建設工事共同企業体(JV)とは?特定JV・経常JVの違いを解説

建設工事共同企業体(JV:ジョイント・ベンチャー)とは、複数の建設企業が一つのチームを組み、共同で工事を受注・施工する仕組みです。大規模で難度の高い工事に技術力を結集したり、中小企業が協業して受注力を高めたりするために使われます。JVには、工事ごとに結成する「特定JV」と、あらかじめ結成して継続的に活動する「経常JV」があり、目的も使い方も異なります。本記事では、建設工事共同企業体(JV)とは何か、特定JVと経常JVの違い、甲型・乙型の施工方式、そして参加を検討する企業が押さえるべきポイントを解説します。
この記事のポイント
- 建設工事共同企業体(JV)は、複数企業が共同で工事を受注・施工する事業組織
- 特定JVは工事ごとに結成、経常JVは中小中堅企業が継続的な協業のために結成する
- 施工方式には、出資比率に応じて共同施工する甲型と、工区を分担する乙型がある
建設工事共同企業体(JV)とは
建設工事共同企業体(JV)とは、複数の建設企業が、一つの建設工事を共同で施工することを目的として結成する事業組織です。各企業がそれぞれの技術力・資金力・施工力を持ち寄り、一つのチームとして工事にあたります。国土交通省が発注する工事などでは、共同企業体の運用について「共同企業体運用準則」(昭和62年の中央建設業審議会決定)が定められており、各地方公共団体でも、これに準じた運用がなされています。
JVが用いられる理由は、主に二つあります。一つは、一社では対応が難しい大規模・高難度の工事に、複数社の技術と資源を結集して安定的に施工するためです。もう一つは、中小・中堅の建設企業が協業することで、単独では受注が難しい規模の工事に参加できるようにし、その経営力・施工力を高めるためです。前者を主な目的とするのが特定JV、後者を主な目的とするのが経常JVです。公共工事の発注の仕組み全体は公共工事とはもあわせてご覧ください。
なお、JVは建設工事に限った話ではなく、プロポーザルなどの業務でも共同で提案・受注する形がありますが、両者は制度の枠組みが異なります。本記事は建設工事のJV(共同企業体運用準則に基づくもの)を扱います。プロポーザルでのJV参加については共同企業体(JV)でのプロポーザル参加をご覧ください。
特定JVと経常JVの違い
建設工事共同企業体は、その目的と結成のタイミングによって、大きく特定JVと経常JVに分けられます。この違いは、JVを理解するうえで最も重要なポイントです。
| 区分 | 目的 | 結成のタイミング |
|---|---|---|
| 特定JV | 大規模・高難度の工事に技術力等を結集し、安定的な施工を確保する | 特定の工事ごとに、その都度結成する |
| 経常JV | 中小中堅企業が継続的な協業で経営力・施工力を強化する | あらかじめ結成し、入札参加資格審査申請時に登録して一定期間活動する |
特定建設工事共同企業体(特定JV)は、大規模かつ技術的難度の高い特定の工事について、複数社の技術力を結集して安定的に施工することを目的に、その工事ごとに結成するJVです。対象となる工事が発注される際に、参加を希望する企業が組み合わせを決めて結成し、その工事の入札に参加します。工事が終われば、そのJVも解散します。一件の大型工事のために組む、いわば臨時のチームです。
経常建設共同企業体(経常JV)は、中小・中堅の建設企業が、継続的な協業関係を築いて経営力・施工力を高めることを目的に結成するJVです。特定の工事のためではなく、あらかじめ結成しておき、発注機関の入札参加資格審査申請の際(原則として年度当初)に経常JVとして登録します。登録されると、一定期間、そのJVが一つの有資格業者のように扱われ、単体企業と同様に、対象となる工事の入札に参加できます。継続的に組むチームだといえます。入札参加資格の申請については指名願いとはもご覧ください。
まとめると、特定JVは「大型工事ごとに組む臨時のチーム」、経常JVは「中小中堅が継続的に組むチーム」です。自社がどちらの目的でJVを検討するのかによって、結成の仕方も、参加できる工事も変わってきます。
甲型と乙型(施工方式の違い)
JVには、実際にどのように工事を施工するかという「施工方式」による分類もあります。代表的なのが、甲型と乙型です。
