法定福利費とは?見積書への内訳明示と算出方法を解説

法定福利費とは?見積書への内訳明示と算出方法を解説

建設業では長らく、社会保険に加入していない事業者が少なくありませんでした。理由のひとつが、保険料の原資が請負金額に含まれているかどうかが見えなかったことです。見積書に「一式いくら」としか書かれていなければ、保険料分が入っているのか値切られたのか、誰にも分かりません。そこで進められたのが、法定福利費を見積書に内訳として明示する取組みです。専門工事業団体が標準見積書を作成し、その活用が広がっています。本記事では、法定福利費とは何か、内訳明示が求められる理由、算出方法、公共工事での扱いを解説します。

この記事のポイント

  • 法定福利費は、法令に基づき事業主が義務的に負担する社会保険料
  • 下請企業が直近上位の注文者に出す見積書に、内訳として明示する
  • 基本的な算出は「労務費総額 × 法定保険料率」で行う

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目次

法定福利費とは

法定福利費とは、法令に基づいて企業が義務的に負担しなければならない社会保険料のことです。健康保険、厚生年金保険、雇用保険の保険料のうち、事業主が負担する部分がこれにあたります。

社会保険料は、労働者と事業主が分担して負担する仕組みです。労働者の給与から控除される分のほかに、事業主が同額程度を負担しています。この事業主負担分は、人を雇う以上、必ず生じる費用です。

混同されやすいのが「福利厚生費」です。こちらは、法律で義務づけられていない、企業が任意で行う福利厚生(社員旅行、慶弔見舞金など)の費用を指します。法定福利費は義務、福利厚生費は任意——ここが決定的な違いです。

公共工事の積算においても、労務費に関連する費用として扱われます。積算での労務費の考え方は公共工事設計労務単価とはをご覧ください。

なぜ内訳明示が求められるのか

法定福利費を見積書に明示するという取組みは、建設業の社会保険未加入対策の一環として進められてきました。

かつての建設業では、下請企業が社会保険に加入していないケースが相当数ありました。加入すれば保険料の負担が生じますが、その分を請負金額に上乗せしてもらえなければ、経営を圧迫します。かといって「保険料分を上乗せしてほしい」と言い出すのは、立場上難しい——こうした構造がありました。

見積書に法定福利費を内訳として明示すれば、状況は変わります。いくらが保険料の原資なのかが、書面上で見えるようになるからです。値引き交渉の際にも、その部分は本来削ってはならない費用だと主張しやすくなります。

社会保険への加入は、働く人の生活を支えるだけでなく、建設業を職業として選んでもらううえでの前提でもあります。担い手確保という観点からも、重要な取組みです。処遇改善の関連制度は建設キャリアアップシステム(CCUS)とはもご覧ください。

標準見積書の活用

法定福利費を内訳明示した見積書は、下請企業が直近上位の注文者に提出するものです。二次下請であれば一次下請へ、一次下請であれば元請へ、という関係になります。

この取組みを進めるため、各専門工事業団体が標準見積書を作成しています。鉄筋、型枠、とび・土工、電気、管——工種ごとの団体が、それぞれの実情に合った様式を用意しているわけです。所属する事業者が法定福利費を算定する際の参考として使われます。

標準見積書があることの利点は、様式が揃うことにあります。会社ごとにばらばらの書き方では、受け取る側も比較しにくく、記載の有無が目立ちません。業界として共通の形を持つことで、明示することが当たり前になっていきます。

なお、自社がさらに下請に工事を発注する予定がある場合には、その下請企業の法定福利費も含めて見積書を作成する必要があります。自社の雇用する労働者の分だけでは足りないという点に注意が必要です。

法定福利費の算出方法

基本的な算出は、次の式によります。

法定福利費 = 労務費総額 × 法定保険料率

労務費の総額に、健康保険・厚生年金保険・雇用保険それぞれの事業主負担分の料率を掛けて算出します。保険料率は改定されることがあるため、その時点の率を確認する必要があります。

