいます。ウェアラブルカメラなどで取得した映像および音声を、Web会議システム等を介して確認する仕組みです。
従来、これらの確認は、監督職員が現場に出向いて直接行うものでした。しかし、担当する現場が広範囲に散らばっていれば、移動だけで一日が終わることもあります。受注者側も、監督職員の到着を待つために作業を止めておく必要がありました。
遠隔臨場は、この移動と待機をなくします。現場の技術者がカメラを装着し、確認すべき箇所を映しながら、離れた場所にいる監督職員とやり取りする。確認そのものは変わらず行いながら、移動に伴う時間と費用を削減できるわけです。
国土交通省では、令和4年に「建設現場における遠隔臨場に関する実施要領(案)」および「建設現場の遠隔臨場に関する監督・検査実施要領(案)」が策定され、その後改定が重ねられています。都道府県でも、同様の実施要領を定める動きが広がっています。
対象となる3つの確認
遠隔臨場の対象となるのは、次の3つです。それぞれ、何を確かめる手続きなのかを押さえておきましょう。
| 確認の種類 | 確かめる内容 |
|---|---|
| 段階確認 | 施工の途中段階で、完成後には見えなくなる部分などが設計どおりか |
| 材料確認 | 現場に搬入された材料が、規格や品質の要求を満たしているか |
| 立会 | 特定の作業や試験について、監督職員が立ち会って確認する |
このうち、実務でとくに頻度が高いのが段階確認です。コンクリートを打設する前の配筋の状況、埋め戻す前の基礎の出来形など、タイミングを逃すと確認できない項目が並びます。段階確認の詳細は段階確認とはをご覧ください。
重要なのは、すべての確認が自動的に遠隔臨場になるわけではないという点です。実施要領では、適用する工種・確認項目を、受発注者間の協議によって選定するものとされています。遠隔では判断しにくい項目は、従来どおり現場で確認することになります。
必要な機材と通信環境
遠隔臨場を行うには、現場側と事務所側の双方に準備が必要です。
現場側で中心となるのがウェアラブルカメラです。ヘルメットや身体に装着し、両手を空けたまま撮影できるものが使われます。確認箇所を映しながら、測定作業を行ったり、指示を受けて角度を変えたりする必要があるため、手持ちのカメラでは不便な場面が多いのです。
映像は、Web会議システム等を介して監督職員に届けられます。実施要領では、確認に必要な精度で映像・音声が伝わることが求められており、単に「映っていればよい」というものではありません。鉄筋の径や間隔を確認するなら、それが判別できる解像度が必要です。
そして最大の課題が通信環境です。山間部やトンネル内、地下の掘削現場など、電波が届きにくい場所は少なくありません。通信が途切れれば確認は成立しませんから、事前に現場での通信状況を確かめておくことが不可欠です。必要に応じて、携帯回線の中継機器を用意することもあります。
遠隔臨場がもたらす効果
遠隔臨場の導入によって、現場では次のような変化が生まれます。
- 移動時間の削減——監督職員が現場へ往復する時間がなくなる
- 待機時間の削減——受注者側が到着を待って作業を止める必要が減る
- 確認の機動性向上——「今すぐ見てほしい」に応じやすくなる
- 記録が残る——映像として保存でき、後から確認の経緯をたどれる
効果が大きいのは、3つ目の機動性かもしれません。従来は、監督職員の日程に合わせて施工の段取りを組む必要がありました。遠隔であれば、移動を伴わないぶん、短時間での対応が現実的になります。配筋が終わった直後に確認を受け、そのまま打設に移る——といった流れが組めれば、工程のロスが減ります。
4つ目の記録という点も見逃せません。映像が残れば、確認時の状況を後から振り返れます。工事写真と並ぶ記録の手段として機能する面があります。工事写真については工事写真とはをご覧ください。
実務で注意したいこと
遠隔臨場を実務で進めるうえで、押さえておきたい点を整理します。
