品質証明とは?受注者が自ら品質を確認する制度を解説

公共工事の品質は、発注者の検査だけで担保されるものではありません。土木構造物は、契約の時点では存在せず、施工を通じてはじめて形になります。完成してから不具合が見つかっても、やり直しは容易ではありません。だからこそ、施工する側が自ら品質を確認する仕組みが重要になります。その一つが品質証明です。発注者が必要と認めた工事について、受注者が品質証明員を定め、工事全般にわたって確認を行い、その結果を検査時に示します。本記事では、品質証明とは何か、品質証明員の要件と役割、実務上の進め方を解説します。
この記事のポイント
- 品質証明は、発注者が必要と認めた工事で、受注者が品質を証明する制度
- 品質証明員には、一定の現場経験と資格が求められる
- 出来形・品質・写真管理をはじめ、工事全般にわたって確認を行う
品質証明制度とは
品質証明制度とは、発注者が必要と認めた工事について、受注者が当該工事の品質を証明する制度です。国土交通省の地方整備局や、都道府県などが実施要領を定めて運用しています。
この制度の背景にあるのは、土木構造物の特殊性です。工業製品であれば、完成したものを見て買うかどうかを決められます。しかし土木構造物は、契約の段階では存在しません。設計図書に基づいて、これから造るものです。しかも、完成すれば地中や構造物の内部は見えなくなります。
そのため、品質の確保は施工の過程に委ねられます。発注者の検査は重要ですが、すべての工程に立ち会えるわけではありません。施工者自身による品質確保の取組みが、どうしても必要になるのです。
品質証明は、この自主的な取組みを制度として位置づけたものです。受注者側に品質を確認する担当者を置き、その確認結果を発注者に示すという枠組みになっています。
品質証明員の要件
品質証明を担うのが品質証明員です。誰でもなれるわけではなく、資格と経験の要件が定められています。
実施要領では、10年以上の現場経験を有し、技術士もしくは1級土木施工管理技士の資格を有する者とされている例があります。相当の経験と技術力が求められるということです。
要件が厳しいのには理由があります。品質証明員は、施工されたものが契約図書のとおりであるかを自ら判断しなければなりません。図面や仕様書を読み解き、現場の状況と照らし合わせ、問題があれば指摘する。これには、経験に裏打ちされた目が要ります。
受注者は、品質証明員を定めた場合、書面によって氏名、資格(資格証明書の写しを添付)、経験、経歴書を監督職員に提出するものとされています。要件を満たしていることを、発注者が確認できるようにするためです。監督職員の役割は監督員とはをご覧ください。
品質証明員が行う確認
品質証明員は、何を、いつ確認するのでしょうか。
確認の時期は、工事の施工途中において必要と認められる時期、および各検査(完成検査、既済部分検査、中間技術検査)の事前とされます。検査の直前だけでなく、施工の過程でも確認を行うという点が重要です。
確認の内容は、契約図書および関係図書に基づいて行われます。対象は出来形、品質、写真管理はもとより、工事全般にわたるとされており、範囲は広く取られています。
- 出来形——寸法や形状が規格値の範囲に収まっているか
- 品質——材料や施工の品質が基準を満たしているか
- 写真管理——必要な記録が、基準に沿って撮影・整理されているか
- その他——施工体制、安全管理など工事全般
これらの基準については、発注機関が定める品質管理基準・出来形管理基準があります。詳しくは品質管理基準・出来形管理基準とは、写真の撮り方は工事写真とはをご覧ください。
確認した結果は、検査時に品質証明として示されます。書類として整理し、検査職員に提示するという流れです。
現場代理人や監理技術者との関係
品質証明員は、現場の他の役職とどう違うのでしょうか。
監理技術者・主任技術者は、建設業法に基づき、工事の施工の技術上の管理をつかさどる立場です。施工そのものを指揮する役割だといえます。
これに対して品質証明員は、施工された結果を確認する立場です。作る側と確かめる側を分けることで、確認の客観性を高めようという発想があります。
