作業主任者とは?建設業での選任義務と職務を解説

作業主任者とは?建設業での選任義務と職務を解説

建設現場には、とくに危険度の高い作業があります。深い掘削、足場の組立て、型枠支保工の設置、石綿の除去——いずれも、手順を誤れば重大な災害につながります。こうした作業については、知識と経験を持つ者が現場で直接指揮することが法律で求められています。それが作業主任者です。労働安全衛生法第14条に基づき、政令で定められた作業ごとに選任が義務づけられています。本記事では、作業主任者とは何か、建設業での種類、職務、掲示の義務を解説します。

この記事のポイント

  • 労働安全衛生法第14条に基づき、政令で定める危険な作業ごとに選任が必要
  • 免許を受けた者または技能講習を修了した者のうちから選任する
  • 選任したら氏名と職務を作業場の見やすい箇所に掲示する

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目次

作業主任者とは

作業主任者とは、労働災害を防止するための管理を必要とする特定の作業について、現場で労働者を直接指揮する立場の者です。

労働安全衛生法第14条は、事業者に対して次のことを求めています。高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で政令で定めるものについて、都道府県労働局長の免許を受けた者、または登録を受けた者が行う技能講習を修了した者のうちから、作業の区分に応じて作業主任者を選任し、労働者の指揮その他の事項を行わせなければならない——という内容です。

ここで押さえておきたいのは、資格を持っているだけでは足りないという点です。資格者のなかから選任し、実際にその作業を指揮させることが義務の内容です。有資格者が現場にいても、指揮する立場に置かれていなければ、選任したことにはなりません。

また、作業ごとに選任するという点も重要です。「現場に一人いればよい」というものではなく、対象となる作業が複数あれば、それぞれについて選任が必要になります。

建設業での主な作業主任者

建設現場で選任が必要となる代表的なものを挙げます。

作業主任者選任が必要な作業の例
地山の掘削掘削面の高さが2メートル以上となる地山の掘削
土止め支保工土止め支保工の切りばり・腹おこしの取付け・取りはずし
足場の組立て等つり足場、張出し足場、高さ5メートル以上の足場の組立て等
型枠支保工の組立て等型枠支保工の組立て・解体
石綿石綿等を取り扱う作業
酸素欠乏危険酸素欠乏のおそれがある場所での作業

このほかにも、建築物等の鉄骨の組立て等、コンクリート造の工作物の解体等、はい作業など、多くの区分があります。

地山の掘削と土止め支保工については、両方をまとめた技能講習が設けられており、修了すれば一方または両方に選任される資格を得られます。掘削工事では、この二つが同時に関わることが多いためです。

石綿については、解体・改修工事で事前調査の結果として石綿の存在が判明した場合に関わります。詳しくは石綿事前調査とはをご覧ください。

作業主任者の職務

作業主任者の職務は、作業の種類ごとに個別に定められています。共通する要素を整理すると、おおむね次のようになります。

  • 作業方法の決定——安全な手順を定め、労働者に示す
  • 作業の直接指揮——現場で作業を見ながら指示を出す
  • 器具・工具の点検——使用前に不良品を取り除く
  • 保護具の使用状況の監視——安全帯や保護帽が正しく使われているか見る
  • 安全装置等の機能の確認——設備が正常に働くか確かめる

なかでも中核となるのが作業の直接指揮です。事務所で指示を出すのではなく、作業が行われている場所で、実際の状況を見ながら指揮することが求められます。

たとえば地山の掘削であれば、掘削面の状況を見て、崩壊の兆候がないかを確認しながら進めます。土質が想定と違えば、方法を変える判断も必要になります。書類上の手順に従うだけでは務まりません。

職務の具体的な内容は、労働安全衛生規則などの省令で、作業ごとに定められています。自分が選任された区分の職務を確認しておくことが基本です。

掲示による周知

作業主任者を選任したときは、その氏名と行わせる事項を、作業場の見やすい箇所に掲示するなどして、関係労働者に周知させなければなりません。

この周知が求められる理由は明確です。作業員が「誰の指示に従えばよいのか」を知らなければ、指揮が機能しないからです。現場には複数の会社の人がいます。所属が違えば、なおさら分かりません。