第一に、着手時に適用範囲を協議しておくことです。どの工種の、どの確認項目を遠隔臨場で行うのか。これを施工計画の段階で受発注者間で確認し、記録に残しておきます。現場が進んでから「これは遠隔でよいのか」と迷うと、確認が滞ります。施工計画書の考え方は施工計画書とはをご覧ください。
第二に、映す側の技量が結果を左右することです。遠隔臨場では、カメラを持つ現場の技術者が、監督職員の目の代わりになります。何をどう映せば伝わるのか、スケールをどう当てれば寸法が読めるのか。この感覚がなければ、確認に時間がかかり、かえって非効率になります。実施前に社内で練習しておくと、本番がスムーズです。
第三に、通信が途切れた場合の対応を決めておくことです。確認の途中で映像が止まってしまったとき、どうするのか。日を改めるのか、現場確認に切り替えるのか。あらかじめ取り決めておけば、その場で慌てずに済みます。
ICT活用・書類簡素化との関係
遠隔臨場は、単独の取組みではありません。建設現場の生産性向上をめざす一連の施策のなかに位置づけられます。
測量から施工、検査までを3次元データでつなぐICT活用工事、書類の削減と電子化を進める工事書類の簡素化、情報共有システムによる決裁——これらはいずれも、現場の技術者が本来の施工管理に時間を使えるようにするための工夫です。遠隔臨場も、確認に伴う移動と待機をなくすという点で、同じ方向を向いています。
背景にあるのは、建設業の担い手不足と働き方改革という切実な事情です。限られた人数で工事を進めるには、一つひとつの作業から無駄を減らすほかありません。ICT活用工事についてはICT活用工事とは、書類の簡素化は工事書類の簡素化とはをご覧ください。
ただし、忘れてはならないのは、確認の質を落とさないということです。遠隔化は手段であって、目的ではありません。映像では判断しきれない項目まで無理に遠隔で済ませれば、品質の確保という本来の目的が損なわれます。何を遠隔にし、何を現場で確認するか。その線引きこそが、実務の要になります。
現場でのやり取りはどう変わるか
遠隔臨場を実際に行うと、確認のやり取りはどのように進むのでしょうか。おおまかな流れを見ておきます。
- 事前連絡——確認したい項目と実施の時間を、受注者から監督職員に伝える
- 接続——現場側がカメラを装着し、会議システムで監督職員とつながる
- 現況の提示——確認箇所の全体を映してから、細部に寄っていく
- 寸法等の確認——スケールを当て、指示に応じて角度や位置を変える
- 結果の記録——確認が済んだことを、所定の様式や映像として残す
この流れで意外と大切なのが、3番目の全体を映してから細部へという順序です。いきなり近接した映像を見せられても、監督職員にはそこがどこなのか分かりません。まず全景を示して位置関係を共有し、それから寄っていく。現場にいる人には当たり前の空間把握が、画面越しの相手には伝わっていないという前提に立つ必要があります。
また、音声によるやり取りも重要です。「今、右側の鉄筋を映しています」と言葉を添えるだけで、伝わり方が変わります。映像だけに頼らず、説明しながら進めるのが基本になります。
費用の扱いと導入の進め方
遠隔臨場には、カメラや通信の費用がかかります。この費用は誰が負担するのでしょうか。
発注機関によっては、遠隔臨場に要する費用を積算上で計上する取扱いを設けています。実施要領や特記仕様書に、費用の扱いが示されていることがあるため、着手時に確認しておくとよいでしょう。示されていない場合は、監督職員との協議事項になります。
導入を進める側から見ると、初期の負担をどう乗り越えるかが課題です。機材をそろえ、社内で使い方を習熟し、発注者と運用を詰める——最初の現場では、かえって手間が増えたように感じるかもしれません。
ただし、いったん運用が定着すれば、現場が変わっても同じやり方を使えます。機材も繰り返し使えます。複数の現場を抱える企業ほど、投資が回収しやすい構造です。積算での扱いは積算とはもあわせてご覧ください。
検査の場面での活用