この式の出発点は、労務費総額を適切に把握することです。工事にどれだけの人工がかかるのかが分からなければ、労務費も算出できません。見積りの精度が、そのまま法定福利費の精度につながります。

なお、工事の内容によっては、労務費を明確に区分しにくい場合もあります。材料費と労務費が一体になった単価で見積もる慣行がある工種などです。こうした場合の扱いについては、団体が作成した手順や、国土交通省が示す作成手順が参考になります。

公共工事での取扱い

公共工事では、法定福利費の扱いがさらに踏み込んで制度化されている場合があります。

自治体によっては、受注者に請負代金内訳書の提出を求め、そこに法定福利費を記載させる運用を導入しています。また、発注者の側が、予定価格に含まれる法定福利費の概算額を公表する取組みを行っている例もあります。

発注者が概算額を示す意味は小さくありません。「この工事には、これだけの法定福利費が見込まれている」と示されれば、元請から下請への支払いにおいても、その水準が意識されます。金額の根拠が共有されることで、取引が透明になります。

取組みの内容は発注機関によって異なるため、案件ごとに仕様書や要領を確認してください。なお、改正建設業法では労務費に関する基準の仕組みも設けられており、あわせて押さえておきたいところです。詳しくは標準労務費とはをご覧ください。

実務で押さえておきたいこと

法定福利費をめぐる実務のポイントを整理します。

第一に、明示すること自体を習慣にすることです。明示していなければ、その費用が請負金額に含まれているかどうかを争う余地が残ります。様式を整えて、常に記載する運用にしておけば、個別に判断する必要がなくなります。

第二に、値引き交渉での扱いを意識することです。総額の調整を求められた際に、法定福利費の部分まで一律に削られてしまえば、明示した意味がありません。この部分は法令上必要な費用であることを、根拠をもって説明できるようにしておきます。

第三に、実際の加入状況と整合させることです。見積書に法定福利費を計上しながら、実際には社会保険に加入していないのでは、筋が通りません。制度の目的は加入の促進にありますから、計上と加入は一体のものです。

社会保険未加入対策という背景

法定福利費の内訳明示は、単独の施策ではありません。建設業の社会保険加入を進める一連の取組みの一部として位置づけられます。

かつての建設業では、未加入が常態化していた時期がありました。保険料の負担を避けたい事業者と、その分だけ安く発注できる注文者。双方の思惑が合致してしまえば、未加入のまま取引が続きます。しかし、そのしわ寄せを受けるのは、保障のないまま働く人です。

また、適正に加入している事業者が価格競争で不利になるという問題もありました。保険料を負担している分、見積額は高くなります。同じ土俵で比べられれば、負担していない事業者のほうが安く見えてしまう——これでは、真面目にやる企業が損をします。

そこで、加入状況の確認を入札参加や施工体制の要件に結びつける、法定福利費を見積書で見えるようにする、といった対策が組み合わされました。一人親方の扱いをめぐる問題も、この文脈に連なります。詳しくは一人親方とはをご覧ください。

見積書のどこに書くか

実際の見積書では、法定福利費をどのように記載するのでしょうか。

基本の形は、工事費の内訳を並べたうえで、法定福利費を独立した項目として立てるものです。「一式」の中に埋め込むのではなく、金額が一目で分かる形にします。

  • 材料費
  • 労務費
  • その他の経費
  • 法定福利費(事業主負担分)
  • 合計

算出の根拠を添えておくと、さらに説得力が増します。労務費の総額と、適用した保険料率を記載しておけば、金額がどう導かれたのかが相手にも分かります。数字だけを示すより、検証できる形にしておくほうが、交渉の場で強い意味を持ちます。

様式については、所属する専門工事業団体が用意している標準見積書を利用するのが近道です。工種の実情に合わせて作られているため、自社で一から考える必要がありません。

元請の立場での対応

元請として下請の見積書を受け取る立場では、どう対応すべきでしょうか。

まず、法定福利費の記載を求めることです。記載のない見積書を受け取った場合、明示するよう依頼します。これは下請を困らせるためではなく、適正な取引の前提を整えるためです。

