施工時期の平準化とは?ゼロ債務の活用と効果

施工時期の平準化とは?ゼロ債務の活用と効果

公共工事の現場には、はっきりとした繁閑の波があります。年度のはじめは仕事がなく、年度末になると一斉に工期が集中する。この波は、建設業にとって長年の悩みでした。技術者も作業員も機械も、年間を通じて安定して働けません。これを是正しようとする取組みが施工時期の平準化です。ゼロ債務負担行為の活用、繰越手続の柔軟な運用、早期発注——さまざまな手法が進められています。本記事では、課題の構造と具体的な手法、受注者への影響を解説します。

この記事のポイント

  • 年度当初に工事が少なく年度末に集中する傾向を是正する取組み
  • ゼロ債務負担行為により、前年度中の入札・契約が可能になる
  • 国と総務省が地域ごとの平準化率を公表している

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目次

なぜ波が生まれるのか

この問題の根にあるのは、予算の単年度主義です。

官公庁の予算は、4月から翌年3月までの1年を単位として議会や国会の議決を受けます。その年度の予算は、その年度のうちに執行するのが原則です。

すると、どうなるでしょうか。年度が始まり、予算が成立してから設計をまとめ、入札の手続きに入ります。実際に工事が動き出すのは、夏以降になることも珍しくありません。

そして、年度内に完成させなければならないため、工期は年度末に向かって詰まっていきます。結果として、第4四半期に工事量が集中します。

逆に、第1四半期は前年度の工事が終わり、新年度の工事がまだ出ていない「空白期間」になります。

予算の仕組みについては支出負担行為とはをご覧ください。

波がもたらす弊害

仕事の量が偏ることで、どのような問題が生じるのでしょうか。

第一に、技術者の配置が組めないことです。年度末に複数の工事が重なれば、配置できる技術者が足りなくなります。逆に年度当初は、技術者が手持ち無沙汰になります。

第二に、働き方への影響です。繁忙期には長時間労働が常態化し、休日も取りにくくなります。時間外労働の上限規制が適用されている以上、この構造は是正が必要です。

第三に、機械や資材の逼迫です。同時期に需要が集中すれば、リース機械が確保できず、資材の納期も延びます。価格も上がりやすくなります。

第四に、雇用の不安定さです。年間を通じて安定した仕事がなければ、人を通年で雇うことが難しくなります。担い手確保の面でも不利です。

労働時間の規制については建設業の時間外労働の上限規制とはをご覧ください。

ゼロ債務負担行為という手法

平準化の手法として、とくに効果が大きいとされるのがゼロ債務負担行為です。

債務負担行為とは、将来年度の支出を約束しておく仕組みです。単年度会計の例外として、あらかじめ議会の議決を得ることで設定できます。

このうちゼロ債務とは、当該年度の支出額をゼロとし、翌年度にすべて支出する形のものです。「ゼロ」というのは、設定した年度の支出額がゼロであることを指します。

これを使うと何ができるのか。新年度の工事の入札・契約を、前年度のうちに行えるのです。

つまり、1月や2月のうちに手続きを済ませておけば、4月から工事に着手できます。年度当初の空白期間が埋まります。

国土交通省は、自治体に対してゼロ債務負担行為を設定して事業を実施できることを通知し、活用を促してきました。

債務負担行為の基本は繰越明許費とは、年度開始前の手続きは契約準備行為とはをご覧ください。

ほかの手法

平準化の手法は、ゼロ債務だけではありません。いくつかを組み合わせて進められます。

  • 繰越制度の活用——年度内に終わらない事業の予算を翌年度へ繰り越す
  • 柔軟な工期の設定——受注者が工事の始期を選べる方式
  • 速やかな繰越手続——早い段階で繰越を判断し、手続きを進める
  • 早期発注——設計を前倒しし、年度当初から発注する
  • 積算の前倒し——発注の準備を計画的に進める

