建設工事紛争審査会とは?あっせん・調停・仲裁を解説

建設工事紛争審査会とは?あっせん・調停・仲裁を解説

工事代金が支払われない、追加費用の負担で折り合わない、工事の瑕疵をめぐって主張が対立する——建設工事では、こうした紛争が起こり得ます。裁判に持ち込めば、時間も費用もかかり、取引関係も壊れかねません。そこで用意されているのが建設工事紛争審査会です。建設業法に基づき、建設工事の請負契約に関する紛争を、専門家の知見を活かして解決する準司法機関で、あっせん・調停・仲裁の三つの手続きがあります。非公開で、早期の解決が期待できるのが特徴です。本記事では、審査会の仕組みと三つの手続きの違い、利用の流れを解説します。

この記事のポイント

  • 建設工事紛争審査会は、建設工事の請負契約に関する紛争を扱う準司法機関
  • 国土交通省の中央審査会と各都道府県の審査会があり、全国に設置されている
  • 手続きはあっせん・調停・仲裁の三種類。非公開で早期解決を図れる

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目次

建設工事紛争審査会とは

建設工事紛争審査会とは、建設業法に基づいて設置される、建設工事の請負契約に関する紛争を処理するための機関です。国土交通省に置かれる中央建設工事紛争審査会と、各都道府県に置かれる都道府県建設工事紛争審査会があり、全国に設置されています。

審査会の特徴は、建設工事に特化した専門機関である点です。委員は、弁護士を中心とする法律の専門家と、建築・土木・電気・設備といった技術分野の学識経験者、建設行政の経験者などで構成されています。建設工事の紛争は、契約解釈という法律の問題と、施工の技術的な問題が絡み合うことが多く、両方の知見がなければ適切な判断ができません。その両輪を備えているのが審査会です。

もう一つの特徴が非公開であることです。裁判は原則公開ですが、審査会の手続きは公開されません。取引の内容や、自社の施工体制に関する情報が外部に知られることを避けたい当事者にとって、これは大きな利点です。加えて、裁判に比べて早期の解決が期待でき、費用面の負担も抑えられる傾向があります。

審査会は、原則として当事者双方の主張・証拠に基づいて民事紛争の解決を行う準司法機関と位置づけられています。行政の相談窓口とは異なり、当事者の主張を突き合わせて判断する場だという点を理解しておく必要があります。

あっせん・調停・仲裁の違い

審査会が行う手続きは三種類あり、関与の度合いと結果の拘束力が異なります。

手続き進め方結果の性格
あっせん委員が当事者の間に入り、話し合いによる解決を手助けする当事者の合意が必要。合意できなければ打切り
調停委員が双方の主張を聴き、調停案を示して受諾を勧告する双方が受諾すれば解決。受諾しなければ打切り
仲裁仲裁人が審理し、判断(仲裁判断)を下す確定判決と同一の効力を持つ。原則として不服申立てできない

あっせんは、最も簡易な手続きです。委員が当事者の間に立ち、双方の言い分を整理しながら、話し合いによる解決を促します。争点が比較的単純で、当事者間に歩み寄りの余地がある場合に適しています。

調停は、あっせんより踏み込んだ手続きです。委員が双方の主張と証拠を検討したうえで、解決案(調停案)を示し、受諾を勧めます。第三者が具体的な解決の形を提示してくれるため、当事者だけでは着地点が見えない場合に有効です。ただし、あっせん・調停とも、当事者が受け入れなければ解決には至りません。

仲裁は、性格が大きく異なります。仲裁人が審理して下した判断は、確定判決と同一の効力を持ち、原則として不服を申し立てることができません。裁判に代わる最終的な解決手段です。その分、利用するには当事者双方の仲裁合意が必要になります。契約書にあらかじめ仲裁の条項を入れておくか、紛争が生じた後に合意するかのいずれかです。

中央と都道府県のどちらに申請するか

審査会は、国土交通省の中央審査会と、各都道府県の審査会があります。どちらに申請するかは、当事者の建設業許可の区分などによって定められています。

おおまかな考え方としては、当事者の一方または双方が国土交通大臣の許可を受けた業者である場合や、当事者が異なる都道府県の知事許可を受けている場合などは中央審査会、当事者双方が同一の都道府県知事の許可を受けている場合はその都道府県の審査会、という整理になります。自社の状況でどちらに申請すべきか迷う場合は、審査会の事務局に問い合わせるのが確実です。建設業許可の区分は建設業許可とはをご覧ください。