掲示の内容は、氏名と職務です。作業の区分ごとに誰が選任されているかが一目で分かる形にしておきます。作業主任者が交代した場合は、掲示も更新します。

現場には、このほかにも掲示が義務づけられている事項が数多くあります。建設業の許可票、労災保険関係成立票、施工体系図など。まとめて掲示板に整理しておくのが実務的です。詳しくは建設業の許可票とはをご覧ください。

他の管理者との違い

建設現場には、似た名称の役職が複数あります。混同しやすいものを整理しておきます。

統括安全衛生責任者は、現場全体の安全衛生を統括する立場です。混在作業による災害を防ぐため、会社をまたいだ調整を行います。対象は現場全体です。

作業主任者は、特定の危険な作業について、その作業を直接指揮します。対象は個別の作業です。

職長は、作業を直接指導・監督する立場で、職長教育を受けた者が就きます。作業主任者とは別の制度ですが、実際には同じ人が兼ねることもあります。

つまり、現場全体を見るのが統括安全衛生責任者、危険な作業を指揮するのが作業主任者という役割分担です。どちらか一方があればよいというものではありません。詳しくは統括安全衛生責任者とはをご覧ください。

選任を怠った場合

作業主任者の選任は法律上の義務です。怠れば、労働安全衛生法違反として罰則の対象となります。

また、災害が発生した場合には、選任していたかどうかが必ず確認されます。選任していなければ、それ自体が原因の一つとして扱われることになります。

公共工事に参加する事業者にとっては、さらに影響が広がります。法令違反は指名停止の事由となり得ますし、工事成績の評価にも響きます。詳しくは指名停止とはをご覧ください。

実務でありがちなのが、対象作業だと気づかないというケースです。掘削面の高さが2メートルを超えていた、足場が5メートル以上あった——後から測ってみて初めて対象だったと分かる、という事態は起こります。着手前に確認する習慣が必要です。

技能講習と免許の違い

作業主任者になる資格には、免許によるものと技能講習によるものがあります。

免許は、都道府県労働局長が交付するもので、試験に合格する必要があります。高圧室内作業主任者やガス溶接作業主任者などが該当します。

技能講習は、登録教習機関が行う講習を修了することで資格を得るものです。建設業で関わる作業主任者の多くは、こちらに該当します。講習は学科と実技で構成され、修了試験があるのが一般的です。

技能講習には、受講のための要件が設けられていることがあります。一定年数の実務経験が必要な区分もあるため、計画的に取得を進める必要があります。

建設業労働災害防止協会などが各地で講習を実施しています。受講の機会は限られるため、必要になってから慌てるのではなく、早めに社内で計画を立てておくとよいでしょう。

元請と下請、どちらが選任するのか

実務でよく生じる疑問が、選任の主体です。

作業主任者を選任する義務は、その作業を行う事業者にあります。下請が掘削を行うのであれば、その下請会社が選任します。元請がまとめて選任すればよいというものではありません。

ただし、元請にも関わりがあります。現場全体の安全衛生を統括する立場として、下請が適切に選任しているかを確認する必要があります。選任されていない状態で危険な作業が行われていれば、現場を管理する元請の責任も問われかねません。

そのため、施工体制を把握するなかで、どの作業に誰が選任されているかを整理しておくことが実務になります。詳しくは施工体制台帳とはをご覧ください。

また、複数の会社が同じ作業に関わる場合の扱いにも注意が要ります。誰が指揮するのかが曖昧になれば、制度の意味が失われます。

対象かどうかの判断

選任が必要かどうかは、作業の内容と規模で決まります。数値の基準があるものは、事前の確認が欠かせません。

地山の掘削であれば、掘削面の高さが2メートル以上かどうか。足場であれば、つり足場・張出し足場か、または高さが5メートル以上かどうか。これらは設計図から判断できます。

問題は、現場で条件が変わる場合です。設計では1.8メートルの掘削だったが、支持地盤が想定より深く、2.5メートル掘ることになった——このとき、作業主任者が必要になります。

こうした変化に気づくには、施工計画の段階で「どの条件を超えたら対象になるか」を把握しておくことです。境界の数値を知っていれば、現場で判断できます。

なお、設計と現地の条件が食い違った場合は、設計変更の協議にもつながります。詳しくは条件明示とはをご覧ください。

現場で機能させるために

選任と掲示を済ませても、それだけでは災害は防げません。実際に機能させるための要点を挙げます。

第一に、作業主任者を作業から離さないことです。職務は直接指揮ですから、その場にいなければ果たせません。他の用事で呼び出されて不在になる——といった運用では、名ばかりになります。

