施工プロセスを通じた確認とは?検査との関係を解説

工事の検査は、完成してから行うのが基本です。しかし、完成した構造物を見ただけでは、中に隠れた部分の施工が適切だったかは分かりません。書類で確認するにしても、膨大な量になります。そこで考えられたのが、施工プロセスを通じた確認という考え方です。工事が進む過程で実施状況を確認し、その結果を検査に反映させる——これにより、品質確保の体制を強め、完成検査の効率化も図ろうとするものです。本記事では、仕組みと実務への影響を解説します。
この記事のポイント
- 施工の過程で実施状況を確認し、その結果を検査に反映させる仕組み
- チェックリストを用いて監督職員が確認し、記録を残す
- 確認の記録は工事成績評定の基礎資料にもなる
なぜ過程を見るのか
完成検査だけでは、確認しきれないことがあります。
コンクリートを打設してしまえば、中の鉄筋は見えません。埋め戻した後では、基礎の状態を確認できません。完成した時点で見えるのは、表面だけです。
従来は、これを書類と写真で補ってきました。施工の各段階を記録し、後から検査で確認する——という方法です。
しかし、この方法には限界があります。書類が膨大になり、検査に時間がかかります。また、記録が整っていても、実際の施工が適切だったかまでは読み取りきれません。
そこで、施工しているその時に見るという発想が出てきます。過程で確認し、問題があればその場で是正する。これなら、手戻りも小さくて済みます。
記録による確認については工事写真とはをご覧ください。
チェックリストという道具
確認を行うにあたって用いられるのが、施工プロセスのチェックリストです。
これは、標準仕様書や契約書等に基づき、施工に必要なプロセスが適切に行われているかを監督職員が確認するための様式です。確認すべき項目が、工種や段階ごとに整理されています。
チェックリストを使う意味は、二つあります。
ひとつは、確認の漏れを防ぐことです。項目が示されていれば、担当者の経験に関わらず一定の水準で確認できます。
もうひとつが、記録として残ることです。いつ、どの項目を、どう確認したかが記録されます。この記録が、工事成績評定の基礎資料にもなります。
評定の仕組みについては工事成績評定とはをご覧ください。
検査の効率化という狙い
この仕組みには、品質確保とあわせて検査の効率化という狙いがあります。
施工の過程で確認が済んでいれば、完成検査や既済部分検査で改めて確認すべき事項は減ります。すでに見たものを、もう一度書類で追う必要がなくなるためです。
これは、受注者にとっても意味があります。検査のためだけに書類を整える作業が軽くなるからです。
近年進められている工事書類の簡素化とも、方向を同じくします。提出を求める書類を絞り込み、現場での確認を重視する——という考え方です。
ただし、注意すべき点があります。確認が過程に移るということは、その時を逃せないということでもあります。埋め戻した後では、確認できません。
詳しくは工事書類の簡素化とは、中間検査とはをご覧ください。
段階確認との関係
施工の過程で確認する仕組みとしては、段階確認が従来からあります。両者はどう違うのでしょうか。
段階確認は、特定の工程について、監督職員が立ち会って確認するものです。配筋が終わった時点、掘削が完了した時点——設計図書で定められた段階で行われます。
これに対して施工プロセスを通じた確認は、より広い範囲を対象とします。施工体制、品質管理の実施状況、安全管理の状況——工事の進め方全般を見ます。
つまり、段階確認が「その箇所が設計どおりか」を見るのに対し、プロセスの確認は「適切な管理が行われているか」を見る、という違いがあります。
両者は排他的なものではなく、組み合わされます。詳しくは段階確認とはをご覧ください。
出来高部分払との組み合わせ
この仕組みは、出来高部分払と組み合わせて語られることがあります。
出来高部分払とは、工事の進捗に応じて代金の一部を支払う方式です。受注者にとっては資金繰りが楽になり、発注者にとっては予算の執行が平準化されます。