申請にあたっては、申請書と証拠書類のほか、当事者の商業登記事項証明書や委任状などの添付書類、申請手数料、通信運搬費などが必要になります。手数料は請求する金額に応じて定められており、裁判の訴訟費用に比べると抑えられているのが一般的です。

なお、審査会が扱うのは建設工事の請負契約に関する紛争です。請負代金の支払い、工事の瑕疵(契約不適合)、工期の遅延、追加工事の費用負担といった事案が典型です。逆に、請負契約に関わらない紛争は対象外となります。

どんな紛争が持ち込まれるか

実際に審査会で扱われる紛争には、いくつかの典型的なパターンがあります。

  • 請負代金をめぐるもの:追加工事や設計変更に伴う増額の可否、代金の未払い
  • 瑕疵(契約不適合)をめぐるもの:完成後に判明した不具合の責任と補修費用の負担
  • 工期をめぐるもの:遅延の責任がどちらにあるか、遅延損害金の要否
  • 契約解除をめぐるもの:解除の有効性、精算すべき金額

この一覧を見ると、多くが契約内容の解釈に関わることが分かります。「その追加作業は契約の範囲内だったのか」「条件の相違は誰の責任か」——こうした争点は、契約書と設計図書に立ち返って判断されます。だからこそ、日頃から契約の内容を理解し、協議の経過を記録に残しておくことが、いざというときの備えになります。契約のルールは公共工事標準請負契約約款とは、条件の相違については条件明示とはをご覧ください。

なお、下請契約をめぐる紛争も審査会の対象です。元請と下請の間で、代金の支払いや工事内容について争いが生じた場合にも利用できます。下請取引のルールは下請代金の支払期日とはをご覧ください。

紛争を防ぐために

審査会という仕組みがあるとはいえ、紛争にならないに越したことはありません。紛争の芽を摘むために、日頃から意識したいことを挙げます。

第一に、書面による契約と記録です。建設業法は書面による契約の締結を義務づけていますが、実務では、契約後の変更が口頭のまま進むことがあります。追加作業を口約束で引き受け、後から費用が認められない——これは典型的な紛争パターンです。変更が生じたら、その都度、書面で確認する習慣が不可欠です。

第二に、早期の協議です。問題の芽が小さいうちに協議すれば、話し合いで解決できることがほとんどです。放置して工事が進み、金額が膨らんでから持ち出せば、双方の主張が固まって折り合いにくくなります。「これは後で揉めるかもしれない」と感じた時点で、監督員や発注者に相談することが大切です。工事の途中の協議の場については条件明示とはで三者会議や設計変更審査会を紹介しています。

第三に、契約内容の理解です。自社がどんな義務を負い、どんな権利を持つのかを把握していれば、不当な要求には根拠をもって対応できますし、自社の非を認めるべき場面も判断できます。契約を理解していないまま感情的に対立することが、紛争を長引かせる最大の要因です。

利用を検討するときの視点

それでも解決しない場合、審査会の利用を検討することになります。その際の判断材料を整理します。

まず、どの手続きを選ぶかです。関係を維持しながら着地点を探りたいなら、あっせんや調停が適しています。相手が話し合いに応じず、決着をつける必要があるなら仲裁ですが、これには仲裁合意が必要です。契約書に仲裁条項があるかを、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。

次に、準備できる証拠です。審査会は当事者の主張と証拠に基づいて判断します。契約書、設計図書、打合せ記録、指示書、写真、作業日報——こうした資料がどれだけ揃っているかが、主張の説得力を左右します。日々の記録が、ここで効いてきます。記録の重要性は工事写真とはでも触れています。

そして、取引関係への影響です。審査会の利用は正当な権利行使であり、後ろめたいことではありません。とはいえ、その後の関係も考えれば、まずは当事者間での解決を尽くすのが順序です。専門機関があることを知っておくこと自体が、交渉における冷静さにつながります。

