特定建設作業とは?騒音・振動規制法の届出を解説

杭を打つ、コンクリートを削る、重機で構造物を壊す——建設工事には、どうしても大きな音や振動を伴う作業があります。周辺に住む人にとっては、生活を脅かす迷惑です。そこで騒音規制法と振動規制法は、とくに影響の大きい作業を特定建設作業として定め、規制の対象としています。指定された地域でこれらの作業を行う場合、作業開始の7日前までに市町村へ届け出なければなりません。本記事では、特定建設作業とは何か、届出の手続き、規制の内容、実務上の注意点を解説します。
この記事のポイント
- 騒音規制法・振動規制法で、著しい騒音・振動を発生する作業が指定されている
- 指定地域で行う場合、作業開始の7日前までに市町村へ届出が必要
- その日のうちに終わる作業は、届出の対象外とされる
特定建設作業とは
特定建設作業とは、建設工事として行われる作業のうち、著しい騒音または振動を発生する作業として法令で定められたものをいいます。騒音規制法と振動規制法のそれぞれに定めがあり、両方に該当する作業もあります。
指定されている作業の代表例がくい打機を使用する作業です。このほか、びょう打機を使用する作業、さく岩機を使用する作業、一定以上の出力の空気圧縮機を使用する作業、コンクリートプラント等を設けて行う作業、ブレーカーを使用する作業などが挙げられます。
規制の考え方は、作業の種類で線を引くというものです。実際の騒音レベルを測ってから判断するのではなく、あらかじめ「この機械を使う作業は対象」と決めておきます。これにより、事業者側も事前に対応を判断できます。
ただし、機械の種類だけでなく、出力や作業の態様によって対象外となる場合もあります。低騒音型として指定された機械を使う場合など、扱いが異なることがあるため、個別の確認が必要です。
指定地域という前提
重要なのは、規制がかかるのは指定地域に限られるという点です。全国どこでも一律に適用されるわけではありません。
指定地域は、都道府県知事(政令市等では市長)が、住居が集合している地域、病院や学校の周辺など、静穏の保持が必要な地域を指定します。住宅地や市街地の多くは指定されていますが、山間部などでは指定されていない場合もあります。
したがって、実務ではまず工事場所が指定地域に含まれるかを確認することから始まります。自治体のウェブサイトや環境部局の窓口で調べられるのが通常です。
なお、指定地域外であっても、周辺に配慮しなくてよいということではありません。法令上の届出義務がないだけで、近隣からの苦情が生じれば対応は必要です。指定の有無は、あくまで手続き上の線引きです。
届出の期限と数え方
指定地域で特定建設作業を行おうとする場合、作業開始の日の7日前までに、市町村長へ届出が必要です。様式は「特定建設作業実施届出書」などと呼ばれます。
日数の数え方に注意が必要です。7日の算定にあたっては、届出の日と作業開始日は算入しません。たとえば4月10日に作業を開始するなら、間に7日間が確保されるよう、余裕をもって提出する必要があります。
また、届出は騒音規制法と振動規制法でそれぞれ必要です。両方に該当する作業であれば、両方の届出を行います。自治体によっては様式が統合されている場合もあるため、窓口で確認してください。
届出の主体は、その作業を施工する元請業者です。実際に作業を行うのが下請であっても、届出は元請が行うのが基本になります。
届出が不要な場合
例外として、当該作業を実施したその日のうちに終了する作業については、届出の必要がないとされています。
ここでいう「その日のうちに終わる」とは、開始した日に完了するという意味です。2日にまたがれば、届出の対象になります。短時間で済むからといって自動的に不要になるわけではなく、日をまたぐかどうかが基準です。
この例外があるからといって、作業を分割して毎日終わらせる形にすれば届出が要らない、という理屈は通りません。実態として継続的な作業であれば、対象と判断されます。
また、災害その他非常の事態で緊急に行う必要がある場合には、事後の届出が認められる取扱いがあります。災害対応の場面を想定した規定です。災害時の対応については災害協定とはもご覧ください。
