担い手三法とは?品確法・建設業法・入契法の一体改正を解説

担い手三法とは、公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)、建設業法、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(入契法)の三つの法律を指します。この三法は、建設業の担い手を確保するという共通の目的のもと、これまで一体的に改正されてきました。ダンピング対策、適正な工期の設定、週休2日の推進、労務費の基準——近年の公共工事をめぐる制度変更の多くは、この担い手三法の改正に根拠があります。本記事では、担い手三法とは何か、三度にわたる改正の流れ、そして事業者にとっての意味を整理して解説します。
この記事のポイント
- 担い手三法とは、品確法・建設業法・入契法の三つの法律の総称
- 2014年の改正を皮切りに、2019年(新・担い手三法)、2024年(第三次)と一体的に改正されてきた
- 担い手確保・生産性向上・地域の対応力強化という視点から、制度が整えられている
担い手三法とは
担い手三法とは、公共工事に関わる次の三つの法律をまとめた呼び方です。それぞれが担う役割は異なりますが、互いに補い合う関係にあります。
| 法律 | 主な役割 |
|---|---|
| 品確法(公共工事の品質確保の促進に関する法律) | 発注者の責務を定め、公共工事の品質確保と担い手の中長期的な育成・確保を図る |
| 建設業法 | 建設業者の許可、技術者の配置、下請取引の適正化など、業を営むうえでのルールを定める |
| 入契法(公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律) | 入札・契約の透明性や公正な競争を確保し、不正行為や施工不良を防ぐ |
この三法が「担い手三法」と呼ばれるようになったのは、2014年(平成26年)の改正がきっかけです。当時、建設業では、公共投資の減少や価格競争の激化により、技能労働者の賃金が抑えられ、若い人材が入ってこないという構造的な問題が深刻化していました。このままでは、将来の公共工事を担う人がいなくなる——その危機感から、担い手の確保を法律の目的に据えた一体的な改正が行われたのです。
三法が一体で改正されるのには理由があります。たとえば、担い手を確保するには賃金の引き上げが必要ですが、そのためには適正な予定価格の設定(品確法)、ダンピングの防止(入契法)、下請への適正な支払い(建設業法)が、すべて揃わなければ効果が出ません。どれか一つだけを変えても、別のところにしわ寄せが行ってしまいます。だからこそ、三つの法律をセットで改正するアプローチがとられてきました。
三度の改正の流れ
担い手三法は、これまで三度にわたって一体的に改正されてきました。それぞれの改正が、現在の公共工事の制度をかたちづくっています。
2014年(平成26年)の改正は、担い手の確保を法律の目的として初めて明確に位置づけたものです。品確法では、公共工事の品質確保に加えて「担い手の中長期的な育成及び確保」が目的として掲げられ、発注者の責務として、適正な予定価格の設定やダンピング対策などが定められました。価格競争一辺倒からの転換を図る、大きな節目となった改正です。ダンピング対策の考え方は入札のダンピングとはをご覧ください。
2019年(令和元年)の改正は「新・担い手三法」と呼ばれます。ここでの中心テーマは、働き方改革と生産性向上でした。適正な工期の設定が求められるようになり、著しく短い工期での契約締結が禁止されました。また、災害時の緊急対応の充実や、ICTの活用による生産性向上も盛り込まれました。工期をめぐるルールは工期変更・工期延長とは、週休2日の取組みは週休2日対象工事とはで解説しています。
2024年(令和6年)の改正が「第三次・担い手三法」です。令和6年6月に公布され、令和7年12月に全面施行されました。「担い手確保」「生産性向上」「地域における対応力強化」という三つの視点から措置が講じられており、中でも注目されるのが、中央建設業審議会が作成・勧告する労務費の基準(標準労務費)です。この基準を著しく下回る見積りや契約が禁止され、賃金の原資である労務費が価格競争で削られることに、法的な歯止めがかけられました。詳しくは標準労務費とはをご覧ください。
事業者にとっての意味
担い手三法の改正は、公共工事に関わる事業者の実務に、幅広く影響しています。ここ数年で導入・強化された制度の多くは、この三法に根拠を持っています。整理すると、次のような広がりを持っています。
- 価格に関するもの:適正な予定価格の設定、ダンピング対策、労務費の基準、スライド条項による価格変動への対応
- 工期・働き方に関するもの:適正な工期の設定、著しく短い工期の禁止、週休2日の推進
- 担い手に関するもの:技能者の処遇改善、社会保険加入の徹底、建設キャリアアップシステムの活用
- 生産性に関するもの:ICTの活用、施工体制の合理化、技術者配置要件の見直し
これらは、個別に見れば「新しい義務が増えた」と感じられるかもしれません。しかし、根底にあるのは、価格競争のしわ寄せを現場に押し付けるやり方をやめ、適正な価格・適正な工期で、質の高い施工を行える環境をつくるという考え方です。つまり、これらの制度は、まじめに施工し、技能者を大切にする事業者にとっては、追い風となる方向を向いています。
実務上は、自社の取組みを制度の方向に合わせていくことが、受注機会の確保につながります。適正な工期・費用を求めること、技能者の処遇を改善すること、ICTを活用すること——これらは総合評価落札方式での評価や、工事成績評定にも反映されていきます。評価の仕組みは加算方式・除算方式とは、工事成績評定とはをご覧ください。
よくある質問
担い手三法とはどの法律ですか
公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)、建設業法、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(入契法)の三つです。担い手の確保という共通の目的のもと、一体的に改正されてきたことから、こう呼ばれています。
なぜ三つまとめて改正するのですか
担い手の確保には、適正な予定価格の設定(品確法)、ダンピング防止(入契法)、下請への適正な支払い(建設業法)が揃う必要があるためです。一つだけ変えても別のところにしわ寄せが生じるため、一体的な改正が行われてきました。
第三次・担い手三法では何が変わりましたか
担い手確保・生産性向上・地域の対応力強化の視点から措置が講じられ、中でも中央建設業審議会が勧告する労務費の基準(標準労務費)を著しく下回る見積り・契約の禁止が大きな変更です。令和6年6月公布、令和7年12月に全面施行されました。
まとめ
担い手三法とは、品確法・建設業法・入契法の三つの法律の総称で、建設業の担い手確保という共通の目的のもと、一体的に改正されてきました。2014年の改正で担い手確保が法目的に位置づけられ、2019年の新・担い手三法では適正な工期の設定など働き方改革が、2024年の第三次・担い手三法では労務費の基準の創設などが盛り込まれ、令和7年12月に全面施行されました。ダンピング対策、適正な工期、週休2日、労務費の基準といった近年の制度は、いずれもこの三法に根拠があります。価格競争のしわ寄せを現場に押し付けない環境づくりという方向は、まじめに施工する事業者にとって追い風です。関連して標準労務費とは、週休2日対象工事とはもあわせてご覧ください。
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※本記事は公開時点の情報をもとに作成しています。法改正の内容や施行時期は今後も変わることがあります。具体的な内容は国土交通省の公表資料やe-Gov法令検索等の一次情報をご確認ください。