遠隔臨場は、施工中の確認だけでなく、検査の場面でも活用が進められています。国土交通省では、遠隔臨場に関する監督・検査の実施要領も定められています。
検査での活用が期待されるのは、たとえば既済部分検査や、中間的な段階での確認です。工事の途中で出来高を確認する場面では、現場に出向かずに済めば、双方の負担が減ります。中間検査の仕組みは中間検査とはをご覧ください。
一方で、完成検査のように、構造物全体の出来ばえを総合的に判断する場面では、実際に現地で見ることの意味が大きくなります。すべてを遠隔に置き換えられるわけではなく、場面に応じた使い分けが前提です。
検査で確認される技術的な出来ばえは、工事成績評定にもつながります。遠隔であっても、映し方が拙ければ実際より低く見られかねません。伝える技量が評価に影響し得るという点は、意識しておきたいところです。評定の仕組みは工事成績評定とはをご覧ください。
遠隔臨場が定着するための条件
制度として用意されていても、現場で使われなければ意味がありません。定着のために何が必要かを考えておきます。
ひとつは、双方に慣れが必要だという点です。受注者側だけが準備しても、監督職員が画面越しの確認に不慣れであれば、やり取りは進みません。逆もまた同じです。最初の数回は時間がかかるものと見込んで、互いに習熟していく姿勢が要ります。
もうひとつは、従来どおりでもよい、という逃げ道を作らないことです。忙しいときに「今回は現場で見てもらおう」と戻してしまうと、いつまでも定着しません。適用範囲を決めたら、その範囲では原則として遠隔で行う——という運用が、習熟を早めます。
そして、小さく始めることです。確認項目の多い工種からいきなり導入するより、頻度が高く判断の難しくない項目から試すほうが、失敗しにくくなります。うまくいった経験が、次の適用範囲を広げる土台になります。
よくある質問
すべての確認が遠隔臨場になりますか
いいえ。適用する工種・確認項目は、受発注者間の協議によって選定するものとされています。遠隔では判断しにくい項目は、従来どおり現場での確認になります。着手時に範囲を決めておくことが大切です。
どんなカメラが必要ですか
両手を空けたまま撮影できるウェアラブルカメラが一般的です。確認に必要な精度で映像・音声が伝わることが求められるため、寸法や規格が判別できる性能かどうかを、実施要領に照らして確認してください。
通信環境が悪い現場ではどうしますか
事前に現場での通信状況を確かめ、必要なら中継機器を用意します。通信が途切れた場合にどう対応するか(日を改める、現場確認に切り替える等)も、あらかじめ取り決めておくと安心です。
まとめ
遠隔臨場とは、工事で必要となる段階確認・材料確認・立会を、ウェアラブルカメラ等の映像および音声をWeb会議システム等を介して確認することで、遠隔地から行う仕組みです。国土交通省が実施要領を策定し、自治体にも広がっています。監督職員の移動時間と受注者の待機時間を削減でき、確認の機動性が高まるほか、映像として記録が残るという利点もあります。一方で、適用する工種・確認項目は受発注者の協議で選定するものであり、すべての確認が遠隔になるわけではありません。実務では、着手時に適用範囲を協議しておくこと、映す側の技量を高めておくこと、通信が途切れた場合の対応を決めておくことが要点です。確認の質を落とさない線引きが、最も大切な判断になります。関連して段階確認とは、ICT活用工事とはもあわせてご覧ください。
※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、AIの特性上、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。本記事の内容に関するご質問、ご意見、または訂正すべき点がございましたら、お手数ですがお問い合わせいただけますと幸いです。
※本記事は公開時点の情報をもとに作成しています。遠隔臨場の運用・対象範囲は発注機関の実施要領により異なります。具体的な内容は各発注機関の実施要領等の一次情報をご確認ください。