規制の内容
届出をすればどんな作業でもできる、というわけではありません。騒音・振動のレベルや作業時間について、基準が定められています。
主な規制項目は次のとおりです。具体的な数値や時間帯は、地域の区分によって異なります。
- 騒音・振動の大きさ——敷地の境界線における上限が定められる
- 作業時間帯——夜間や早朝の作業が禁止される
- 1日あたりの作業時間——連続して行える時間に上限が設けられる
- 連続日数——同一の場所で連続して行える日数に制限がある
- 休日の作業——日曜日や休日の作業が禁止される
これらの基準に反する作業が行われ、周辺の生活環境が損なわれると認められる場合には、市町村長から改善勧告や改善命令が出されることがあります。命令に従わなければ、罰則の対象となり得ます。
工程を組む際には、これらの制限を前提とする必要があります。夜間に作業できない、日曜は休む、1日の作業時間に上限がある——こうした条件下でどう進めるかを、施工計画の段階で検討しておきます。施工計画書の考え方は施工計画書とはをご覧ください。
近隣への説明という実務
法令上の届出とは別に、実務で欠かせないのが近隣への説明です。
届出は行政に対する手続きであり、それによって周辺住民の理解が得られるわけではありません。いつ、どのような作業を、どれくらいの期間行うのか。事前に知らせておくかどうかで、苦情の生じ方は大きく変わります。
説明しておけば、住民の側も予定を立てられます。「この期間は音がする」と分かっていれば、受け止め方も違います。逆に、何の説明もなく突然大きな音が始まれば、不信感を持たれます。
自治体によっては、届出に先立って近隣説明を行うよう指導している場合もあります。工事看板への記載、チラシの配布、戸別訪問など、方法は工事の規模と周辺の状況によります。
苦情への対応が長引けば、工事そのものが止まりかねません。近隣との調整がつかず施工できない状態になれば、工事の一時中止が問題になることもあります。詳しくは工事の一時中止とはをご覧ください。
騒音と振動は別の問題
騒音と振動は、まとめて語られることが多いものの、性質の異なる現象です。区別しておくと対策も立てやすくなります。
騒音は空気を伝わる音です。距離が離れれば減衰しますし、遮音壁や防音シートで遮ることができます。対策の効果が比較的見えやすい分野です。
振動は地盤を伝わります。空気中の壁では遮れず、地盤の性質によって伝わり方が変わります。軟弱な地盤では遠くまで伝わることもあり、対策が難しい面があります。
住民の受け止め方も違います。騒音は耳障りという形で現れますが、振動は建物が揺れる、置いてある物が動くといった形で不安を生みます。「家にひびが入ったのではないか」という心配につながることもあり、より深刻な苦情になりやすいのです。
そのため、振動を伴う作業では、事前に周辺建物の状況を記録しておく対応がとられることもあります。後から損傷の有無を判断するための備えです。
低騒音・低振動型機械の活用
規制に対応する方法は、作業時間を制限することだけではありません。機械そのものを選ぶという方向があります。
建設機械には、騒音や振動を抑えた型式について指定を受けたものがあります。こうした機械を使用すれば、周辺への影響を減らせます。工法の選択によっても違いが出ます。打撃で杭を打つ工法と、圧入や埋込みによる工法とでは、発生する騒音・振動が大きく異なります。
公共工事では、こうした機械や工法の採用が評価されることもあります。周辺環境への配慮が総合評価落札方式の評価項目に含まれる場合、提案の材料になります。評価値の算定は加算方式・除算方式とはをご覧ください。
また、環境負荷の低い新技術として登録されている工法であれば、提案の裏づけとして使えます。詳しくはNETISとはをご覧ください。ただし、低騒音型の機械は一般に費用が高くなるため、積算での扱いを発注者と確認しておく必要があります。
苦情が出たときの対応
どれだけ配慮しても、苦情が生じることはあります。そのときの対応が、その後の展開を分けます。
まず、受け止めて記録することです。いつ、誰から、どのような内容の申し出があったか。これを残しておかなければ、対応の経緯を説明できません。発注者への報告も必要になります。