手続きの流れ

実際に審査会を利用する場合、どのような流れになるのでしょうか。おおまかな進み方を押さえておきましょう。

まず、紛争の当事者の一方が申請書を提出します。申請書には、求める内容(請求の趣旨)と、その理由、争点となっている事実関係を記載し、契約書や設計図書、打合せ記録といった証拠書類を添付します。ここで争点を明確に整理できているかが、その後の進行を左右します。

申請が受理されると、相手方に通知され、答弁書の提出が求められます。双方の主張が出そろったところで、委員による期日が開かれ、当事者が出席して主張を述べます。技術的な争点がある場合には、専門委員が現場を確認することもあります。

その後、選んだ手続きに応じて進みます。あっせん・調停であれば、委員が調整や解決案の提示を行い、双方が受け入れれば解決、受け入れられなければ打切りです。仲裁であれば、審理を経て仲裁判断が下されます。期間は事案の複雑さによりますが、裁判に比べれば短期間で結論に至る傾向があります。

公共工事と民間工事での違い

審査会は、公共工事・民間工事のいずれの請負契約に関する紛争も扱います。ただし、実務上の背景には違いがあります。

公共工事では、契約が標準請負契約約款に準拠しており、変更や協議の手続きが明確に定められています。設計変更審査会のような協議の場も用意されており、紛争に至る前に解決できる仕組みが比較的整っています。発注者側も、運用指針に沿った事務が求められる立場です。発注者の責務については運用指針とはをご覧ください。

一方、民間工事では、契約内容が当事者ごとに異なり、口頭での取り決めが残っていることもあります。そのぶん、契約解釈をめぐる争いが生じやすい面があります。民間工事用の標準約款も用意されているので、これを活用することがトラブル予防につながります。

公共工事を主とする事業者にとっても、下請契約や、兼業している民間工事では、この違いを意識しておく意味があります。公共工事で当たり前の手続きが、民間では整っていないこともある——その前提で、書面での確認を徹底することが自社を守ります。下請構造における契約の適正化は下請負人とはもあわせてご覧ください。

よくある質問

あっせん・調停・仲裁はどう選びますか

話し合いで歩み寄れる見込みがあるならあっせん、第三者に解決案を示してほしいなら調停、決着をつける必要があるなら仲裁です。ただし仲裁は当事者双方の仲裁合意が必要で、その判断は確定判決と同一の効力を持ちます。

手続きは公開されますか

非公開です。裁判は原則公開ですが、審査会の手続きは公開されません。取引内容や施工体制に関する情報が外部に知られることを避けられる点は、当事者にとって大きな利点です。

中央と都道府県のどちらに申請しますか

当事者の建設業許可の区分などによって定められています。大臣許可の業者が当事者の場合や、異なる都道府県の知事許可の業者どうしの場合は中央審査会が基本です。判断に迷う場合は審査会の事務局に問い合わせるのが確実です。

下請との紛争も対象ですか

対象です。審査会が扱うのは建設工事の請負契約に関する紛争であり、元請と下請の間の契約も含まれます。代金の支払いや工事内容をめぐる争いにも利用できます。

まとめ

建設工事紛争審査会とは、建設業法に基づき、建設工事の請負契約に関する紛争を処理する準司法機関です。国土交通省の中央審査会と各都道府県の審査会があり、法律と技術の専門家で構成されています。手続きはあっせん・調停・仲裁の三種類で、あっせんと調停は当事者の合意による解決を目指すもの、仲裁は確定判決と同一の効力を持つ判断を下すものです(仲裁合意が必要)。非公開で、裁判に比べて早期・低コストの解決が期待できます。もっとも望ましいのは紛争にしないことであり、書面による契約と記録、早期の協議、契約内容の理解が最大の予防策になります。関連して公共工事標準請負契約約款とは、条件明示とはもあわせてご覧ください。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、AIの特性上、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。本記事の内容に関するご質問、ご意見、または訂正すべき点がございましたら、お手数ですがお問い合わせいただけますと幸いです。

※本記事は公開時点の情報をもとに作成しています。手続きの要件・手数料・管轄は制度改正により変わることがあります。具体的な内容は国土交通省・各都道府県の審査会が公表する資料等の一次情報をご確認ください。

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