次に、その部分を安易に削らないことです。総額の調整が必要な場面はあるにせよ、法令上必要な費用を削れば、下請は加入を維持できなくなります。結果として、施工体制の適正さそのものが揺らぎます。

そして、施工体制の確認と結びつけることです。公共工事では、下請の社会保険加入状況を施工体制台帳などで確認することが求められます。見積書での明示と、実際の加入確認は、表裏の関係にあります。詳しくは施工体制台帳とはをご覧ください。

明示が定着してきた意味

法定福利費の内訳明示は、取組みが始まった当初は手間の増える面倒な作業と受け止められることもありました。しかし、定着してきたことには意味があります。

最大の変化は、「見えなかったものが見えるようになった」ことです。金額に含まれているかどうかが不明だった費用が、書面上で確認できるようになりました。見えるようになれば、議論ができます。

この発想は、建設業の他の取組みとも共通します。技能者の就業履歴を記録に残す、労務費の基準を示す、発注者が概算額を公表する——いずれも、これまで当事者の力関係に委ねられていた部分を、データや基準によって可視化する方向です。

可視化それ自体が問題を解決するわけではありません。しかし、見えなければ議論のしようもありません。法定福利費の明示は、適正な取引に向けた土台づくりだといえます。

加入していない場合のリスク

社会保険に加入していない場合、事業者にはどのような不利益が生じるのでしょうか。

公共工事の現場では、加入状況の確認が行われます。未加入であることが判明すれば、現場への立入りを認められない、下請として選定されないといった扱いを受けることがあります。元請としても、未加入の企業を下請に使えば自らの管理責任を問われかねません。

経営事項審査でも、社会保険への加入状況は評価に関わります。未加入であれば減点の対象となり、総合的な評点が下がります。等級区分に影響すれば、受注できる工事の規模そのものが変わります。経審の見方は経審(経営事項審査)の点数の見方をご覧ください。

そして何より、人が集まりません。保障のない職場を選ぶ理由は乏しく、担い手不足が続くなかでは、この点が最も重い不利益になり得ます。

よくある質問

法定福利費と福利厚生費はどう違いますか

法定福利費は、健康保険・厚生年金保険・雇用保険など、法令に基づき事業主が義務的に負担する社会保険料です。福利厚生費は、社員旅行や慶弔見舞金など、企業が任意で行うものの費用を指します。

誰が誰に明示するのですか

下請企業が、直近上位の注文者に提出する見積書に明示します。二次下請なら一次下請へ、一次下請なら元請へという関係です。自社がさらに下請に出す場合は、その分も含めて作成します。

どう計算すればよいですか

基本は「労務費総額 × 法定保険料率」で算出します。保険料率は改定されることがあるため、その時点の率を確認してください。所属する専門工事業団体の標準見積書や作成手順が参考になります。

まとめ

法定福利費とは、健康保険・厚生年金保険・雇用保険など、法令に基づき事業主が義務的に負担する社会保険料です。建設業では社会保険未加入対策の一環として、下請企業が直近上位の注文者に提出する見積書に、法定福利費を内訳として明示する取組みが進められてきました。各専門工事業団体が標準見積書を作成しており、その活用が広がっています。算出は「労務費総額 × 法定保険料率」が基本で、さらに下請へ発注する予定があれば、その分も含めて作成する必要があります。公共工事では、請負代金内訳書への記載を求めたり、発注者が概算額を公表したりする取組みも行われています。明示を習慣にすること、値引き交渉での扱いを意識すること、実際の加入状況と整合させること——この三点が実務の要点です。関連して公共工事設計労務単価とは標準労務費とはもあわせてご覧ください。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、AIの特性上、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。本記事の内容に関するご質問、ご意見、または訂正すべき点がございましたら、お手数ですがお問い合わせいただけますと幸いです。

※本記事は公開時点の情報をもとに作成しています。保険料率や公共工事での取扱いは改定・発注機関により異なります。具体的な内容は国土交通省および各発注機関の一次情報をご確認ください。

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