とくに受注者にとって分かりやすいのが、柔軟な工期の設定です。契約してから一定期間内であれば、受注者が着手の時期を選べるという方式があります。

これなら、他の工事との兼ね合いで技術者の配置を調整できます。繁忙期を避けて着手することも可能になります。

繰越の仕組みは繰越明許費とはをご覧ください。

進捗はどう測られるか

取組みの効果を測るため、平準化率という指標が用いられます。

これは、年度を通じた工事の稼働状況が、どれだけ平らになっているかを示す数値です。国土交通省と総務省は、地域ごとの平準化率を決定・公表しています。

あわせて、ゼロ債務負担行為の設定割合や実施時期といった具体的な取組状況もデータ化され、公表されています。

公表することには意味があります。自らの団体の数値が他と比べてどうかが分かれば、取組みを促す圧力になるからです。

実際には、団体による差が大きいのが現状です。平準化に向けた債務負担行為の設定などを実施していない団体も存在すると指摘されています。

発注者の責務については運用指針とはをご覧ください。

受注者への影響

平準化が進むと、受注する側にどのような変化があるでしょうか。

第一に、計画が立てやすくなることです。年度当初から工事があれば、技術者の配置を年間で設計できます。他の工事との重なりも調整しやすくなります。

第二に、働き方が改善することです。繁忙期が緩和されれば、長時間労働や休日出勤が減ります。週休2日の確保も現実的になります。

第三に、経営が安定することです。年間を通じて仕事があれば、売上の波も小さくなります。人を通年で雇用でき、育成にも取り組めます。

一方で、注意も要ります。前年度中に契約した工事は、年度をまたいで管理することになります。社内の体制や経理の処理を、それに合わせる必要があります。

週休2日の取扱いは週休2日対象工事とはをご覧ください。

自治体で進まない理由

取組みの必要性は広く認識されていますが、実際には団体による差が大きくなっています。なぜ進まないのでしょうか。

第一に、事務の負担です。ゼロ債務を設定するには、議会の議決が必要です。前年度のうちに設計を仕上げ、議案を準備しなければなりません。職員が少ない団体では、この作業が重くのしかかります。

第二に、前例がないことです。やったことのない手続きを始めるには、内部での説明と合意が要ります。「今までどおり」で回っているなら、あえて変える動機が働きません。

第三に、予算編成との関係です。翌年度の予算が固まる前に、どの事業を前倒しするかを決めなければなりません。調整に手間がかかります。

これらは、いずれも発注者側の体制の問題です。外部の技術力で補う方法もあります。詳しくはCM方式とはをご覧ください。

工期をめぐる考え方の変化

平準化の取組みは、工期そのものに対する考え方の変化とも結びついています。

かつては、「年度内に終わらせる」ことが絶対の前提でした。そのために工期を詰め、現場に無理を強いる——という構図があったのは否めません。

しかし、担い手の確保が課題となるなかで、この前提が問い直されています。適正な工期を確保することが、発注者の責務として明確化されました。

建設業法でも、著しく短い工期による契約の締結を禁じる規定が設けられています。工期は、作業に必要な日数、休日、天候による不稼働日を考慮して設定すべきものです。

年度にこだわるあまり無理な工期を設定するのではなく、必要なら年度をまたぐ——という発想の転換が求められています。

詳しくは担い手三法とは、工期変更・工期延長とはをご覧ください。

発注見通しを読む

受注する側として、平準化の動きをどう捉えればよいでしょうか。

有効なのが、発注見通しの確認です。発注者は、年度に発注する予定の工事を公表することとされています。これを見れば、いつ頃どのような案件が出るかが分かります。

ゼロ債務を活用している団体であれば、年度末の時期に翌年度分の公告が出ます。従来どおりの運用であれば、夏以降に集中します。

この傾向を把握しておけば、いつ技術者を空けておくべきかが見えてきます。応札の準備も前倒しできます。

情報の公表は法律上の義務でもあります。詳しくは入札契約適正化法とは、入札公告とはをご覧ください。

受け身で待つのではなく、公表された情報から動きを読む——これが受注活動の基本になります。

地域の建設業を維持する

平準化が目指す先には、地域の建設業を維持するという目的があります。

仕事の量が年間で大きく変動すれば、企業は人を抱えきれません。繁忙期に合わせて雇えば閑散期に余り、閑散期に合わせれば繁忙期に回らない——どちらを選んでも無理が生じます。