この考え方を徹底すれば、施工の担当者とは別の人が品質証明員になるのが望ましいということになります。自分が施工したものを自分で確認するのでは、見落としが生じやすいからです。実施要領において、兼務の可否がどう定められているかは発注機関によるため、個別に確認が必要です。
なお、施工者が契約した第三者による品質証明業務について、国土交通省が運用ガイドラインを示している例もあります。社外の技術者に確認を委ねるという形です。各役職の違いは監理技術者と主任技術者の違いとはもご覧ください。
実務での進め方
品質証明を実務として進めるうえでのポイントを整理します。
第一に、早い段階で人を決めることです。要件を満たす技術者は社内に多くありません。他の現場との掛け持ちも考えると、着手時に調整しておく必要があります。書面での提出も求められますから、資格証明書などの準備もあわせて行います。
第二に、確認の時期を工程に組み込むことです。施工途中の確認は、埋め戻す前、打設する前といったタイミングを逃せません。監督職員による段階確認と同様、工程表に確認の予定を入れておきます。段階確認については段階確認とはをご覧ください。
第三に、指摘を活かすことです。品質証明員が問題を見つけたとき、それを現場に反映させなければ制度の意味がありません。形式的に「確認しました」と書類を整えるだけでは、品質は向上しません。指摘しやすい雰囲気と、指摘を受け止める体制が要ります。
品質証明がもたらすもの
品質証明の取組みは、受注者にとって負担が増える面もあります。それでも意味があるのはなぜでしょうか。
ひとつは、手戻りを防げることです。検査で指摘されてから直すより、施工の途中で気づいて修正するほうが、はるかに小さな手間で済みます。埋め戻した後に問題が見つかれば、掘り返すことになりかねません。
もうひとつは、工事成績への影響です。品質が確保され、書類が整っていれば、検査での評価は高くなります。工事成績評定は、次の入札における技術評価にも関わります。日々の品質管理の積み重ねが、受注力につながるという構造です。詳しくは工事成績評定とはをご覧ください。
そして、技術の伝承という側面もあります。経験豊富な技術者が現場を確認し、若手に指摘する。この過程そのものが、教育の機会になります。担い手不足のなかで、技術をどう引き継ぐかという課題への一つの答えでもあります。
発注者の検査との役割分担
品質証明があるからといって、発注者の検査がなくなるわけではありません。両者は役割を分担しています。
発注者が行う検査は、契約に基づく給付の完了を確認するものであり、発注者としての責任において実施されます。受注者側の確認がどれだけ充実していても、この検査が省略されることはありません。
品質証明が担うのは、検査に至るまでの過程です。検査で見られるのは完成した姿ですが、そこに至る施工の途中には、後から確認できない部分が数多くあります。その部分を、受注者側の責任で確かめておくという役割分担です。
言い換えれば、品質証明は検査の代わりではなく、検査を成り立たせる土台です。施工の過程が確かであってはじめて、完成品の検査にも意味が出てきます。検査の種類については技術検査とは、中間検査とはをご覧ください。
第三者による品質証明という選択
品質証明を社内の技術者が担う形のほかに、施工者が契約した第三者に委ねる方式もあります。国土交通省が運用ガイドラインを示している例があります。
この方式の利点は、確認の客観性が高まることです。社内の人間であれば、どうしても施工側との関係が生じます。社外の技術者であれば、しがらみなく指摘できます。
また、要件を満たす技術者を社内に抱えていない企業にとっては、現実的な選択肢にもなります。10年以上の経験と資格を持つ技術者は限られており、複数の現場を同時に抱えれば、人繰りが難しくなります。
一方で、外部委託には費用がかかります。また、社外の技術者は現場の事情に通じていないため、実効性のある確認にするには、情報の共有が欠かせません。どちらの方式が適するかは、工事の規模と社内の体制によります。
確認の記録をどう残すか
品質証明の実効性は、記録の残し方に左右されます。
