参考見積とは?発注者が依頼する理由と見積合わせとの違いを解説

参考見積とは、官公庁や自治体が、予定価格を積算したり、予算を見積もったりするための参考資料として、事業者に提出を依頼する見積のことです。「参考見積書」「参考見積書の徴取」などとも呼ばれます。ここで大切なのは、参考見積は、契約を前提としたものではないという点です。契約相手を決めるための見積(見積合わせ)とは目的が異なります。この違いを理解しておかないと、参考見積を出したのに受注できず、戸惑うことにもなりかねません。本記事では、参考見積とは何か、発注者が依頼する理由、見積合わせとの違い、そして依頼を受けた事業者が押さえるべきポイントを解説します。
この記事のポイント
- 参考見積は、発注者が予定価格の積算や予算見積のために依頼する、参考資料としての見積
- 契約を前提とした見積合わせの見積とは異なり、提出しても受注が約束されるわけではない
- 市場価格が把握しにくいものについて、複数業者から徴取して価格の妥当性を確認するのが目的
参考見積とは
参考見積とは、官公庁や自治体が、契約に先立って、事業者に依頼して提出してもらう、参考資料としての見積です。発注者は、工事や物品、役務を調達するにあたって、あらかじめ「この調達はいくらまで」という予定価格を設定します。その予定価格を積算するための根拠資料として、あるいは、翌年度の予算を見積もるための資料として、事業者から価格の見積を集めるのが、参考見積です。
官公庁が扱う調達の中には、標準的な市場価格が分かりにくいものが少なくありません。特殊な機器、専門的な役務、特注品などは、カタログ価格のような明確な基準がなく、発注者だけでは適正な価格を見積もりにくいのです。そこで、実際にそれを提供している事業者に、価格の目安を尋ねる形で、参考見積の提出を依頼します。集めた見積は、予定価格を積算する際の重要な参考情報になります。予定価格の仕組みは予定価格とは、積算の考え方は積算とはをご覧ください。
ここで最も重要なのが、参考見積は「契約を前提としたものではない」という点です。見積という形式ではあっても、発注者が、その事業者に発注することを約束して依頼しているわけではありません。あくまで、価格の参考情報を得るための依頼です。参考見積を提出したからといって、その後の入札や契約で有利になるとは限らず、受注が保証されるものでもない——この性格を、依頼を受ける側は正しく理解しておく必要があります。
発注者が参考見積を依頼する理由
発注者が参考見積を依頼する理由は、主に予定価格の適正な設定と、予算の見積もりにあります。公共調達では、予定価格を適正に定めることが、調達の公正さと、税金の適切な使用のために欠かせません。高すぎれば税金の無駄遣いになり、低すぎれば誰も応札せず調達が成立しません。市場の実勢に合った予定価格を設定するために、実際の事業者の見積は、貴重な情報源になります。
また、参考見積は、複数の事業者から徴取するのが通常です。一社だけの見積では、その価格が妥当なのか、割高なのかを判断できません。複数社から集めることで、価格の相場観をつかみ、より客観的に予定価格を積算できます。これは、後の入札で複数の事業者に価格競争をさせるのと同じく、公正な価格を把握するための工夫です。事業者にとっては、参考見積の依頼は、その分野の調達が計画されているというサインでもあり、今後の入札への準備の手がかりにもなります。
予算を編成する段階でも、参考見積は使われます。翌年度に予定している事業について、どれくらいの費用がかかるかを見積もり、予算要求の根拠とするためです。この場合、実際の調達はまだ先であり、参考見積は、あくまで予算を組むための概算の材料になります。いずれの場合も、参考見積は「発注者が価格を把握するための資料」という位置づけです。
見積合わせとの違い
参考見積と混同されやすいのが、見積合わせで提出する見積です。どちらも「見積」ですが、その目的は大きく異なります。整理すると次のようになります。
| 区分 | 目的 | 契約との関係 |
|---|---|---|
| 参考見積 | 予定価格の積算・予算の見積のための参考資料 | 契約を前提としない(受注が約束されるものではない) |
| 見積合わせの見積 | 契約の相手方を決めるための価格競争 | 契約を前提とする(最も有利な見積を出した者が契約する) |
