遅延損害金とは?公共契約での計算と発注者の遅延利息を解説

遅延損害金とは、契約上の義務の履行が遅れたときに、その遅れによって生じた損害を賠償するために支払うお金です。公共工事や業務委託の契約では、受注者の工事完成が遅れた場合はもちろん、発注者の代金支払いが遅れた場合にも、遅延に対するお金が発生します。特に、発注者(国や自治体)の支払いが遅れた場合の「遅延利息」は、法律でその仕組みが定められています。遅れは、どちらの側にとっても損失につながるため、その扱いを正しく理解しておくことが大切です。本記事では、遅延損害金とは何か、受注者が遅れた場合と発注者が遅れた場合のそれぞれの扱い、計算の考え方を解説します。
この記事のポイント
- 遅延損害金は、義務の履行が遅れたときに、その遅れに対して支払うお金
- 受注者の完成が遅れた場合は、契約約款に基づき遅延損害金(違約金)を発注者に支払う
- 発注者の支払いが遅れた場合は、支払遅延防止法に基づく遅延利息が発生する
遅延損害金とは
遅延損害金とは、契約で定めた義務を、期限までに果たせなかった場合に、その遅れによって相手方に生じた損害を賠償するために支払うお金です。契約には、それぞれの当事者が果たすべき義務と、その期限があります。工事の契約であれば、受注者には「工期までに工事を完成させる」義務があり、発注者には「期限までに代金を支払う」義務があります。この義務の履行が遅れることを履行遅滞といい、遅延損害金は、その履行遅滞に対する賠償です。履行遅滞の基本的な考え方は履行遅滞とはをご覧ください。
遅延損害金が定められている理由は、遅れによって相手方が被る損害を、公平に埋め合わせるためです。工事の完成が遅れれば、発注者はその施設を予定どおり使えず、損害を被ります。代金の支払いが遅れれば、受注者は資金繰りに支障をきたします。遅れた側が、遅れた期間に応じて一定のお金を支払うことで、こうした損害を賠償し、また、遅れを防ぐ動機づけにもなります。遅延損害金は、契約を誠実に履行させるための仕組みでもあるのです。
公共契約では、遅延損害金の扱いが、受注者が遅れた場合と、発注者が遅れた場合の両方について、契約約款や法律で定められています。どちらか一方だけでなく、双方の遅れに備えているのが特徴です。以下、それぞれの場合を見ていきます。
受注者の履行が遅れた場合
受注者が、工期までに工事を完成できなかった場合、受注者は発注者に対して、遅延損害金を支払うことになります。公共工事標準請負契約約款には、受注者の責めに帰すべき事由により工期内に工事を完成できないときは、遅延日数に応じて遅延損害金を支払う旨が定められています。この遅延損害金は、違約金の性格を持つものとして扱われます。
遅延損害金の額は、一般に、請負代金の額(未完成部分に相当する額など)に、一定の率を掛け、さらに遅延日数を掛けて計算されます。率は、契約や発注機関の定めによりますが、後述する発注者の支払遅延の遅延利息の率が基準とされることが多くあります。いずれにせよ、工期を守れなければ、遅れた日数に応じて金銭的な負担が生じる、というのが基本です。
ここで重要なのは、「受注者の責めに帰すべき事由」による遅れであることが前提だという点です。不可抗力や、発注者側の都合による遅れなど、受注者の責任によらない事由で工期に間に合わなかった場合には、工期の延長が認められ、遅延損害金は発生しません。だからこそ、遅れの原因が自社の責任なのかどうかを見極め、責任によらない遅れであれば適切に工期延長を請求することが大切です。工期変更の手続きは工期変更・工期延長とはをご覧ください。
発注者の支払いが遅れた場合(遅延利息)
一方、発注者(国や自治体)の代金支払いが遅れた場合には、受注者は遅延利息を受け取ることができます。これは、政府契約の支払遅延防止等に関する法律に基づくものです。同法は、政府や自治体の契約について、支払いが遅れた場合の遅延利息を定めており、発注者が支払期限までに代金を支払わないときは、未払額に対して、遅延日数に応じた遅延利息を支払わなければならないとしています。
