CM方式とは?発注者を支援する仕組みと活用場面

公共工事を発注するには、技術的な知識が要ります。設計の内容を確認し、工事の進み方を管理し、品質を確かめる——いずれも専門性が必要な仕事です。ところが、職員数の限られる自治体では、こうした体制を整えるのが難しくなっています。そこで活用されるのがCM方式(コンストラクション・マネジメント方式)です。技術的な中立性を保ちながら、発注者の側に立ってマネジメントを担う仕組みです。本記事では、CM方式とは何か、ピュア型とアットリスク型の違い、公共工事での活用を解説します。
この記事のポイント
- CM方式は、技術的中立性を保ちつつ発注者の側に立ってマネジメントを行う方式
- ピュア型とアットリスク型の2つの類型がある
- 2014年の品確法改正により、公共工事での活用が可能になった
CM方式とは
CM方式とは、コンストラクション・マネージャー(CMR)が、技術的な中立性を保ちつつ発注者の側に立って、設計・発注・施工の各段階においてマネジメント業務の全部または一部を行う方式です。
担う業務には、次のようなものが含まれます。
- 設計の検討——設計の内容が要求に合っているかを確認する
- 発注方式の検討——どの方式で、どう分割して発注するかを助言する
- 工程管理——事業全体の進み方を把握し、調整する
- 品質管理——施工の品質が確保されているかを確認する
- コスト管理——費用の見通しを立て、変動を管理する
ここで重要なのが、発注者の側に立つという点です。設計者でも施工者でもなく、発注者を技術面で支える立場です。発注者に専門知識が足りない部分を補う役割だといえます。
また、技術的な中立性も要件です。特定の工法や企業に偏った助言をするのでは、発注者の利益になりません。
ピュア型とアットリスク型
CM方式には、大きく2つの類型があります。
| 項目 | ピュア型 | アットリスク型 |
|---|---|---|
| 立場 | 発注者の支援に徹する | 工事費や工期の責任も負う |
| 契約の性格 | 基本的に準委任契約 | 請負的な要素を含む |
| 工事との関係 | 工事契約の当事者にならない | 工事を請け負う形をとる場合がある |
| 公共工事での例 | 活用ガイドラインが整備されている | 限定的 |
ピュア型は、純粋に発注者の支援を行う形です。マネジメント業務の対価を受け取りますが、工事費の増減について責任を負うわけではありません。基本的に民法上の準委任契約として構成されます。
アットリスク型は、工事費や工期についても責任を負う形です。マネジメントを担いながら、結果に対するリスクも引き受けます。
公共工事では、ピュア型の活用が中心です。国土交通省は、地方公共団体がピュア型CM方式を活用する際の参考となるガイドラインを公表しています。
準委任契約の考え方については準委任契約とはをご覧ください。
なぜ公共工事で必要とされるのか
CM方式が公共工事で注目される背景には、発注者側の体制の問題があります。
自治体、とくに小規模な市町村では、技術職員の数が限られています。土木や建築の専門職が数名しかいない、あるいは配置されていないという団体も珍しくありません。
その状態で、設計の内容を確認し、工事を監督し、検査を行うのは容易ではありません。結果として、受注者に任せきりになったり、不適切な設計変更が見過ごされたりする恐れが生じます。
また、庁舎の建替えのように何十年に一度の事業では、経験を持つ職員がいないのが普通です。日常的に扱わない規模の事業を、手探りで進めることになります。
2014年に公共工事の品質確保に関する法律が改正され、発注者の責務が明確化されるとともに、多様な入札契約方式の採用が可能になりました。CM方式の導入も、その流れのなかに位置づけられます。詳しくは担い手三法とはをご覧ください。
どのような場面で使われるか
CM方式が活用される場面を整理します。
第一に、大規模で複雑な事業です。庁舎、病院、学校の建替えなど、関係者が多く、調整に手間のかかる事業です。
第二に、技術職員が不足している団体の事業です。専門的な判断を外部の力で補います。
第三に、災害復旧です。短期間に大量の工事を進める必要があり、通常の体制では処理しきれない場面で活用されます。