甲型(共同施工方式)は、一つの工事について、あらかじめ定めた出資比率に応じて、各構成員が資金・人員・機械などを出し合い、全体を共同で施工する方式です。工事を分割せず、構成員が一体となって一つの工事にあたります。損益も出資比率に応じて分配されます。技術力を結集する特定JVでは、この甲型が多く用いられます。
乙型(分担施工方式)は、一つの工事を複数の工区に分割し、各構成員がそれぞれの担当工区を責任をもって施工する方式です。工事全体は一つの契約ですが、施工は工区ごとに分担されます。それぞれの得意分野や地域性を活かして分担できる場合に適した方式です。どちらの方式を採るかは、工事の性格や構成員の役割分担に応じて決められます。
いずれの方式でも、JVの構成員は、工事の完成について発注者に対し連帯して責任を負うのが原則です。分担施工の乙型であっても、他の構成員の担当部分に問題が生じれば、JV全体として責任を問われる可能性があります。共同で受注する以上、構成員相互の信頼と、明確な取り決めが不可欠です。
JVに参加する際に押さえておきたいこと
JVへの参加を検討する企業が押さえておきたいポイントを整理します。第一に、発注機関ごとのJV結成のルールを確認することです。JVを組める工事の範囲、構成員の数、各構成員に求められる資格や施工実績、出資比率の下限などは、共同企業体運用準則を踏まえて発注機関が定めています。JVの構成員は少数とし、企業間の格差が小さい組み合わせとすること、出資比率に最小限度の基準を設けることなどが、準則の考え方として示されています。組みたい相手と要件を満たすかを、事前に確認する必要があります。
第二に、構成員間の役割と責任の明確化です。JVは共同で責任を負うため、出資比率、施工の分担、技術者の配置、資金の拠出、利益・損失の分配などを、あらかじめ協定書などで明確に取り決めておくことが欠かせません。曖昧なまま工事に入ると、トラブルの原因になります。各構成員が主任技術者・監理技術者などを適切に配置することも重要です。技術者配置については監理技術者と主任技術者の違いをご覧ください。
第三に、JV参加を自社の成長戦略に位置づけることです。特に中小中堅企業にとって、経常JVは、単独では届かない規模の工事に参加し、施工実績を積む機会になります。実績は経営事項審査や次の入札での評価につながり、企業の成長を後押しします。JVは、単なる寄せ集めではなく、互いの強みを活かして受注力を高める戦略的な選択肢です。実績づくりと経審の関係は経営事項審査と入札の関係性もご覧ください。
よくある質問
特定JVと経常JVはどちらを選べばよいですか
目的によります。特定の大規模・高難度工事を狙うなら、その工事ごとに結成する特定JVです。中小中堅企業が継続的に協業して受注力を高めたいなら、あらかじめ結成して登録する経常JVが適しています。両者は結成のタイミングも参加できる工事も異なります。
JVの構成員はそれぞれ責任を負いますか
原則として、構成員は工事の完成について発注者に連帯して責任を負います。分担施工の乙型であっても、他の構成員の担当部分の問題がJV全体の責任につながる可能性があります。共同で受注する以上、構成員相互の信頼と明確な取り決めが不可欠です。
経常JVはいつ結成・登録しますか
経常JVは、特定の工事のためではなく、あらかじめ結成しておき、発注機関の入札参加資格審査申請時(原則として年度当初)に登録します。登録されると一定期間、単体企業と同様に有資格業者として扱われ、対象工事の入札に参加できます。
まとめ
建設工事共同企業体(JV)とは、複数の建設企業が共同で工事を受注・施工する事業組織で、共同企業体運用準則に基づいて運用されます。大規模・高難度の工事ごとに結成する特定JVと、中小中堅企業が継続的な協業のためにあらかじめ結成・登録する経常JVがあり、目的も使い方も異なります。施工方式には、出資比率に応じて共同施工する甲型と、工区を分担する乙型があります。構成員は工事の完成に連帯して責任を負うため、役割・責任・出資比率などを協定書で明確にすることが欠かせません。特に中小中堅企業にとって、JVは受注力と施工実績を高める戦略的な選択肢になります。関連して共同企業体(JV)でのプロポーザル参加、経営事項審査と入札の関係性もあわせてご覧ください。
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※本記事は公開時点の情報をもとに作成しています。JVの結成要件・出資比率基準などは共同企業体運用準則や発注機関の運用により異なります。具体的な内容は国土交通省・各発注機関の公表資料等の一次情報をご確認ください。