ただし、支払うには出来高を確認する必要があります。どこまで進んだのかを、そのつど確認しなければなりません。
ここで、施工プロセスを通じた確認が活きます。日常的に現場を見ていれば、出来高の確認も効率的に行えます。確認のための検査を別途行う手間が減ります。
部分払の仕組みについては部分払(出来高払)とはをご覧ください。
受注者としての備え
この方式が適用される工事で、受注者は何を意識すべきでしょうか。
第一に、確認の時期を工程に組み込むことです。いつ、どの項目が確認されるのかを把握し、その時に現場が整っている状態にしておきます。
第二に、日常の管理を整えることです。確認は抜き打ちに近い形で行われることもあります。普段から品質管理の記録を整え、安全対策を徹底していれば、いつ見られても困りません。
第三に、指摘を活かすことです。過程での確認は、是正の機会でもあります。指摘された事項をその場で直せば、完成検査での指摘を避けられます。
第四に、記録を残すことです。確認を受けた事実と、その結果は記録されます。自社でも控えを保管しておけば、後の説明に使えます。
何が確認されるのか
チェックリストで確認される項目は、工種によって異なりますが、おおむね次のような区分で整理されます。
- 施工体制——技術者の配置、下請の状況、体制台帳の整備
- 施工状況——工程の管理、使用材料の確認、施工方法
- 品質管理——試験の実施、規格値への適合、記録の整備
- 出来形管理——寸法の測定、規格値への適合
- 安全管理——保護具の着用、仮設設備の状態、立入禁止措置
- 関係機関との調整——必要な届出、近隣への対応
これらは、どれも日常的に行っているはずのことです。特別な準備を要するものではありません。
逆にいえば、日頃の管理が疎かであれば、そのまま見えてしまいます。検査前に体裁を整えるという対応は通用しません。
管理の基準については品質管理基準・出来形管理基準とはをご覧ください。
監督と検査の役割分担
この仕組みを理解するには、監督と検査の違いを押さえておく必要があります。
監督は、工事が契約どおりに進むよう、発注者が日常的に行う業務です。監督職員が現場を確認し、指示を出し、協議に応じます。
検査は、契約に基づく給付が完了したことを確認する行為です。検査職員が行い、合格すれば代金の支払いにつながります。
施工プロセスを通じた確認は、監督の過程で得た情報を検査に活かすという発想です。日常的に見ている監督職員の確認結果を、検査職員が参照します。
これにより、検査職員が一から確認し直す必要が減ります。同じことを二度確認する無駄をなくすという意味があります。
遠隔での確認との組み合わせ
過程での確認を増やすには、監督職員が現場に出向く回数が増えます。しかし、一人で複数の現場を担当するのが実情です。
そこで有効なのが、映像を用いた遠隔での確認です。ウェアラブルカメラの映像を通じて、移動せずに現場を確認できます。
これにより、確認の頻度を上げることが現実的になります。移動時間がなくなれば、同じ時間でより多くの現場を見られます。
受注者にとっても、立会いを待つ時間が減るという利点があります。
ただし、遠隔で判断しにくい項目もあります。何を遠隔にし、何を現地で確認するか——その線引きが実務の要点です。詳しくは遠隔臨場とはをご覧ください。
生産性向上の取組みと品質確保は、こうして結びついています。
評定への影響
チェックリストの記録が工事成績評定の基礎資料になるという点は、受注者にとって重要です。
つまり、日々の管理がそのまま評点につながるということです。完成時にまとめて評価されるのではなく、過程の積み重ねが記録されていきます。
これは、見方によっては厳しい仕組みです。一時的に体裁を整えても意味がなく、継続的な管理の質が問われます。
一方で、丁寧にやっている現場が報われる仕組みでもあります。完成形だけを見ていては分からない、過程での工夫や配慮が評価されるからです。
工事成績は、次の入札での技術評価に影響します。良い施工を重ねることが、そのまま受注力につながる構造です。優良工事として表彰される道もあります。