第二に、権限を明確にすることです。作業主任者が「危険だから止める」と判断したとき、それが通る現場でなければなりません。工程の都合で押し切られるようでは、指揮の意味がありません。

第三に、交代時の引継ぎです。作業が長期にわたれば、担当者が変わることもあります。掲示の更新とあわせて、それまでの経緯や注意点を引き継ぐ必要があります。

危険な作業ほど、経験が物を言います。資格を持つ人を増やすことと、その人が働きやすい体制をつくること——両方がそろってはじめて、制度は現場を守ります。

資格者を社内で確保する

作業主任者は、現場ごと・作業ごとに必要になります。複数の現場を抱える企業では、資格者の数が受注の制約になることもあります。

そのため、計画的な資格取得が経営課題になります。どの区分の資格者が何人必要か、今後の受注見込みから逆算しておくと、手当てが間に合います。

取得の支援は、人材の定着にもつながります。資格は本人の財産になりますから、会社が費用を負担して取らせることは、待遇改善の一環でもあります。

担い手確保が業界全体の課題となるなか、教育投資は事業の継続に直結します。技能者の処遇については建設キャリアアップシステム(CCUS)とはもご覧ください。

公共工事での確認

公共工事では、作業主任者の選任状況が確認される場面があります。

ひとつが、施工計画書です。安全管理に関する事項として、危険な作業に対する体制を示すことが求められます。どの作業について誰を選任するかを記載します。詳しくは施工計画書とはをご覧ください。

もうひとつが、監督職員による確認です。現場を巡視する際、掲示の状況や体制が見られます。段階確認や立会の場面でも、作業の実施体制が確認されることがあります。詳しくは監督員とはをご覧ください。

指摘を受けてから整えるのでは遅く、着手時に体制を固めておくのが基本です。掲示物の準備も、現場開設の作業に組み込んでおきましょう。

よくある質問

資格があれば選任したことになりますか

なりません。有資格者のなかから選任し、実際にその作業を指揮させることが義務の内容です。あわせて氏名と職務を作業場に掲示し、関係労働者に周知する必要があります。

一人が複数を兼ねられますか

資格を持っていれば形式的には可能ですが、職務は作業を直接指揮することです。同時に行われる複数の作業を一人で指揮できるかは実態で判断すべきで、無理があれば別の者を選任すべきです。

職長と同じですか

別の制度です。職長は作業を直接指導・監督する立場で職長教育を受けた者、作業主任者は政令で定める危険な作業について免許または技能講習修了者から選任される者です。同じ人が兼ねることはあります。

まとめ

作業主任者とは、労働災害を防止するための管理を必要とする特定の作業について、現場で労働者を直接指揮する立場の者です。労働安全衛生法第14条に基づき、政令で定める作業ごとに、免許を受けた者または技能講習を修了した者のうちから選任することが義務づけられています。建設業では、地山の掘削、土止め支保工、足場の組立て等、型枠支保工の組立て等、石綿、酸素欠乏危険など多くの区分があります。職務は、作業方法の決定、作業の直接指揮、器具・工具の点検、保護具の使用状況の監視などで、作業ごとに省令で定められています。選任したら氏名と職務を作業場の見やすい箇所に掲示し、関係労働者に周知しなければなりません。対象作業であることに気づかず選任を怠る例があるため、着手前の確認が重要です。関連して統括安全衛生責任者とは、足場の安全基準とはもあわせてご覧ください。

※本記事にはAIが活用されています。編集者が確認・編集し、可能な限り正確で最新の情報を提供するよう努めておりますが、AIの特性上、情報の完全性、正確性、最新性、有用性等について保証するものではありません。本記事の内容に基づいて行動を取る場合は、読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。本記事の内容に関するご質問、ご意見、または訂正すべき点がございましたら、お手数ですがお問い合わせいただけますと幸いです。

※本記事は公開時点の情報をもとに作成しています。選任が必要な作業の範囲や職務の詳細は法令の定めによります。具体的な内容は労働安全衛生法令および厚生労働省の一次情報をご確認ください。

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