結果として、人を減らし、外注に頼る体質になります。技術の継承も難しくなります。

しかし、地域の建設業がなくなれば困るのは誰でしょうか。災害が起きたとき、真っ先に現場へ向かうのは地元の業者です。除雪も、日常の維持管理も、担い手がいなければ成り立ちません。

平準化は、単なる事務の工夫ではなく、地域の安全を支える体制を守る取組みでもあります。

詳しくは災害協定とは、地域維持型契約方式とはをご覧ください。

複数年契約という選択肢

年度の区切りによる弊害を避ける方法として、複数年にわたる契約もあります。

除雪や道路の維持管理のように、毎年継続して必要な業務では、1年ごとに契約し直すのが非効率です。業者が代われば、地域の状況を把握し直すところから始まります。

自治体には長期継続契約という仕組みがあり、条例で定める業務について複数年の契約を結べます。大型の事業では債務負担行為が用いられます。

複数年の契約であれば、受注者は人員と機械を計画的に配置できます。働く人にとっても、翌年の雇用の見通しが立ちます。

地域の維持に必要な業務をまとめて発注する方式も整備されています。詳しくは長期継続契約とは、地域維持型契約方式とはをご覧ください。

発注者と受注者の共通利益

平準化は、受注者だけが得をする話ではありません。発注者にとっても利点があります。

第一に、入札の不調が減ることです。工事が集中する時期は、どの業者も手一杯になります。応札がなく、再度手続きをやり直す——という事態は、発注者にとっても負担です。

第二に、競争性が保たれることです。余力のある時期であれば、複数の業者が参加しやすくなります。一者応札が減れば、価格の妥当性も確保しやすくなります。

第三に、職員の負担が分散することです。年度末に検査が集中すれば、発注者側も対応しきれません。

つまり、波をならすことは双方にとって合理的です。どちらかが我慢する話ではありません。

入札が成立しない場合の扱いは不落随契とは、一者応札の問題は一者応札とはをご覧ください。

平準化は発注者にも利点がありますか

あります。工事が集中する時期は応札がなく不調になりやすいものですが、余力のある時期なら参加者が増え、競争性も保たれます。年度末に検査が集中する職員の負担も分散します。

よくある質問

ゼロ債務とは何ですか

当該年度の支出額をゼロとし、翌年度に支出する債務負担行為です。これにより新年度の工事の入札・契約を前年度のうちに行え、年度当初から着工できるようになります。

なぜ年度末に工事が集中するのですか

予算の単年度主義が根にあります。年度が始まって予算が成立してから設計と入札の手続きを行うため着工が遅れ、年度内の完成を求められるため工期が年度末に詰まります。

受注者にとって何が変わりますか

技術者の配置を年間で計画でき、繁忙期の長時間労働が緩和されます。経営の安定にもつながります。一方で、年度をまたぐ工事の管理に社内の体制を合わせる必要があります。

まとめ

施工時期の平準化とは、年度当初に工事が少なく年度末に集中するという偏りを是正する取組みです。根にあるのは予算の単年度主義で、年度が始まってから手続きを行うため着工が遅れ、年度内完成を求められるため工期が年度末に詰まります。この波は、技術者の配置、働き方、機械や資材の確保、雇用の安定といった面で建設業に負担をかけてきました。手法として効果が大きいのがゼロ債務負担行為で、当該年度の支出額をゼロとすることで、新年度の工事の入札・契約を前年度のうちに行えます。ほかにも、繰越制度の活用、柔軟な工期の設定、早期発注などが組み合わされます。国と総務省は地域ごとの平準化率や取組状況を公表しており、団体による差が課題とされています。関連して繰越明許費とは、契約準備行為とはもあわせてご覧ください。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、AIの特性上、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。本記事の内容に関するご質問、ご意見、または訂正すべき点がございましたら、お手数ですがお問い合わせいただけますと幸いです。

※本記事は公開時点の情報をもとに作成しています。取組みの状況や制度の運用は発注機関により異なります。具体的な内容は国土交通省・総務省および各自治体の一次情報をご確認ください。

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