確認したという事実だけでなく、何をどう確認したかが分かる形にしておく必要があります。確認の日時、対象、方法、判断の根拠。これらが記載されていなければ、後から検証できません。
指摘があった場合の扱いも重要です。どこに問題があり、どう是正したのか。是正の結果を再確認したのか。この流れが記録されていれば、品質管理が機能していることの証明になります。
逆に、指摘が一件もない記録は、かえって疑問を招くこともあります。完璧な施工というものは稀であり、確認していれば何かしら気づく点はあるはずだからです。形だけの確認になっていないか、点検してみる価値があります。
なお、記録の様式や提出の要否は発注機関によって異なります。書類の整理については工事書類の簡素化とはもご覧ください。
自主的な品質確保という考え方
品質証明の根底にあるのは、品質は施工者が確保するものという考え方です。
検査で指摘されなければよい、という姿勢では、良い構造物はできません。検査で見られるのはごく一部であり、見られない部分のほうがはるかに多いからです。見られない部分をどう作るかが、構造物の寿命を決めます。
この発想は、品質確保の法制度とも通じています。公共工事の品質確保に関する法律は、価格のみによる競争を改め、技術力を評価する仕組みを整えてきました。良い施工が評価される環境があってはじめて、自主的な品質確保も成り立ちます。関連する法制度は担い手三法とはをご覧ください。
品質証明は、その理念を現場の手続きに落とし込んだ仕組みの一つです。制度として課されたものと受け止めるか、自社の品質を高める機会と捉えるかで、得られるものは変わってきます。
品質確認技術者という仕組み
品質証明と似た趣旨の仕組みとして、発注機関によっては「品質確認技術者」といった制度を設けている場合があります。
名称や細部の運用は異なりますが、施工の過程で品質を確かめる担当者を置くという発想は共通しています。制度の名前で混乱しないよう、案件ごとにどの仕組みが適用されるのかを確認することが大切です。
確認すべきなのは、要件(資格・経験)、確認の対象と時期、提出が求められる書類、そして兼務の可否です。これらは実施要領に示されます。着手時の打合せで、監督職員と認識を揃えておくとよいでしょう。
複数の発注機関から受注している企業ほど、この差に注意が必要です。「前の現場ではこうだった」が通用しない場面があるのは、他の制度と同じです。
よくある質問
すべての工事で品質証明が必要ですか
いいえ。発注者が必要と認めた工事について実施される制度です。対象となるかどうかは、案件ごとに特記仕様書等で示されるため、着手時に確認してください。
品質証明員にはどんな資格が要りますか
10年以上の現場経験を有し、技術士もしくは1級土木施工管理技士の資格を有する者とされている例があります。要件は発注機関の実施要領によるため、個別の確認が必要です。
現場代理人が兼ねてもよいですか
兼務の可否は発注機関の実施要領によります。確認の客観性という趣旨からは、施工の担当者とは別の者が望ましいと考えられますが、個別に要領を確認してください。
まとめ
品質証明制度とは、発注者が必要と認めた工事について、受注者が品質証明員を定め、自ら工事の品質を証明する制度です。契約前に品質を確認できない土木構造物の特殊性を踏まえ、施工者自身による品質確保の取組みを制度化したものです。品質証明員には、10年以上の現場経験と、技術士もしくは1級土木施工管理技士の資格が求められる例があり、定めた場合は氏名・資格・経験等を書面で監督職員に提出します。確認は、施工途中の必要な時期と各検査の事前に行われ、出来形・品質・写真管理をはじめ工事全般に及びます。実務では、早い段階で人を決めること、確認の時期を工程に組み込むこと、そして指摘を現場に活かすことが要点です。手戻りの防止、工事成績の向上、技術の伝承という効果も期待できます。関連して品質管理基準・出来形管理基準とは、技術検査とはもあわせてご覧ください。
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※本記事は公開時点の情報をもとに作成しています。品質証明員の要件・実施の要否は発注機関の実施要領により異なります。具体的な内容は各発注機関の実施要領等の一次情報をご確認ください。