次に、事実を確認することです。実際に基準を超えていたのか、作業時間はどうだったのか。必要であれば測定を行います。感覚的なやり取りに終始すると、話が平行線になります。
そして、できることを示すことです。作業時間を変える、防音シートを追加する、工法を見直す——完全になくせなくても、対策を講じる姿勢が伝われば、関係は保てます。何もしない、話を聞かないという態度が、最も事態を悪化させます。
なお、対策によって費用や工期に影響が生じる場合には、発注者との協議が必要になります。受注者だけで抱え込まず、早い段階で監督職員に相談してください。監督職員の役割は監督員とはをご覧ください。
届出を忘れないための工夫
7日前という期限は、うっかりすると間に合わなくなります。実務での工夫を挙げておきます。
ひとつは、着手時に対象作業を洗い出すことです。工程表を見て、特定建設作業に当たるものに印をつけておきます。杭打ち、はつり、解体——該当しそうな作業を先に特定しておけば、直前に慌てずに済みます。
もうひとつは、工程変更時に見直すことです。工事が進むなかで、作業の順序や時期は変わります。当初の予定で届出を出していても、開始日がずれれば変更の届出が必要になる場合があります。
そして、他の許認可とまとめて管理することです。道路占用、道路使用、廃棄物、文化財——工事には複数の手続きが伴います。一覧にして期限を管理すれば、漏れが生じにくくなります。工事書類の整理については工事書類の簡素化とはもご覧ください。
自治体独自の上乗せ規制
騒音規制法・振動規制法は全国共通の枠組みですが、それだけで完結するわけではありません。
自治体によっては、条例によって独自の規制を設けている場合があります。法律では対象外の作業を規制の対象に加える、より厳しい基準を定める、届出の対象範囲を広げる——といった形です。「指定建設作業」などの名称で、独自の区分を設けている自治体もあります。
そのため、法律の条文だけを確認して安心はできません。工事場所を管轄する自治体の条例・要綱まで見ておく必要があります。同じ作業でも、隣の市では届出が要る、ということが起こり得ます。
複数の地域で工事を行う企業ほど、この差に注意が必要です。前の現場の経験をそのまま当てはめず、案件ごとに確認する姿勢が求められます。
よくある質問
届出は誰が行いますか
その作業を施工する元請業者が行うのが基本です。実際に作業するのが下請であっても、届出の主体は元請になります。工事場所を管轄する市町村長へ提出します。
7日前はどう数えますか
届出の日と作業開始日は算入しません。その間に7日間が確保される必要があります。土日を挟むと窓口が閉まっているため、実際にはさらに余裕をもって準備してください。
1日で終わる作業も届出が要りますか
その日のうちに終了する作業は届出の必要がないとされています。ただし日をまたげば対象です。分割して毎日終わる形にすれば不要、という扱いにはなりません。
まとめ
特定建設作業とは、建設工事のうち著しい騒音または振動を発生する作業として、騒音規制法・振動規制法で定められたものです。くい打機、さく岩機、ブレーカーを使用する作業などが代表例で、指定地域で行う場合には作業開始の7日前までに市町村へ届出が必要です。日数の算定では、届出の日と作業開始日は算入しません。その日のうちに終了する作業は届出の対象外とされますが、日をまたげば必要になります。届出をすれば自由に作業できるわけではなく、騒音・振動の大きさ、作業時間帯、連続日数などに基準が設けられ、違反すれば改善勧告や改善命令の対象となります。法令上の届出に加えて、近隣への事前説明が実務では欠かせません。工程を組む段階から、これらの制限を前提とした検討が必要です。関連して道路占用許可とは、施工計画書とはもあわせてご覧ください。
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※本記事は公開時点の情報をもとに作成しています。指定地域・規制基準・届出様式は自治体により異なります。具体的な内容は騒音規制法・振動規制法および工事場所を管轄する自治体の一次情報をご確認ください。