第四に、新しい発注方式を採用する事業です。設計施工一括やECI方式を初めて採用する場合、手続きの設計から支援を受けられます。
国土交通省は、自治体でのCM方式の活用事例集を公表しています。どのような事業で、どのように使われたかの参考になります。災害時の体制については災害協定とはもご覧ください。
発注者支援業務との違い
公共工事には、発注者支援業務という委託業務があります。CM方式と似ていますが、同じではありません。
発注者支援業務は、積算、監督、用地といった個別の事務を補助するものです。発注者の職員が行う作業の一部を、外部に委託する形です。
これに対してCM方式は、事業全体のマネジメントを担います。どう発注するか、どう進めるか、どこにリスクがあるか——事業の組み立てに関わる部分まで含みます。
もっとも、実務では境界が明確でないこともあります。契約の名称が何であれ、どこまでの業務を委ねるのかを仕様書で明確にすることが重要です。
なお、いずれの場合も、最終的な意思決定は発注者が行うという点は変わりません。外部に委ねられるのは支援であって、権限そのものではありません。
受託する側に求められるもの
CM業務を受託する立場では、何が必要になるでしょうか。
まず、幅広い技術的知見です。設計、積算、施工、契約——いずれについても一定の理解がなければ、発注者を支援できません。特定分野の専門性だけでは務まりません。
次に、中立性を保つ姿勢です。自社や関係会社に有利な助言をすれば、方式の前提が崩れます。利益相反を避ける体制が問われます。
そして、説明する力です。技術的な内容を、専門外の職員や議会に分かるよう伝える必要があります。判断の材料を示し、発注者自身が決められるようにするのが役割です。
業務の選定は、価格だけでは決められません。企画競争やプロポーザル方式によることが多くなります。詳しくは企画競争とはをご覧ください。
事業の段階ごとの関わり方
CM業務は、事業のどの段階から関わるかによって内容が変わります。
構想・計画の段階では、事業の進め方を組み立てます。どのような施設が必要か、概算でどれだけの費用がかかるか、どの発注方式が適するか。ここで関われば、事業全体の骨格に関与できます。
設計の段階では、設計者が作成する内容を技術的に確認します。要求が反映されているか、過大な仕様になっていないか、将来の維持管理に配慮されているか。発注者に代わってチェックする役割です。
発注の段階では、入札の手続きを支援します。仕様書の作成、評価基準の設定、質問への回答。公正な手続きを組み立てることが求められます。
施工の段階では、工程や品質の確認を行います。監督職員の業務そのものを代行するわけではありませんが、技術的な助言によって発注者の判断を支えます。
早い段階から関わるほど効果は大きくなります。設計が固まってから入っても、変えられる範囲は限られるためです。監督職員の役割は監督員とはをご覧ください。
導入にあたっての課題
CM方式は有効な手段ですが、導入にあたっての課題もあります。
第一に、費用です。CM業務にも当然ながら対価が必要です。その分、事業費は増えます。マネジメントによって得られる効果が、費用を上回るかどうかの見極めが要ります。
第二に、説明責任です。「なぜ外部に委ねるのか」を議会や住民に説明する必要があります。職員の能力不足と受け取られることへの抵抗感も、現場には存在します。
第三に、丸投げにならないかという懸念です。判断を外部に委ねきってしまえば、発注者としての責任を果たせません。意思決定の主体はあくまで発注者であるという線引きが必要です。
第四に、受け手の確保です。中立性を保ちながら幅広い業務を担える事業者は、どの地域にも豊富にいるわけではありません。地方では選択肢が限られる場合があります。
これらを踏まえ、何をどこまで委ねるのかを明確にしたうえで導入することが肝要です。
官民連携の手法との関係
CM方式は、官民連携の手法のひとつとして語られることがあります。ただし、他の手法とは性格が異なります。
指定管理者制度やPFI事業では、民間が事業そのものを担います。施設の運営や、設計から維持管理までを一体で引き受ける形です。