詳しくは優良工事表彰とはをご覧ください。
営繕工事での運用
この仕組みは、土木工事だけのものではありません。建築物を対象とする営繕工事でも、同様のチェックリストが用いられます。
建築工事は、構造、仕上げ、設備が複雑に絡み合います。完成後には見えなくなる部分も多く、過程での確認の意義は大きくなります。
とくに設備工事では、天井裏や壁の内部に配管や配線が収まります。仕上げてしまえば確認できません。施工中に見ておく必要があります。
公共建築工事の仕様の枠組みについては公共建築工事標準仕様書とは、建築確認の手続きは計画通知とはをご覧ください。
土木か建築かを問わず、「見えなくなる前に確認する」という原則は共通しています。
書類を減らすという文脈
この仕組みは、工事書類を減らす取組みと切り離せません。
従来、品質を証明する手段は書類でした。写真を撮り、記録を作り、検査で提示する。確認する側も、書類を読んで判断していました。
しかし、この方法は双方に負担をかけます。作る側は膨大な書類を整え、見る側はそれを読み込まなければなりません。
現場で直接確認すれば、書類の一部は不要になります。見たものについて、改めて書面で説明を求める必要がないからです。
ただし、記録が要らなくなるわけではありません。確認した事実は残す必要があり、完成後に見えない部分の記録も引き続き必要です。
減らすのは「書類のための書類」であって、品質を裏づける記録ではない——この線引きが本質です。詳しくは工事完成図書とはをご覧ください。
確認を受ける側の心構え
過程で見られることを、どう受け止めるかで現場の空気が変わります。
「監視されている」と捉えれば、確認のたびに身構えることになります。指摘を受けまいとして、問題を隠す方向に働きかねません。
一方、「早く気づける機会」と捉えれば、見方が変わります。自分たちでは見落としていた点を指摘してもらえるなら、その場で直せます。完成検査で発覚するより、はるかに傷が浅く済みます。
発注者の側にも、同じことがいえます。粗探しをする場ではなく、品質を一緒に確保する場として運用できれば、現場との関係も良くなります。
問題を早く表に出し、協議して解決する——この姿勢は、迅速な回答を旨とする取組みとも通じます。詳しくはワンデーレスポンスとはをご覧ください。
よくある質問
段階確認と何が違いますか
段階確認は特定の工程について設計どおりかを確認するもの、施工プロセスを通じた確認は施工体制や品質管理の実施状況など、工事の進め方全般を見るものです。両者は組み合わせて行われます。
完成検査はなくなりますか
なくなりません。過程での確認により、完成検査で改めて確認すべき事項が減り、効率化が図られるという関係です。契約に基づく検査そのものは引き続き行われます。
受注者は何を準備しますか
確認の時期を工程に組み込み、日常の品質管理と安全管理の記録を整えておくことです。確認は是正の機会でもあるため、指摘をその場で直せば完成検査での指摘を避けられます。
まとめ
施工プロセスを通じた確認とは、工事が進む過程で実施状況を確認し、その結果を検査に反映させる仕組みです。完成してからでは確認できない部分を、施工しているその時に見るという発想に立ちます。確認には施工プロセスのチェックリストが用いられ、標準仕様書や契約書等に基づき、施工に必要なプロセスが適切に行われているかを監督職員が確認します。この記録は工事成績評定の基礎資料にもなります。品質確保の体制を強めるとともに、完成検査や既済部分検査の効率化を図る狙いがあり、工事書類の簡素化や出来高部分払とも方向を同じくします。段階確認が特定の工程を見るのに対し、こちらは工事の進め方全般を対象とする点が異なります。受注者としては、確認の時期を工程に組み込み、日常の管理を整えておくことが要点です。関連して段階確認とは、技術検査とはもあわせてご覧ください。
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