参考見積は、前述のとおり、発注者が価格を把握するための参考資料であり、契約を前提としません。これに対して、見積合わせで提出する見積は、契約の相手方を決めるためのものです。見積合わせは、複数の事業者から見積を出させ、最も有利な価格を提示した者と契約する、随意契約の一種の手続きです。つまり、見積合わせの見積は、そのまま契約に直結します。見積合わせの詳しい仕組みは見積合わせとはをご覧ください。
この違いは、事業者にとって実務上とても重要です。参考見積の依頼だと思って気軽に高めの見積を出すと、それが予定価格の水準に影響し、後の入札で自社の首を絞めることもあります。逆に、見積合わせだと思って過度に安い見積を出すと、参考見積のつもりだった発注者の想定を大きく下回り、価格の相場を崩してしまうこともあります。依頼された見積が、参考見積なのか、契約を前提とした見積なのかを、まず確認することが大切です。なお、民間取引の相見積もりとの違いは相見積もりとはでも整理しています。
依頼を受けた事業者が押さえておきたいこと
参考見積の依頼を受けた事業者が、押さえておきたいポイントを整理します。第一に、依頼の性格を確認することです。その見積が、参考見積(価格把握のための資料)なのか、見積合わせ(契約を前提とした競争)なのかを、依頼の文書や担当者への確認で、まずはっきりさせます。目的が違えば、見積の出し方の考え方も変わってくるためです。
第二に、参考見積であっても、根拠のある適正な価格を出すことです。参考見積は契約に直結しないとはいえ、いい加減な金額を出してよいわけではありません。その見積が予定価格の積算に使われる以上、実態からかけ離れた価格を出せば、後の入札で予定価格と実勢が合わず、自社にも他社にも不都合が生じます。自社の積算に基づいた、根拠のある見積を提出することが、結果的に自社の利益にもつながります。
第三に、参考見積の依頼を、情報収集の機会と捉えることです。参考見積を求められるということは、その分野で調達が計画されている可能性が高いということです。どんな仕様のものが検討されているか、いつ頃の調達になりそうかといった情報は、今後の入札に向けた準備の手がかりになります。参考見積への丁寧な対応は、発注者との良好な関係づくりにもつながります。参考見積を、単なる価格の問い合わせとしてではなく、将来の受注に向けた接点として活かす視点が、公共調達で選ばれる事業者の姿勢です。
よくある質問
参考見積を出せば受注できますか
いいえ。参考見積は、発注者が予定価格の積算や予算見積のために依頼する参考資料であり、契約を前提としたものではありません。提出しても受注が保証されるわけではなく、実際の調達は、その後の入札や見積合わせなどの手続きを経て決まります。
参考見積は高めに出したほうがよいですか
おすすめできません。参考見積は予定価格の積算に使われるため、実態からかけ離れた高い金額を出すと、後の入札で予定価格と実勢が合わなくなり、かえって不都合が生じることがあります。自社の積算に基づいた、根拠のある適正な価格を提出するのが基本です。
参考見積と見積合わせの見分け方は
依頼の目的で見分けます。予定価格の積算や予算見積のための資料なら参考見積、契約の相手方を決める価格競争なら見積合わせです。依頼文書に「参考見積」「予定価格算定のため」などと記載されることが多いですが、不明なときは発注者に確認するのが確実です。
まとめ
参考見積とは、発注者が予定価格の積算や予算の見積のために、事業者に依頼する参考資料としての見積です。契約を前提とする見積合わせの見積とは異なり、提出しても受注が約束されるわけではありません。市場価格が把握しにくいものについて、複数業者から徴取して価格の妥当性を確認するのが目的です。依頼を受けた事業者は、まず依頼の性格(参考見積か見積合わせか)を確認し、参考見積であっても根拠のある適正な価格を出すこと、そして依頼を情報収集や関係づくりの機会と捉えることが大切です。参考見積を正しく理解し、丁寧に対応することが、後の入札での適切な価格設定と、発注者からの信頼につながります。関連して予定価格とは、見積合わせとはもあわせてご覧ください。
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※本記事は公開時点の情報をもとに作成しています。参考見積の依頼方法や取扱いは発注機関により異なります。具体的な内容は各発注機関の依頼文書・公表資料等の一次情報をご確認ください。