これに対してCM方式では、民間が担うのは発注者側の技術支援です。事業の実施主体はあくまで公であり、その判断を支える立場に立ちます。
つまり、CM方式は「民間に任せる」手法ではなく、「公が適切に発注できるようにする」手法だといえます。公の側の能力を補強するという発想です。
また、国土交通省の直轄事業では、官民の技術者が一体となって事業を進める事業促進PPPという仕組みも導入されています。詳しくは事業促進PPPとは、官民連携とはをご覧ください。
施工者の立場から見ると
工事を受注する立場から、CM方式が導入された事業はどう見えるでしょうか。
まず、やり取りの相手が増えます。発注者の職員に加えて、CM業務の受託者が現場や打合せに関わります。誰が決定権を持つのかを、早い段階で確認しておく必要があります。
一方で、技術的な話が通じやすいという利点もあります。専門知識を持つ相手であれば、施工上の制約や変更の必要性を説明しやすくなります。設計変更の協議が滞りにくくなる面があります。
注意したいのは、指示の出どころです。CM業務の受託者が現場で述べた意見が、発注者の正式な指示なのかどうか。食い違えば、後で費用や工期をめぐる争いになりかねません。
重要な事項については、発注者の書面による確認を取るのが安全です。記録の残し方は、通常の工事と変わりません。詳しくは工事の一時中止とはもご覧ください。
発注者の責務という考え方
CM方式の根底にあるのは、発注者にも果たすべき責務があるという考え方です。
公共工事の品質は、受注者の努力だけでは確保できません。適正な予定価格を設定する、無理のない工期を定める、施工条件を明示する、設計変更に適切に対応する——いずれも発注者の仕事です。
これができていなければ、受注者がどれだけ努力しても、良い工事にはなりません。安すぎる予定価格、短すぎる工期、曖昧な条件——こうした発注が、現場に無理を強いてきました。
品確法の改正で発注者の責務が明確化されたのは、この認識によります。そして、責務を果たすための体制が整わない団体を支える手段のひとつが、CM方式というわけです。
受注者の立場からも、発注者の体制が整うことには意味があります。適切な発注は、結果として自社の仕事を進めやすくするからです。発注関係事務のルールは運用指針とはをご覧ください。
よくある質問
ピュア型とアットリスク型はどう違いますか
ピュア型は発注者の支援に徹し、基本的に準委任契約として構成されます。アットリスク型は工事費や工期についても責任を負う形です。公共工事ではピュア型の活用が中心で、ガイドラインも整備されています。
発注者支援業務と同じですか
異なります。発注者支援業務は積算や監督といった個別の事務の補助であるのに対し、CM方式は事業全体のマネジメントを担います。ただし実務では境界が明確でないこともあり、仕様書での範囲の明確化が重要です。
どんな事業で使われますか
庁舎や病院の建替えなど大規模で複雑な事業、技術職員が不足している団体の事業、災害復旧、新しい発注方式を初めて採用する事業などです。国土交通省が自治体での活用事例集を公表しています。
まとめ
CM方式とは、コンストラクション・マネージャーが技術的な中立性を保ちつつ発注者の側に立って、設計・発注・施工の各段階でマネジメント業務を行う方式です。設計の検討、発注方式の検討、工程管理、品質管理、コスト管理などを担います。類型にはピュア型とアットリスク型があり、公共工事ではピュア型が中心で、国土交通省が地方公共団体向けの活用ガイドラインを公表しています。背景にあるのは、自治体の技術職員不足という構造的な課題であり、2014年の品確法改正によって多様な入札契約方式の採用が可能になったことも後押ししています。受託する側には、幅広い技術的知見、中立性を保つ姿勢、専門外の相手に説明する力が求められます。最終的な意思決定は発注者が行うという前提は変わりません。関連して運用指針とは、公共施設等総合管理計画とはもあわせてご覧ください。
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※本記事は公開時点の情報をもとに作成しています。運用の詳細は発注機関により異なります。具体的な内容は国土交通省のCM方式活用ガイドライン等の一次情報をご確認ください。