遅延利息の率は、財務大臣が、銀行の一般的な貸付利率を勘案して定めることとされ、告示によって示されます。この率は、金利情勢に応じて改定されており、たとえば令和2年4月からは年2.6%とされました。率は時期によって変わるため、実際の計算では、その時点で告示されている率を確認する必要があります。計算は、未払いの代金額に、この率と、支払期限の翌日から実際に支払われた日までの遅延日数を掛けて行います。
この仕組みは、受注者を保護するうえで重要です。公共契約では、検査の完了後、法律で定められた期限内(工事代金は請求から40日以内など)に代金が支払われるのが原則ですが、万一支払いが遅れれば、受注者は遅延利息を求めることができます。代金の支払時期や検査の流れは検収とはもあわせてご覧ください。受注者は、自らの権利として、支払遅延に対する遅延利息の仕組みを知っておくことが大切です。
受注者が実務で押さえておきたいこと
遅延損害金をめぐって、受注者が押さえておきたいポイントを整理します。第一に、工期を守るための工程管理です。受注者の責任による遅れは、遅延損害金という金銭的な負担に直結します。無理のない工程計画を立て、進捗を管理し、遅れの兆候があれば早めに手を打つことが、遅延損害金を避ける基本です。適正な工期の確保という観点からも、工程管理は重要です。
第二に、遅れの原因の切り分けと記録です。遅れが生じた場合、それが自社の責任によるものか、不可抗力や発注者側の事由によるものかを見極めることが重要です。自社の責任によらない遅れであれば、遅延損害金は発生せず、むしろ工期延長を請求できます。そのためには、天候や発注者の指示待ちなど、責任によらない事由による遅れを、日々記録しておくことが備えになります。
第三に、支払遅延に対する権利の認識です。発注者の支払いが遅れた場合、受注者は遅延利息を求める権利があります。もっとも、公共の発注者が正当な理由なく支払いを遅らせることは多くありませんが、万一の際には、法律に基づく権利があることを知っておくことが、受注者の身を守ります。遅延損害金は、受注者にとって「負う可能性のある負担」であると同時に、「受け取ることができる権利」でもある——この双方向の視点を持つことが、公共契約を適切に管理するうえで大切です。
よくある質問
工期に遅れると必ず遅延損害金がかかりますか
受注者の責めに帰すべき事由による遅れの場合に発生します。不可抗力や発注者側の都合など、受注者の責任によらない遅れであれば、工期の延長が認められ、遅延損害金は発生しません。遅れの原因が自社の責任かどうかの見極めが重要です。
遅延損害金はどう計算しますか
一般に、請負代金の額(未完成部分に相当する額など)に、一定の率と遅延日数を掛けて計算します。率は契約や発注機関の定めにより、発注者の支払遅延の遅延利息の率が基準とされることが多くあります。具体的な計算方法は契約約款で確認してください。
発注者の支払いが遅れたらどうなりますか
政府契約の支払遅延防止等に関する法律に基づき、受注者は遅延利息を求めることができます。遅延利息の率は財務大臣が定めて告示され、金利情勢に応じて改定されます。未払額に、その率と遅延日数を掛けて計算します。受注者の権利として知っておきましょう。
まとめ
遅延損害金とは、契約上の義務の履行が遅れたときに、その遅れに対して支払うお金です。公共契約では、受注者の工事完成が遅れた場合は、契約約款に基づき遅延損害金(違約金)を発注者に支払い、発注者の代金支払いが遅れた場合は、支払遅延防止法に基づく遅延利息が受注者に支払われます。受注者の遅れは「責めに帰すべき事由」による場合に生じ、不可抗力や発注者側の事由による遅れなら工期延長が認められます。遅延利息の率は財務大臣が定めて告示され、金利情勢で改定されます。受注者は、工程管理で遅延損害金を避けるとともに、遅れの原因を切り分けて記録し、支払遅延には遅延利息を求める権利があることを知っておくことが大切です。関連して履行遅滞とは、工期変更・工期延長とはもあわせてご覧ください。
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※本記事は公開時点の情報をもとに作成しています。遅延損害金・遅延利息の率や計算方法は法令の改定・契約約款により異なります。具体的な内容は財務省告示・各発注機関の契約約款等の一次情報をご確認ください。



